20 / 32
共有
しおりを挟む
「……蝶人間?」
「セリーヌも知っていたの」
「それは勿論……。でも意外ね。……いえ、意外でもないかしら」
セリーヌはニーナの豊かな胸を見て、苦笑いを浮かべた。
そういえば、婚約者はセリーヌの巨乳が好きだった。ちらちらとマリオンから注がれる視線には気が付いていたが、気が付かないふりをしていただけだ。
マリオンの気を引きたい時は、わざと胸元が大きくあいたドレスを着たりしたものだ。その自分と同じぐらい大きな胸を持つニーナの美少女っぷりと素直そうな性格なら、マリオンがのめり込んでもおかしくはなかった。
その愛らしさといったら、地上に舞い降りた天使のようで、ニーナがマリオンの物だと知っていても、喉から手が出るほど欲しくなるほどだった。
あどけない笑顔を直視した時には、思わず触りたくなってしまう。
(なるほど? やっぱり、私好みと察して、警戒していたのね)
付き合いは長いのだ。セリーヌの好みなど、とっくに把握していてもおかしくはない。セリーヌは、言葉巧みに誘導し、多少強引な手を使っても、欲しいものは全て手に入れてきた。
そんなセリーヌに、いくら婚約者とはいえ、マリオンが警戒しないはずがなかった。
「……この子の他にも蝶人間を羽化させるつもりなのね?」
「そうだよ」
「それなら、この子に似た、雌の蝶が羽化したら譲って下さる?」
「兄様と似たような事を言うんだね。まぁ、これだけ可愛いと、誰でも欲しくなるかぁ……。ニーナが産んだ卵あるから、セリーヌも育ててみる?」
マリオンの言葉に、セリーヌは苦笑いしながら答えた。
「蝶人間は飼育が難しいと聞きますわ……。卵を渡されても、困ります」
「そんなに難しいものでもないんだよ? 温室を用意するのは大変だけど、蝶人間の有精卵は奴隷商から買えるし。そうだ! コツを教えてあげるから、セリーヌも僕と一緒に育ててみない?」
もちろん、マリオンの気持ちとしては、蝶人間を口実として、セリーヌの傍に居たいという下心もあったが、前々から誰かと蝶人間を飼育する楽しさを共有できればいいなと思っていたのだ。
「……私でも出来るのかしら?」
セリーヌとマリオンは蝶人間の話で意気投合した。「けっこう苦労はするけど、それに見合うだけの価値はあるんだよ」と、ニーナの飼育についての話から始まり、解雇した侍従の話にまで及んだ。
「醜い見た目だとは思っていたけど、中身まで醜いなんて、雇っている意味がないのではなくて? そんな男を傍に置いておくのは危険よ」
「確かに見栄えしないけど、仕事は出来たから……」
侍従の件は、マリオンにとっては過去の汚点だった。セリーヌのもっともな指摘に、こんな恥ずかしいことをセリーヌに打ち明けなければ良かったなと失言を悔いながら、マリオンは答えた。
「セリーヌも知っていたの」
「それは勿論……。でも意外ね。……いえ、意外でもないかしら」
セリーヌはニーナの豊かな胸を見て、苦笑いを浮かべた。
そういえば、婚約者はセリーヌの巨乳が好きだった。ちらちらとマリオンから注がれる視線には気が付いていたが、気が付かないふりをしていただけだ。
マリオンの気を引きたい時は、わざと胸元が大きくあいたドレスを着たりしたものだ。その自分と同じぐらい大きな胸を持つニーナの美少女っぷりと素直そうな性格なら、マリオンがのめり込んでもおかしくはなかった。
その愛らしさといったら、地上に舞い降りた天使のようで、ニーナがマリオンの物だと知っていても、喉から手が出るほど欲しくなるほどだった。
あどけない笑顔を直視した時には、思わず触りたくなってしまう。
(なるほど? やっぱり、私好みと察して、警戒していたのね)
付き合いは長いのだ。セリーヌの好みなど、とっくに把握していてもおかしくはない。セリーヌは、言葉巧みに誘導し、多少強引な手を使っても、欲しいものは全て手に入れてきた。
そんなセリーヌに、いくら婚約者とはいえ、マリオンが警戒しないはずがなかった。
「……この子の他にも蝶人間を羽化させるつもりなのね?」
「そうだよ」
「それなら、この子に似た、雌の蝶が羽化したら譲って下さる?」
「兄様と似たような事を言うんだね。まぁ、これだけ可愛いと、誰でも欲しくなるかぁ……。ニーナが産んだ卵あるから、セリーヌも育ててみる?」
マリオンの言葉に、セリーヌは苦笑いしながら答えた。
「蝶人間は飼育が難しいと聞きますわ……。卵を渡されても、困ります」
「そんなに難しいものでもないんだよ? 温室を用意するのは大変だけど、蝶人間の有精卵は奴隷商から買えるし。そうだ! コツを教えてあげるから、セリーヌも僕と一緒に育ててみない?」
もちろん、マリオンの気持ちとしては、蝶人間を口実として、セリーヌの傍に居たいという下心もあったが、前々から誰かと蝶人間を飼育する楽しさを共有できればいいなと思っていたのだ。
「……私でも出来るのかしら?」
セリーヌとマリオンは蝶人間の話で意気投合した。「けっこう苦労はするけど、それに見合うだけの価値はあるんだよ」と、ニーナの飼育についての話から始まり、解雇した侍従の話にまで及んだ。
「醜い見た目だとは思っていたけど、中身まで醜いなんて、雇っている意味がないのではなくて? そんな男を傍に置いておくのは危険よ」
「確かに見栄えしないけど、仕事は出来たから……」
侍従の件は、マリオンにとっては過去の汚点だった。セリーヌのもっともな指摘に、こんな恥ずかしいことをセリーヌに打ち明けなければ良かったなと失言を悔いながら、マリオンは答えた。
0
お気に入りに追加
30
あなたにおすすめの小説
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
エリート警察官の溺愛は甘く切ない
日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。
両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉
片想いの相手と二人、深夜、狭い部屋。何も起きないはずはなく
おりの まるる
恋愛
ユディットは片想いしている室長が、再婚すると言う噂を聞いて、情緒不安定な日々を過ごしていた。
そんなある日、怖い噂話が尽きない古い教会を改装して使っている書庫で、仕事を終えるとすっかり夜になっていた。
夕方からの大雨で研究棟へ帰れなくなり、途方に暮れていた。
そんな彼女を室長が迎えに来てくれたのだが、トラブルに見舞われ、二人っきりで夜を過ごすことになる。
全4話です。

借金まみれで高級娼館で働くことになった子爵令嬢、密かに好きだった幼馴染に買われる
しおの
恋愛
乙女ゲームの世界に転生した主人公。しかしゲームにはほぼ登場しないモブだった。
いつの間にか父がこさえた借金を返すため、高級娼館で働くことに……
しかしそこに現れたのは幼馴染で……?

五歳の時から、側にいた
田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。
それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。
グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。
前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。


密室に二人閉じ込められたら?
水瀬かずか
恋愛
気がつけば会社の倉庫に閉じ込められていました。明日会社に人 が来るまで凍える倉庫で一晩過ごすしかない。一緒にいるのは営業 のエースといわれている強面の先輩。怯える私に「こっちへ来い」 と先輩が声をかけてきて……?

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる