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嫉妬
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(……なんとなく思っていたけど……。僕って、独占欲が強いのかな……?)
婚約者だから、将来的にセリーヌはマリオンと結婚するしかない。けれど、それだけでは不十分だった。マリオンは自分と同じぐらい、いや、それ以上に、愛して欲しかった。
セリーヌの、まるで晴れ渡った空のように美しい、透き通った水色の瞳に映す人間は、自分1人であって欲しいと願っていた。マリオンは、セリーヌが勝手に出歩いて、自分ではない誰かを愛さないようにないように、いっそのこと鳥籠に閉じ込めてしまいたかった。
(またあの夢を見ないかな……。夢の中だけでいい……。セリーヌを思う存分、愛したい……)
あれが夢でなく現実であればと、何回思っただろう。
マリオンはセリーヌを自分だけのものにしたかった。女の子ではなく、自分だけを見て欲しかった。
夢の中のセリーヌに射精する時の気持ち良さといったら、言葉で表せないほどだった。実際、マリオンは、セリーヌを見る度に、そのドレスを剥ぎ取り、襲い掛かりたかった。
けれど、理性がそれを許さなかった。女の子が好きなセリーヌに無理強いをして、泣かせたくなかったからだ。マリオンはセリーヌが見せる、まるで大輪の薔薇が咲いたような、笑顔が好きだった。セリーヌを愛しているからこそ、痛い目にも怖い目にも逢って欲しくなかった。
(僕は、セリーヌに嫌われたくない……)
きっと、こんな淫らなことばかり想像しているだなんてセリーヌに知られたら、嫌悪感を抱かれてしまうかもしれない思って、マリオンは、セリーヌへの燃えるような気持ちを隠すようになった。
(……あぁ、今日もセリーヌは可愛いなあ。キスして、抱き締めたい……)
けれど、どうしてもセリーヌを見ると、抱きたくなる。その結果、夢精の回数も増えた。そして、次第にセリーヌを見ること自体が苦痛になっていった。
「私はお飾りの妻で良いのよ……」
セリーヌはマリオンが愛していたその青い瞳を潤ませながら、震える声を絞り出すようにしてマリオンに喋りかけた。
「お互いに干渉せず、それぞれが気の赴くまま、自由に生きればいいじゃない。婚約破棄なんてする必要なんてないでしょう?」
陽気で社交的なセリーヌは、何時でも人の中心にあった。こんな弱弱しいセリーヌなんて見たことがなかったマリオンは、心を痛めた。
「お飾りの妻だなんて……。セリーヌには幸せになって欲しいんだ。僕ではダメだったけど、きっと他に誰か、君を幸せにしてくれる人がいるよ……」
それは本心からの言葉だったけれども、なんて頼りなくて、情けない男なんだろうと、マリオンは泣きそうになった。
(結局、僕はセリーヌを泣かせてしまっているじゃないか)
本当は、誰か別の男に、その立ち位置を譲りたくはなかった。婚約者であるマリオンが、セリーヌを幸せにしてあげるべきだった。けれど、自分以外の人間に心を寄せるセリーヌを傍で見続けるのは、マリオンにとって拷問に近いものだった。
セリーヌと結婚してマリオンが夫になったとしても、マリオンはセリーヌに指一本触れることも出来ない。ただ、指をくわえて見ているしかないのだ。
きっと嫉妬で狂ってしまうだろう。マリオンは、セリーヌを幸せにしてあげる自信なんて、まるでなかった。自分以外の人間に心を寄せるセリーヌを想像しただけで、腸が煮えくり返ってしまう。そんな心の狭さを、セリーヌには見せたくなかった。
(セリーヌが、僕のことを好きにならなくても当たり前だよね……)
自分自身を振り返ってみても、小さなことでくよくよとしてしまう弱い自分が嫌いだった。きっと、男らしい男だったら、セリーヌだって好きになったのかもしれない。マリオンは、どっちつかずの中途半端な自分に劣等感を感じていた。
婚約者だから、将来的にセリーヌはマリオンと結婚するしかない。けれど、それだけでは不十分だった。マリオンは自分と同じぐらい、いや、それ以上に、愛して欲しかった。
セリーヌの、まるで晴れ渡った空のように美しい、透き通った水色の瞳に映す人間は、自分1人であって欲しいと願っていた。マリオンは、セリーヌが勝手に出歩いて、自分ではない誰かを愛さないようにないように、いっそのこと鳥籠に閉じ込めてしまいたかった。
(またあの夢を見ないかな……。夢の中だけでいい……。セリーヌを思う存分、愛したい……)
あれが夢でなく現実であればと、何回思っただろう。
マリオンはセリーヌを自分だけのものにしたかった。女の子ではなく、自分だけを見て欲しかった。
夢の中のセリーヌに射精する時の気持ち良さといったら、言葉で表せないほどだった。実際、マリオンは、セリーヌを見る度に、そのドレスを剥ぎ取り、襲い掛かりたかった。
けれど、理性がそれを許さなかった。女の子が好きなセリーヌに無理強いをして、泣かせたくなかったからだ。マリオンはセリーヌが見せる、まるで大輪の薔薇が咲いたような、笑顔が好きだった。セリーヌを愛しているからこそ、痛い目にも怖い目にも逢って欲しくなかった。
(僕は、セリーヌに嫌われたくない……)
きっと、こんな淫らなことばかり想像しているだなんてセリーヌに知られたら、嫌悪感を抱かれてしまうかもしれない思って、マリオンは、セリーヌへの燃えるような気持ちを隠すようになった。
(……あぁ、今日もセリーヌは可愛いなあ。キスして、抱き締めたい……)
けれど、どうしてもセリーヌを見ると、抱きたくなる。その結果、夢精の回数も増えた。そして、次第にセリーヌを見ること自体が苦痛になっていった。
「私はお飾りの妻で良いのよ……」
セリーヌはマリオンが愛していたその青い瞳を潤ませながら、震える声を絞り出すようにしてマリオンに喋りかけた。
「お互いに干渉せず、それぞれが気の赴くまま、自由に生きればいいじゃない。婚約破棄なんてする必要なんてないでしょう?」
陽気で社交的なセリーヌは、何時でも人の中心にあった。こんな弱弱しいセリーヌなんて見たことがなかったマリオンは、心を痛めた。
「お飾りの妻だなんて……。セリーヌには幸せになって欲しいんだ。僕ではダメだったけど、きっと他に誰か、君を幸せにしてくれる人がいるよ……」
それは本心からの言葉だったけれども、なんて頼りなくて、情けない男なんだろうと、マリオンは泣きそうになった。
(結局、僕はセリーヌを泣かせてしまっているじゃないか)
本当は、誰か別の男に、その立ち位置を譲りたくはなかった。婚約者であるマリオンが、セリーヌを幸せにしてあげるべきだった。けれど、自分以外の人間に心を寄せるセリーヌを傍で見続けるのは、マリオンにとって拷問に近いものだった。
セリーヌと結婚してマリオンが夫になったとしても、マリオンはセリーヌに指一本触れることも出来ない。ただ、指をくわえて見ているしかないのだ。
きっと嫉妬で狂ってしまうだろう。マリオンは、セリーヌを幸せにしてあげる自信なんて、まるでなかった。自分以外の人間に心を寄せるセリーヌを想像しただけで、腸が煮えくり返ってしまう。そんな心の狭さを、セリーヌには見せたくなかった。
(セリーヌが、僕のことを好きにならなくても当たり前だよね……)
自分自身を振り返ってみても、小さなことでくよくよとしてしまう弱い自分が嫌いだった。きっと、男らしい男だったら、セリーヌだって好きになったのかもしれない。マリオンは、どっちつかずの中途半端な自分に劣等感を感じていた。
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