僕の白い蝶【完結】

ちゃむにい

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成果

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「女の勘よ。貴方は娼館に行くような人じゃないし、真面目だから私と結婚するまで、他の女には手を出さないと思っていたわ」
「だ、だって、セリーヌは女の人じゃないとだめだって……」
「あら? 私、女の子のほうが好きだけど、男がだめなんて一言も言っていないわよ?」

あっけらかんと言うセリーヌに、マリオンは驚愕した。

「そうなの!?」
「女しかだめなら、貴方の婚約者に選ばれるわけがないでしょう? 私には年齢の近い姉妹がいるのよ?」
「……なんだぁ……。僕、勘違いしてたんだね」

もし「手を握るのもダメ」と拒絶されたら怖くて、聞くのも躊躇いがあった。ずっと思い悩んでいたから、疑惑ばかりが膨らんでいってしまった。

「……そうだ。今度のレポート課題、自由だったよね? 蝶人間にしようかな? セリーヌと共同でやってみたい」
「あら、それはいいわね。私もしてみたいわ」
「レポートのタイトルは、そうだなー 僕の白い蝶にしようかな? うわ~、楽しそう! 今まで以上に、しっかり観察しなきゃ!」

マリオンとセリーヌが共同で作成した蝶人間のレポートは、学内外で高い評価を得ることになった。

「セリーヌ、僕学校辞めないで良かったよ!」

蝶人間の愛好家から呼ばれたりと、その成果は目まぐるしいものだった。

「私も、あんなに苦痛だった裁縫の楽しみ方が少し分かってきたわ。今度蝶人間の服でも縫ってみようかしら? マリオン、いっしょにニーナの服でも考えてみない?」
「そういえば、蝶人間用の服とか売ってないもんね。人間用の服を着させてるけど生地が重くて着心地が悪いのか、すぐ脱いじゃうし……、下着を着てくれないから困ってるんだよね。夏だったらニーナを外に連れ出すことも出来ると思うんだけど、パンツ履いてないニーナを外に出すのは嫌だし。……僕も裁縫やってみようかなあ……」

それは、マリオンの趣味に裁縫が加わった瞬間だった。

「マリオン……貴方、上手ね……。私が教えることなんて、何もないじゃない。まるでお店で売っている商品みたいよ。なんで、そんなに上手なの?」
「前にメイドから教えて貰ったんだよ。筋がいいと褒められたからさ、ドレスにお母様の好きな薔薇の刺繍をして誕生日にプレゼントしたんだけど……泣いて怒られたんだよね、貴方は男なんですよって。集めた道具は全部捨てられてしまったよ。お母様を悲しませたくなかったし、僕に教えてくれたメイドが解雇されてしまったから、しなくなったけど、やっぱりやると楽しいな」

マリオンは、貴族御用達の店に並んでいる商品に飽き足らず、生産地まで赴いて蝶人間の肌に合う生地や糸を選別した。

「うん、これだ! これなら良い物が作れそうだ!」

そうして完成させた蝶人間用の服は、蝶人間を飼育する貴族にとって垂涎の品だった。マリオンの繊細で丁寧な針仕事で、あれほど下着を着ることを嫌がっていたニーナも、喜んで着るようになった。

「……これは売れるよ。私も何着か作って欲しいな」
「いいけど、誰かに見せる時にはセリーヌが作ったことにして貰えないかな? お母様に、僕が作ったなんて知られたら、怖いし」

最初は仲の良い蝶人間の愛好家から依頼を受け、納品していたが、次第に評判が広まり、学業の傍ら、仕立て屋としての活動を始めた。

「自分の力で稼ぐのって楽しいね」

マリオンは三男ではあるが、侯爵家の出身のため、働かずとも生きていけるし、お金を稼ぐことに期待されていない。むしろ働くことは悪いことのような風潮すらある。
けれど、マリオンは、生まれて初めて自分の力でお金を稼ぐことに喜びを感じた。それは、学校に通うことが苦痛だったマリオンの日々を、刺激的なものにした。

その後、マリオンは無事学校を卒業し、セリーヌと結婚式を挙げた。

マリオンは新妻となったセリーヌと、念願の初夜を迎えた。その日から、セリーヌは毎日のようにマリオンに抱かれるようになった。マリオンは「僕の妻に、悪い虫が付かないようにするんだ!」と言って日夜励んでいたのだが、セリーヌはすっかり、マリオンの虜となっていた。

(女もいいけど、男もいいわね。凄く気持ちいいわ)

セリーヌは、結婚を機に、恋愛は控えようと思っていた。マリオンに婚約破棄の申し出をされたことが、拭いきれない心の傷となっていたためだ。

マリオンに抱かれて、ベットの上から身動きできない日も多々あったが、セリーヌは充実した性生活を送っていた。


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