僕の白い蝶【完結】

ちゃむにい

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マリオン・ドゥ・アルセイド侯爵令息は貴族学校に通う16歳の学生だ。両親と離れて侍従やメイドと共に半年ほど前から王都で暮らしていた。

「マリオン久しぶり。どう? 元気にしていたかい?」

マリオンは侯爵家にとって、可愛い末っ子だった。

しかし、たまにマリオンから送られてくる手紙には学校生活の不満ばかり書かれていた。
マリオンの母が心配して夜も眠れないと訴えたため、家族代表としてマリオンの様子を見に、次兄のルークスが抜擢され、遥々遠い領地から馬車でやって来たのだ。

マリオンは兄ルークスの姿が見えるや否や「兄様、お久しぶりです! お会い出来て嬉しいです!」と諸手を挙げて歓迎した。

兄の前では溌剌しており、以前のように明るく振舞っていたマリオンだが、兄と共に茶を飲み談笑するにつれて、日々の不満をぶちまけるようになっていった。

「兄様。僕は、学校なんて窮屈な場所、大嫌いだよ! こんなに学校が大変だなんて、思いもしなかった!」

ルークスは、激高するマリオンをなだめるように言った。

「それでも毎日休むこともなく通ってるから、マリオンは偉いよ」
「もっと褒めて! ほんと毎日毎日、足の引っ張り合いで、くだらないお喋りばっかりでさ。時間は有限だというのに、皆無駄にしてるよ。学校なんかに通うぐらいなら、本でも読んでるほうが、有益なぐらいさ」

マリオンの父親は侯爵であり、わりと裕福な生活をしていたが、王都から遠く離れた、自然豊かな領地で育ったため、都会暮らしは慣れず、また貴族学校でのどろどろとした派閥争いに辟易としていた。

怒りに頬を染めるマリオンに、ルークスは微笑みながら人生の先輩としての助言をした。

「何か他に趣味でも見つけてみたらどうだい? 恋愛とかさ」
「婚約者がいるのに恋愛なんてしてどうするのさ。兄様じゃあるまいし!?」
「なぁに、結婚するまでは義理立てする必要はないと思うよ」
「兄様は結婚してからでも、浮気してるじゃないか」
「おっと、耳に痛い言葉だね。でも浮気じゃないよ。男は趣味さ」

マリオンの痛烈な指摘にも、ルークスは笑顔を崩さなかった。

「男は妊娠する可能性もないし、後腐れないんだよ? どうだい、マリオンも」
「ぜったい嫌だ。僕はセリーヌに嫌われたくないよ。愛はなくても、彼女はかけがえのない友人なんだ。冷え切った結婚生活なんて、考えたくもない」
「愛はないと言いきっちゃう辺りが、私の弟だよね」

ルークスの言葉に、マリオンは押し黙った。

親が決めた婚約者でなければ、恋愛の対象にもならなかったに違いない。お互いにそう言っている。
そもそもセリーヌは男より女の子が好きなのだ。
どれだけ傍に居ても、恋愛感情が芽生えず、芽生えたのは友情だけだった。
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