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変化
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「Aも私と一緒に行くのなら、この服を記憶してください」
職員室の椅子にかかっていたスーツを指さして、Cは言った。
「うん?」
「Aは今まで人間の服を着たことがないでしょう?」
「そりゃぁな。入らないし」
「幻惑のスキルが進化して変化になったんですけど、思ったよりも、このスキル奥が深いんですよ。……変化した時に着る服は、過去着たことのある服が優先されます。再現がしやすいからかもしれないんですが……」
Aは顔を顰めた。
「つまり、今俺が変化をかけてもらったら、裸になるってこと?」
「いえ、多分腰ミノだけになるかと。変身するにもかなり魔力がいるので、出来たら1度で成功させたいです。だからちゃんと衣服の仕組みやボタンの位置、生地の肌触りなどを、覚えてくださいね。そうでないと腰ミノになっちゃうと思います。あ、父上、人間の男に下着と靴を持ってくるようにお願いできます?」
「あ~、めんどくせ~! 扱いにくいスキルだな! もう裸で良くね?」
「裸の男を連れて歩きたくないです」
ごもっともである。俺でもそれはノーセンキューだ。そもそも、そんなことをしたら、公然わいせつ罪で逮捕されるだろう。
そうなれば身分証とかもないから、その時点で言い逃れが出来ない。腰ミノ姿で上半身裸だと逮捕されないにしても職質コース避けられそうにもない。
Cなんかは見た目がもろに外国人だから、職質をされたらやばいことになる。まぁCならスキルで切り抜けそうだけれど、Aだと事を大きくしそうだ。
「A、Cの言う事に従えないのなら、お前は留守番にするぞ」
「わかったよ。やればいいんだろ、やれば……」
渋々Aはスーツを触り、Cの言う通りに裏返しにして細部を隈なく見たりして、なんとか無事に変化できたようだ。
「なぁ。ところでCは、なんで女なんだ?」
「私は女にしか変化出来ないんですよ。別人に変化すると魔力食いますし、長時間の使用には不向きです」
「ああ、それがもしかして人間だった時の姿?」
「そうです」
しばらく黙ってCを見ていたAが、俺に近寄ってきて、ボソリと呟いた。
「親父殿……目立たないと思うか?」
「目や髪を隠したとしても、Cのスタイルの良さまで隠しきれないだろう。ナンパされやすそうだ。がたいのいいAが隣にいれば、ある程度虫よけは出来るだろうが。というかA、お前もちょっとあれだぞ、何で黒目黒髪なのに赤髪混じってるんだ。ちょっとやばいやつに見える」
「あー? けっこうこれ気にいってたんだけど、やばい?」
「目立つな、間違いなく……」
召喚士スキルの持つ人間を捕獲するためには、出来るだけ目立たないほうが好ましいのに、前途多難である。いったいどんな遺伝をしたのか、人間だった頃の俺とは似ても似つかない。
Aは上背もあるし、凄みも有るから、勝手に人が避けていきそうだ。
職員室の椅子にかかっていたスーツを指さして、Cは言った。
「うん?」
「Aは今まで人間の服を着たことがないでしょう?」
「そりゃぁな。入らないし」
「幻惑のスキルが進化して変化になったんですけど、思ったよりも、このスキル奥が深いんですよ。……変化した時に着る服は、過去着たことのある服が優先されます。再現がしやすいからかもしれないんですが……」
Aは顔を顰めた。
「つまり、今俺が変化をかけてもらったら、裸になるってこと?」
「いえ、多分腰ミノだけになるかと。変身するにもかなり魔力がいるので、出来たら1度で成功させたいです。だからちゃんと衣服の仕組みやボタンの位置、生地の肌触りなどを、覚えてくださいね。そうでないと腰ミノになっちゃうと思います。あ、父上、人間の男に下着と靴を持ってくるようにお願いできます?」
「あ~、めんどくせ~! 扱いにくいスキルだな! もう裸で良くね?」
「裸の男を連れて歩きたくないです」
ごもっともである。俺でもそれはノーセンキューだ。そもそも、そんなことをしたら、公然わいせつ罪で逮捕されるだろう。
そうなれば身分証とかもないから、その時点で言い逃れが出来ない。腰ミノ姿で上半身裸だと逮捕されないにしても職質コース避けられそうにもない。
Cなんかは見た目がもろに外国人だから、職質をされたらやばいことになる。まぁCならスキルで切り抜けそうだけれど、Aだと事を大きくしそうだ。
「A、Cの言う事に従えないのなら、お前は留守番にするぞ」
「わかったよ。やればいいんだろ、やれば……」
渋々Aはスーツを触り、Cの言う通りに裏返しにして細部を隈なく見たりして、なんとか無事に変化できたようだ。
「なぁ。ところでCは、なんで女なんだ?」
「私は女にしか変化出来ないんですよ。別人に変化すると魔力食いますし、長時間の使用には不向きです」
「ああ、それがもしかして人間だった時の姿?」
「そうです」
しばらく黙ってCを見ていたAが、俺に近寄ってきて、ボソリと呟いた。
「親父殿……目立たないと思うか?」
「目や髪を隠したとしても、Cのスタイルの良さまで隠しきれないだろう。ナンパされやすそうだ。がたいのいいAが隣にいれば、ある程度虫よけは出来るだろうが。というかA、お前もちょっとあれだぞ、何で黒目黒髪なのに赤髪混じってるんだ。ちょっとやばいやつに見える」
「あー? けっこうこれ気にいってたんだけど、やばい?」
「目立つな、間違いなく……」
召喚士スキルの持つ人間を捕獲するためには、出来るだけ目立たないほうが好ましいのに、前途多難である。いったいどんな遺伝をしたのか、人間だった頃の俺とは似ても似つかない。
Aは上背もあるし、凄みも有るから、勝手に人が避けていきそうだ。
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