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野望
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「美味い」
本能のままに行った性交の後は、腹が減る。
バリバリと人間の肉を頭から食べる。
これはべつに殺したとかいうわけではない。
村の近くで行き倒れていた旅人の肉だ。
特に良心は痛まなかった。
「人間、か…」
ゴブリンになる前、俺は人間だった。
母は売春婦で、不特定多数の男を相手に生計を立てていたが、客であった外国人の男に恋をした。
その男は妻帯者だった。
「愛してる。妻とは別れるから結婚して欲しい」
母に甘く囁いた、その言葉はすべて嘘だった。
母がその男の子を妊娠したと分かると、帰国して逃げたらしい。
俺は父親に似て、目が青く金髪だった。
それだけでひどいイジメを受けてきた。
髪の毛は染める事が出来るし、カラーコンタクトを付ければ目の色を隠せるかもしれない。でもそんなお金はなかった。
娼婦の息子と、誹謗中傷がひどかった。
教科書は全部水浸し。
外国人は出ていけと机には書かれる。
先生も「お前が悪いんじゃないか?」と傍観してるだけ。
母は出会い系アプリで出会った男と結婚した。若い男で、母の稼いできたお金をすべて飲んで使ってしまう。
お金が足りなければ母の財布からお金を盗んでいく極潰しだった。
それでも母は幸せそうだった。
しかし、結婚から数か月経ってから、酔っ払った男が部屋に入ってきて無理やり俺を犯した。
「あの女と結婚したのは、お前が目当てだったんだ」と言われ、その日からずっと男の玩具となった。しばらくしてから母が俺と男との情事に気が付いたが、男を糾弾するのではなく、俺を殴った。
男は「こいつが誘ってきたんだ。下の毛も金色だったぜ」とゲラゲラ笑った。
母は嫉妬に狂った瞳で俺の髪をつかみ「あんたを食わせてるのは誰だと思っているの!? やっぱりあんたは父親と同じだよ!!」と叫び「おいおい、これ以上やったら警察が来るぜ」と男がとめるまで殴る蹴るの暴行をした。
母は俺に「お前なんていなければ良かったのに」と舌打ちした。
ずっと、疎ましく思われていることは分かっていた。
「近づくな」「邪魔だ」と何度言われたことだろう。
学校にも、家庭にも居場所がない。
誰も助けてくれなかった。
人間は憎んでいたし、この洞窟には人間以上に美味なものはない。
コウモリみたいなのもいたが、肉は小さいし食べ応えはない。
村の畑から盗んだ大根らしき野菜と調味料、そして鍋で、煮物らしきものを作ってみたのだが ゴブリンは雑食というよりは肉食のようでそれは味気ないものだった。
生でかじるほうが、まだマシだったが、それもまたあまり美味しいものではなかった。
冒険者が持っていた、ワイバーンの肉もかじってみたが、人間の肉と比べると雲泥の差だった。
これは味覚がゴブリンとなったのかもしれない。人間の肉でなければ、腹が満たされなかった。
人間の丸焼きを振舞ったら、やけに息子たちに喜ばれた。
腐った肉でも腹を壊さずに、美味しく食べることが出来た。
食えるものは食う。使えるものは使う。それが今の信条だった。
エルフ、人間、獣人、精霊、ドワーフ。
今までに捕らえた女で出産に至った種族だ。
その中でいちばん効率が良いのは人間の女だ。
妊娠しやすさで行ったらダントツだろう。
だが人間の女は弱く、出産を繰り返せば消耗して死にやすい。
その弱点を補っても、人間の女は良かった。
食べて良し、孕ませて良し、稀に良いスキルを持つ女もいる。
豚女だってそうだ。
ああ見えて、頑強EXなんてスキルを持っている。
あれだけ妊娠出産を繰り返していても安産だし、そもそも風邪をひいたことすらない。
だが、人間をへたに襲えば、王都から討伐隊が組まれるかもしれない。
ルシーが言うには、豚女を攫ったのがギリギリのラインだという。
人間の恐ろしさは身に染みて知っている。
侮っていれば、痛い目に逢うだろう。
行き倒れの人間の荷物から地図を見つけた。
王都から遠い場所にあり、他国との国境の境にある辺境の地だから、今まで奇跡的に討伐隊が組まれずに来なかっただけだ。
レベルも上がり、30になった。
以前よりも体格も良くなり、レジェンドゴブリンに進化した。
しかし、決して楽観視することはなかった。
強い人間がきたら蹴散らされるだろう。そんな予感があった。
ゴブリンは、最弱の魔物だ。武装した人間は天敵だった。
だが力を蓄え、何時かは、この世をゴブリンのものにする
それだけのポテンシャルが、自分には―― ゴブリンにはある。
人間をゴブリンの下に這いつくばらせる。
恐怖と絶望を味合わせる。
それが俺の野望だった。
本能のままに行った性交の後は、腹が減る。
バリバリと人間の肉を頭から食べる。
これはべつに殺したとかいうわけではない。
村の近くで行き倒れていた旅人の肉だ。
特に良心は痛まなかった。
「人間、か…」
ゴブリンになる前、俺は人間だった。
母は売春婦で、不特定多数の男を相手に生計を立てていたが、客であった外国人の男に恋をした。
その男は妻帯者だった。
「愛してる。妻とは別れるから結婚して欲しい」
母に甘く囁いた、その言葉はすべて嘘だった。
母がその男の子を妊娠したと分かると、帰国して逃げたらしい。
俺は父親に似て、目が青く金髪だった。
それだけでひどいイジメを受けてきた。
髪の毛は染める事が出来るし、カラーコンタクトを付ければ目の色を隠せるかもしれない。でもそんなお金はなかった。
娼婦の息子と、誹謗中傷がひどかった。
教科書は全部水浸し。
外国人は出ていけと机には書かれる。
先生も「お前が悪いんじゃないか?」と傍観してるだけ。
母は出会い系アプリで出会った男と結婚した。若い男で、母の稼いできたお金をすべて飲んで使ってしまう。
お金が足りなければ母の財布からお金を盗んでいく極潰しだった。
それでも母は幸せそうだった。
しかし、結婚から数か月経ってから、酔っ払った男が部屋に入ってきて無理やり俺を犯した。
「あの女と結婚したのは、お前が目当てだったんだ」と言われ、その日からずっと男の玩具となった。しばらくしてから母が俺と男との情事に気が付いたが、男を糾弾するのではなく、俺を殴った。
男は「こいつが誘ってきたんだ。下の毛も金色だったぜ」とゲラゲラ笑った。
母は嫉妬に狂った瞳で俺の髪をつかみ「あんたを食わせてるのは誰だと思っているの!? やっぱりあんたは父親と同じだよ!!」と叫び「おいおい、これ以上やったら警察が来るぜ」と男がとめるまで殴る蹴るの暴行をした。
母は俺に「お前なんていなければ良かったのに」と舌打ちした。
ずっと、疎ましく思われていることは分かっていた。
「近づくな」「邪魔だ」と何度言われたことだろう。
学校にも、家庭にも居場所がない。
誰も助けてくれなかった。
人間は憎んでいたし、この洞窟には人間以上に美味なものはない。
コウモリみたいなのもいたが、肉は小さいし食べ応えはない。
村の畑から盗んだ大根らしき野菜と調味料、そして鍋で、煮物らしきものを作ってみたのだが ゴブリンは雑食というよりは肉食のようでそれは味気ないものだった。
生でかじるほうが、まだマシだったが、それもまたあまり美味しいものではなかった。
冒険者が持っていた、ワイバーンの肉もかじってみたが、人間の肉と比べると雲泥の差だった。
これは味覚がゴブリンとなったのかもしれない。人間の肉でなければ、腹が満たされなかった。
人間の丸焼きを振舞ったら、やけに息子たちに喜ばれた。
腐った肉でも腹を壊さずに、美味しく食べることが出来た。
食えるものは食う。使えるものは使う。それが今の信条だった。
エルフ、人間、獣人、精霊、ドワーフ。
今までに捕らえた女で出産に至った種族だ。
その中でいちばん効率が良いのは人間の女だ。
妊娠しやすさで行ったらダントツだろう。
だが人間の女は弱く、出産を繰り返せば消耗して死にやすい。
その弱点を補っても、人間の女は良かった。
食べて良し、孕ませて良し、稀に良いスキルを持つ女もいる。
豚女だってそうだ。
ああ見えて、頑強EXなんてスキルを持っている。
あれだけ妊娠出産を繰り返していても安産だし、そもそも風邪をひいたことすらない。
だが、人間をへたに襲えば、王都から討伐隊が組まれるかもしれない。
ルシーが言うには、豚女を攫ったのがギリギリのラインだという。
人間の恐ろしさは身に染みて知っている。
侮っていれば、痛い目に逢うだろう。
行き倒れの人間の荷物から地図を見つけた。
王都から遠い場所にあり、他国との国境の境にある辺境の地だから、今まで奇跡的に討伐隊が組まれずに来なかっただけだ。
レベルも上がり、30になった。
以前よりも体格も良くなり、レジェンドゴブリンに進化した。
しかし、決して楽観視することはなかった。
強い人間がきたら蹴散らされるだろう。そんな予感があった。
ゴブリンは、最弱の魔物だ。武装した人間は天敵だった。
だが力を蓄え、何時かは、この世をゴブリンのものにする
それだけのポテンシャルが、自分には―― ゴブリンにはある。
人間をゴブリンの下に這いつくばらせる。
恐怖と絶望を味合わせる。
それが俺の野望だった。
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