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牢屋の住人
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日が傾き、夕暮れになってきた。
ここが縄張りとなる以上、隅々まで歩き回って民の生活を見てみたかったが、あらかじめCに作らせておいたリストはまだ半ばだ。
王都の広さを実感する。
俺はゴブリンだから、睡眠もそれほど必要とせず、体力も無尽蔵にある。月が沈み、真っ暗闇であっても歩き回ることが出来るが、平時そこに住んでいる人間の様子を観察することは出来ない。それに、案内をさせている人間の負担を考えると、残りは明日にして、そろそろお開きにしたほうがいいだろう。
だが、あと1つ、どうしても気になる場所があった。
「次は牢屋に行くぞ」
「聞くところによると、囚人が800人ほど収容されているらしいですよ」
「800人? 多すぎないか?」
「定員より多くの人間を入れているから過密になっていますし、人手も食料も足りないらしいです」
囚人がどんな食べ物を食べているのかなどを聞きながら、その場所に辿り着いて、囚人たちを見て回った。エルフにドワーフといった、人間以外の種族もいた。最も多いのが獣人だ。差別があり、人間に虐げられているとは聞いていたから驚きはしなかったが、まだ初潮も迎えていないような子供も収容されているのは問題だった。
「子供だけが収監される牢屋もあるのですが、私たちは獣人なので……」とのことだった。どうやら、牢屋の中まで差別されているらしい。獣人の子供は耳と尻尾があり、可愛らしい生き物だ。納得がいかなくて「生きてきた時間は同じなのに、人間と獣人で、何の違いがあるのだろうな」とCに零した。
「人間の子供と同じ場所に居させても問題が起きそうだな。獣人の子供だけを収監する牢屋をつくるか」
見た感じ、純朴な子供である。
いったい何の罪なのかと聞いてみると、飢えに耐えかねてトウモロコシを1本盗んだのだと言う。トウモロコシ1本ごときで牢屋に収監されるのかと思ったが、獣人は首を左右に振った。「ここにいれば、1日1食ですが食べさせてくれますし、雨や風もしのげます。それに冬の間は、外で寝泊まりするより安全です」獣人の子供としては、ここは素晴らしい場所なのだと言う。
だが、俺の目から見ると、獣人の子供が言うように素晴らしい場所には程遠い場所だった。その劣悪な環境に、俺は懸念を覚えるしかなかった。
「ここは肥溜めなのか? 我々ゴブリンのほうがよっぽど良い暮らしをしているぞ。ひどい腐敗臭がする」
「人間にとっては衛生的ではありませんね。あとで洗い清めます」
「そうしてくれ。変な病気が流行ったらかなわん。それに、ガリガリじゃないか。ちゃんと食べさせているのか? こんな骨と皮ばかりでは、食うところがないだろう」
「仰る通りで。死刑囚は太らせますね」
俺とCの言葉に震え上がる囚人たち。だが、起きあがる気力もないのか、倒れ伏したままの者も多い。
「死刑囚なぁ……無実の人間がいるのではないか? あの無能どもに陥れられた人間なんて山ほど居そうだ……、再調査しろ。無実の者は開放し、犯罪の重さ次第で、処罰を増やしていくがいい。死刑に値するものは肉にすればいい……って、良太!?」
牢屋の隅で横たわっている、髪を腰まで生やした男の顔を見て、俺は動揺を隠せなかった。
ここが縄張りとなる以上、隅々まで歩き回って民の生活を見てみたかったが、あらかじめCに作らせておいたリストはまだ半ばだ。
王都の広さを実感する。
俺はゴブリンだから、睡眠もそれほど必要とせず、体力も無尽蔵にある。月が沈み、真っ暗闇であっても歩き回ることが出来るが、平時そこに住んでいる人間の様子を観察することは出来ない。それに、案内をさせている人間の負担を考えると、残りは明日にして、そろそろお開きにしたほうがいいだろう。
だが、あと1つ、どうしても気になる場所があった。
「次は牢屋に行くぞ」
「聞くところによると、囚人が800人ほど収容されているらしいですよ」
「800人? 多すぎないか?」
「定員より多くの人間を入れているから過密になっていますし、人手も食料も足りないらしいです」
囚人がどんな食べ物を食べているのかなどを聞きながら、その場所に辿り着いて、囚人たちを見て回った。エルフにドワーフといった、人間以外の種族もいた。最も多いのが獣人だ。差別があり、人間に虐げられているとは聞いていたから驚きはしなかったが、まだ初潮も迎えていないような子供も収容されているのは問題だった。
「子供だけが収監される牢屋もあるのですが、私たちは獣人なので……」とのことだった。どうやら、牢屋の中まで差別されているらしい。獣人の子供は耳と尻尾があり、可愛らしい生き物だ。納得がいかなくて「生きてきた時間は同じなのに、人間と獣人で、何の違いがあるのだろうな」とCに零した。
「人間の子供と同じ場所に居させても問題が起きそうだな。獣人の子供だけを収監する牢屋をつくるか」
見た感じ、純朴な子供である。
いったい何の罪なのかと聞いてみると、飢えに耐えかねてトウモロコシを1本盗んだのだと言う。トウモロコシ1本ごときで牢屋に収監されるのかと思ったが、獣人は首を左右に振った。「ここにいれば、1日1食ですが食べさせてくれますし、雨や風もしのげます。それに冬の間は、外で寝泊まりするより安全です」獣人の子供としては、ここは素晴らしい場所なのだと言う。
だが、俺の目から見ると、獣人の子供が言うように素晴らしい場所には程遠い場所だった。その劣悪な環境に、俺は懸念を覚えるしかなかった。
「ここは肥溜めなのか? 我々ゴブリンのほうがよっぽど良い暮らしをしているぞ。ひどい腐敗臭がする」
「人間にとっては衛生的ではありませんね。あとで洗い清めます」
「そうしてくれ。変な病気が流行ったらかなわん。それに、ガリガリじゃないか。ちゃんと食べさせているのか? こんな骨と皮ばかりでは、食うところがないだろう」
「仰る通りで。死刑囚は太らせますね」
俺とCの言葉に震え上がる囚人たち。だが、起きあがる気力もないのか、倒れ伏したままの者も多い。
「死刑囚なぁ……無実の人間がいるのではないか? あの無能どもに陥れられた人間なんて山ほど居そうだ……、再調査しろ。無実の者は開放し、犯罪の重さ次第で、処罰を増やしていくがいい。死刑に値するものは肉にすればいい……って、良太!?」
牢屋の隅で横たわっている、髪を腰まで生やした男の顔を見て、俺は動揺を隠せなかった。
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