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価値

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「……だめねぇ。薬漬けになっていたから、経験が積めなかったのかしら? ……女を悦ばすには、ただ腰を振ればいいってものじゃないわ。それなら動物でも出来ることよ。それでいて浄化の効果がないとなれば、勇者としての貴方は価値がないわ」

ジゼルの体は神官長が匙を投げるほどに瘴気に満ちている。オークに抱かれることにより、さらに瘴気は膨らみ続けていた。

瘴気は聖女であったジゼルの体を根本から作り変えようとしていた。それは、人間から魔物への転換である。人間が魔物になると、体は腐り、大抵は人間としての原型を留めない、生きる屍となる。だからこそ、この世界の人間はそうなることを恐れて、聖女や勇者を召喚するのだ。

「信じられませんな。これほどに瘴気が満ちているのに、生きているだなんて。普通の人間であれば死に至る量ですぞ」

ジゼルは瘴気をため込み過ぎているため、魔物ではなく魔族になるのではないかと、聖都の様子を見に来た魔族から指摘されていた。

近頃は瘴気に意識を奪われることが増えてきた。魔族の体になるための変換期に良くあることだと聞いたが、何時か愛する者達に危害を加えてしまうのではないかと、ジゼルは危惧していた。

勇者のレベルが低すぎて、焼け石に水なのかもしれない。だが、勇者の成長を待つほど、ジゼルは気が長くなかった。

ジゼルに残された時間は、それほど多くないと察していたからだ。

その結果、勇者を生餌にしようとしたジゼルだったが「この勇者を殺してしまえば、新たな勇者が召喚されてしまうのかしら……?」と、悩んだ。
それはジゼルの望むところではなかった。

この世界の犠牲者は、出来ればジゼルで最後にしたかったからだ。

勇者は、迷うジゼルを見て、おずおずと、こんな提案をしてきた。

「ジゼル様。ジゼル様はオークの国を作るのだと聞きました」
「そうよ? 元々聖都はオークが住んでいた土地で、オークを追い出して作られた国なのよ」
「そのお手伝いをさせて貰えないですか? その代わり、ご褒美として、ジゼル様を抱かせて下さい」
「……そうねぇ……。あら? 貴方……それ……」

ジゼルは勇者の下腹部に注目した。

そこにはジゼルの淫紋と、同じ紋様が刻まれていた。ジゼルは過去に何度か、同じ体験をしたことがあった。
性行為をした男の下腹部に、ジゼルと同じ淫紋が表れることがあったのだ。なぜなのか検証したことがあったが、それはジゼルと性行為を行ない、ジゼルに命を捧げるほど心酔した者にのみに現われる現象だった。

その淫紋があれば、ジゼルと同様、老いもせず、永久の時を生きることが出来るはずだ。

(そう……。まだ1度しか、体を重ねてないのに、もう私に好意を抱いてしまったの? ちょっと早すぎるような気がするけど)

淫紋が表れた今までの男と比べても、ダントツで早い。何しろ、まだ勇者と出逢って数時間ほどしか経過していないのだから。
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