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『闇夜に鳴く鳥(2)』
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勇者は私の正体を知るや否や、猛然と牙を剥いた。
「んッ、んぅ……!」
まさに私は、狼に捕らわれた子羊だった。
顎を掴まれ、勇者は唇を重ねてくる。食い千切るかのように、舌が絡みついてきた。
息継ぎする暇もないほど濃厚な口付けだった。ようやく唇が離れても、私を締め殺す気かと思うほど強く抱きしめる腕は、そのままだった。
「相変わらず感じやすいんだな」
「……ッ、」
勇者の言葉に、あの地獄のような日々を思いだして、私の碧色の目は涙で溢れた。
私の意思に反して、男に抱かれ続けた、あの日々は忘れようにも忘れることが出来ない。
よほど私の体を気に入っていたのか、独占欲を剥き出しにして、私を周囲から孤立させた。誰もが、私と男の関係を知っているはずなのに、友達も先生も、誰も助けてくれなかった。それどころか、巻き込まれないように遠くから見ているだけだった。
私は勇者から目を逸らした。
「なんだよ……」
それが気に入らなかったのか、勇者は機嫌を損ねたようだった。勇者は、私の手をとり、私が嫌がるということを知っていながら、口付けを落とした。
そして抵抗も虚しく、頭を押さえつけられた。うつ伏せの状態にされると、尻を高く持ち上げられ、破れた服の中に手を入れてきた。
涙声で拒絶しても、勇者は笑うだけだった。
「往生際が悪いな。お前は、俺のモノなんだよ」
勇者は中に指を入れて掻き回し、ひくひくと収縮を繰り返す花弁に固くなった雄を擦り付けた。異世界に来てから女になったのもあるのかもしれないが、魔王としての体は、さほど抵抗もなく勇者のものを受け入れ、すぐに抱かれることに順応した。
腰を抱えられ、荒々しく挿入されても、痛みは感じなかった。
それどころか、巨根で奥を突かれる度に愛液は溢れ出し、どうにもならない快楽が体を支配した。
そして、また屈辱の日々が戻ってきた。
「あッ、だめッ、ぁ、あぁッ!」
勇者は離れていた時間を埋めるように、何度も私の体を貪った。心は拒絶しているのに、喘ぎ声は止まらなかった。嫌だと言いつつも、私は恍惚とした表情を浮かべて、獣のように勇者と交わった。
勇者なんて見たくもないほど嫌いなはずなのに、直にその熱を肌に感じて身体は疼き、心臓は高鳴った。気持ちとは裏腹に、勇者のもたらす快楽を待ち侘びしている瞬間があることを、私は否定できなかった。
感じているというのが屈辱だった。心の底から情けなくて、ポロポロと涙が零れ落ちた。
勇者は、まるで避妊という言葉を知らないかのように、私の中に欲望を吐き出した。胎内に出された大量の精液を子宮の奥に流し込むように、勇者は腰を動かす。
どうゆうつもりかはわからないが勇者は、あからさまに私を孕ませようとしていたので恐怖を感じつつも、私は勇者に逆らえなかった。
歴代最強と言われた私も勇者の前では、ただの女でしかなかった。私は勇者に抱かれる度に、甘い吐息を漏らした。
人間が、憎い。
勇者さえ召喚しなければ、私は平穏な生活を続けられたのに。
「召還……」
それは、悪夢から目覚めたかのようだった。私は、一筋の光を見出して、声が震えた。
そうだ、なんで考えなかったんだろう。私で力不足なら、勇者と対抗できるほどの力を持つ存在を、役立たずの私の命と引き換えに、魔王として呼べばいいのだ。
藁にも縋る思いで私は先代に教えてもらった魔法陣を描いた。
私は己の魔力を餌にしようと、血を垂らした。
「……ん?」
なんだろう、この感覚。
まるで海老でタイが釣れたみたいな違和感があった。
そして、事態は悪化した。 私は死ぬことはなかった。
私が召還したのは、異世界で勇者の親友だった、ダニエルだった。
「え? クリス?」
私は最後の希望を失って、へなへなと座り込んでしまった。味方がくることを願ったのに、なんでこんなことになる。
大失敗だ
私はうなだれながら、彼に状況を説明した。
「そうか。心配していたんだけど、そんなことになってるとは……」
包み隠さず現状を伝えると、ダニエルは何かを考えるような表情をした。
「……ねぇ、ヴォルフとは付き合ってるわけじゃないんだよね?」
何を恐ろしいことを仰るのだ。
私は全力で首を左右に振って否定した。
「そっかー……」
笑顔のままだが、怖い雰囲気を醸し出すダニエルに、私は後退りした。
「あ、ごめんごめん、君に怒ってるわけじゃないんだよ」
空気がピリピリとするような雰囲気が消えた。僕からも謝るよ、ごめんねと優しく頭を撫でられ、ようやく私は安堵した。
「ご主人様、助けてぇぇ!」
「カスペル……!?」
その時柱の方から聞こえた部下の悲鳴に緊張感が走る。
そこには勇者がいた。
「まだ居たのか、小悪魔が」
今、まさに滅せられそうになっているカスペルの姿に、私は駆け寄ろうとした。
「待って、クリス」
「だって、カスペルが」
勇者に現在進行形で握りしめられているカスペルを見て、居ても立ってもいられなくなる。
このままでは握り潰されてしまうだろう。お調子者だけど、明るいやつで、その存在に何回救われてきただろうか。
「そのために、僕を召還したんだろう? ……久しぶりだね、ヴォルフ」
「……ダニエル?」
ヴォルフは攻撃を中断して、ダニエルを見た。
「なぁ。ちゃんと気持ちを伝えろよ……後悔してたんじゃなかったのかよ」
「お前には……、関係のないことだ」
「……ふ~ん、僕にまで、そんなこと言うんだ……」
ダニエルに、名前を呼ばれたので顔を上げると、手を引かれた。優しく抱き寄せられ、困惑していると、顔面いっぱいに彼の顔が近づいた。
「……へ?」
柔らかいものが唇に触れたと思ったら、舌が入ってきた。逃れようとするも、頭を抑えられていて、びくともしなかった。
「じゃあ、僕がもらっちゃおうかなぁ……」
「貴様……!」
背後から、強烈なまでの殺意を感じて、息が止まりそうになる。
「何をするんだよ。可哀想に、怯えちゃってるじゃん」
「俺は……くそッ……言うから渡せ!」
「最初っから、素直になればいいのにね」
「う、うるさい……!」
勇者に手渡されて、気分はまさにドナドナだった。
「……ッ」
意志の強い、金色の瞳が私の目を貫く。骨まで食い尽くされそうな乱暴なキスに、肩が震えた。
「……好きだ」
だからこそ、その後に聞こえた勇者の声に、私は空耳かと疑った。
「……え?」
「……二度も、言わせるな……ッ! 好きなんだよ、お前が!」
思いがけない告白に、私は呆然とする。というか、なんで怒られないといけないんだ。ダニエルを見ると、嬉しそうに頷くその姿に、私は背筋が凍りつくような気がした。勇者の手の中には、可哀想に、グッタリと泡を吐いているカスペルの姿があった。
これ、申し出を承諾する以外に選択肢がないじゃないか。私は心の中で悪態をつきながら、無言で頷いた。
こうして私は、勇者の嫁という生け贄となった。
「キスしたい、クリス」
「んぅ……もうちょっと寝かせて……」
勇者の体力は無尽蔵だ。
私に覆い被さると、触れるぐらいの口付けをしてきたが、すぐに息が出来なくなるほどの深いものに変わる。
舌と舌を絡めて、唾液が糸になって落ちた。
「……クリス、」
勇者の、情熱的な視線が注ぐ。
まぁ……だいたいキスだけで終わることはないのだ。勇者の体が絡みついてきて、結局、朝っぱらから鳴く羽目になった。
キスしながら精液を注ぎ込まれて、体はビクビクと跳ね上がった。ふと勇者を見てみると、嬉しそうな顔が見えた。
人とは、こんなに変わるものなのだろうか。ダニエルの言う通り、勇者の求めを出来るだけ拒絶しないようにしたら、大型の肉食獣は人目を憚らないで、私に甘えるようになった。
その変貌ぶりは、気持ち悪いほどだった。
「子供が出来たら、見せにきて下さいね~」
魔王に就任したダニエルは、ニコニコと笑いながら、私にそう告げた。
私は思った。
私は、とんでもない魔王を召喚してしまったのではないか、と。
「んッ、んぅ……!」
まさに私は、狼に捕らわれた子羊だった。
顎を掴まれ、勇者は唇を重ねてくる。食い千切るかのように、舌が絡みついてきた。
息継ぎする暇もないほど濃厚な口付けだった。ようやく唇が離れても、私を締め殺す気かと思うほど強く抱きしめる腕は、そのままだった。
「相変わらず感じやすいんだな」
「……ッ、」
勇者の言葉に、あの地獄のような日々を思いだして、私の碧色の目は涙で溢れた。
私の意思に反して、男に抱かれ続けた、あの日々は忘れようにも忘れることが出来ない。
よほど私の体を気に入っていたのか、独占欲を剥き出しにして、私を周囲から孤立させた。誰もが、私と男の関係を知っているはずなのに、友達も先生も、誰も助けてくれなかった。それどころか、巻き込まれないように遠くから見ているだけだった。
私は勇者から目を逸らした。
「なんだよ……」
それが気に入らなかったのか、勇者は機嫌を損ねたようだった。勇者は、私の手をとり、私が嫌がるということを知っていながら、口付けを落とした。
そして抵抗も虚しく、頭を押さえつけられた。うつ伏せの状態にされると、尻を高く持ち上げられ、破れた服の中に手を入れてきた。
涙声で拒絶しても、勇者は笑うだけだった。
「往生際が悪いな。お前は、俺のモノなんだよ」
勇者は中に指を入れて掻き回し、ひくひくと収縮を繰り返す花弁に固くなった雄を擦り付けた。異世界に来てから女になったのもあるのかもしれないが、魔王としての体は、さほど抵抗もなく勇者のものを受け入れ、すぐに抱かれることに順応した。
腰を抱えられ、荒々しく挿入されても、痛みは感じなかった。
それどころか、巨根で奥を突かれる度に愛液は溢れ出し、どうにもならない快楽が体を支配した。
そして、また屈辱の日々が戻ってきた。
「あッ、だめッ、ぁ、あぁッ!」
勇者は離れていた時間を埋めるように、何度も私の体を貪った。心は拒絶しているのに、喘ぎ声は止まらなかった。嫌だと言いつつも、私は恍惚とした表情を浮かべて、獣のように勇者と交わった。
勇者なんて見たくもないほど嫌いなはずなのに、直にその熱を肌に感じて身体は疼き、心臓は高鳴った。気持ちとは裏腹に、勇者のもたらす快楽を待ち侘びしている瞬間があることを、私は否定できなかった。
感じているというのが屈辱だった。心の底から情けなくて、ポロポロと涙が零れ落ちた。
勇者は、まるで避妊という言葉を知らないかのように、私の中に欲望を吐き出した。胎内に出された大量の精液を子宮の奥に流し込むように、勇者は腰を動かす。
どうゆうつもりかはわからないが勇者は、あからさまに私を孕ませようとしていたので恐怖を感じつつも、私は勇者に逆らえなかった。
歴代最強と言われた私も勇者の前では、ただの女でしかなかった。私は勇者に抱かれる度に、甘い吐息を漏らした。
人間が、憎い。
勇者さえ召喚しなければ、私は平穏な生活を続けられたのに。
「召還……」
それは、悪夢から目覚めたかのようだった。私は、一筋の光を見出して、声が震えた。
そうだ、なんで考えなかったんだろう。私で力不足なら、勇者と対抗できるほどの力を持つ存在を、役立たずの私の命と引き換えに、魔王として呼べばいいのだ。
藁にも縋る思いで私は先代に教えてもらった魔法陣を描いた。
私は己の魔力を餌にしようと、血を垂らした。
「……ん?」
なんだろう、この感覚。
まるで海老でタイが釣れたみたいな違和感があった。
そして、事態は悪化した。 私は死ぬことはなかった。
私が召還したのは、異世界で勇者の親友だった、ダニエルだった。
「え? クリス?」
私は最後の希望を失って、へなへなと座り込んでしまった。味方がくることを願ったのに、なんでこんなことになる。
大失敗だ
私はうなだれながら、彼に状況を説明した。
「そうか。心配していたんだけど、そんなことになってるとは……」
包み隠さず現状を伝えると、ダニエルは何かを考えるような表情をした。
「……ねぇ、ヴォルフとは付き合ってるわけじゃないんだよね?」
何を恐ろしいことを仰るのだ。
私は全力で首を左右に振って否定した。
「そっかー……」
笑顔のままだが、怖い雰囲気を醸し出すダニエルに、私は後退りした。
「あ、ごめんごめん、君に怒ってるわけじゃないんだよ」
空気がピリピリとするような雰囲気が消えた。僕からも謝るよ、ごめんねと優しく頭を撫でられ、ようやく私は安堵した。
「ご主人様、助けてぇぇ!」
「カスペル……!?」
その時柱の方から聞こえた部下の悲鳴に緊張感が走る。
そこには勇者がいた。
「まだ居たのか、小悪魔が」
今、まさに滅せられそうになっているカスペルの姿に、私は駆け寄ろうとした。
「待って、クリス」
「だって、カスペルが」
勇者に現在進行形で握りしめられているカスペルを見て、居ても立ってもいられなくなる。
このままでは握り潰されてしまうだろう。お調子者だけど、明るいやつで、その存在に何回救われてきただろうか。
「そのために、僕を召還したんだろう? ……久しぶりだね、ヴォルフ」
「……ダニエル?」
ヴォルフは攻撃を中断して、ダニエルを見た。
「なぁ。ちゃんと気持ちを伝えろよ……後悔してたんじゃなかったのかよ」
「お前には……、関係のないことだ」
「……ふ~ん、僕にまで、そんなこと言うんだ……」
ダニエルに、名前を呼ばれたので顔を上げると、手を引かれた。優しく抱き寄せられ、困惑していると、顔面いっぱいに彼の顔が近づいた。
「……へ?」
柔らかいものが唇に触れたと思ったら、舌が入ってきた。逃れようとするも、頭を抑えられていて、びくともしなかった。
「じゃあ、僕がもらっちゃおうかなぁ……」
「貴様……!」
背後から、強烈なまでの殺意を感じて、息が止まりそうになる。
「何をするんだよ。可哀想に、怯えちゃってるじゃん」
「俺は……くそッ……言うから渡せ!」
「最初っから、素直になればいいのにね」
「う、うるさい……!」
勇者に手渡されて、気分はまさにドナドナだった。
「……ッ」
意志の強い、金色の瞳が私の目を貫く。骨まで食い尽くされそうな乱暴なキスに、肩が震えた。
「……好きだ」
だからこそ、その後に聞こえた勇者の声に、私は空耳かと疑った。
「……え?」
「……二度も、言わせるな……ッ! 好きなんだよ、お前が!」
思いがけない告白に、私は呆然とする。というか、なんで怒られないといけないんだ。ダニエルを見ると、嬉しそうに頷くその姿に、私は背筋が凍りつくような気がした。勇者の手の中には、可哀想に、グッタリと泡を吐いているカスペルの姿があった。
これ、申し出を承諾する以外に選択肢がないじゃないか。私は心の中で悪態をつきながら、無言で頷いた。
こうして私は、勇者の嫁という生け贄となった。
「キスしたい、クリス」
「んぅ……もうちょっと寝かせて……」
勇者の体力は無尽蔵だ。
私に覆い被さると、触れるぐらいの口付けをしてきたが、すぐに息が出来なくなるほどの深いものに変わる。
舌と舌を絡めて、唾液が糸になって落ちた。
「……クリス、」
勇者の、情熱的な視線が注ぐ。
まぁ……だいたいキスだけで終わることはないのだ。勇者の体が絡みついてきて、結局、朝っぱらから鳴く羽目になった。
キスしながら精液を注ぎ込まれて、体はビクビクと跳ね上がった。ふと勇者を見てみると、嬉しそうな顔が見えた。
人とは、こんなに変わるものなのだろうか。ダニエルの言う通り、勇者の求めを出来るだけ拒絶しないようにしたら、大型の肉食獣は人目を憚らないで、私に甘えるようになった。
その変貌ぶりは、気持ち悪いほどだった。
「子供が出来たら、見せにきて下さいね~」
魔王に就任したダニエルは、ニコニコと笑いながら、私にそう告げた。
私は思った。
私は、とんでもない魔王を召喚してしまったのではないか、と。
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