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『鳥籠迷宮(4)』
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戸締り良し。
お財布、持った。
地図も、ある。
蝙蝠の干し肉と迷宮の美味しい水は用意した。
きっと、これで忘れ物はないはず。
「たまには、迷宮の外に行くのも良いわよね!」
冒険者が落としていった携帯食料も入れたので、小さな黒いバッグは異常に膨らんでいるが、仕方がない。私は念入りに身支度を整えると、自分に言い聞かせるように呟いて、人間が住む外界へと赴くことにした。
「……めんどくさ……」
しかし、家を出て数分で戻りたくなった。
なにせ私は、正真正銘の引き籠りである。ここ数年、家から出歩いたことは殆ど無かった。そんな私が、しかも人間のために外に出るなんて奇跡に近いのではないだろうか。
「私も甘ちゃんよねぇ……」
内心、馬鹿なことをしているなと思う。
たまたまサーシャの悪行を見ていたとはいえ、女とは何の縁もゆかりも無い。れっきとした赤の他人である。
だが、このままサーシャの悪行を見てみぬ振りをしては、胸のつっかえが取れなかった。
人間であることは捨てたが、良心を捨てた記憶はない。
「あら、もうこんな季節なの……?」
迷宮を抜けて地上に出ると、冷たい風が頬を撫でる。季節外れの雪が降っていることに驚いた。あまり見たことのない地上の雪景色に、私は目を丸くする。どうりで冒険者がぜんぜん来ないわけだ。
思わぬ悪天候に、くしゃみをした。
厚手のローブは羽織ってきたが、これでは冷え性の私には足りない。もっと暖かい服装で行くべきだったと、私は舌打ちした。
「そんな薄着だと、風邪をひくよ、リュシー」
体の弱い私を心配してか、迷宮の入り口まで出迎えてくれた友人が、自分の巻いていた毛皮のマフラーと手袋を貸してくれた。
「ありがとう。久しぶりだね、ヘレン」
私はマフラーを受け取ると、手を差し出して、握手をした。ヘレンは、私が信頼している数少ない人間の1人だ。
何せ高齢なので心配していたが、顔色も良いし、元気そうだ。
「5年ぶりかな……? あまり他の人に聞かれたくない話もあるし、何時もの店じゃなくて、私の家に来ない?」
「ご馳走してくれるなら、いいわよ?」
上目遣いでウインクすると、ブハッと噴出された。
「ちょっとやめなさいよ、ご馳走はするからさ」
お言葉に甘えて、そのままヘレンの家に行った。足が疲れたので、椅子に座ろうとしたら、黒竜の子供が寝そべっていて、肝が冷えた。
まだ子供でも竜は竜。尻尾をビタンとされたら、床に穴が開くだろう。それに、火でも吐かれたら、お出かけ用の服が焦げてしまう。
「なんで、こんなとこに黒竜の子供がいるのよ?」
「その話をしたいのさ」
ヘレンは事の成り行きについて、かいつまんで話してくれた。それはとんでもない話で、私は思わず、お茶を吹き出しそうになってしまった。
「それって、本当なの?」
「こんなことで嘘ついてどうするんだい。黒竜は、人間のせいで絶滅したんだよ。この世の中に、黒竜は、この子1匹だけさ」
黒竜は自尊心が高く、攻撃性が強い。
人類は有史以来、いったい何度、黒龍によって壊滅的な被害を被っただろうか。そのため黒竜の討伐は、国にとっても、長年の懸念事項だったはずだ。
しかし、私からすると、黒竜が住んでいた森林地帯に、人間が開拓民として押し寄せたのであり、理不尽な話だと思っていた。
「たしかに竜が居なくなって、平和になったよ。でも、私は後悔しているんだ。まさか竜の子を捕らえて……盾にするなんてね」
黒竜の殲滅作戦に参加していたサーシャは、功績が認められ、王子と結婚して幸せに暮らしているのだという。
「私は、それ以来、戦えなくなってしまった。後の人生は、この子のために使うよ」
この子しか、救うことが出来なかった、と呟くヘレンに、私はあることに気がついた。
「もしかして、その右腕は……」
「助ける時に、ドジ踏んで無くなってしまったのさ。なぁに、この子の命と比べれば、なんてことない」
キュイ、と老婆の膝の上に乗った黒竜の子供が鳴いた。
黒竜は子煩悩で有名だ。子を失い、嘆き悲しむ竜の姿が脳裏によぎった。
「お腹がすいたかい? ちょっと待っていてな」
頭を撫でると、子竜は目を細めて喜んだ。
「勇者は? たしかサーシャは勇者に好意を寄せていたと聞いたけど……」
「誰から聞いたんだい、そんなこと。たしか噂では、誰とも結婚するつもりはないらしいって、聞いたけどね……」
私は無言でカップの中のお茶に目を落とした。サーシャは、あの女に嫉妬していた。ということは、それなりに勇者と近しい存在だったということになる。美醜には疎い自分ですら、見惚れるほど美しい女だった。それこそ、勇者が恋心を抱いていたとしても、おかしくない。……女が死んだと告げられても、受け止められないほどに。
そしてサーシャは振り向いてくれない勇者に見切りをつけて、別の男と結婚した、ということなんだろう。
つまり、あの女は死に損ということになる。
「もう遅いし、泊まっていかないか?」
「それは助かるわ……ねぇ!?」
不意に、私は鋭い殺気を感じ取った。
「こ、コラッ! 何をするの!」
さっきから不機嫌そうにしていたのだが、黒竜の子供が私に対して嫉妬心をあらわにして、可愛くない嫌がらせを受けた。
炎のブレスである。
「ちょ、私の髪がぁッ」
迷宮で鍛えた反射神経で、水魔法を発動させるも、その火球は、腰まで伸びた黒髪を数センチ消失させた。
「やっぱり泊まらないほうが良さそうね」
「あぁ、本当にごめんよ……! 何時もはいい子なんだけどね……」
ヘレンに平謝りされたが、黒竜の子供はどこ吹く風で、むしろ私を撃退したことに自慢気な顔をしている。
黒竜の子育ては大変そうだ。
私はヘレンに別れを告げ、宿に泊まることにした。どこの宿もいっぱいで、ちょっとお高めの部屋しか借りれなかったが、この際、致し方ない。
こんな雪の降る夜に野宿なんて自殺行為だ。
「それにしても、納得いかないわ……」
軽く夕食を済ませると、私はベットに寝っ転がり、思考を巡らせた。この時、私はヘレンの話を聞いて、気持ちが暗く淀んでいた。
(王子様と結婚……、そして幸せに暮らしてる、かぁ……)
サーシャは、己の欲望を叶えるために、罪もない女の尊厳を踏みにじり、殺害した。勇者は、いまだに行方不明となった女、ヴェロニカを探しているらしい。それこそ寝食を忘れるほどに。
きっとヴェロニカが殺されなければ、似合いの夫婦になっただろう。人生を狂わせておいて、罪も償わずに、サーシャだけが幸せになるだなんて、許せなかった。
「そうね……、人間が出来ないというのなら、私がやればいいのよ」
死者を現世に呼び戻すのは禁忌だが、私に不可能はない。
そう考えると、これも運命だったのかもしれない。
私は、ヘレンから貰った、竜の宝玉を懐から取り出して、中に秘められた淡い輝きを見詰めた。
それから数週間後、
「あの女に、復讐……、したい?」
私は、すべての準備を終えて、女の亡骸に問いかけた。
「……あれぇ……? おかしいわね……」
しかし、女の亡骸は、ぼんやりと光るだけだった。
儀式に必要なものを、1つずつ数えていく。
やっぱり、ある。
私が間違えるわけがないのだ。
とすると、女は聞こえているはずだ。
けれど、いくら待っても反応がなかった。
「まさか……」
数日前に私は、ヴェロニカの生まれ育った故郷にも足を延ばして、生前の彼女がどんな人だったのかを聞いて回った。
誰にでも愛される、まるで聖女のように、心優しい女だったと、聞いた。
悪い、予感がした。
「嘘でしょ……。まさか、貴方……、あんなことをされたのに……復讐したくないとでも言うの?」
私の問いかけに応じるように、彼女の身を纏う光が強くなった。その光景に、私は唖然とした。
とても、信じられなかった。
せっかく、サーシャに復讐する手はずを整えたというのに、肝心の本人が蘇ることを嫌がるだなんて。
気が動転して、私は無我夢中で声を張り上げた。
「そんなの嫌よ! 私は、私は……」
涙が込み上げてくる。そんな馬鹿な話があるのだろうか。
最初は、同情心だけだった。自分の幸せのために、他人を蹴落とすサーシャが憎たらしかったから。
だけど、違う。
そんなことで自分が動くわけがない。わざわざ手を汚さずとも、サーシャには、いずれ天罰が下る。
ただ、この女を……、ヴェロニカの無念を晴らしたいと思ったから、私は、此処にいる。
「貴方は、まだこれからなのよ!」
ああ、そうだ。
私は、何時もそうなのだ。
「…………お願い、ヴェロニカ」
母も。
師匠も。
幼馴染も。
良い人だなと思った人ほど、先に死ぬ。
なんて自分は傲慢なのだろう。
ずっと、あの迷宮にひとりでいた。人間は嫌い、寂しくはないと強がっていたけれど、やっと、自分の本音が見えてきたような気がした。
「だぁれ……? ……泣かないで……?」
もうだめかと思っていた。
けれど、閉じていた瞳が、うっすらと開いたのを確認して、私は歓喜の声を上げた。
「ありがとう……、戻ってきてくれて……」
復讐なんて、もうやめだ。
きっと、彼女を幸せにしてみせる。戸惑うヴェロニカの体を抱きしめて、私は天に感謝した。
お財布、持った。
地図も、ある。
蝙蝠の干し肉と迷宮の美味しい水は用意した。
きっと、これで忘れ物はないはず。
「たまには、迷宮の外に行くのも良いわよね!」
冒険者が落としていった携帯食料も入れたので、小さな黒いバッグは異常に膨らんでいるが、仕方がない。私は念入りに身支度を整えると、自分に言い聞かせるように呟いて、人間が住む外界へと赴くことにした。
「……めんどくさ……」
しかし、家を出て数分で戻りたくなった。
なにせ私は、正真正銘の引き籠りである。ここ数年、家から出歩いたことは殆ど無かった。そんな私が、しかも人間のために外に出るなんて奇跡に近いのではないだろうか。
「私も甘ちゃんよねぇ……」
内心、馬鹿なことをしているなと思う。
たまたまサーシャの悪行を見ていたとはいえ、女とは何の縁もゆかりも無い。れっきとした赤の他人である。
だが、このままサーシャの悪行を見てみぬ振りをしては、胸のつっかえが取れなかった。
人間であることは捨てたが、良心を捨てた記憶はない。
「あら、もうこんな季節なの……?」
迷宮を抜けて地上に出ると、冷たい風が頬を撫でる。季節外れの雪が降っていることに驚いた。あまり見たことのない地上の雪景色に、私は目を丸くする。どうりで冒険者がぜんぜん来ないわけだ。
思わぬ悪天候に、くしゃみをした。
厚手のローブは羽織ってきたが、これでは冷え性の私には足りない。もっと暖かい服装で行くべきだったと、私は舌打ちした。
「そんな薄着だと、風邪をひくよ、リュシー」
体の弱い私を心配してか、迷宮の入り口まで出迎えてくれた友人が、自分の巻いていた毛皮のマフラーと手袋を貸してくれた。
「ありがとう。久しぶりだね、ヘレン」
私はマフラーを受け取ると、手を差し出して、握手をした。ヘレンは、私が信頼している数少ない人間の1人だ。
何せ高齢なので心配していたが、顔色も良いし、元気そうだ。
「5年ぶりかな……? あまり他の人に聞かれたくない話もあるし、何時もの店じゃなくて、私の家に来ない?」
「ご馳走してくれるなら、いいわよ?」
上目遣いでウインクすると、ブハッと噴出された。
「ちょっとやめなさいよ、ご馳走はするからさ」
お言葉に甘えて、そのままヘレンの家に行った。足が疲れたので、椅子に座ろうとしたら、黒竜の子供が寝そべっていて、肝が冷えた。
まだ子供でも竜は竜。尻尾をビタンとされたら、床に穴が開くだろう。それに、火でも吐かれたら、お出かけ用の服が焦げてしまう。
「なんで、こんなとこに黒竜の子供がいるのよ?」
「その話をしたいのさ」
ヘレンは事の成り行きについて、かいつまんで話してくれた。それはとんでもない話で、私は思わず、お茶を吹き出しそうになってしまった。
「それって、本当なの?」
「こんなことで嘘ついてどうするんだい。黒竜は、人間のせいで絶滅したんだよ。この世の中に、黒竜は、この子1匹だけさ」
黒竜は自尊心が高く、攻撃性が強い。
人類は有史以来、いったい何度、黒龍によって壊滅的な被害を被っただろうか。そのため黒竜の討伐は、国にとっても、長年の懸念事項だったはずだ。
しかし、私からすると、黒竜が住んでいた森林地帯に、人間が開拓民として押し寄せたのであり、理不尽な話だと思っていた。
「たしかに竜が居なくなって、平和になったよ。でも、私は後悔しているんだ。まさか竜の子を捕らえて……盾にするなんてね」
黒竜の殲滅作戦に参加していたサーシャは、功績が認められ、王子と結婚して幸せに暮らしているのだという。
「私は、それ以来、戦えなくなってしまった。後の人生は、この子のために使うよ」
この子しか、救うことが出来なかった、と呟くヘレンに、私はあることに気がついた。
「もしかして、その右腕は……」
「助ける時に、ドジ踏んで無くなってしまったのさ。なぁに、この子の命と比べれば、なんてことない」
キュイ、と老婆の膝の上に乗った黒竜の子供が鳴いた。
黒竜は子煩悩で有名だ。子を失い、嘆き悲しむ竜の姿が脳裏によぎった。
「お腹がすいたかい? ちょっと待っていてな」
頭を撫でると、子竜は目を細めて喜んだ。
「勇者は? たしかサーシャは勇者に好意を寄せていたと聞いたけど……」
「誰から聞いたんだい、そんなこと。たしか噂では、誰とも結婚するつもりはないらしいって、聞いたけどね……」
私は無言でカップの中のお茶に目を落とした。サーシャは、あの女に嫉妬していた。ということは、それなりに勇者と近しい存在だったということになる。美醜には疎い自分ですら、見惚れるほど美しい女だった。それこそ、勇者が恋心を抱いていたとしても、おかしくない。……女が死んだと告げられても、受け止められないほどに。
そしてサーシャは振り向いてくれない勇者に見切りをつけて、別の男と結婚した、ということなんだろう。
つまり、あの女は死に損ということになる。
「もう遅いし、泊まっていかないか?」
「それは助かるわ……ねぇ!?」
不意に、私は鋭い殺気を感じ取った。
「こ、コラッ! 何をするの!」
さっきから不機嫌そうにしていたのだが、黒竜の子供が私に対して嫉妬心をあらわにして、可愛くない嫌がらせを受けた。
炎のブレスである。
「ちょ、私の髪がぁッ」
迷宮で鍛えた反射神経で、水魔法を発動させるも、その火球は、腰まで伸びた黒髪を数センチ消失させた。
「やっぱり泊まらないほうが良さそうね」
「あぁ、本当にごめんよ……! 何時もはいい子なんだけどね……」
ヘレンに平謝りされたが、黒竜の子供はどこ吹く風で、むしろ私を撃退したことに自慢気な顔をしている。
黒竜の子育ては大変そうだ。
私はヘレンに別れを告げ、宿に泊まることにした。どこの宿もいっぱいで、ちょっとお高めの部屋しか借りれなかったが、この際、致し方ない。
こんな雪の降る夜に野宿なんて自殺行為だ。
「それにしても、納得いかないわ……」
軽く夕食を済ませると、私はベットに寝っ転がり、思考を巡らせた。この時、私はヘレンの話を聞いて、気持ちが暗く淀んでいた。
(王子様と結婚……、そして幸せに暮らしてる、かぁ……)
サーシャは、己の欲望を叶えるために、罪もない女の尊厳を踏みにじり、殺害した。勇者は、いまだに行方不明となった女、ヴェロニカを探しているらしい。それこそ寝食を忘れるほどに。
きっとヴェロニカが殺されなければ、似合いの夫婦になっただろう。人生を狂わせておいて、罪も償わずに、サーシャだけが幸せになるだなんて、許せなかった。
「そうね……、人間が出来ないというのなら、私がやればいいのよ」
死者を現世に呼び戻すのは禁忌だが、私に不可能はない。
そう考えると、これも運命だったのかもしれない。
私は、ヘレンから貰った、竜の宝玉を懐から取り出して、中に秘められた淡い輝きを見詰めた。
それから数週間後、
「あの女に、復讐……、したい?」
私は、すべての準備を終えて、女の亡骸に問いかけた。
「……あれぇ……? おかしいわね……」
しかし、女の亡骸は、ぼんやりと光るだけだった。
儀式に必要なものを、1つずつ数えていく。
やっぱり、ある。
私が間違えるわけがないのだ。
とすると、女は聞こえているはずだ。
けれど、いくら待っても反応がなかった。
「まさか……」
数日前に私は、ヴェロニカの生まれ育った故郷にも足を延ばして、生前の彼女がどんな人だったのかを聞いて回った。
誰にでも愛される、まるで聖女のように、心優しい女だったと、聞いた。
悪い、予感がした。
「嘘でしょ……。まさか、貴方……、あんなことをされたのに……復讐したくないとでも言うの?」
私の問いかけに応じるように、彼女の身を纏う光が強くなった。その光景に、私は唖然とした。
とても、信じられなかった。
せっかく、サーシャに復讐する手はずを整えたというのに、肝心の本人が蘇ることを嫌がるだなんて。
気が動転して、私は無我夢中で声を張り上げた。
「そんなの嫌よ! 私は、私は……」
涙が込み上げてくる。そんな馬鹿な話があるのだろうか。
最初は、同情心だけだった。自分の幸せのために、他人を蹴落とすサーシャが憎たらしかったから。
だけど、違う。
そんなことで自分が動くわけがない。わざわざ手を汚さずとも、サーシャには、いずれ天罰が下る。
ただ、この女を……、ヴェロニカの無念を晴らしたいと思ったから、私は、此処にいる。
「貴方は、まだこれからなのよ!」
ああ、そうだ。
私は、何時もそうなのだ。
「…………お願い、ヴェロニカ」
母も。
師匠も。
幼馴染も。
良い人だなと思った人ほど、先に死ぬ。
なんて自分は傲慢なのだろう。
ずっと、あの迷宮にひとりでいた。人間は嫌い、寂しくはないと強がっていたけれど、やっと、自分の本音が見えてきたような気がした。
「だぁれ……? ……泣かないで……?」
もうだめかと思っていた。
けれど、閉じていた瞳が、うっすらと開いたのを確認して、私は歓喜の声を上げた。
「ありがとう……、戻ってきてくれて……」
復讐なんて、もうやめだ。
きっと、彼女を幸せにしてみせる。戸惑うヴェロニカの体を抱きしめて、私は天に感謝した。
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