ゴブリン転生：番外編【完結】

手掛かり

「……こんな場所まで来たのか、Cシーは？」

そこは、暗闇の洞窟の最深部とも呼べる場所だった。かつて暗闇の洞窟で縄張りとして生活していた場所から、かなり奥地に踏み入った場所だった。思っていた以上にCシーが深入りしていたことを知り、焦燥感が募る。かつて暗闇の洞窟の縄張りでない奥地に踏み入ることはタブーだった。それを知らないCシーではないはずだった。

（こうゆうところが危ういんだよな、あいつ……）

確かにCシーは強い。しかし、その強さゆえか、時に思いがけない行動に移る場合があった。そのため、伴侶になる前から、危険予知をCシーにかけていたのだ。

たまに襲い掛かってくる魔物を倒しながら、シュバルツの話を聞き、暗闇の洞窟の最深部を目指した。そして、目的地にたどり着いて目にしたのは、仰向けに倒れているCシーと、その護衛として付けた息子達だった。

「そんな……こんな、ひどい……」

護衛の息子たちは全員絶命していた。美里みさとは、Cシーに駆け寄った。Cシーの体は冷たく、息子達と同じように、ピクリとも動かなかった。

「死んじゃ嫌です！　私はこれから、Cシー様無しに、どうやって生きたらいいんですか……！　……Cシー様が寂しくないように、私も死にます！！」

今にも腹を切りそうな勢いだったので、俺は悲嘆にくれる美里みさとを羽交い絞めにした。

「離してください、Aエイ様！　こんなことになったのは私のせいです！　Cシー様に死んでお詫びしなければ！」
「待て、美里みさと。後追い自殺なんかするな。――まだCシーは死んでいない」
「Aエイの言う通りだ。死ぬのは早計だぞ。そっちで倒れているゴブリンは手遅れだが、Cシーはまだ可能性がある。肉体は仮死状態だが死んでいない。魂が引き抜かれているだけだ。それと、Aエイも怒りを抑えろ。洞窟が崩れてしまうだろう？」
「分かっている。……美里みさと、Cシーの体を任せていいか？　Cシーの魂、取り戻してくる」
「Aエイ様、Cシー様の魂が何処に行ったのか分かるんですか？」
「ああ。見えている」

（だが、時間の問題だ……）

Cシーの体は刻々と体温を失っているように見えた。
Cシーの魂は輝きが強く、何時もなら触れると温もりを感じるほどだ。だが、その輝きは魂が肉体から引き離されたためか、鈍くなっている。糸のように細い、肉体と魂の繋がりが唯一最大の手掛かりだ。おそらく、Cシーが死ねば、その手掛かりも永久に失われるだろう。

（俺には出来ねぇが、親父殿のスキルなら戻せるかもしれない）

魂と肉体の繋がりが見えている内に、Cシーの魂を探し出し、肉体に入れ直す必要があった。