72 / 112
変化
しおりを挟む
「A……気配消して、私の背後から抱きつくのやめてもらえません? 不届き者と間違えて首を刎ね落とされても知りませんよ?」
「お前なら、近づいた時にもう気が付いてんだろ? やっとあいつも居なくなったんだし……、いいだろ?」
あいつとは、獣人のルナのことだ。ルナが居るとシアは抱かせてくれない。シアはルナの護衛は自分がやると親父殿に誓ったので、生真面目にその約束を守ろうとして、ルナが居る間は俺の事を後回しにするのだ。
シアは鬱陶しそうに俺の手を払いのけようとした。
「たまには禁欲されたらどうです? 別に毎日しなくとも、死ぬわけじゃないでしょう。貴方の好きなゲームでもしてればいいじゃないですか」
「いやだ。毎日したい……」
ゲームは好きだけど、シアを抱くのはもっと好きだ。既に3日もシアを抱いていないのだ。これ以上は我慢できない。
「そんなに獣人が好きなら、シアの頭と尻に耳と尻尾を付けて変化すればいいだろ。もしくは獣人に変化するとか……」
「自分が変化しても、触りにくいじゃないですか……抱きしめることも出来ません。でも、その案は良いですね。種族は固定されるので、この体に耳と尻尾は付けられませんけど、獣人に変化したら自然と付いてくるでしょうし」
早速シアが獣人に変化した姿を見ると耳と尻尾が白かった。
「ふーん。毛の色は個人差があるのかな。見た感じ猫というよりは狼っぽいな。……なぁ、エルフとかにもなれんのか?」
「出来ますよ。私が好んで人間に変化するのは、以前人間だったため、造形への理解度が高く、他の種族と比べると魔力の消費量が少ないためです」
「見たいなあ。魔力貸してやるから、見せてくんね? ……ん? なんだ?」
シアが変な顔をしているので、聞いてみると、思いもしないことを言ってきた。
「……貴方の事ですから、老女にでも変化しろと言うかと思ったのですよ」
「あー、それはだめだ。見たいけど、癖で食いたくなりそうだからな」
「もしかして、性衝動の時、私を食べなかったのって、若かったからなんですか……?」
「そういやそうかもな」
「心に留めておきます。貴方に食べられたくないので」
エルフに変化してもらったが、耳がちょっと尖ったぐらいで見た目はあまり変化がないように思えた。
「あんまり見た目は変わらない気がするな」
「基礎になっているのは、人間の私ですしね。別の顔にも多分なれますけど……」
「別の顔って何だ?」
「たまに夢の中に出てくるのですよ。水に映った自分の顔が、人間の私とは異なる顔なんですよね。おそらく人間だと思うんですが、種族は分かりません。夢の中とはいえ、自分である事には変わりないでしょうし、魔力の消費が抑えられそうなんですけどねぇ」
「変化して鑑定すれば何か分かるんじゃないか?」
「私もちょっと気になっていたんですよね。何しろ、悪夢に近い夢なので……Aのほうが鑑定レベル高いですよね。私の魔力もなくなりそうですし、鑑定お願いします」
シアは目を閉じた。おそらくは変化をするために、イメージを膨らませているのだろう。
俺は腕を組んで、シアが変化するのを待っていた。
「……、これは……?」
シアの纏う気配が一変した。
ゴブリンでもなければ人でもない――
神聖で、近寄りがたい気配を感じた。シアが遠くに行ってしまうような、そんな感覚に襲われ、ゾクリと背筋が凍り付いた。
(――……まずい!)
変化してから、目の色が変わったように思えた。触れるのを躊躇うほどに、神々しい色合いの瞳に、身震いがする。先ほど獣人とエルフに変化しても、その目の色は変わらなかったからこそ、それは異質であるように感じた。
(なんだ、これは。胸騒ぎがする……!)
猛烈に、嫌な予感がした。そしてこの手の予感は良く当たることを、俺は知っていた。
鑑定する時間すら惜しい。
俺は変化スキルを使い、強制的にシアをゴブリンに戻した。その途端、変な空気は離散した。
(成功……か……?)
不満気な表情の、Cがそこにいて、俺は強い安堵感に襲われた。この時ほど、変化スキルを覚えていて良かったと思ったことはなかった。
「せっかく魔力を使って変化したのに……、なぜゴブリンにするのですか? どうせなら獣人に変化させて欲しかったです。……鑑定は出来ました?」
「しょうがないだろ。俺がすぐに変化出きるのは、ゴブリンだけなんだから。獣人は、また今度な。……鑑定は出来なかった。説明はしにくいが……状況が変わった」
まるでCという存在そのものが変異したような、そんな強い違和感があった。
「さっきの変化は、二度としないでくれ」
「気にはなりますが……貴方がそう言うのなら、あまり良くないのでしょうね。元々、悪夢で見た代物ですし……」
そしてCは俺をじっと見つめると「しばらく変化できませんね。たまにはゴブリンの私を抱きます?」と嬉しい誘いをしてきたのだった。
「お前なら、近づいた時にもう気が付いてんだろ? やっとあいつも居なくなったんだし……、いいだろ?」
あいつとは、獣人のルナのことだ。ルナが居るとシアは抱かせてくれない。シアはルナの護衛は自分がやると親父殿に誓ったので、生真面目にその約束を守ろうとして、ルナが居る間は俺の事を後回しにするのだ。
シアは鬱陶しそうに俺の手を払いのけようとした。
「たまには禁欲されたらどうです? 別に毎日しなくとも、死ぬわけじゃないでしょう。貴方の好きなゲームでもしてればいいじゃないですか」
「いやだ。毎日したい……」
ゲームは好きだけど、シアを抱くのはもっと好きだ。既に3日もシアを抱いていないのだ。これ以上は我慢できない。
「そんなに獣人が好きなら、シアの頭と尻に耳と尻尾を付けて変化すればいいだろ。もしくは獣人に変化するとか……」
「自分が変化しても、触りにくいじゃないですか……抱きしめることも出来ません。でも、その案は良いですね。種族は固定されるので、この体に耳と尻尾は付けられませんけど、獣人に変化したら自然と付いてくるでしょうし」
早速シアが獣人に変化した姿を見ると耳と尻尾が白かった。
「ふーん。毛の色は個人差があるのかな。見た感じ猫というよりは狼っぽいな。……なぁ、エルフとかにもなれんのか?」
「出来ますよ。私が好んで人間に変化するのは、以前人間だったため、造形への理解度が高く、他の種族と比べると魔力の消費量が少ないためです」
「見たいなあ。魔力貸してやるから、見せてくんね? ……ん? なんだ?」
シアが変な顔をしているので、聞いてみると、思いもしないことを言ってきた。
「……貴方の事ですから、老女にでも変化しろと言うかと思ったのですよ」
「あー、それはだめだ。見たいけど、癖で食いたくなりそうだからな」
「もしかして、性衝動の時、私を食べなかったのって、若かったからなんですか……?」
「そういやそうかもな」
「心に留めておきます。貴方に食べられたくないので」
エルフに変化してもらったが、耳がちょっと尖ったぐらいで見た目はあまり変化がないように思えた。
「あんまり見た目は変わらない気がするな」
「基礎になっているのは、人間の私ですしね。別の顔にも多分なれますけど……」
「別の顔って何だ?」
「たまに夢の中に出てくるのですよ。水に映った自分の顔が、人間の私とは異なる顔なんですよね。おそらく人間だと思うんですが、種族は分かりません。夢の中とはいえ、自分である事には変わりないでしょうし、魔力の消費が抑えられそうなんですけどねぇ」
「変化して鑑定すれば何か分かるんじゃないか?」
「私もちょっと気になっていたんですよね。何しろ、悪夢に近い夢なので……Aのほうが鑑定レベル高いですよね。私の魔力もなくなりそうですし、鑑定お願いします」
シアは目を閉じた。おそらくは変化をするために、イメージを膨らませているのだろう。
俺は腕を組んで、シアが変化するのを待っていた。
「……、これは……?」
シアの纏う気配が一変した。
ゴブリンでもなければ人でもない――
神聖で、近寄りがたい気配を感じた。シアが遠くに行ってしまうような、そんな感覚に襲われ、ゾクリと背筋が凍り付いた。
(――……まずい!)
変化してから、目の色が変わったように思えた。触れるのを躊躇うほどに、神々しい色合いの瞳に、身震いがする。先ほど獣人とエルフに変化しても、その目の色は変わらなかったからこそ、それは異質であるように感じた。
(なんだ、これは。胸騒ぎがする……!)
猛烈に、嫌な予感がした。そしてこの手の予感は良く当たることを、俺は知っていた。
鑑定する時間すら惜しい。
俺は変化スキルを使い、強制的にシアをゴブリンに戻した。その途端、変な空気は離散した。
(成功……か……?)
不満気な表情の、Cがそこにいて、俺は強い安堵感に襲われた。この時ほど、変化スキルを覚えていて良かったと思ったことはなかった。
「せっかく魔力を使って変化したのに……、なぜゴブリンにするのですか? どうせなら獣人に変化させて欲しかったです。……鑑定は出来ました?」
「しょうがないだろ。俺がすぐに変化出きるのは、ゴブリンだけなんだから。獣人は、また今度な。……鑑定は出来なかった。説明はしにくいが……状況が変わった」
まるでCという存在そのものが変異したような、そんな強い違和感があった。
「さっきの変化は、二度としないでくれ」
「気にはなりますが……貴方がそう言うのなら、あまり良くないのでしょうね。元々、悪夢で見た代物ですし……」
そしてCは俺をじっと見つめると「しばらく変化できませんね。たまにはゴブリンの私を抱きます?」と嬉しい誘いをしてきたのだった。
0
お気に入りに追加
19
あなたにおすすめの小説
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
下品な男に下品に調教される清楚だった図書委員の話
神谷 愛
恋愛
クラスで目立つこともない彼女。半ば押し付けれられる形でなった図書委員の仕事のなかで出会った体育教師に堕とされる話。
つまらない学校、つまらない日常の中の唯一のスパイスである体育教師に身も心も墜ちていくハートフルストーリー。ある時は図書室で、ある時は職員室で、様々な場所で繰り広げられる終わりのない蜜月の軌跡。
歪んだ愛と実らぬ恋の衝突
ノクターンノベルズにもある
☆とブックマークをしてくれると喜ぶ。
感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。
してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。
【R18】幼馴染な陛下は、わたくしのおっぱいお好きですか?💕
月極まろん
恋愛
幼なじみの陛下に告白したら、両思いだと分かったので、甘々な毎日になりました。
でも陛下、本当にわたくしに御不満はございませんか?
【R18】隣のデスクの歳下後輩君にオカズに使われているらしいので、望み通りにシてあげました。
雪村 里帆
恋愛
お陰様でHOT女性向け33位、人気ランキング146位達成※隣のデスクに座る陰キャの歳下後輩君から、ある日私の卑猥なアイコラ画像を誤送信されてしまい!?彼にオカズに使われていると知り満更でもない私は彼を部屋に招き入れてお望み通りの行為をする事に…。強気な先輩ちゃん×弱気な後輩くん。でもエッチな下着を身に付けて恥ずかしくなった私は、彼に攻められてすっかり形成逆転されてしまう。
——全話ほぼ濡れ場で小難しいストーリーの設定などが無いのでストレス無く集中できます(はしがき・あとがきは含まない)
※完結直後のものです。
前世変態学生が転生し美麗令嬢に~4人の王族兄弟に淫乱メス化させられる
KUMA
恋愛
変態学生の立花律は交通事故にあい気付くと幼女になっていた。
城からは逃げ出せず次々と自分の事が好きだと言う王太子と王子達の4人兄弟に襲われ続け次第に男だった律は女の子の快感にはまる。
【R18】××××で魔力供給をする世界に聖女として転移して、イケメン魔法使いに甘やかされ抱かれる話
もなか
恋愛
目を覚ますと、金髪碧眼のイケメン──アースに抱かれていた。
詳しく話を聞くに、どうやら、私は魔法がある異世界に聖女として転移をしてきたようだ。
え? この世界、魔法を使うためには、魔力供給をしなきゃいけないんですか?
え? 魔力供給って、××××しなきゃいけないんですか?
え? 私、アースさん専用の聖女なんですか?
魔力供給(性行為)をしなきゃいけない聖女が、イケメン魔法使いに甘やかされ、快楽の日々に溺れる物語──。
※n番煎じの魔力供給もの。18禁シーンばかりの変態度高めな物語です。
※ムーンライトノベルズにも載せております。ムーンライトノベルズさんの方は、題名が少し変わっております。
※ヒーローが変態です。ヒロインはちょろいです。
R18作品です。18歳未満の方(高校生も含む)の閲覧は、御遠慮ください。
大嫌いな次期騎士団長に嫁いだら、激しすぎる初夜が待っていました
扇 レンナ
恋愛
旧題:宿敵だと思っていた男に溺愛されて、毎日のように求められているんですが!?
*こちらは【明石 唯加】名義のアカウントで掲載していたものです。書籍化にあたり、こちらに転載しております。また、こちらのアカウントに転載することに関しては担当編集さまから許可をいただいておりますので、問題ありません。
――
ウィテカー王国の西の辺境を守る二つの伯爵家、コナハン家とフォレスター家は長年に渡りいがみ合ってきた。
そんな現状に焦りを抱いた王家は、二つの伯爵家に和解を求め、王命での結婚を命じる。
その結果、フォレスター伯爵家の長女メアリーはコナハン伯爵家に嫁入りすることが決まった。
結婚相手はコナハン家の長男シリル。クールに見える外見と辺境騎士団の次期団長という肩書きから女性人気がとても高い男性。
が、メアリーはそんなシリルが実は大嫌い。
彼はクールなのではなく、大層傲慢なだけ。それを知っているからだ。
しかし、王命には逆らえない。そのため、メアリーは渋々シリルの元に嫁ぐことに。
どうせ愛し愛されるような素敵な関係にはなれるわけがない。
そう考えるメアリーを他所に、シリルは初夜からメアリーを強く求めてくる。
――もしかして、これは嫌がらせ?
メアリーはシリルの態度をそう受け取り、頑なに彼を拒絶しようとするが――……。
「誰がお前に嫌がらせなんかするかよ」
どうやら、彼には全く別の思惑があるらしく……?
*WEB版表紙イラストはみどりのバクさまに有償にて描いていただいたものです。転載等は禁止です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる