上 下
38 / 112

罠※C視点

しおりを挟む

幻聴だろうか。遠くでAエイの声が聞こえたような気がして、ルシーの部屋の扉を見る。するとバタン、と蹴破る勢いでAエイが現れて、息を呑んだ。

「おい、ルシー。こっちにCシーが来てるって聞いたんだけど? ……おい、何をやってんだ!? 俺のCシーに触れるな!」
「無粋ねぇ。せっかく、いいところだったのに……」

ルシーは露骨に嫌そうな顔をして、舌打ちをした。

「ふざけんな、こいつは俺の伴侶だ。俺以外に触れられてたまるか。帰るぞ、Cシー

私は強く手を握られ、Aエイが歩く速度が速いため、引きずられるようにして自室に戻った。Aエイの体や腰ミノはボロボロで、あちこちに怪我しているようだ。

「限界だ。抱かせろ」

ベットに放り込まれた。私が限界だったように、Aエイも限界だったようで、瞳は赤く変色していた。返答を待たずに口付けられ、半ば強引に抱かれた。魔力が底を付いていると言われ、マジックドレインされたため、私の魔力は、ほとんどAエイに吸い尽くされてしまった。

「――で、この2週間何があったのですか?」

話の核心に触れることが出来たのは、翌日だった。

「やばい罠踏んだ」

どうやら冒険者として遺跡に立ち寄ったら、即死級の罠を踏んでしまったらしい。Aエイにとって、大抵の罠は効果がないが、その罠は暗闇の洞窟にあった空間遮断系の結界で囲まれた隠し部屋だった。それだけだったら特に問題はないが、その隠し部屋は出口がなく、1度入ってしまったら閉じ込められてしまうらしい。

その結果、念話すら出来なくなり、連絡手段が無くなってしまったのが事の顛末だそうだ。

「……よくそんなものから抜けてきましたね」

「あー、これで空気がなかったら、死んでただろうなあ……」

隠し部屋の製作者は性格が悪いようで、物見席らしいものも見えたそうだ。おそらくは、飢餓に苦しむ冒険者を見て楽しむような場所だったのだろう。

「いやー、いっぱい骨が転がってたし、魂が浮かんでいたから、それ食って、気合で頑張った」

……味方である内は良いが、敵に回ったらと考えると、恐ろしい男だ。

過去の被害者たちの魂を食べては、新たなスキルを入手し、骨をかじりながらAエイが持っている全部のスキルを試したらしい。

「踏破済みのダンジョンに、まさかあんなものがあると思わないだろ。俺が留守の間に、Cシーを他のやつに盗られるとたまんねぇから、俺も必死だった」

ほとんどこの2週間寝ずに脱出を試みていたらしい。
安心したように欠伸するAエイに、私は「私はAエイの伴侶ですよ? 他の男に抱かれるわけないじゃないですか……」と言うと、「男はそーかもしんねぇけど、ルシーを抱こうとしてたろ? ギリギリだったなぁ」と言って痛いぐらいに私を抱きしめた。

「……女を抱くのも、ダメなんですか? たまには私も女を抱きたいのですが……」
「あったり前だろーが。今度したら、ぶち殺すからな」

躁を立てるわけではないけど、Aエイの伴侶である以上、ある程度は、その気持ちに寄り添う姿勢を見せないといけないのかもしれない。余計な争いごとは望ましくない。何より、ルシーに危害が及ぶのは嫌だ。

私はAエイに「分かりましたよ。ですが、私と別れたくなければ、行動を改めて欲しいですね。どこに行くかは貴方の自由ですが、どこに行くのかぐらいは、せめて誰かに伝えて下さいね?」と答えた。

「それ、親父殿にも言われるだろうなぁ……」
「今回、貴方を探すために尽力した方々にもお礼を言わないといけませんよ。本来は私のところに来るより、そちらが先です」
「分かってる」

今後のやるべき事に思いを馳せたのか、Aエイはげんなりとした表情になった。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

下品な男に下品に調教される清楚だった図書委員の話

神谷 愛
恋愛
クラスで目立つこともない彼女。半ば押し付けれられる形でなった図書委員の仕事のなかで出会った体育教師に堕とされる話。 つまらない学校、つまらない日常の中の唯一のスパイスである体育教師に身も心も墜ちていくハートフルストーリー。ある時は図書室で、ある時は職員室で、様々な場所で繰り広げられる終わりのない蜜月の軌跡。 歪んだ愛と実らぬ恋の衝突 ノクターンノベルズにもある ☆とブックマークをしてくれると喜ぶ。 感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。 してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。

【R18】幼馴染な陛下は、わたくしのおっぱいお好きですか?💕

月極まろん
恋愛
 幼なじみの陛下に告白したら、両思いだと分かったので、甘々な毎日になりました。  でも陛下、本当にわたくしに御不満はございませんか?

【R18】隣のデスクの歳下後輩君にオカズに使われているらしいので、望み通りにシてあげました。

雪村 里帆
恋愛
お陰様でHOT女性向け33位、人気ランキング146位達成※隣のデスクに座る陰キャの歳下後輩君から、ある日私の卑猥なアイコラ画像を誤送信されてしまい!?彼にオカズに使われていると知り満更でもない私は彼を部屋に招き入れてお望み通りの行為をする事に…。強気な先輩ちゃん×弱気な後輩くん。でもエッチな下着を身に付けて恥ずかしくなった私は、彼に攻められてすっかり形成逆転されてしまう。 ——全話ほぼ濡れ場で小難しいストーリーの設定などが無いのでストレス無く集中できます(はしがき・あとがきは含まない) ※完結直後のものです。

前世変態学生が転生し美麗令嬢に~4人の王族兄弟に淫乱メス化させられる

KUMA
恋愛
変態学生の立花律は交通事故にあい気付くと幼女になっていた。 城からは逃げ出せず次々と自分の事が好きだと言う王太子と王子達の4人兄弟に襲われ続け次第に男だった律は女の子の快感にはまる。

【R18】××××で魔力供給をする世界に聖女として転移して、イケメン魔法使いに甘やかされ抱かれる話

もなか
恋愛
目を覚ますと、金髪碧眼のイケメン──アースに抱かれていた。 詳しく話を聞くに、どうやら、私は魔法がある異世界に聖女として転移をしてきたようだ。 え? この世界、魔法を使うためには、魔力供給をしなきゃいけないんですか? え? 魔力供給って、××××しなきゃいけないんですか? え? 私、アースさん専用の聖女なんですか? 魔力供給(性行為)をしなきゃいけない聖女が、イケメン魔法使いに甘やかされ、快楽の日々に溺れる物語──。 ※n番煎じの魔力供給もの。18禁シーンばかりの変態度高めな物語です。 ※ムーンライトノベルズにも載せております。ムーンライトノベルズさんの方は、題名が少し変わっております。 ※ヒーローが変態です。ヒロインはちょろいです。 R18作品です。18歳未満の方(高校生も含む)の閲覧は、御遠慮ください。

大嫌いな次期騎士団長に嫁いだら、激しすぎる初夜が待っていました

扇 レンナ
恋愛
旧題:宿敵だと思っていた男に溺愛されて、毎日のように求められているんですが!? *こちらは【明石 唯加】名義のアカウントで掲載していたものです。書籍化にあたり、こちらに転載しております。また、こちらのアカウントに転載することに関しては担当編集さまから許可をいただいておりますので、問題ありません。 ―― ウィテカー王国の西の辺境を守る二つの伯爵家、コナハン家とフォレスター家は長年に渡りいがみ合ってきた。 そんな現状に焦りを抱いた王家は、二つの伯爵家に和解を求め、王命での結婚を命じる。 その結果、フォレスター伯爵家の長女メアリーはコナハン伯爵家に嫁入りすることが決まった。 結婚相手はコナハン家の長男シリル。クールに見える外見と辺境騎士団の次期団長という肩書きから女性人気がとても高い男性。 が、メアリーはそんなシリルが実は大嫌い。 彼はクールなのではなく、大層傲慢なだけ。それを知っているからだ。 しかし、王命には逆らえない。そのため、メアリーは渋々シリルの元に嫁ぐことに。 どうせ愛し愛されるような素敵な関係にはなれるわけがない。 そう考えるメアリーを他所に、シリルは初夜からメアリーを強く求めてくる。 ――もしかして、これは嫌がらせ? メアリーはシリルの態度をそう受け取り、頑なに彼を拒絶しようとするが――……。 「誰がお前に嫌がらせなんかするかよ」 どうやら、彼には全く別の思惑があるらしく……? *WEB版表紙イラストはみどりのバクさまに有償にて描いていただいたものです。転載等は禁止です。

うちの娘と(Rー18)

量産型774
恋愛
完全に冷え切った夫婦関係。 だが、そんな関係とは反比例するように娘との関係が・・・ ・・・そして蠢くあのお方。 R18 近親相姦有 ファンタジー要素有

処理中です...