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料理※C視点
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「もうすぐ冬ですねえ、スノウバードが飛んでます」
スノウバードは冬を告げる渡り鳥だ。白い羽根を広げて、上空を滑空している。
私はその光景に目を細めた。私が人間だった時、エルサドでは良く見た光景だが、ラストヘルムで見ることは稀だ。今年の冬は例年より雪が積もるのかもしれない。
人間が飢えないように、冬支度を前倒しにしたほうが良さそうだ。
後で父上に報告しに行こうかなと思っていたら、
「そーれ!」
「――!?」
ボトリとスノウバードの首がないやつが数匹落ちてきた。先ほどAが投げた庭石が頭部に命中したらしい。
「シア、これの肉、好きだろ? 親父殿に焼き鳥にして貰おう」
Aは手慣れた様子で白い毛を毟り、捌き始めた。スノウバードの血で地面が染まる。
「……Aが食べたいだけでは……?」
散歩していただけなのに、いきなり血生臭いことになり、気分が悪くなる。ただでさえ妊娠して、つわりみたいなものがあるのに、配慮の無いAに腹が立った。
「あ、バレた? だってこれ、めったに食べられないしさ。……でも、シアのためでもあるぞ。最近、果物しか食ってないだろ? もっと栄養つけたほうがいいって。妊娠してるんだし」
……前言撤回。どうやら、Aなりに配慮しての事だったらしい。
「出来たら、ラーメンとかハンバーガーも食べたいんだけどなー」
「レシピは覚えましたが、こちらに食材がないものが多いんですよね……似たものならありますが、試行段階です」
「流石シア、抜け目ないなあ」
「父上にとっては親しみのある味でしょうから、覚えて損はないかなと思っただけですよ。……母上も喜ぶかもしれませんし」
試作品は父上や母上に届けているが、評判は上々だ。盛り付けたお皿が全て平らげられて戻ってくるのを見ると嬉しい。
今はつわりがあって作りたくても作れないが、またそのうちに作りたいものだ。
「……俺に食べさせたいなとか思わなかった?」
「全くありませんでしたね。そもそも、その時には、貴方とそんな関係じゃなかったじゃないですか」
「そうだけどよー……。まぁいいや、今度さ、あれ作ってくんない? 唐揚げってやつ。あれ美味しかったんだよなー」
「父上に言えば作って貰えるのでは? 父上も結構料理が好きですよね」
「いや、シアの作ったやつが食べたい」
「そうですか……。そのスノウバードの肉でも唐揚げ出来ると思いますよ?」
「……今作れない?」
「無理ですね」
(……ラーメン、ハンバーガー、唐揚げ……。そういえば私の覚えてるレシピって、Aが美味しいって言って食べてたやつばかりですね……)
私がスキルで覚えているレシピを思い返すと、メニューの傾向に、だいぶ偏りがあることに気が付く。
(あの時はAと行動を共にしていましたし……Aはおかわりを沢山していましたから、手持ち無沙汰でした。……だから、興味が沸いたんでしょうか……)
Aは人間の食事に強く興味を示していた。ラストヘルム戻ったら、「食べたい」と言い出すかもしれない。そうなれば、取引の材料になるかも、という打算もあったが、色々な理由をつけては、スマホで情報を探していた気がする。
(私は……)
Aのためではない。と、言い切れるだろうか。無意識だった己の行動に気がついて、私は手を握りしめ、頬を赤らめるのだった。
ちなみに匂いが受け付けず、唐揚げも焼き鳥も食べずに退室したので、父上が心配して別途具沢山のスープを作って持ってきてくれた。
Aもいっしょに作ってたぞ、と言われたので、スープをよく見ると、野菜や肉の切り方が、あまりに不ぞろいで笑ってしまった。
「ありがとうございます、A」
「どうだ? それなら食べれそうか?」
「ええ、時間をかければ何とか」
私は、煮込まれて柔らかくなったスノウバードの肉を、スプーンですくい取った。そして口の中に入れると、味わうように、ゆっくりと咀嚼した。
スノウバードは冬を告げる渡り鳥だ。白い羽根を広げて、上空を滑空している。
私はその光景に目を細めた。私が人間だった時、エルサドでは良く見た光景だが、ラストヘルムで見ることは稀だ。今年の冬は例年より雪が積もるのかもしれない。
人間が飢えないように、冬支度を前倒しにしたほうが良さそうだ。
後で父上に報告しに行こうかなと思っていたら、
「そーれ!」
「――!?」
ボトリとスノウバードの首がないやつが数匹落ちてきた。先ほどAが投げた庭石が頭部に命中したらしい。
「シア、これの肉、好きだろ? 親父殿に焼き鳥にして貰おう」
Aは手慣れた様子で白い毛を毟り、捌き始めた。スノウバードの血で地面が染まる。
「……Aが食べたいだけでは……?」
散歩していただけなのに、いきなり血生臭いことになり、気分が悪くなる。ただでさえ妊娠して、つわりみたいなものがあるのに、配慮の無いAに腹が立った。
「あ、バレた? だってこれ、めったに食べられないしさ。……でも、シアのためでもあるぞ。最近、果物しか食ってないだろ? もっと栄養つけたほうがいいって。妊娠してるんだし」
……前言撤回。どうやら、Aなりに配慮しての事だったらしい。
「出来たら、ラーメンとかハンバーガーも食べたいんだけどなー」
「レシピは覚えましたが、こちらに食材がないものが多いんですよね……似たものならありますが、試行段階です」
「流石シア、抜け目ないなあ」
「父上にとっては親しみのある味でしょうから、覚えて損はないかなと思っただけですよ。……母上も喜ぶかもしれませんし」
試作品は父上や母上に届けているが、評判は上々だ。盛り付けたお皿が全て平らげられて戻ってくるのを見ると嬉しい。
今はつわりがあって作りたくても作れないが、またそのうちに作りたいものだ。
「……俺に食べさせたいなとか思わなかった?」
「全くありませんでしたね。そもそも、その時には、貴方とそんな関係じゃなかったじゃないですか」
「そうだけどよー……。まぁいいや、今度さ、あれ作ってくんない? 唐揚げってやつ。あれ美味しかったんだよなー」
「父上に言えば作って貰えるのでは? 父上も結構料理が好きですよね」
「いや、シアの作ったやつが食べたい」
「そうですか……。そのスノウバードの肉でも唐揚げ出来ると思いますよ?」
「……今作れない?」
「無理ですね」
(……ラーメン、ハンバーガー、唐揚げ……。そういえば私の覚えてるレシピって、Aが美味しいって言って食べてたやつばかりですね……)
私がスキルで覚えているレシピを思い返すと、メニューの傾向に、だいぶ偏りがあることに気が付く。
(あの時はAと行動を共にしていましたし……Aはおかわりを沢山していましたから、手持ち無沙汰でした。……だから、興味が沸いたんでしょうか……)
Aは人間の食事に強く興味を示していた。ラストヘルム戻ったら、「食べたい」と言い出すかもしれない。そうなれば、取引の材料になるかも、という打算もあったが、色々な理由をつけては、スマホで情報を探していた気がする。
(私は……)
Aのためではない。と、言い切れるだろうか。無意識だった己の行動に気がついて、私は手を握りしめ、頬を赤らめるのだった。
ちなみに匂いが受け付けず、唐揚げも焼き鳥も食べずに退室したので、父上が心配して別途具沢山のスープを作って持ってきてくれた。
Aもいっしょに作ってたぞ、と言われたので、スープをよく見ると、野菜や肉の切り方が、あまりに不ぞろいで笑ってしまった。
「ありがとうございます、A」
「どうだ? それなら食べれそうか?」
「ええ、時間をかければ何とか」
私は、煮込まれて柔らかくなったスノウバードの肉を、スプーンですくい取った。そして口の中に入れると、味わうように、ゆっくりと咀嚼した。
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