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新婚旅行※C視点
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ふと、見慣れぬ物が視界に入って、私はそれに目が釘付けになった。
「A。この指輪、どうしたんですか?」
Aの指に、黄色い宝石の付いた指輪が嵌っている。あまり装飾品を好まないAが付けているなら、よっぽど付加価値の高い指輪なのだろうかと思って、鑑定で確認したが、それほど価値のある指輪ではなさそうだ。
「子供達のレベル上げに行ったら拾ったんだよ。女避けに丁度いいかなと思って付けてた。欲しいなら、やろうか?」
「女避け……? 最近Aを見ていないと思ったら、何処に行ってたんですか?」
「言わなかったっけ? 遺跡に行って稼いでた。思ったよりもけっこう貯まったからさ、これCにやるよ。好きなもん買っていいぞ」
「……羽振りが良すぎて、気持ち悪いですね」
小袋を渡されて、やけに重いと思って中身を確認してみれば、金貨が沢山入っていた。
「俺、冒険者として登録してんだよ。ダンジョン潜ってると、たまに苦戦してる冒険者に遭遇するんだよな。見殺しにして犯罪者扱いされたくないし、手助けするんだけどな、その時に惚れられて、しつこいんだわ」
「私、その女性たちに、挨拶したほうが良いですかね?」
「何? C、嫉妬してくれんの?」
「違いますよ。人間の短い寿命を、無駄に消費させてあげたくないです」
「あー……、結局女を心配しているだけか。……不味そうだし、腹の足しにもならなそうだけど……食っちまうか」
「A、人間に八つ当たりしないでくれません?」
「人間って惚れっぽくね? すぐ抱き着いてくるんだけど。若い女に迫られても、ちっとも嬉しくないっつーの。せめてあと50年後になら抱いてやってもいいぞって言っても本気にしねーし」
「それ、人間には通じないでしょうね……」
人間どころか兄弟にも通じないと思う。
「俺には伴侶がいるって言ってんのに、誰も信じてくれねーんだわ。今度、Cも行くか?」
「別にいいですよ」
「お、これで美味いもん食えるな! 期待してるぞ!」
「それが目当てですか……」
Aの期待に満ちた目に、私もつい苦笑いしてしまう。
(そういえば、私、Aは嫌いじゃなかったはずだけど、なんで避けるようになったんでしたっけ……)
最近は割と仲が良いが、それはAとの関わり方を模索し続けた結果、折れる、ということを学んだからに過ぎない。
数十年ほど前は顔を合わせる度に喧嘩になり、言葉も交わしたくないほどに嫌っていた時期もあったはず。何時、何が原因でそうなったのか。喉元過ぎれば、というやつかもしれないが、それが、どうしても思い出せなかった。
「それで、遺跡って、どんなところなんですか?」
「墓に行く。遺跡の中に、でっけー墓地があんだよな。今の人間より、面白いスキルを持っている魂、多くってさぁ」
「……私、宿で待っていますね」
思い出した。最近あまりしなくなったけど、Aが魂の話ばっかりするからだ。
「Cは魂見えなくて残念だな。スキルで見えるようになるんじゃね?」
「さすがにそれは体質だと思いますが……私は見えなくて良いです。この世の中には、見えなくても良いものも、存在すると思います」
見えていたらご飯も喉に通らないと思う。Aのスキルは強力だとは思うけど、欲しいとは思わなかった。むしろ魂食いがコピー不能であることに対して、安堵感みたいなものさえ感じていた。コピーすることで強くなると分かっているならば、私の性格を踏まえれば、しないという選択肢は無いだろうし、魂だって食べようとするだろう。
……ただ、魂を掴むことが出来るのか、そして魂が喉を通るかは別問題かもしれない。生理的に無理なので、人間の生肉と同じように、食べれずに吐き出す可能性は十分にある。
数日後、私とAは変化してギルドに来ていた。
「こんな遠い場所のギルドだとは思いもしませんでしたよ……」
せいぜい隣国のギルドだろうと思っていたのに、山を2つほど越えた先にある、国とも言えない寂れた国のギルドだったのだ。
偵察と銘打ち、馬車に揺られて訪れたが、それだけの価値がある国とは、思えなかった。Aどころか私でも本気を出せば、1時間ほどで陥落しそうな小国だった。
「なぁなぁ、これって新婚旅行ってやつか?」
「……どこで覚えたんですか、そんな言葉」
「漫画。たしか陛下と私のハネムーンだったか」
「女性向けの漫画でしょ、それ!?」
「男向けの漫画は読みつくしたからな。暇つぶしに。あ、あの屋台も美味そうだなー」
旅行を満喫しているAを見て、ふと父上の故郷でAと食べ歩きした事を思い出した。どんなところに行っても、Aは楽しそうだ。
「私の分も買って下さい」
「分かった」
私は財布を取り出し、Aにお金を渡した。
「A。この指輪、どうしたんですか?」
Aの指に、黄色い宝石の付いた指輪が嵌っている。あまり装飾品を好まないAが付けているなら、よっぽど付加価値の高い指輪なのだろうかと思って、鑑定で確認したが、それほど価値のある指輪ではなさそうだ。
「子供達のレベル上げに行ったら拾ったんだよ。女避けに丁度いいかなと思って付けてた。欲しいなら、やろうか?」
「女避け……? 最近Aを見ていないと思ったら、何処に行ってたんですか?」
「言わなかったっけ? 遺跡に行って稼いでた。思ったよりもけっこう貯まったからさ、これCにやるよ。好きなもん買っていいぞ」
「……羽振りが良すぎて、気持ち悪いですね」
小袋を渡されて、やけに重いと思って中身を確認してみれば、金貨が沢山入っていた。
「俺、冒険者として登録してんだよ。ダンジョン潜ってると、たまに苦戦してる冒険者に遭遇するんだよな。見殺しにして犯罪者扱いされたくないし、手助けするんだけどな、その時に惚れられて、しつこいんだわ」
「私、その女性たちに、挨拶したほうが良いですかね?」
「何? C、嫉妬してくれんの?」
「違いますよ。人間の短い寿命を、無駄に消費させてあげたくないです」
「あー……、結局女を心配しているだけか。……不味そうだし、腹の足しにもならなそうだけど……食っちまうか」
「A、人間に八つ当たりしないでくれません?」
「人間って惚れっぽくね? すぐ抱き着いてくるんだけど。若い女に迫られても、ちっとも嬉しくないっつーの。せめてあと50年後になら抱いてやってもいいぞって言っても本気にしねーし」
「それ、人間には通じないでしょうね……」
人間どころか兄弟にも通じないと思う。
「俺には伴侶がいるって言ってんのに、誰も信じてくれねーんだわ。今度、Cも行くか?」
「別にいいですよ」
「お、これで美味いもん食えるな! 期待してるぞ!」
「それが目当てですか……」
Aの期待に満ちた目に、私もつい苦笑いしてしまう。
(そういえば、私、Aは嫌いじゃなかったはずだけど、なんで避けるようになったんでしたっけ……)
最近は割と仲が良いが、それはAとの関わり方を模索し続けた結果、折れる、ということを学んだからに過ぎない。
数十年ほど前は顔を合わせる度に喧嘩になり、言葉も交わしたくないほどに嫌っていた時期もあったはず。何時、何が原因でそうなったのか。喉元過ぎれば、というやつかもしれないが、それが、どうしても思い出せなかった。
「それで、遺跡って、どんなところなんですか?」
「墓に行く。遺跡の中に、でっけー墓地があんだよな。今の人間より、面白いスキルを持っている魂、多くってさぁ」
「……私、宿で待っていますね」
思い出した。最近あまりしなくなったけど、Aが魂の話ばっかりするからだ。
「Cは魂見えなくて残念だな。スキルで見えるようになるんじゃね?」
「さすがにそれは体質だと思いますが……私は見えなくて良いです。この世の中には、見えなくても良いものも、存在すると思います」
見えていたらご飯も喉に通らないと思う。Aのスキルは強力だとは思うけど、欲しいとは思わなかった。むしろ魂食いがコピー不能であることに対して、安堵感みたいなものさえ感じていた。コピーすることで強くなると分かっているならば、私の性格を踏まえれば、しないという選択肢は無いだろうし、魂だって食べようとするだろう。
……ただ、魂を掴むことが出来るのか、そして魂が喉を通るかは別問題かもしれない。生理的に無理なので、人間の生肉と同じように、食べれずに吐き出す可能性は十分にある。
数日後、私とAは変化してギルドに来ていた。
「こんな遠い場所のギルドだとは思いもしませんでしたよ……」
せいぜい隣国のギルドだろうと思っていたのに、山を2つほど越えた先にある、国とも言えない寂れた国のギルドだったのだ。
偵察と銘打ち、馬車に揺られて訪れたが、それだけの価値がある国とは、思えなかった。Aどころか私でも本気を出せば、1時間ほどで陥落しそうな小国だった。
「なぁなぁ、これって新婚旅行ってやつか?」
「……どこで覚えたんですか、そんな言葉」
「漫画。たしか陛下と私のハネムーンだったか」
「女性向けの漫画でしょ、それ!?」
「男向けの漫画は読みつくしたからな。暇つぶしに。あ、あの屋台も美味そうだなー」
旅行を満喫しているAを見て、ふと父上の故郷でAと食べ歩きした事を思い出した。どんなところに行っても、Aは楽しそうだ。
「私の分も買って下さい」
「分かった」
私は財布を取り出し、Aにお金を渡した。
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