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半獣シャルロットは、Sランク冒険者の性奴隷になりました。【R18】

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シャルロットは半獣で、冒険者学校を卒業したばかりの駆け出しの冒険者だ。けれども、仲間とはうまくいってなかった。

「早くしろ、のろま! もう暗くなるだろ!」
「は、はい! 今すぐ!」
「そんなこと、言われる前に準備しとけよ! 今までいったい何回やってると思ってるんだ? 要領が悪いな!」

シャルトットは、仲間の心無い言葉に、毎日打ちのめされていた。

「はぁ~……。僕って、そんなに才能がにゃいのかなあ……。あ、いけないいけない。はやくしないと、また怒られるにゃ……。火の精霊さん、お願いするにゃ」

小さな火の精霊は項垂れているシャルロットを心配そうに見つめていたが、シャルロットのお願いに、ニコリと笑って力を貸してくれた。

「よし、火が付いたにゃ……! ありがとうにゃ!」

指先に集中すると、ぽうっと火が発生した。シャルロットの魔力量と熟練度では指先に長時間、火を持続するのは難しい。
シャルロットは火が消える前に、枯れ葉に火を移した。

(火、綺麗だなあ……)

パチパチと燃える火を見ながら、気持ちはまた暗くなってきて、シャルロットの耳はへにゃりと折れた。

シャルロットは、冒険者学校を卒業したばかりの、いわゆる冒険者の卵だ。 

学校では前衛として戦うことが多かったが、仲間がシャルロット以外男だったので何時からか、自然と後衛に回るようになった。

そのため、仲間が必要としていた盗賊スキルや回復スキルを入手し、腕を磨いた。
けれども半獣のシャルロットは魔力が低く、器用貧乏だった。

スキルを覚えることは出来たが、すぐに頭打ちとなり、誰もが使えるような初級のスキルしか保有出来なかった。

仲間との差は開くばかりで、シャルロットは焦っていた。

店で買える中級のスキルはどれも高価で、シャルロットの稼ぎでは手が届かなかった。
かといって仲間にお願いするわけにもいかなかった。
シャルロットが中級のスキルを覚えるよりも、仲間の武器や防具を買ったほうが、遥かに効率が良かったからだ。

(シャルが悪いんだにゃ……。もっと頑張れば、きっと認めてくれるにゃ!)

はじめて火魔法が使えた時、シャルロットは有頂天になった。

魔術の書は初級であっても高価で、それを独学で習得した人間は殆どいなかった。
これで仲間も、シャルロットを雑用係ではなく、仲間の一員として認めてくれるかもしれない。
それまでの努力が報われた気がして、すごくすごく嬉しかった。

「どう!? シャル、凄いでしょ!!」
「全属性の魔法が使えるの?」
「そうだよ! 精霊さんの力を借りてね……」

自信満々で、覚えたての魔法を仲間に披露したが、その反応は冷たかった。

「で?」

きっと驚いてくれる。もしかしたら、学生時代のように、褒めて頭を撫でてくれるかもしれない。ひそかに期待していたシャルロットにとって、それは予想外の反応だった。

(え? また、何か間違えたにゃ……? な、何を間違えたんだにゃ……?)

シャルロットはパニックに陥った。おろおろするシャルロットに、仲間はわざとらしい、大きなため息をついた。

「そんな吹けば消えるような火で何をするんだ? って言ってんの。こんなん生活魔法だろ? 冒険者舐めてんの?」

やっと仲間の考えを理解出来て、シャルロットは必死になって弁明を始めた。
確かにシャルロットの魔法は生活魔法の域を超えていなかった。それどころか、それ以下かもしれない。
けれども、これから先の修練次第では、魔物退治にだって使えるようになるかもしれない、シャルロットにとって希望の光だった。

「え、えっと、今は最下級の火魔法しか出来ないけど、そのうち、きっとみんなの役に……」
「それは何時の話だ? 目くらましぐらいにしかならないだろ。そんな無駄なことやってないで、雑用しろよ。お前は戦力としては数えてない。安全なとこにいればいいんだよ。俺たちが守ってやんだから。怪我しないように、雑用をしっかりやれよ。それがお前の仕事だろ」
「……!!」

言い返せなかった。

それは、正論だった。仲間のために色々なスキルを習得したため、シャルロットは前衛としても中途半端だった。現段階でシャルロットの役割は雑用であり、魔法使いではない。

戦力になるかどうかも分からない魔法を習得するよりも、雑用としての仕事を覚えることが、仲間の役に立つのだろう。

けれどもシャルロットは悔しくて悔しくてたまらなかった。雑用の重要性も理解していたが、雑用をするために冒険者になったわけではなかったからだ。

何より、自分が強くなることを期待されていない。それがハッキリと明言されて、シャルロットはショックを受けた。

(……魔法を覚えたなんて……。言わなきゃ良かったにゃ……)

魔法を覚えた喜びは、すぐに消し飛んでしまった。子供が親に見せるように、得意げに魔法を披露してしまったことを後悔した。

(やっぱり、僕、頭悪いにゃ……。だから雑用なんだにゃ……)

実際、魔法を覚えたところで、役立たずだった。

野営で食事の用意をする時には使えるけど、携帯食料で済ませることも多い。

魔物に火の玉を投げてみても、届く前に火は消えた。

使いどころは殆どなかった。

しかも「あんなスキルを覚えるより先に、もっと覚えることあるよなあ?」と、魔法を覚えたことで、仲間内で笑い者となっていた。

せめて中級の魔法を覚えてから披露するべきだったと気が付いても、遅かった。

「こんなこともできないのか、お前は!?」
「ご、ごめんなさい!」

シャルロットは気丈に振舞っていたが、仲間の罵詈雑言により委縮してしまい、失敗ばかりして悪循環が続き、実力を発揮できずにいた。

そんなシャルロットでも役に立つことはあった。けれどもそれは、シャルロットにとってあまり嬉しくない役割だった。

シャルロットは半獣なので体温が人より高いため、夏は邪魔者だったが、雪が降るような寒い夜ともなると、抱き枕として最高だったのだ。

「おい、毛玉。寒いんだから、こっち来いよ」
「だめだ。お前、昨夜もシャルを持って行っただろ。今日は俺の番だ」
「っち、うっせーな。シャルは俺のもんだって言ってるだろ」

(にゃ、にゃあぁ……、そんな強く引っ張ると、痛いにゃ……!)

夜になるとシャルロットの奪い合いが起きた。

「痛い。痛いよ!」
「ほら、シャルも痛いって言ってるだろ。手を放せよ」
「お前が放せば済む話だろ」

両手を強い力で引っ張られ、シャルロットは悲鳴を上げた。

それでも仲間はシャルロットを譲ろうとしなかった。
シャルロットは物扱いで、そのため、怪我することもあった。怪我したことを言うと「なんでもっと早く言わないんだ!」と逆に怒られてしまうので、シャルロットは怪我を隠した。

たいして効果のない回復魔法で治療しながら、シャルロットは落ち込んだ。

(怒られてばっかりだにゃ。このままじゃ、そのうち、追い出されるにゃあ……)

雑用としては重宝されていたが、仲間がどんどん強くなるのに1人だけ弱いままでは自信が育たず、シャルロットの心は限界にきていた。

(最初は……みんな、あんなに優しかったのに………)

シャルロットは、その見た目から、冒険者学校では人気者だった。けれど、頭が悪く、座学ではいつも赤点だった。泣きながら勉強をするシャルロットを見かねて、彼らはシャルロットに勉強を教えてくれた。

すごい良い人間たちだと思った。
だからついていこうと思った。

でもその決断は失敗だったのかもしれない。

(シャルが出来損ないだからだにゃ……。きっと、呆れられてしまったんだにゃ)

半獣は珍しいが、冒険者として何の実績もないシャルロットより強い半獣なんていくらでもいる。味方の足ばっかり引っ張る、雑用しか出来ない半獣に価値はない。

シャルロットは涙を浮かべながら、とぼとぼと仲間の後を歩いていた。

そして、とうとうその日が来た。

(役立たずって……。もう魔物の討伐に連れて行かないって言われたにゃ……!)

それは事実上の戦力外通達だった。

仲間を庇ってシャルロットが大怪我をした。

すると血相を変えて、仲間がシャルロットを罵倒し始めたのだ。シャルロットの心は、ついに耐えられなくなった。仲間の手を振り払い、絶叫した。

「やめて!! もう何も、言わにゃいで!!」

シャルロットは半獣で、足だけは速かった。「待て、シャル! お前、怪我してるんだぞ!!」制止されるのを振り切って、シャルロットは仲間だった人間たちから、何も持たずに逃げてきた。

どれだけ走ったのかわからない。靴を履いていたはずだが、右の靴が脱げてしまっている。途中、あまりの痛さに回復魔法をかけたが、ズキズキと腕も足も痛んだ。

見慣れた町にたどり着いて安堵したのか、ずるずるとシャルロットは崩れ落ちた。
町を出る前はみんなと一緒だった。
でも、今日からは1人ぼっちだ。

「ふぇ……。うぇえええええん!!」

ついに人目も憚らず、シャルロットは泣き出した。大きな瞳からは堰が切ったかのように涙が溢れ出し、頬を濡らした。

「おい、どうしたんだ? 怪我もしてるじゃねーか。手当するから、こっちに来いよ」
「ぼ、僕なんてほっといてにゃ! こんな出来損ない、優しくする価値なんかないにゃ!」

シャルロットは興奮して、手を差し伸べた人間の手を引っ掻いた。だが、その人間は、怯まなかった。

「価値があるかどうかは俺が決めることだ。なんでそんなに泣いているんだ? このまま立ち去ったら、気になって寝れなくなるじゃねーか」

人間の手から血が出ていることに気が付いて、シャルロットは少し冷静になった。

「怪我させて、ごめんなさいにゃ。……でも、僕のことなんか聞いたって、これっぽっちも楽しくないにゃ」
「つらいことがあったんだな。俺に出来ることがあるなら、手伝ってやるぞ。どうせ暇してるし」

その人間は、人の良さそうな笑顔を浮かべて、シャルロットの左手を取った。

(あったかいにゃ……)

その手の温もりは、シャルロットの冷えた心をじんわりと温めてくれた。

「なるほどな。状況は把握した。それで、これからお前はどうしたいんだ?」
「ぐず……。僕は出来損ないだけど、半獣で、僕ぐらい魔力があるのって、すごい珍しいことなんだにゃ。親戚中からお金借りて、冒険者学校に入れてもらったから……。お金を返さないといけないんだけど……。僕は体も小さいから、冒険者ぐらいしか取り柄がなくて。でも……」

じわりとシャルロットの大きな目に涙が浮かんだ。それを見て、慌てた様子で、人間の男、ヴォルグはシャルロットに喋りかけた。

「まずはパーティから正式に離脱しようか。ギルドに行きにくいなら、俺が付き添ってやるよ」
「ありがとうだにゃ……。あ、違うにゃ。……ありがとうございます」
「無理に敬語で言わなくてもいいぞ。お前、猫系の半獣だろ?」
「……にゃって付けると、バカみたいだからやめろって言われてたにゃ。でも、パーティ抜けるなら、意味ないにゃね」
「本当にひどいパーティに居たんだな」

ヴォルグは憤慨した。語尾ににゃ、と付いてしまうのは猫系の半獣にとって良くあることだ。
それを人間の普通語で喋るように無理強いするとは、人種差別に他ならない。
それが発覚しただけで、ギルドから処罰を受けることになる。

(これは許すことが出来ねぇな)

シャルロットに声をかけたのは、泣いているシャルロットの様子が異常だったので、何か犯罪にでも巻き込まれていないか心配になったためだ。

ヴォルグは半獣であるシャルロットのあまりに不遇な扱いに、自分でも何か出来ることはないかと思いを巡らせた。鑑定スキルを使ってみたら、シャルロットが色々なスキルを持っていて驚いた。

(全属性の魔法を扱えるなんて、凄いな。取得しているスキルに一貫性はないが、冒険者としての素養は高そうだ……)

スキルに一貫性がないのは、冒険者学校を卒業していることを考えると、あり得ないことだ。今の不安定な様子からして、おそらくは訳ありだろう。
これだけ魔法のスキルを入手しているなら、通常であれば魔法関連のスキルだけを覚えるのが定石だ。それなのに、この少女は前衛職や回復職のスキルも複数覚えていた。

だが、幸いなことに、まだレベルが低い。取得するべきスキルを教えて、少し鍛えれば、ヴォルグの旅にもついて来れるだろう。

(……というか、この半獣、かなり可愛いよな……)

ヴォルグは面食いだった。そのヴォルグですら、可愛いと思ってしまうほど、シャルロットは容姿が優れていた。少々幼さは残るが、十分許容範囲内だった。否が応でも目立つ胸の大きさに、エドワードの目はくぎ付けになった。

(でかいな……。昨夜買った娼婦よりでっかいんじゃね……? やばいな)

顔の幼さに不釣り合いな巨乳に、やばい以外の感想が飛び出してこない。

(俺が探していた奴隷の条件と完全に一致してるじゃん)

ヴォルグは婚約者が親友と思っていた男と浮気して、絶対に裏切らない女が欲しかった。そのため、奴隷商を回って、探していた。
だがヴォルグが求める条件が厳しく、なかなか欲しいと思えるような奴隷がいなかった。どうしても、元婚約者と比較してしまうからだ。

(こんな女、この機会を逃せば、もう2度と手に入らないかもしれない。金で手に入るなら、安いものだ。素直で人を疑うことを知らなそうだし、なんとか舌先三寸で丸め込もう)

ヴォルグは喉から手が出るほど、シャルロットが欲しくなってしまった。

「……シャルロット。お前、お金が必要なんだよな?」
「はい。でもお金を手に入れるあてなんて……」
「俺の奴隷になってみねぇ?」
「ど、奴隷……?」
「俺さ、今実は、お前のようなやつを探していたとこなんだよ」
「僕のような人って……? 僕、なんにも出来ないにゃ」

暗い表情で、シャルロットはヴォルグを見た。

(きっと笑えば可愛いだろうに、もったいねぇなあ)

その劣悪な環境から、必要以上に卑屈になってしまっていることに哀れみを感じながら、ヴォルグは考えた。

「そうだな。契約金は400ゲルでどうだ?」
「それだけあれば、僕の兄弟が飢え死にしなくても済むにゃ……!」
「……ちょっと足りなかったみたいだな。色を付けて、500ゲルでどうだ??」
「本当にそんな金額で大丈夫にゃ!?」
「大丈夫だ。こう見えて、俺はSランクの冒険者だからな」
「Sランク!? 僕なんかで役に立つかわからにゃいけど……」

ヴォルグはシャルロットをギルドに連れて行って、パーティを離脱させる手続きをした。その際、ギルド長に挨拶をし、「半獣に害を及ぼす人間がいるようだが?」と釘を刺すのも忘れなかった。

「ヴォルグ。キスの先ってあるの?」
「あるよ。俺が教えてやる」

ヴォルグは満足していた。

(やはり、これは掘り出し物だったな)

シャルロットは忠誠心が高く、本人の申告通り、突出して才があるものはないが、回復、魔術、前衛が人並みに出来るなら、Bランクが妥当だ。

戦闘の経験が不足しているだけで、シャルロットの伸びしろは高いように思えた。

(シャル自身も混同しているようだが、生活魔法と魔術は違うだろ……。いったい冒険者学校で何を学んだんだ?)

そもそも発動の方法が根本から違うのだ。既にシャルロットは下級とはいえ精霊と契約している。それだけで魔法使いとしてギルドで登録してもいいぐらいだ。

魔術は一生をかけて学ぶものだ。
冒険者学校を出て、1年も経たない初心者が中級魔術を行使できるようになったら、それこそ伝説に名を遺す、偉大なる人物となるだろう。
ふつうは師匠となる人物の下で何年も修行して、ようやく得るものなのだ。
それを独学で魔術を習得したとなると、才能の塊でしかない。

シャルロットよりも遥かに魔力の乏しいヴォルグからしたら、喉から手が出るほど欲しい才能だった。

(料理も上手だし、自分の身を守ることもできるし、何より可愛い。可愛いは正義だ……!)

顔だけではなく、性格も裏表なく可愛らしい。

シャルロットも性行為をしたことがないとはいえ、奴隷になるという意味合いを、覚悟はしているようだ。半獣の大半は奴隷として生きている。

冒険者が奴隷を連れていることはよくあることだ。シャルロットはヴォルグの奴隷だから、その体はヴォルグのものだ。

(シャルの発情期、はやく来ないかな……)

匂いでわかる。まだシャルロットは発情期を迎えていない。これには個人差があるため、何時くるかは誰にもわからない。

発情期を迎えていない半獣に性行為をすることはタブー視されている。発情期を迎えるということは雄を受け入れ、子を作る準備が出来たということでもある。

発情期が来てないシャルロットの体は、まだ未成熟で子供ということになる。

いきなり襲うことはしたくないが、他の女を抱く気にもなれなくて、性欲の発散に大変だった。なるべく手を出さないように我慢しているが、何時まで我慢できるかわからない。

(でも、最初が肝心だ……。シャルにも、肌を重ねることを好きになってもらいたい)

シャルロットは、やっと見つけた理想の奴隷だ。

理想が高い、ということは分かっていても、中途半端な気持ちでは傷つけてしまうかもしれないと思っていた。
いつか全力で愛せるような女性が目の前に現れるんじゃないかと思い、妥協が出来なかった。

時間をかけて探して良かった、とヴォルグは心の底から思った。

ヴォルグは腹を立てていた。

ようやく、念願の発情期が来たシャルロットといちゃいちゃしていたら、招かざる来客が来たのだ。

「こんなところにいたのか! 探したんだぞ! 戻ってこい!」

正直、「はぁ?」って感じだった。半獣に対する扱いの悪さが露見し、ギルド長からも、こっぴどく絞られたという話だった。

冒険者資格も短期間ではあるが停止されたと聞く。

それなのに、性懲りもなく、シャルロットの元仲間たちは押しかけてきたのだ。

「な、な、なにをしているんだ!?」
「なにをしてるって……。見たら分かるだろ? あんたら童貞なの?」

腹が立ちすぎて、気が付いた時には、挑発的な言葉が口から飛び出していた。

(ほんと信じられないことするな! せっかくの初夜なのに!)

シャルロットの処女をもらって、そのままもっと快楽を貪ろうとしていた時に、やつらは来たのだ。ヴォルグは侵入者を睨みつけた。

「邪魔すんなよ。シャルは、俺の所有物だぞ。それともあんたら、そんなに俺とシャルの濡れ場が見たいわけ?」
「奴隷として買ったのは知ってるんだよ! いったい、いくらだったんだよ! 俺が買ってやる……!」
「500ゲルだぞ。払えるのか?」
「半獣の癖に、なんでそんな高いんだよ!? ……くそっ、払うから返してくれ!」
「嫌だにゃ……! ご主人様は、ヴォルグがいいにゃ……!! フェラも頑張って上手くなるにゃ。だから売らないで……!」

半ば恐慌状態に陥ったシャルロットはヴォルグに縋りついて懇願した。もしかすると、元仲間達との性行為を想像してしまったのかもしれない。

「俺がシャルを売るわけないだろ。それに売るとしても、こいつらじゃない」

ヴォルグは安心させるように、優しくシャルロットの頭を撫でた。

「だ、騙されてるんだ、シャル……! 目を覚ませ!」
「……ヴォルグに手を出さにゃいで……! あんたたちにゃんか、大嫌い!」

やつらはシャルロットの言葉に、傷ついた目をしていた。

……ガキだったんだろうなー、とは思う。

きっとやつらは無意識だったかもしれないが、シャルロットが好きだったのだろう。好きな子をつい虐めてしまう、典型的なパターンだ。

それが集団心理によってエスカレートしてしまっただけなのだろう。

実際、シャルから話を聞いていると、シャルに怪我をさせたくなくて、戦闘から遠ざけてる感じだった。しかし、照れ隠しからくる、苛烈な言葉の暴力は、深くシャルロットの心を傷つけていた。

実際、やつらは、ヴォルグではなくシャルロットに「そんなにそいつが良かったのかよ! この痴女が!」と暴言を吐き捨てた。

シャルロットも怯えているし、そろそろ、追い出そうかなと思っていたら、その男たちは、「お客様に何をしているんだい」と騒ぎを聞きつけた宿の元冒険者の女主人につまみ出された。

そして、ぼこぼこにされたらしい。

「……シャル、ごめんな。怖い思いをさせて」
「ううん。あいつらが悪いにゃ」

邪魔者がいなくなり、ヴォルグとシャルロットは時間を忘れて、愛し合った。

「そうだな。シャルロット、お前には俺の秘密、教えてやるよ」
「え? 耳……? 尻尾……?」
「お揃いだな」

にかっとヴォルグは笑い、シャルロットは興味深そうにヴォルグの耳を触った。

「犬系の半獣は初めて見るにゃ」
「血の気が多いから、若死するやつが多いんだよな。猫系より数が少ないかもな」

普段はそれを見えないように少ない魔力で隠しているが、シャルロットの前で隠す必要はない。

「……なんで半獣なのを隠しているの?」
「半獣だとばれると舐められるからな」

半獣だからかもしれないが、ヴォルグは性欲が強すぎて、幼い頃から困っていた。出来れば、父親みたいに1人の女性を愛したかった。

けれど、魔物を狩り、血に酔った直後は特に残虐なほど性欲が高まり、娼婦のお姉さんの力を借りなければ、どうにもならなかった。

(俺も悪いんだよな。いいところばっかり見せようとした結果がこれだ。……シャルには、包み隠さず、俺の全てを見せていこう)

元婚約者も、ヴォルグのそうゆうところを見続けて、気持ちが離れてしまったのかもしれない。親友と浮気をしたのはショックだったが、冷静に考えてみるとヴォルグも悪かった。

(今度の旅は、シャルと住む場所を探す旅にしようかなあ。ずっと旅していたけど、そろそろどこかに落ち着いて住みたい気もする)

あまり家には興味がなかったヴォルグだが、子作りのことを考えると、シャルロットと住む家が急に欲しくなった。

「ね、シャル。俺とパーティ組もうよ」
「……!? いいの!?」

シャルロットは、ヴォルグの言葉に、ぱっと目を輝かせた。

ヴォルグの助けを借りながら、シャルロットは魔法使いとしての才能を開花させ、のちにヴォルグと同じSランクの冒険者となった。

「みんなー ごはんだにゃッ!」

そして、総勢20人以上の子供を抱える肝っ玉母さんとなったのだった。



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