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豊穣の女神アデルは、大鬼と魂の契りを結びました。【R18】※大鬼視点
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「せっかくゼルシウスが来てくれたのに、酒宴をぶち壊しにしよって!」
「あれだけ泣いていたのに、良く言うな」
「な、泣いてなどおらん!」
豊穣の女神アデルはお冠だった。あれだけ泣いていたのに、今は怒っている。その矛先は自然と大鬼グルトとなった。
(アデルが見せる喜怒哀楽……。俺にとっては、どんな宝よりも価値があるものだ。意地っ張りなところも、愛しいが……)
グルトは手を伸ばして、アデルの頬を優しく撫でた。アデルは先ほどの接吻を思い出したのか、ビクリと肩を震わせた。ずっとアデルとの関係は接吻から先に進めなかった。
アデルを愛しているからこそ、心許されるようになってから抱きたいと思っていたからだ。
(だが、そうも言ってられなくなってきたな。アデルが、誰よりも愛おしいからこそ、傷つけたくない。あまり無理強いはしたくなかったが……。)
ゼルシウスが懸念していたように、確かに限界を感じつつあった。それだけ豊穣神としての女神アデルの力は強く、抗えぬ時があった。
男に抱かれたことがなく、処女神として聖なる力が強いからこそ、その力は鬼のグルトにとっては毒でしかなかった。
──愛する女を抱き、孕ませたい。
雄としての本能が理性を凌駕してしまう日が近いかもしれないとは思っていたが、それでもアデルの傍から離れることは出来なかった。
『大丈夫か、お主?』
最初は、窮地を救ってくれたアデルが何者なのか知りたかった。その名前を知り、言葉を交わすようになり、次第に欲は深くなっていた。
アデルが欲しくて、誰よりも強くなった。そうでなければ、アデルと契ることは不可能だった。ただの鬼では、見向きもされなかっただろう。
勇者より強くならなければ、アデルの傍にはいられない。それが己に課せられた宿命だった。グルトは愛する女を得るために、必死になって食らいついた。
念願叶って、アデルと契った時に、グルトは『アデルが愛するものは、すべて守る』と誓った。それは本心からの言葉だった。
しかし、腹の奥底から湧いてくるような劣情は隠しようがなかった。きっとゼルシウスには見抜かれていただろう。
グルトはゼルシウスに嫉妬していた。共に過ごした歳月の長さがそうさせたのかもしれないが、全幅の信頼を寄せた、アデルの甘えきった態度に、はらわたが煮えくり返るかのようだった。
(アデルの心も体も、俺のものだ……!)
グルトにとって、アデルは生きる指針だった。アデルが居なければ、グルトは鬼として生き、ただの鬼として死んでいただろう。
アデルと契った時、グルトは天にも昇る心地だった。アデルがグルトを選んでくれたことを、神に感謝した。生涯を賭けて愛そうと思った。
それは血を吐くような努力の末に、ようやく勝ち取った居場所だった。
(ゼルシウスはアデルのことを娘のように思ってはいるが、女としては見ていない)
ゼルシウスの英知には、何度も助けられた。ゼルシウスの助力がなければ、アデルはこの世に存在していなかったかもしれない。
酒宴もその時の礼をするためのもので、何日もかけて用意してきた。私的な感情で、ゼルシウスとの良好な関係に水を差すわけにはいかない。
そう思うことにより、平静を装うとしたがダメだった。
『ゼルシウス! 我は優しいそなたが、大好きじゃ!』
その言葉が聞こえた時、さぞや醜い顔を晒していたことだろう。
(……俺はアデルに、あのような抱擁をされたことがない)
そう思うと、ドクン、と大きく心臓が脈打った。
嫉妬で狂いそうになったのか、一瞬、時が止まったような感じがした。
「あれだけ泣いていたのに、良く言うな」
「な、泣いてなどおらん!」
豊穣の女神アデルはお冠だった。あれだけ泣いていたのに、今は怒っている。その矛先は自然と大鬼グルトとなった。
(アデルが見せる喜怒哀楽……。俺にとっては、どんな宝よりも価値があるものだ。意地っ張りなところも、愛しいが……)
グルトは手を伸ばして、アデルの頬を優しく撫でた。アデルは先ほどの接吻を思い出したのか、ビクリと肩を震わせた。ずっとアデルとの関係は接吻から先に進めなかった。
アデルを愛しているからこそ、心許されるようになってから抱きたいと思っていたからだ。
(だが、そうも言ってられなくなってきたな。アデルが、誰よりも愛おしいからこそ、傷つけたくない。あまり無理強いはしたくなかったが……。)
ゼルシウスが懸念していたように、確かに限界を感じつつあった。それだけ豊穣神としての女神アデルの力は強く、抗えぬ時があった。
男に抱かれたことがなく、処女神として聖なる力が強いからこそ、その力は鬼のグルトにとっては毒でしかなかった。
──愛する女を抱き、孕ませたい。
雄としての本能が理性を凌駕してしまう日が近いかもしれないとは思っていたが、それでもアデルの傍から離れることは出来なかった。
『大丈夫か、お主?』
最初は、窮地を救ってくれたアデルが何者なのか知りたかった。その名前を知り、言葉を交わすようになり、次第に欲は深くなっていた。
アデルが欲しくて、誰よりも強くなった。そうでなければ、アデルと契ることは不可能だった。ただの鬼では、見向きもされなかっただろう。
勇者より強くならなければ、アデルの傍にはいられない。それが己に課せられた宿命だった。グルトは愛する女を得るために、必死になって食らいついた。
念願叶って、アデルと契った時に、グルトは『アデルが愛するものは、すべて守る』と誓った。それは本心からの言葉だった。
しかし、腹の奥底から湧いてくるような劣情は隠しようがなかった。きっとゼルシウスには見抜かれていただろう。
グルトはゼルシウスに嫉妬していた。共に過ごした歳月の長さがそうさせたのかもしれないが、全幅の信頼を寄せた、アデルの甘えきった態度に、はらわたが煮えくり返るかのようだった。
(アデルの心も体も、俺のものだ……!)
グルトにとって、アデルは生きる指針だった。アデルが居なければ、グルトは鬼として生き、ただの鬼として死んでいただろう。
アデルと契った時、グルトは天にも昇る心地だった。アデルがグルトを選んでくれたことを、神に感謝した。生涯を賭けて愛そうと思った。
それは血を吐くような努力の末に、ようやく勝ち取った居場所だった。
(ゼルシウスはアデルのことを娘のように思ってはいるが、女としては見ていない)
ゼルシウスの英知には、何度も助けられた。ゼルシウスの助力がなければ、アデルはこの世に存在していなかったかもしれない。
酒宴もその時の礼をするためのもので、何日もかけて用意してきた。私的な感情で、ゼルシウスとの良好な関係に水を差すわけにはいかない。
そう思うことにより、平静を装うとしたがダメだった。
『ゼルシウス! 我は優しいそなたが、大好きじゃ!』
その言葉が聞こえた時、さぞや醜い顔を晒していたことだろう。
(……俺はアデルに、あのような抱擁をされたことがない)
そう思うと、ドクン、と大きく心臓が脈打った。
嫉妬で狂いそうになったのか、一瞬、時が止まったような感じがした。
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