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その後(マティアス編)上編
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「あら、帰ってきたの」
「そうだよ、僕の可愛い奥さん。今から愛し合おうかい?」
「謹んでお断りしますわ。今から朝食ですし」
「僕は朝食以下なのかい? ……ふふ、コレットらしいねえ、僕の誘いを無碍にするのは、君ぐらいなものだよ」
マティアスが来ると屋敷のメイドや侍女に手を出して孕まされることがあるから、今すぐ愛人たちのもとへ帰って欲しいわね、と思っていたら手の平に接吻をしてきた。ああ、このままベットに連れ込まれて朝食は無しになるのかしら、お腹が空いているのにと思っていると、マティアスは懐から何かを取り出した。
「そうそう、コレットに似合いそうな口紅を、先日手に入れたから持ってきたよ。こんな色の口紅、好きだろうう?」
「……好きよ、ずっと欲しかった口紅だし。1年も前から欠品してたのに、よく手に入れたわね?」
「懇意にしている人がいてね。僕には秘密のコネクションがあるんだよ」
どうせ女関係だろうな、と思う。
「また愛人増えたの?」と聞くと「安心して。コレット以上の奥さんはいないよ。彼女たちは、ただの穴だからねえ」と言う。
「あなたの愛人たちに聞かせてあげたいわ」
「あ、コレット以上の穴もないけど」
「それ誉め言葉になってると思ってる?」
「もちろん。最高の穴だよ」と言って笑う。
この女たらしの放浪家は、私以外にも各地に愛人を囲い、子をなしている。「本命は君だけだよ」と言われるけど、その本心は分からない。
私がその行動を戒めたとしても、まるで蝶の様にふわふわと花から花のもとに渡って、遊び暮らす。他の夫たちも、その行動を戒めるような事はしない。
「他所に作った女性は、ちゃんと管理してくださいね」と釘を刺してみるが「分かった分かった。その内、なんとかするよ」とあまりにも軽い返事で辟易する。
たまに愛人が暴走して「マティアスは私のものよ」と言って家まで殴りかかってくることがあるが、たいてい「私どもの奥様に何か御用ですか?」と殺気立つ子供たちに引っ込む。
マティアスは、愛人が家まで押しかけてきた事を知っても、反省する様子はなく「困った人だね」と言うだけで、お咎めなしである。
しかも「なんでもコレットには言うね」と言うけれども、現在進行形の愛人との恋愛話を、面白おかしく話してくるのだから、困惑してしまう。
寝取られ寝取り、浮気に不倫、耳が腐りそうだ。
不幸な女を量産するのは困りものだが、エドモンが連れてくる孤児の就職先を、放浪先で得た地縁を活かして斡旋してくれるので悪いことばかりではない。
「実はねぇ、美味しい果物を持参したんだ。蜜がたっぷりでさ……頬がとろけるぐらいに甘いんだよ。いっしょに朝食を食べようよ。僕もお腹減ったし、ちょっと話したいことがあるんだ」
「そうなの。いったい何を持ってきたの?」
「それはテーブルについてからのお楽しみだね」
私はマティアスと、その幼い子供モーリスと食べることにした。マティアスと、モーリスが逢うのは数か月ぶりぐらいではないだろうか。
「また大きくなったねぇ」とマティアスは目を細めて喜ぶが「僕に似なかったのは残念だねぇ。コレットに似て、容姿はあまり良くないね」と言うものだから、モーリスは憤慨して子供部屋に戻ってしまった。
「何しに来たの? まさかモーリスを怒らせるために?」
「まさか。ちゃんと用事があって来たんだよ」
モーリスがマティアスと会いたがっていたから、わざわざ連れてきたのに、最悪の展開になった。
「いっしょに食べるんじゃなかったわ」と不満を零すと、マティアスは「子供は苦手なんだよね。どう接したら良いかわからない。跡継ぎが元気に育ってるなら、それでいい」と、どこ吹く風だった。
「愛人に接するように愛想よく相手にすればいいじゃない」と嫌味を言うと「モーリスは男児じゃないか。女児だったら違ったかもね」と言われた。これにはカチンときて「私だって女児が欲しいわよ。しょうがないじゃない男児しか産まれないんだから」と反発した。
「贅沢な悩みだねえ」
「私も、そう思うわ」
姉は男児が産めなくて苦悩したのに、私は女児が産めなくて苦悩している。私は跡継ぎを産んでやるつもりなんて、これっぽっちもなかった。姉は女ばかりだったから、きっと私もそうだろうと思っていた。
それなのに、思いに反して男ばかり産まれる。しかも揃いも揃って高い魔力の男児だ。
友人たちには羨ましがられるが、女児だったらよかったのにと、屋敷の備品を壊しまくるやんちゃ坊主たちを見て憎らし気に思うのだ。「ママが来たぞー!」と、エドモンが連れてきた孤児と共謀して、無邪気な犯人たちは、卓越した逃げ足を見せるのだった。
「そうだよ、僕の可愛い奥さん。今から愛し合おうかい?」
「謹んでお断りしますわ。今から朝食ですし」
「僕は朝食以下なのかい? ……ふふ、コレットらしいねえ、僕の誘いを無碍にするのは、君ぐらいなものだよ」
マティアスが来ると屋敷のメイドや侍女に手を出して孕まされることがあるから、今すぐ愛人たちのもとへ帰って欲しいわね、と思っていたら手の平に接吻をしてきた。ああ、このままベットに連れ込まれて朝食は無しになるのかしら、お腹が空いているのにと思っていると、マティアスは懐から何かを取り出した。
「そうそう、コレットに似合いそうな口紅を、先日手に入れたから持ってきたよ。こんな色の口紅、好きだろうう?」
「……好きよ、ずっと欲しかった口紅だし。1年も前から欠品してたのに、よく手に入れたわね?」
「懇意にしている人がいてね。僕には秘密のコネクションがあるんだよ」
どうせ女関係だろうな、と思う。
「また愛人増えたの?」と聞くと「安心して。コレット以上の奥さんはいないよ。彼女たちは、ただの穴だからねえ」と言う。
「あなたの愛人たちに聞かせてあげたいわ」
「あ、コレット以上の穴もないけど」
「それ誉め言葉になってると思ってる?」
「もちろん。最高の穴だよ」と言って笑う。
この女たらしの放浪家は、私以外にも各地に愛人を囲い、子をなしている。「本命は君だけだよ」と言われるけど、その本心は分からない。
私がその行動を戒めたとしても、まるで蝶の様にふわふわと花から花のもとに渡って、遊び暮らす。他の夫たちも、その行動を戒めるような事はしない。
「他所に作った女性は、ちゃんと管理してくださいね」と釘を刺してみるが「分かった分かった。その内、なんとかするよ」とあまりにも軽い返事で辟易する。
たまに愛人が暴走して「マティアスは私のものよ」と言って家まで殴りかかってくることがあるが、たいてい「私どもの奥様に何か御用ですか?」と殺気立つ子供たちに引っ込む。
マティアスは、愛人が家まで押しかけてきた事を知っても、反省する様子はなく「困った人だね」と言うだけで、お咎めなしである。
しかも「なんでもコレットには言うね」と言うけれども、現在進行形の愛人との恋愛話を、面白おかしく話してくるのだから、困惑してしまう。
寝取られ寝取り、浮気に不倫、耳が腐りそうだ。
不幸な女を量産するのは困りものだが、エドモンが連れてくる孤児の就職先を、放浪先で得た地縁を活かして斡旋してくれるので悪いことばかりではない。
「実はねぇ、美味しい果物を持参したんだ。蜜がたっぷりでさ……頬がとろけるぐらいに甘いんだよ。いっしょに朝食を食べようよ。僕もお腹減ったし、ちょっと話したいことがあるんだ」
「そうなの。いったい何を持ってきたの?」
「それはテーブルについてからのお楽しみだね」
私はマティアスと、その幼い子供モーリスと食べることにした。マティアスと、モーリスが逢うのは数か月ぶりぐらいではないだろうか。
「また大きくなったねぇ」とマティアスは目を細めて喜ぶが「僕に似なかったのは残念だねぇ。コレットに似て、容姿はあまり良くないね」と言うものだから、モーリスは憤慨して子供部屋に戻ってしまった。
「何しに来たの? まさかモーリスを怒らせるために?」
「まさか。ちゃんと用事があって来たんだよ」
モーリスがマティアスと会いたがっていたから、わざわざ連れてきたのに、最悪の展開になった。
「いっしょに食べるんじゃなかったわ」と不満を零すと、マティアスは「子供は苦手なんだよね。どう接したら良いかわからない。跡継ぎが元気に育ってるなら、それでいい」と、どこ吹く風だった。
「愛人に接するように愛想よく相手にすればいいじゃない」と嫌味を言うと「モーリスは男児じゃないか。女児だったら違ったかもね」と言われた。これにはカチンときて「私だって女児が欲しいわよ。しょうがないじゃない男児しか産まれないんだから」と反発した。
「贅沢な悩みだねえ」
「私も、そう思うわ」
姉は男児が産めなくて苦悩したのに、私は女児が産めなくて苦悩している。私は跡継ぎを産んでやるつもりなんて、これっぽっちもなかった。姉は女ばかりだったから、きっと私もそうだろうと思っていた。
それなのに、思いに反して男ばかり産まれる。しかも揃いも揃って高い魔力の男児だ。
友人たちには羨ましがられるが、女児だったらよかったのにと、屋敷の備品を壊しまくるやんちゃ坊主たちを見て憎らし気に思うのだ。「ママが来たぞー!」と、エドモンが連れてきた孤児と共謀して、無邪気な犯人たちは、卓越した逃げ足を見せるのだった。
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