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その後(エドモン編)上編

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キャー、と糸を引くような、女性の甲高い悲鳴が聞こえ、私は持っていたお茶のカップをテーブルに置いた。

「マーガレット! もぅ! またエドモンね!」
「奥様、庭に行かれるのは危険です!」
「大丈夫よ、あんなもの。死んでるじゃない」

とぷりぷりと怒りながら、私は侍女のマーガレットを連れて外に出た。

「……やっぱり!」

収納魔法で、庭の片隅に置いてあった魔物の死骸を次々に収めていく。
私が14歳の誕生日に神様から授かったスキルは収納。冒険者ならともかく、下級貴族の娘が持っていても、さほど使い勝手の良いスキルではなかった。どうせなら治癒スキルが良かったのに、と思ったが、実際に使ってみると意外に便利である。先生と結婚しようと思っていた頃なんかは、新婚生活で使うあれこれを収納で運ぼうと思ったりと、薔薇色の生活を夢見ていたぐらいである。
エドモンを含め、5人の夫たちのせいで甘い夢は破れてしまったけれども。

「コレット。これで足りるか?」
「……十分すぎるわよ」
「なら良かった」

死骸の横に立っているのは、今回の騒ぎを引き起こした張本人、エドモンだ。……腰を抜かしたのか、動けなくなっている家庭教師のイザベルも居る。
エドモンの事はあらかじめイザベルを採用した際に伝えてあったが、話に聞くのと実際に見るとでは雲泥の差だろう。まだこの家庭教師は数日しか働いていないのだ。ただでさえ家庭教師は居ついてくれないのに、前任者のように、また辞めるとか言い出さないか心配だ。

エドモンは軍人で、家を留守にする事が多い。戦地で司令官として目まぐるしい活躍を見せているらしいが、本人としては一兵卒として戦うほうが性分にあっていたと零す。多忙な日々を過ごしているらしく、数か月家を不在にすることもざらだが、前触れなく、今日みたいにふらりと帰宅する時がある。その際、途中で寄り道して、見かけた魔物を倒しては、エドモンが使役する騎獣で、この家の庭へ獲物を運ぶ。

それだけならまだいいが、戦争で行き場を失った孤児を、庭に放置していく。稀に「殺してやる!」と荒んでいる子供も居るが、たいていの子供は怯えた様子で立ち尽くしていたり、泣きながら座り込んだりしていた。
そういった身寄りのない孤児を、私は屋敷で雇って仕事を覚えさせる。ある程度働いて仕事を覚えて、お金が貯まったら、推薦状を書いて本人の希望に沿うように努めている。

魔物の解体処理は、解体処理の知識とスキルを持つマーガレットに任せている。マーガレットから知識を教えてもらい、ギルドに就職した子供も複数いる。
ギルドに魔物を持っていけば解体処理はしてくれるが、お金がかかる。そうして節約して得たお金は、孤児たちの生活費に補填している。
子供たちは可愛いし、懐いてくれる。世話するのは苦ではないけれど、心に傷を負っている子供たちが多く、人間関係がすっごく面倒である。
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