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「この度は、村の危機を救って頂いて、ありがとうございます……!」

勇者が村人から手渡されたのは、銀貨や銅貨の入った、古びた皮の袋だった。

「これは……?」
「少ないですが、お約束していた報酬です……!」

勇者は「……報酬は討伐した魔物の角と魔石で十分です。畑が魔物にやられて、生活が苦しいと聞きました。このお金で、スープとパンを食べさせてください」と言って、報酬の受け取りを固辞した。

村人たちは勇者の言動に感動し、称賛した。

勇者が素晴らしい人物であるとの噂は、たちまちに拡散された。

だが、それは名声を欲しない勇者にとって、どうでも良い出来事の一つだった。

「予定より、帰るのが遅れてしまったな」

勇者は魔物の討伐が終わると、すぐに騎竜に跨り、沈む太陽を追いかけるように空を飛んで、山奥にある自宅に戻った。

「ただいま、ウェルダー」
「おかえりなさいませ、ご主人様」

ウェルダーは、勇者カインが迷宮の最下層で見つけた人造の人間――いわゆるゴーレムだった。

手足が壊れ、ゴミ捨て場に廃棄されていたウェルダーを修復した勇者カインに忠誠を誓い、今は勇者カインの腹心の部下として、公私を支えていた。

「アイビスは僕の居ない間、よい子にしていたかい?」
「それはもう。すでに湯浴みも済ませております」

勇者カインは品行方正で、勇者らしい勇者だったが、唯一、欠点があった。

それは、ウェルダー以外に知る者が居ない、勇者らしからぬ悪い行いだったが、勇者カインにとって、なくてはならないものだった。

魔物と戦い、善行を積みながら、ずっと勇者カインは探していた。
魔王アイビスを初めて見た時、勇者カインは衝撃を受けた。

(これだ……! 俺に足りなかったのは、これだったんだ……!)

魔王アイビスを圧倒的な力でねじ伏せると、勇者カインはアイビスを凌辱した。

何度、アイビスの中に出しても収まらぬ胸の高まりに、勇者カインは狂喜した。

「がっかりだわ。……真面目なだけで、つまらない人ね」

カインは手のかからない、良い子として育った。

「お前は、本当に良い子だわね。……だからこそ心配だわ」

与えた玩具も、欲しがる兄弟に渡してしまう。私利私欲がなく、執着心がない。

両親の心配は的中した。

勇者としては正しい、その性質は、カインという人間を苦しめた。
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