如月万里は寒がりです

いつ

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 元々は雑居ビルで全体がこんの物。診察室の一つにしている美容院だった場所に万里ばんりを通した。
 お客と美容師みたいに鏡越しに会話しながら、こんは猿の蚤取りみたいに万里ばんりの頭を丁寧に見ている。鏡に映る楽しそうに興奮しているこんの目に万里ばんりはドン引き。

 もちろん夢中になっているこん万里ばんりの表情に気付いていない。興奮しすぎて言葉に息が混ざってるのが余計に気持ち悪い。
「すごい……あっ、ええ!?凄い深さと角度!こんなやり方があるなんて……っ!」
 呼吸を整えても、鏡越しに万里ばんりを見る目はまだ興奮してる。

「すごいですよ~!
 どの針も絶妙な位置に……あ、針って言っても柔らかいし髪より細くて、受信やコントロールをしてます。それがどれも絶妙な位置に刺されてますよ!!」

 それから急に万里ばんりの両耳の辺りを両手で挟んで上を向かせた。顔の向きは逆の状態で目と目がゼロ距離。
「ショートした前例はいくつかありますが、元に戻ったのは君が初めてです!」

 反応に困っている万里ばんりを気にせず今度は後頭部を見やすいように頭を下に向かせた。
天海あまみなぎ……噂以上ですね……。
 ああっ、凄い!ここ凄いですよ!」

 別に害は無いんだから放って置けばいいのに、一生いっせいがノックをしてからドアを開けた。
「先生お久しぶりです。時間があったら僕も診てもらえますか?」

 確かにある意味好かれてるかもな。一生いっせいを見てこんは喜んだ。例えるなら一生いっせいはバイキング、万里ばんりは有名料理人の懐石料理。
「君が連れて来ていたんですか。なかなか来てくれないから色々溜まってますよ。
 とりあえず血を貰って、あとは新作の料理も試食してもらえますか?」

 こん……500mlは「とりあえず」で取っていい量じゃないし、それどころか献血の上限を超えている。料理っていうのもどうせ見た目は毎回同じ形の完全栄養食だろ。
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