如月万里は寒がりです

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 そんなことが起きていたと悟られないように落ち着いた空気を作る。
「今日は俺の部下も護衛につけた。戻って来たら医者の所へ送らせる。場所は知られたくないから万里ばんりには目隠しをしてもらうし君は留守番だよ」

 一生いっせいがチャイムを鳴らすタイミングで言い終えて、みんなの注意が玄関へ向かった隙に俺は本部に帰った。

 万里ばんりを診せる医者は腕だけは超一流で、雇ってくれる病院もなくて開業しても閑古鳥が鳴いていたのを父さんがスカウトして俺たち専属の医者にした。

 医者の名前は神社かんじゃこん。本名だから笑えない。患者が来ない原因が名前だけだと思ってるのが更に笑えない。

 おい一生いっせい、それを到着する前に言っちゃうなよ。
「大丈夫ですよ。一応医師免許も持っていますし、腕だけは超一流です」

 運転席の一生いっせいがのんびり言った言葉に、後部座席の万里ばんりが身を硬くする。
「『一応』とか『腕だけは』とか、それって大丈夫じゃないところがあるってことですよね?」

 万里ばんりの反応で余計なことを言ったと気付いたようで慌てて付け足す。
「あ、あとビジュアルも素敵です。178センチ60キロの28歳。ワイルドにも知的にも見える人でとても人懐っこいんですよ。普通なら誰もが彼氏にしたいと思うような人です」
「それで普通じゃないところは?」
 両手は拘束されてないのに目隠しを取らないし、こっそり見ようともしない。万里ばんりは意外に素直だな。

 病院じゃないどころか、どう見ても廃ビルの地下駐車場に止めた車の中から万里ばんりはなかなか降りようとしない。

「大丈夫ですよ。本当に危なくなったら助けに行きますから」
「なんで最初から一緒じゃないんですか?」
「俺が行ったら俺に夢中になって如月きさらぎさんを診てくれません。先生は俺のことが大好きなので」
 いつも思うけどなんでそう思えるんだろう。
 あとお前が行くべきタイミングは万里ばんりが危なくなったらじゃなくて、文音あやねの力がバレそうになったらだよ。
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