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習字教室に使っている部屋は庭を挟んで小さな公園に面していて目隠しになる物はない。今は夜8時少し前。真っ暗な外から明るい室内がよく見える。
文音は机を拭く大勝の姿を見て、玄関に周らずに掃き出し窓を軽くノックした。
窓を開けると12月の風が教室に一気に吹き込んでくる。大勝は作務衣姿で全身に受けても全く気にならなかった。我が家に、目の前に文音がいるということしか考えられない。というかそれすら処理できていない。
ただでさえ文音は背が小さくて、部屋の中で立っている大勝との差がすごい。大勝は正座になった。
「こんばんは」
「……どうも」
そっけない態度も文音は気にしない。
大勝がこの町で暮らす前、たまに遊びに来ていた頃から知っている。
だから心配で様子を見に来た。
「『少し離れた所から見納めみたいにお店を見てた』ってみーちゃんが言ってたからどうしたのかなって」
大勝が何も言えずにいると、文音は右手に持っていた紙袋を持ち上げた。両手を持ち手に掛けて差し出す。
「良かったらこれ食べて。
あ、下から持ってね。静電気がすごいから」
感動に震えながら受け取ろうとしたら階段から足音が聞こえた。
思わず膝立ちで振り返って背中に文音を隠す。
「大勝くん?」
二人でいるところを冷やかされるだけならいい。いやよくないけど、邪魔されたらどうしようと大勝は慌てた。
「ちょ、ちょっと待っててください。すぐに戻ります」
文音は机を拭く大勝の姿を見て、玄関に周らずに掃き出し窓を軽くノックした。
窓を開けると12月の風が教室に一気に吹き込んでくる。大勝は作務衣姿で全身に受けても全く気にならなかった。我が家に、目の前に文音がいるということしか考えられない。というかそれすら処理できていない。
ただでさえ文音は背が小さくて、部屋の中で立っている大勝との差がすごい。大勝は正座になった。
「こんばんは」
「……どうも」
そっけない態度も文音は気にしない。
大勝がこの町で暮らす前、たまに遊びに来ていた頃から知っている。
だから心配で様子を見に来た。
「『少し離れた所から見納めみたいにお店を見てた』ってみーちゃんが言ってたからどうしたのかなって」
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感動に震えながら受け取ろうとしたら階段から足音が聞こえた。
思わず膝立ちで振り返って背中に文音を隠す。
「大勝くん?」
二人でいるところを冷やかされるだけならいい。いやよくないけど、邪魔されたらどうしようと大勝は慌てた。
「ちょ、ちょっと待っててください。すぐに戻ります」
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