8 / 23
1
8
しおりを挟む
大勝は教室にいなければいけない時間が長い。文音が店に出てくるタイミングで大勝も出かけられるのは今だけ。
それを逃してしまい落ち込んでいるだけだと龍季は思っている。
「もしかして毎日こんなストーカーみたいなことしてるん?」
「毎日じゃありませんし、いつもはちゃんと買い物してます。あなたにバレないように3日まで会わないようにしようと思ったのに」
「そうやねえ。この見てくれなら落とせる可能性は高い。そしたら君は絶望。勝負は俺の勝ちやね」
「俺はそんなに弱くありませんよ。元々望みが薄いことも分かってますし」
「君が絶望しないだけじゃ俺の勝ちやで?
万里を起こさん限り君の負けや」
「夢より現実の方がずっと良いと思ってもらえばいいんですよね?
でもそもそも兄ちゃんは現実から逃げて眠っていたいなんて思う人じゃないんですけど」
「たいていの人が口ではそう言うんよ。俺はそんなに弱ないて。でも夢を見始めれば結局みんな起きようとしない。簡単に明け渡してくれるんやけどな」
期限は1月3日。初詣で戻らなかった時のことも今から考えておかなければと大勝も考える。無意識に思考を言葉に漏らしながら。
「マイペースでポジティブで、特別何かにこだわることがほとんど無かったからなあ」
龍季も考える。
「逆にどんな夢を見てるかが分かればなあ。
活躍でも出世でも彼女の夢でもないんやろ?他に何があるん?」
大勝は意外な言葉に立ち止まって万里の真剣な横顔を見た。
「協力してくれるんですか?」
龍季は甘い思考を嗤うような空気を作って大勝を見た。
「いいや?現実をもっと真逆の状況に持ってけば万里は完全に夢に堕ちる。俺の勝ちや」
大勝はムッとしたけれど内容は素直に受け止める。
「兄ちゃんの理想の状況かあ」
バイキングだろうかと考えてすぐに打ち消した。そんな子供みたいな性格ではないし、好きな食べ物は多くても大食いではない。大勝は一瞬でもそんな推理をしたことを心の中で万里に謝った。
龍季は自分の考えに集中していて大勝の表情が色々変わったことには気付かなかった。
「引っ越しの作業をしてても特別なこだわりは見つけられんかった。
あとはスマホ。やっぱりロックを解除したいなあ」
家に帰って二人で昼食をとり、その後大勝は教室に。
休みにしようかと迷ったけれど、子供たちと遊ぶのも万里は好きだったから休まないことにした。記憶喪失の人は普段通りの生活をするといいと聞いたことがあると、大勝なりに考えてのこと。
龍季も教室を休まないのは賛成だった。
教室が終わっても帰らない子供たちは両親の帰りが遅い。家に帰っても寝る時間近くまで一人の子もいることを調べて知っていた。
それにどのみち万里の体は休ませなければいけないのだから何もできない。ちなみに大勝の考えを知らない龍季は8時まで寝るつもりでいる。
龍季は万里の体を休ませ自分自身の目を開けた。
万里の体で昼食をとり、自分の体でまた昼食を食べる。感覚としては一日六食、状況によってはそれ以上。毎度のことながら凪が作ってくれたご飯でなければ食べる気がしない。
龍季が言うところの人生圧勝組はとんでもない秘密に関わらせてあげていると思っているだろう。
龍季が大人しく使われているのは凪を助け出す隙を窺っているいるから。人を人とも思わないやり方に加担する心を支えているのは凪とご飯を食べる時間。
人の本当の気持ちは周りからは分からないもの。凪だって龍季はたまたまテストプレーヤーとして連れてこられて偶然再会したと思っている。
万里だってそうだと龍季は改めて考えた。
本人にしか分からない情報が欲しいとなるとやはりスマホのロックを外したい。画像やネットの履歴には少なからず万里の趣味嗜好が出ているはず。
里奈お嬢様に疲れていたと言ってもたぶん万里にとって初めての恋人。二人の記念日を暗証番号にしている可能性は捨てきれない。
龍季はもう少し彼女を洗ってみることにした。
それを逃してしまい落ち込んでいるだけだと龍季は思っている。
「もしかして毎日こんなストーカーみたいなことしてるん?」
「毎日じゃありませんし、いつもはちゃんと買い物してます。あなたにバレないように3日まで会わないようにしようと思ったのに」
「そうやねえ。この見てくれなら落とせる可能性は高い。そしたら君は絶望。勝負は俺の勝ちやね」
「俺はそんなに弱くありませんよ。元々望みが薄いことも分かってますし」
「君が絶望しないだけじゃ俺の勝ちやで?
万里を起こさん限り君の負けや」
「夢より現実の方がずっと良いと思ってもらえばいいんですよね?
でもそもそも兄ちゃんは現実から逃げて眠っていたいなんて思う人じゃないんですけど」
「たいていの人が口ではそう言うんよ。俺はそんなに弱ないて。でも夢を見始めれば結局みんな起きようとしない。簡単に明け渡してくれるんやけどな」
期限は1月3日。初詣で戻らなかった時のことも今から考えておかなければと大勝も考える。無意識に思考を言葉に漏らしながら。
「マイペースでポジティブで、特別何かにこだわることがほとんど無かったからなあ」
龍季も考える。
「逆にどんな夢を見てるかが分かればなあ。
活躍でも出世でも彼女の夢でもないんやろ?他に何があるん?」
大勝は意外な言葉に立ち止まって万里の真剣な横顔を見た。
「協力してくれるんですか?」
龍季は甘い思考を嗤うような空気を作って大勝を見た。
「いいや?現実をもっと真逆の状況に持ってけば万里は完全に夢に堕ちる。俺の勝ちや」
大勝はムッとしたけれど内容は素直に受け止める。
「兄ちゃんの理想の状況かあ」
バイキングだろうかと考えてすぐに打ち消した。そんな子供みたいな性格ではないし、好きな食べ物は多くても大食いではない。大勝は一瞬でもそんな推理をしたことを心の中で万里に謝った。
龍季は自分の考えに集中していて大勝の表情が色々変わったことには気付かなかった。
「引っ越しの作業をしてても特別なこだわりは見つけられんかった。
あとはスマホ。やっぱりロックを解除したいなあ」
家に帰って二人で昼食をとり、その後大勝は教室に。
休みにしようかと迷ったけれど、子供たちと遊ぶのも万里は好きだったから休まないことにした。記憶喪失の人は普段通りの生活をするといいと聞いたことがあると、大勝なりに考えてのこと。
龍季も教室を休まないのは賛成だった。
教室が終わっても帰らない子供たちは両親の帰りが遅い。家に帰っても寝る時間近くまで一人の子もいることを調べて知っていた。
それにどのみち万里の体は休ませなければいけないのだから何もできない。ちなみに大勝の考えを知らない龍季は8時まで寝るつもりでいる。
龍季は万里の体を休ませ自分自身の目を開けた。
万里の体で昼食をとり、自分の体でまた昼食を食べる。感覚としては一日六食、状況によってはそれ以上。毎度のことながら凪が作ってくれたご飯でなければ食べる気がしない。
龍季が言うところの人生圧勝組はとんでもない秘密に関わらせてあげていると思っているだろう。
龍季が大人しく使われているのは凪を助け出す隙を窺っているいるから。人を人とも思わないやり方に加担する心を支えているのは凪とご飯を食べる時間。
人の本当の気持ちは周りからは分からないもの。凪だって龍季はたまたまテストプレーヤーとして連れてこられて偶然再会したと思っている。
万里だってそうだと龍季は改めて考えた。
本人にしか分からない情報が欲しいとなるとやはりスマホのロックを外したい。画像やネットの履歴には少なからず万里の趣味嗜好が出ているはず。
里奈お嬢様に疲れていたと言ってもたぶん万里にとって初めての恋人。二人の記念日を暗証番号にしている可能性は捨てきれない。
龍季はもう少し彼女を洗ってみることにした。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
4
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる