マジカルカシマ

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そして冒頭

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 午後は予約が入ってないし人が来ればお兄ちゃんが分かる。それで1時を過ぎても食後のコーヒーでまったりしている時にキリトのスマホに通知が入ったんだ。
「依頼?」
「ううん。仲間内の交通情報。」

 スマホを見ながら答えていたキリトが真面目な顔で俺をみた。
「荒井病院の前が大渋滞。玉突き事故だって。保育園の送迎バスが巻き込まれててカオスって来てる」

 大変だ。新人や配置替えになった人が多いこの時期に聞き取りの難しい子供。きっとパニックになってる。
「兄さん、応援に行ってもいいかな?」
 兄さんは言葉通りに受け取ったような表情。
「応援?」
「きっと人手が足りなくて困ってるから手伝いに行きたいんだ。俺の部屋まで飛ばしてくれない?
 そこからなら歩いて行けるから」
「分かりました」

 お兄ちゃんは特に慌てる様子もなく立ち上がった。なんていうか、会ったことがある人以外への関心が薄いっていうか。今も行きたいっていう俺の気持ちを叶えてくれるだけで怪我人のことは心配してないんだろうな。

 瞬間移動は周りに物が無い方がいい。居住用玄関を出てお兄ちゃんが俺の両肩に手を置いた。それでトンって押されるままに一歩下がると移動してる。

 それがいつもの移動の仕方なのに。
「兄さん?」
 なぜか俺の両肩を掴んだまま押してくれない。
「良ちゃん……僕が上がってくるまでに何か食べたり飲んだりしました?」

 チョコプレートをつまみ食いしたことがバレた?
 別にこんな真剣に責められることじゃないよな?
「キリトが後で揉め事について知って気にしないようにって思っただけだよ。
それでマジカルカシマって書かれた……」
「はーい」

 チョコプレートを食べて「OPEN」を生クリームで隠しただけって言うつもりだった。
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