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Case1. 愛してるゲーム
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* 芽衣 *
私達は高校生になった。
彼の学力と志望動機を良い感じにコントロールして、同じ高校へ進学することに成功した。
嬉しい。嬉しい。
これで次の三年間も太一と遊べる。
だけどピンチだ。
最近、太一が強い。
身長は抜かされた。
運動では、もう勝てない。
どうにか「男女の違い」を盾にして「平均値との差で勝負」みたいな屁理屈で勝ち続けているけれど、そろそろ本当に負けてしまいそうだ。
それはダメ。許されない。
だって、まだ彼をメロメロにさせられていない。
だから考えた。
どうにか私が有利な勝負に誘導する方法を。
「私達、もう高校生だよ。かけっこで勝負とか、子供じゃないんだから」
「では、どのような勝負なら高校生らしいのですか?」
「ん~、そうだな~」
二人で登校する途中。
私は少し背伸びをして、彼の耳元で勝負の内容を囁く。
「愛してるゲーム、とか?」
「なんですか、それ」
「交互に愛を囁いて、先に照れた方が負けっていうゲーム」
「ふっ、くだらないゲームですね」
クソがっ、ちょっとはドキドキしろよ。バカ太一。
「はぁ、太一って本当に学習しないよね。いつも強気なのは最初だけ。結局、何をやっても私には勝てない。よわよわ。クソ雑魚」
「受けて立ちましょう。高校生になった俺は一味違うということを、わからせてやります」
「ふーん? じゃあ、先行は譲ってあげるね」
はい、私の勝ち。
ほんと太一ってば単純バカで助かる。
今さら私が照れるとか有り得ない。
だって毎日もっと凄いシミュレーションしてるから。
脳内で千回は妊娠している私が、今さら愛の言葉ひとつでドキドキするわけがない。
「どうしたの? 早くしなよ」
「……今、準備してます」
ぷふっ、なーんだ。照れてるじゃんか。
あーあ、もうゲーム終わっちゃったね。
でも負けさせてあげない。
このチャンスは絶対に逃さない。
さーて、どう攻めようかな。
でもその前に、まずはこの珍しい表情を目に焼き付けておこうかな。
はぁ、好き。ほんとカッコいい。
私好みの知的な感じに成長してくれた。泣き虫だった頃が遠い昔に思えるくらいだよ。
……なんか見つめ合ってたらお腹の奥が熱くなってきた。
おかしいな。
私が攻める側のはずなのに。
「ねぇ、まだ? 時間切れにするよ?」
「……もう少し」
「カウントダウンはじめまーす。じゅー、きゅー……」
「なっ、後付けのルールは卑怯ですよ!」
「なーな、ろーく……」
私はカウントを続けながら彼の隣に立つ。
べつに自分の顔を隠すためではない。本当なんだから。
「さーん、にーい、いーち……」
私は少し背伸びをして彼の耳元で告げる。
「ゼロ。うわぁ、太一ってば情けなーい。たった五文字の言葉も言えないんだぁ」
太一は耳が弱い。
こうやって囁くと、ビクビクッてなる。
その反応が面白いから、私は隙あらばこの距離で喋ることにしている。
「太一、大好きだよ」
最後にそっと囁いて、彼の背中側に立つ。
それからバレないように呼吸を整えて、クルッと彼の周囲を回った。
正面に立って、顔を見る。
彼は手で顔を隠しながらそっぽを向いた。
「あはっ、照れ過ぎじゃない? でもそうだよねぇ。太一ってばモテないからねぇ。私みたいな可愛い子に好きなんて言われたら、一生忘れられない思い出になっちゃうよね~」
何も言い返して来ない。
その反応が、とても楽しい。
なんだよなんだよ。
普段は私のこと少しも興味が無いみたいな態度のクセに、こういう攻撃にはよわよわなんだ。
「今日も私の勝ち」
私は勝利を宣言して、彼に背を向ける。
それから追い付かれないように早歩きをした。
……私の好きで、照れてくれた。
人の目が無ければ、拳を握り締め、ダンスを踊りたい気分だった。
とにもかくにも大成功だ。
この調子でドキドキさせたら、きっといつか私を好きになる!
覚悟しなさい!
私の魅力をわからせて、告白させてみせるんだから!
私達は高校生になった。
彼の学力と志望動機を良い感じにコントロールして、同じ高校へ進学することに成功した。
嬉しい。嬉しい。
これで次の三年間も太一と遊べる。
だけどピンチだ。
最近、太一が強い。
身長は抜かされた。
運動では、もう勝てない。
どうにか「男女の違い」を盾にして「平均値との差で勝負」みたいな屁理屈で勝ち続けているけれど、そろそろ本当に負けてしまいそうだ。
それはダメ。許されない。
だって、まだ彼をメロメロにさせられていない。
だから考えた。
どうにか私が有利な勝負に誘導する方法を。
「私達、もう高校生だよ。かけっこで勝負とか、子供じゃないんだから」
「では、どのような勝負なら高校生らしいのですか?」
「ん~、そうだな~」
二人で登校する途中。
私は少し背伸びをして、彼の耳元で勝負の内容を囁く。
「愛してるゲーム、とか?」
「なんですか、それ」
「交互に愛を囁いて、先に照れた方が負けっていうゲーム」
「ふっ、くだらないゲームですね」
クソがっ、ちょっとはドキドキしろよ。バカ太一。
「はぁ、太一って本当に学習しないよね。いつも強気なのは最初だけ。結局、何をやっても私には勝てない。よわよわ。クソ雑魚」
「受けて立ちましょう。高校生になった俺は一味違うということを、わからせてやります」
「ふーん? じゃあ、先行は譲ってあげるね」
はい、私の勝ち。
ほんと太一ってば単純バカで助かる。
今さら私が照れるとか有り得ない。
だって毎日もっと凄いシミュレーションしてるから。
脳内で千回は妊娠している私が、今さら愛の言葉ひとつでドキドキするわけがない。
「どうしたの? 早くしなよ」
「……今、準備してます」
ぷふっ、なーんだ。照れてるじゃんか。
あーあ、もうゲーム終わっちゃったね。
でも負けさせてあげない。
このチャンスは絶対に逃さない。
さーて、どう攻めようかな。
でもその前に、まずはこの珍しい表情を目に焼き付けておこうかな。
はぁ、好き。ほんとカッコいい。
私好みの知的な感じに成長してくれた。泣き虫だった頃が遠い昔に思えるくらいだよ。
……なんか見つめ合ってたらお腹の奥が熱くなってきた。
おかしいな。
私が攻める側のはずなのに。
「ねぇ、まだ? 時間切れにするよ?」
「……もう少し」
「カウントダウンはじめまーす。じゅー、きゅー……」
「なっ、後付けのルールは卑怯ですよ!」
「なーな、ろーく……」
私はカウントを続けながら彼の隣に立つ。
べつに自分の顔を隠すためではない。本当なんだから。
「さーん、にーい、いーち……」
私は少し背伸びをして彼の耳元で告げる。
「ゼロ。うわぁ、太一ってば情けなーい。たった五文字の言葉も言えないんだぁ」
太一は耳が弱い。
こうやって囁くと、ビクビクッてなる。
その反応が面白いから、私は隙あらばこの距離で喋ることにしている。
「太一、大好きだよ」
最後にそっと囁いて、彼の背中側に立つ。
それからバレないように呼吸を整えて、クルッと彼の周囲を回った。
正面に立って、顔を見る。
彼は手で顔を隠しながらそっぽを向いた。
「あはっ、照れ過ぎじゃない? でもそうだよねぇ。太一ってばモテないからねぇ。私みたいな可愛い子に好きなんて言われたら、一生忘れられない思い出になっちゃうよね~」
何も言い返して来ない。
その反応が、とても楽しい。
なんだよなんだよ。
普段は私のこと少しも興味が無いみたいな態度のクセに、こういう攻撃にはよわよわなんだ。
「今日も私の勝ち」
私は勝利を宣言して、彼に背を向ける。
それから追い付かれないように早歩きをした。
……私の好きで、照れてくれた。
人の目が無ければ、拳を握り締め、ダンスを踊りたい気分だった。
とにもかくにも大成功だ。
この調子でドキドキさせたら、きっといつか私を好きになる!
覚悟しなさい!
私の魅力をわからせて、告白させてみせるんだから!
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