日刊幼女みさきちゃん!

下城米雪

文字の大きさ
上 下
185 / 221
最終章 孤独を越えて

SS:ママがけっこんします!

しおりを挟む

「ついに!? おめでとう!!」
「ありがとうございます!!」

 えー? もうケッコンしてるんじゃないのー?
 もういっかい? おかしくね?

 だんしうるさい! だまってて!
 みさきちゃんよりあしおそいくせに!

 おまえのほうがおそいだろ!
 わたしはいいの!

 みさきちゃんもなにか言って!
 ……ん?

 \かわいぃぃぃ/

 ――という具合に、話は一瞬で広まった。

 ゆいは嬉しい。
 ママが最近とても嬉しそうだから。

 二人で遊べる時間が少なくなっちゃったけど、ママが嬉しいのが一番だ。
 それに、みさきがずっと一緒に居るから寂しくない!

 あとはトマトさえ消えてくれれば完璧! ハリケーン!

「ただいま!」

 学校帰り、ゆいは誰もいない部屋に挨拶をした。
 最近は週替わりでゆいかみさきの部屋に住んでいて、今はみさきの部屋。

「おかえり」

 みさきが後ろから返事をして、二人は一緒に部屋へ入った。

 これから三時間くらいしたら、りょーくんが帰ってくる。
 それからまた二時間くらいしたら、ママが帰ってくる。

 その後は一緒に夜ご飯を食べて、お風呂に入って、歯を磨いて、後は寝るだけ。
 最近はそんな毎日だ。

 え、宿題?
 ちゃんとやってるよ? ……ほんとだよ?

「みさき! あそぼ!」
「ゆいちゃん、しゅくだい」
「……はい」

 ……やってるよ?

「うぅぅ! かんじ書くのめんどくさーい!」
「すこしだけ」

 二百字帳に一行ずつ漢字を書く宿題。
 ちょっと前までは、みさきと張り合っていっぱい漢字を書いていたゆいだけれど、既に覚えた漢字をひたすら書かされるのはメンドクサイ。やりたくない。でもやらないとみさきに怒られるから仕方ない。

「おわった!」
「……ん」
「あそぼ!」
「まだ」

 みさきは算数ドリルを取り出して、ゆいに差し出した。

「むむむ……」

 ゆいは素直に従って、さささっと指定されたページの問題を消化する。
 既に小学校の学習範囲をマスターしたゆいにとって、この程度の問題は敵じゃない。

「おわり!」
「……ん」
「あそぼ!」
「……ねる」
「みとめません!」
「トマト、たべる?」
「おやすみなさい!」

 みさきが代わりに遊んで……くれないこともあるけれど、りょーくんが帰ってくるまでの辛抱です!

「ただいまー」
「おかえりなさい!」

 りょーくんはママの次に良い人。

「あそぼ!」
「おう、何がしたい?」

 ちょっと大きいから、立って話していると首が痛くなるけど、ちゃんと遊んでくれる。

「けっこんしきごっこ!」
「そうか、どんな遊びなんだ?」
「ちゃーんちゃーからんらんらんらんっ♪ たーん、たたたー、らーららーんらんっ♪」

 それっぽいクラシックを口遊みながら、ゆいは奥の広い部屋まで歩いた。
 それからバッと振り向いて、龍誠の向かって言う。

「ちかいますかっ!?」

 唐突な発言に、龍誠は「そこだけ知ってるんだろうな」と思った。
 笑ってしまいそうになる気持ちを何とか抑えて、彼はゆいの目の前で跪く。

「はい、誓います」
「なにをですか!?」

 何を……?
 問われた龍誠はうーんと考えて、

「ゆいちゃんのママのこと、絶対幸せにするよ」
「ごうかく!」
「ははが、ありがとう。じゃあ手洗いうがいするから、ちょっと待っててくれ」
「はい!」

 元気に手を挙げて返事をしたゆい。
 龍誠は宣言通り手洗いうがいをして、

「ところで、みさきは今日も寝てるのか?」
「そう! あそんでくれない!」
「そうか」

 寝る子は育つという言葉通り、みさきはスクスク成長している。
 しかし、まだまだ身体は小さくて、相当の体力しかないから寝てばかりなのだろうと龍誠は考察する。

「まあ、ご飯が出来たら起きてくるだろ」
「またすぐねちゃう!」
「ゆいちゃんは一緒に寝ないのか?」
「げんきいっぱい!」

 ゆいは「シュッシュッ」と言いながらステップを踏んで、有り余る元気をアピールする。

「りょーくん!」
「どうした、ボクシングか?」
「あたしは、弟がいいです!」
「っ!?」

 唐突な言葉に、龍誠は凍り付いた。

「そ、そうか。ゆいちゃんは弟が欲しいのか」
「いつごろですか!?」
「さあ……いつだろうな」
「さいきんベタベタしてますね!」

 龍誠は頭を抱える。

「学校で、そういうことも教えてもらうのか?」
「どういうこと?」

 きょとんと首を傾けるゆい。
 それから続けて、 

「ケッコンしたら、とくしゅのうりょくがゲットできるんじゃないの?」

 誰から聞いたのだろうと思いながら脱力して、龍誠は言う。

「ああ、だけど直ぐには使えないんだ」
「なんと!?」

 ゆいは驚愕の事実を知ってしまった!

「どうやったらつかえますか!?」
「そうだな……」

 龍誠はちょっと意地悪な顔になって、

「ゆいちゃんがトマトを好きになったら、使えるようになるかもな」
「あきらめます!」

 即答したゆい。
 今度こそ龍誠は耐えられなくて、大きな声で笑った。

 それから二人は結衣が帰ってくるまで楽しく遊んだ。
 龍誠は結衣と一緒に夜食を作って、その匂いにつられてみさきも起きてきた。

「いただきます!」

 そして、誰一人として血の繋がっていない家族の時間が始まる。

 一方で、

 結衣と龍誠は、
 少しだけぎこちない様子だった。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

【完結】家族にサヨナラ。皆様ゴキゲンヨウ。

くま
恋愛
「すまない、アデライトを愛してしまった」 「ソフィア、私の事許してくれるわよね?」 いきなり婚約破棄をする婚約者と、それが当たり前だと言い張る姉。そしてその事を家族は姉達を責めない。 「病弱なアデライトに譲ってあげなさい」と…… 私は昔から家族からは二番目扱いをされていた。いや、二番目どころでもなかった。私だって、兄や姉、妹達のように愛されたかった……だけど、いつも優先されるのは他のキョウダイばかり……我慢ばかりの毎日。 「マカロン家の長男であり次期当主のジェイコブをきちんと、敬い立てなさい」 「はい、お父様、お母様」 「長女のアデライトは体が弱いのですよ。ソフィア、貴女がきちんと長女の代わりに動くのですよ」 「……はい」 「妹のアメリーはまだ幼い。お前は我慢しなさい。下の子を面倒見るのは当然なのだから」 「はい、わかりました」 パーティー、私の誕生日、どれも私だけのなんてなかった。親はいつも私以外のキョウダイばかり、 兄も姉や妹ばかり構ってばかり。姉は病弱だからと言い私に八つ当たりするばかり。妹は我儘放題。 誰も私の言葉を聞いてくれない。 誰も私を見てくれない。 そして婚約者だったオスカー様もその一人だ。病弱な姉を守ってあげたいと婚約破棄してすぐに姉と婚約をした。家族は姉を祝福していた。私に一言も…慰めもせず。 ある日、熱にうなされ誰もお見舞いにきてくれなかった時、前世を思い出す。前世の私は家族と仲良くもしており、色々と明るい性格の持ち主さん。 「……なんか、馬鹿みたいだわ!」 もう、我慢もやめよう!家族の前で良い子になるのはもうやめる! ふるゆわ設定です。 ※家族という呪縛から解き放たれ自分自身を見つめ、好きな事を見つけだすソフィアを応援して下さい! ※ざまあ話とか読むのは好きだけど書くとなると難しいので…読者様が望むような結末に納得いかないかもしれません。🙇‍♀️でも頑張るます。それでもよければ、どうぞ! 追加文 番外編も現在進行中です。こちらはまた別な主人公です。

元平民の義妹は私の婚約者を狙っている

カレイ
恋愛
 伯爵令嬢エミーヌは父親の再婚によって義母とその娘、つまり義妹であるヴィヴィと暮らすこととなった。  最初のうちは仲良く暮らしていたはずなのに、気づけばエミーヌの居場所はなくなっていた。その理由は単純。 「エミーヌお嬢様は平民がお嫌い」だから。  そんな噂が広まったのは、おそらく義母が陰で「あの子が私を母親だと認めてくれないの!やっぱり平民の私じゃ……」とか、義妹が「時々エミーヌに睨まれてる気がするの。私は仲良くしたいのに……」とか言っているからだろう。  そして学園に入学すると義妹はエミーヌの婚約者ロバートへと近づいていくのだった……。

私だけが赤の他人

有沢真尋
恋愛
 私は母の不倫により、愛人との間に生まれた不義の子だ。  この家で、私だけが赤の他人。そんな私に、家族は優しくしてくれるけれど……。 (他サイトにも公開しています)

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。

氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。 私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。 「でも、白い結婚だったのよね……」 奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。 全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。 一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。 断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

廃妃の再婚

束原ミヤコ
恋愛
伯爵家の令嬢としてうまれたフィアナは、母を亡くしてからというもの 父にも第二夫人にも、そして腹違いの妹にも邪険に扱われていた。 ある日フィアナは、川で倒れている青年を助ける。 それから四年後、フィアナの元に国王から結婚の申し込みがくる。 身分差を気にしながらも断ることができず、フィアナは王妃となった。 あの時助けた青年は、国王になっていたのである。 「君を永遠に愛する」と約束をした国王カトル・エスタニアは 結婚してすぐに辺境にて部族の反乱が起こり、平定戦に向かう。 帰還したカトルは、族長の娘であり『精霊の愛し子』と呼ばれている美しい女性イルサナを連れていた。 カトルはイルサナを寵愛しはじめる。 王城にて居場所を失ったフィアナは、聖騎士ユリシアスに下賜されることになる。 ユリシアスは先の戦いで怪我を負い、顔の半分を包帯で覆っている寡黙な男だった。 引け目を感じながらフィアナはユリシアスと過ごすことになる。 ユリシアスと過ごすうち、フィアナは彼と惹かれ合っていく。 だがユリシアスは何かを隠しているようだ。 それはカトルの抱える、真実だった──。

処理中です...