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最終章 孤独を越えて
SS:もう、やだ、げんかい
しおりを挟む「ぐぅるるるるるるる……」
新学期。
ゆいは学校で唸っていた。
最近どうしても許せないことがある。
なにって、それは……
トマト多過ぎ!
いっつもトマト!
昨日もトマト!
今朝もトマト!
給食もトマト!
もう怒った!!
――そう、今のゆいは切れてる猫のようなものである。
近寄ったら引っかかれるよ。その傷、わりと残るからね。
「るーみみん☆ ゆいちゃんどしたの?」
「キシャァ!?」
睨み付けるゆい。
瑠海はハッとして、どこかへ走っていった。
数秒後、みさきを連れて戻ってくる。
「……ん?」
給食の後で眠たいみさき。
もう少しで授業も始まるし、どうでもいい用事だったら怒るよ? そんな気分。
「つうやく!」
瑠海に言われて、みさきはグルルルしているゆいに気が付いた。
「……」
とっても嫌そうな顔をしながら、みさきはゆいに顔を寄せた。
「ごにょごにょ」
「トマト、もうやだ」
「ごにょごにょ」
「ママ、さいきん、トマトばっかり」
通訳を始めたみさき。
うんうん頷きながら話を聞く瑠海。
「ごにょごにょ」
「もう、やだ、げんかい」
ゆいは涙目になりながら、みさきに意思を伝え続ける。
「ごにょごにょ」
「ママを、こらしめる?」
そこまで伝えた後、ゆいは大きく頷いて椅子の上に立つ。
「ちょうし乗ってる!」
そして高らかに声を上げた。
「うかれすぎ!」
そこで地団太を踏んで、
「なんでトマト!?」
結局はトマトである。
最初こそママ可愛いなぁと思って見ていた。しかし、ママはりょーくんに会えないと直ぐに寂しくなる。その憂さ晴らしにトマトを差し出してくる。たまらない。
「おしおき!!」
ゆいは生まれて初めてママに本気で怒っていた。
「アイデアぼしゅう!」
全力の感情表現に、いつしか他の児童たちも集まっていた。
なになにー?
どうしたのー?
ゆいは事情を説明する。
ちょっとママを困らせてやりたい。
さいふかくすー?
けしょうひんぼっしゅう!
スマホのなかをパパにみせる!
ゆいに寄せられる様々な意見。
しかし、ゆいはちょっと乗り気じゃない。
「……あんまり、こまらないのがいい」
よわきー!
ゆいちゃんよわきー!
「ふっふっふ」
突如、瑠海は不適に笑い始めた。
まさか!
るみみん!?
集まった視線。
それを一身に受けて、瑠海は言う。
「おめでたいけど、こまること!」
おめでたいけど!?
こまること!?
「それは!!」
それは!?
「できこん!」
ずこー!
もうけっこんしてるよー!
周囲からの総突っ込み。
しかし、戸崎さん家の事情を知っている瑠海は得意気な顔を続けて言う。
「レッツどうせい!」
果たして――ゆいは、その案を採用することにした。
ところで、その一部始終を見ていた教師は思う。
彼女達は、一体どこで言葉を覚えてくるのだろうか……謎は深まるばかりだった。
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