165 / 221
間章 みさき色
SS:みさきとママ
しおりを挟む結衣に背中を預けた時、みさきは不思議な心地良さを覚えた。
りょーくんの膝に乗った時とは違う。
まゆちゃんの膝に乗っていた時とも違う。
何か、頭の後ろが柔らかくて、気持ち良かったのだ。
みさきはあの感覚が忘れられない。
だから翌日の学校で、みさきは色んな人の膝の上に飛び乗った。
「わっ、びっくりした!」
と驚いたゆい。
「ちがう」
みさきはゆいの膝から離れる。
「ふふくもうしたてます!」
突然膝に乗られて、違うと言い捨てられ、憤慨するゆい。
みさきは無視して、次に瑠海の膝に飛び乗った。
「みゃっ!? びっくりした。みさきどうしたの?」
「……ちがう」
みさきは瑠海の膝から離れる。
「……るーみみん?」
何がなんだか分からない瑠海。
みさきは首を傾ける瑠海の前で、少しだけ立ち止まって考える。
何が違うのだろう。
ゆいちゃんのママとゆいちゃんは、大人と子供。
でも、りょーくんも大人で、まゆちゃんも大人。
りょーくんは男の子で、ゆいちゃんのママは女の子。でもまゆちゃんも女の子。
何が違う?
どこがちがう?
……ママ?
りょーくんはりょーくん。
まゆちゃんはまゆちゃん。
ゆいちゃんのママは、ママ。
もしかしたら、ママの膝の上は気持ちが良いのかもしれない。
みさきはママを探すことにした。
ん? ママってなに?
みさきは悩む。
その時、ちょうど視界に先生の姿が映った。
「ママ?」
みさきは先生に問いかけた。
先生は少しだけビックリした後、急にほっこりした表情で言う。
「先生はママじゃありません」
「……ん」
納得したみさき。
そのまま踵を返して、自分の席に戻った。
先生はみさきを目で追いかけながら、何が伝えたかったのかなと首を傾ける。
ムッとしてみさきを見るゆい。
不思議そうな顔でみさきを見る瑠海。
うーんと考え込むみさき。
授業中も。
ごはんの時も。
あの気持ち良さが忘れられない。
果たして次の休日。
みさきは結衣の膝の上に座っていた。
「みさき! あそぼ!」
ゆいが隣で体を揺らしても、
「みさき、遊んでやったらどうだ?」
龍誠が口添えしても、みさきは頑なに動かない。
「まあ、そういう日もあるのでしょう」
悪い気分ではない結衣。
結局、ゆいは龍誠が相手をすることになった。
またソファの上で二人きりになった結衣とみさき。
みさきは頭を柔らかい物の上に乗せて、この上ない満足感を得る。
結衣は突然みさきが懐いたことに少しばかり戸惑ったけれど、大人の女性に甘えたい気持ちがあるのかなと判断して、快く受け入れた。
「……ママ?」
「ふふふ。はい、ママですよー」
ママという存在だから寝心地が良いのですか? と訪ねたみさき。
予想通り甘えていると判断した結衣。
「……ん」
みさきはグッと背中を押し付ける。
結衣は柔らかい表情を見せて、みさきの頭を優しく撫でた。
二人の考えは食い違っているけれど、きっと気持ちは一致している。
みさきも結衣も心地良い。
そんなゆっくりとした時間が、暫く続くのだった。
0
お気に入りに追加
110
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完結】家族にサヨナラ。皆様ゴキゲンヨウ。
くま
恋愛
「すまない、アデライトを愛してしまった」
「ソフィア、私の事許してくれるわよね?」
いきなり婚約破棄をする婚約者と、それが当たり前だと言い張る姉。そしてその事を家族は姉達を責めない。
「病弱なアデライトに譲ってあげなさい」と……
私は昔から家族からは二番目扱いをされていた。いや、二番目どころでもなかった。私だって、兄や姉、妹達のように愛されたかった……だけど、いつも優先されるのは他のキョウダイばかり……我慢ばかりの毎日。
「マカロン家の長男であり次期当主のジェイコブをきちんと、敬い立てなさい」
「はい、お父様、お母様」
「長女のアデライトは体が弱いのですよ。ソフィア、貴女がきちんと長女の代わりに動くのですよ」
「……はい」
「妹のアメリーはまだ幼い。お前は我慢しなさい。下の子を面倒見るのは当然なのだから」
「はい、わかりました」
パーティー、私の誕生日、どれも私だけのなんてなかった。親はいつも私以外のキョウダイばかり、
兄も姉や妹ばかり構ってばかり。姉は病弱だからと言い私に八つ当たりするばかり。妹は我儘放題。
誰も私の言葉を聞いてくれない。
誰も私を見てくれない。
そして婚約者だったオスカー様もその一人だ。病弱な姉を守ってあげたいと婚約破棄してすぐに姉と婚約をした。家族は姉を祝福していた。私に一言も…慰めもせず。
ある日、熱にうなされ誰もお見舞いにきてくれなかった時、前世を思い出す。前世の私は家族と仲良くもしており、色々と明るい性格の持ち主さん。
「……なんか、馬鹿みたいだわ!」
もう、我慢もやめよう!家族の前で良い子になるのはもうやめる!
ふるゆわ設定です。
※家族という呪縛から解き放たれ自分自身を見つめ、好きな事を見つけだすソフィアを応援して下さい!
※ざまあ話とか読むのは好きだけど書くとなると難しいので…読者様が望むような結末に納得いかないかもしれません。🙇♀️でも頑張るます。それでもよければ、どうぞ!
追加文
番外編も現在進行中です。こちらはまた別な主人公です。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
元平民の義妹は私の婚約者を狙っている
カレイ
恋愛
伯爵令嬢エミーヌは父親の再婚によって義母とその娘、つまり義妹であるヴィヴィと暮らすこととなった。
最初のうちは仲良く暮らしていたはずなのに、気づけばエミーヌの居場所はなくなっていた。その理由は単純。
「エミーヌお嬢様は平民がお嫌い」だから。
そんな噂が広まったのは、おそらく義母が陰で「あの子が私を母親だと認めてくれないの!やっぱり平民の私じゃ……」とか、義妹が「時々エミーヌに睨まれてる気がするの。私は仲良くしたいのに……」とか言っているからだろう。
そして学園に入学すると義妹はエミーヌの婚約者ロバートへと近づいていくのだった……。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。
氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。
私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。
「でも、白い結婚だったのよね……」
奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。
全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。
一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。
断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。
廃妃の再婚
束原ミヤコ
恋愛
伯爵家の令嬢としてうまれたフィアナは、母を亡くしてからというもの
父にも第二夫人にも、そして腹違いの妹にも邪険に扱われていた。
ある日フィアナは、川で倒れている青年を助ける。
それから四年後、フィアナの元に国王から結婚の申し込みがくる。
身分差を気にしながらも断ることができず、フィアナは王妃となった。
あの時助けた青年は、国王になっていたのである。
「君を永遠に愛する」と約束をした国王カトル・エスタニアは
結婚してすぐに辺境にて部族の反乱が起こり、平定戦に向かう。
帰還したカトルは、族長の娘であり『精霊の愛し子』と呼ばれている美しい女性イルサナを連れていた。
カトルはイルサナを寵愛しはじめる。
王城にて居場所を失ったフィアナは、聖騎士ユリシアスに下賜されることになる。
ユリシアスは先の戦いで怪我を負い、顔の半分を包帯で覆っている寡黙な男だった。
引け目を感じながらフィアナはユリシアスと過ごすことになる。
ユリシアスと過ごすうち、フィアナは彼と惹かれ合っていく。
だがユリシアスは何かを隠しているようだ。
それはカトルの抱える、真実だった──。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる