127 / 221
第五章 未来のこと
引っ越しを決めた日
しおりを挟む
朱音とファミレスで話をしてから数日後。
昨日みさきの学校では始業式が行われ、三学期が始まった。
しかし翌日である今日は土曜日で、本格的に授業が始まるのは月曜日からになる。
俺個人としては初めから月曜日に始業式を行えよと思うのだが、きっとそうする理由があるのだろう。
ともあれ、今日もみさき色の一日が始まろうと――
『いいぃぃぃやっったぁあああああ!
《バキッ》
うえへぁアば!?』
……なんか、隣からスゲェ音がした。
*
俺はみさきと二人で小日向さんの部屋まで歩いてドアをノックした。
しかし返事は無く、ドアを開けると床に埋まった小日向さんと目があった。
とりあえず小日向さんを助けた後、簡単に事情を聞いた。
ちょっと嬉しいことがあって飛び跳ねたら床が抜けてしまったらしい。
「……死にたい」
穴の直ぐ近くで膝を抱えている小日向さん。
みさきはチラチラ穴の方を見ながら、小日向さんの背中を撫でていた。
「まあ、こんなボロアパートだし仕方ねぇよ」
「……ふひひ、でも天童さんの方は無事じゃないですか。私なんて天童さんと比べたら大人と子供くらいの身長差があるのに、この有り様でふへへ……死のう」
見たところ外傷は無い。部屋の中も穴が開いた以外は無事っぽいが、とにかく小日向さんの落ち込み方が半端じゃない。
「ほら、俺の部屋はアレだ。守り神が住んでるから」
「……わー、みさきちゃんすごいなー。レジェンドレアかなー? 諭吉さん何人くらい犠牲にしたら当たりますか? 表示上はゼロだが小数点以下に存在する確率で分母を明記していないから実質的には天文学的な数字が私の体重……死のう」
ダメだ、いつも以上に何を言ってるのか分からん。
「そういえばほら、嬉しいことがあったとか言ってなかったか?」
ハッとした様子で顔をあげて俺の方を見る小日向さん。
「聞いてください!」
「お、おう……」
「実はですね、さっき電話があってですね……ふ、ふひひ。新人賞で大賞に選ばれてしまいました!!」
パンパカパーンと言いながら拍手をする小日向さん。
俺も一緒になって拍手しながら、何の話なのか考える。
新人賞で、大将。
……新人戦で大将じゃねぇのか?
いやいや、小日向さんの職業的に新人賞で大賞って方が自然だ。
でも小日向さんって新人なのか? 二年前にはもう漫画家だったよな?
「その大賞ってやつに選ばれると、どうなるんだ?」
「お金がもらえます!!」
ド直球だな。
「あと連載が決まります!!」
「連載?」
「はい! 結構有名なとこなんですけど! そこに私の漫画が載ります!!」
「おー、なんかスゲェな」
「すごいです!!」
俺には知識が足りないからかピンと来ない内容だが、小日向さんの喜び方を見るに相当な事らしい。みさきも小日向さんの隣でパチパチ手を叩いている。
「それでもう私は舞い上がってしまって、うへへへ、今夜は散財するぞい! ……と思った矢先にこれです。ふへっ、これ修理代とか請求されるんですかね?」
「だ、大丈夫だろ。多分」
このアパートの管理人ってどんなヤツだったっけ。
入居初日に会って以来は一度も顔を見てねぇから忘れちまった。
まあ、この常識外れのアパートだからな……。
「……」
さておき、小日向さんの落ち込み具合がやばい。
こういう時こそ日頃の恩を返さねぇとな。
「小日向さん、お祝いに何か御馳走しようか」
「……よ、よろしいのでせう?」
「もちろんだ」
貯金なら結構あるからな。引っ越しの為に貯めてる金だが、こういう使い方をするのも悪くないだろう。
「で、では……ご厚意に甘えさせて頂きたく存じますん」
なぜか背筋を伸ばして指遊びを始めた小日向さん。
「実は私、前々から気になっていた老舗が在りて候」
綺麗に三指揃えて頭を下げた小日向さん。
さっきからテンションがおかしいのは新人賞がどうとかいう話で舞い上がってるからだよな? 実は頭を打ったりしてねぇよな?
「あっ、老舗といっても普通のレストランというか、語呂が良かったので採用しただけです」
「そうか、よく分からんが何でも言ってくれ」
「ん? あ、いえ、ふへへ、ありがとうございます」
今度は怪しいセールスマンみたいにひょこひょこ頭を下げる小日向さん。
やっぱり漫画を描くような人は引き出しが多いのか、この人の動きは見ていて飽きない。
そのうえ、面白い。
どれくらい面白いかって、みさきが隣で動きをマネしているくらいだ。
……みさき、りょーくん出来ればその動きはマネしてほしくないかなぁ。
「ええっと……この穴、どうしましょうか」
「とりあえず埋めればいいんじゃね? 深さもそんな……うわっ、なんだこれ」
穴を覗きこんで、思わず身を引いた。
そこには信じられないくらい悍《おぞ》ましい闇が広がっていて……。
「引っ越そう。こんなところにみさきを住ませるなんて有り得ない」
「……そ、そうですね」
俺と同じように穴を除き込んで言った小日向さん。
「……あの、とりあえず銭湯に向かってもいいですか? あっ、こんなバッチイ女が行ったら出禁になりますかね?」
「大丈夫だ小日向さん。その証拠に、わりと汚い物を嫌がるみさきも……」
俺と小日向さんは、ほぼ同時にみさきがいた場所を見た。
しかしそこにみさきはいなくて、ふと視線を感じて部屋の外を見ると、鼻をつまんで俺達を見守るみさきの姿があった。
「……死のう」
「違う! みさきは穴にビビっただけで小日向さんにビビったわけじゃない!」
頭から穴に飛び込もうとする小日向さんを全力で止める。
ちくしょうっ、気持ちは分かるし素直なところは大好きだがタイミング悪いぜみさきぃ!
「なんだかんだで先延ばしにしてたが、そろそろマジで引っ越しを考えねぇとな。みさきが家出したら大変だ」
「家出は無いと思いますけど……」
小日向さんは苦笑いした後、少しだけ真面目な顔になって、
「実はその、私も真剣にお引越しを検討しています。はい。商業での活動となると締め切りがキツそうですし、今の環境でも頑張れば大丈夫そうですけど、やっぱりその、もう少し文明レベルを上げたいという思いがあります。主にセキュリティ的なアレで……」
「セキュリティか……確かに、このアパート鍵もついてねぇからな」
「ほんとですよ。すっかり慣れちゃいましたけど、最初は寝るのとかすっごい怖かったです。ふひひ、これが田舎クオリティ」
慣れとは恐ろしいものだ。
少し考えるだけで多くの問題が浮かび上がる環境に生活していても、時間が経って順応すれば、それが当たり前となってしまう。
思えば、かなり長いこと此処で生活していたが……そろそろ潮時か。
「実は結構前から考えていたんですけど、なんだか居心地良くなっちゃいまして……」
小日向さんもこのアパートに愛着のような感情を抱いているのか、少し寂しそうに言った。
「はぁ、でも引っ越したらお金かかりますよね……安いとこでも三万円くらい。電気代とか合わせて諭吉さん五人は必要でしょうか? 安いアパートなら間取りはここと変わらないのに料金五倍、そんなにあったら、いちコミケできちゃいますよ……かといって高いところに住む余裕も無いですし」
少し早口で言って、うーんと考え込む。
思えば、自分のことで悩んでいる小日向さんを見るのは初めてかもしれない。
俺は素直に、力になりたいと思った。
それは今までの恩もあるけれど、きっとそれだけじゃない。
貸し借りとか無しに、彼女の助けになりたい。
漫画についての相談ならお手上げだったが、この案件なら俺も前々から考えていたことだ。
小日向さんの言う通り、引っ越しとなれば金がかかる。
この金は一回払えば終わりというものではなく、確実に毎月の負担を増やす出費となるだろう。しかし、負担を増やしたところで今と大きく生活レベルが変わるということは無いだろう。
銭湯や公園に行かずとも済んで、電気も家の中で手に入るようになる。
字面だけ見れば大きな変化があるように思えるけれど、家の外に出れば満足出来たことが、家の外に出なくても良くなるだけだ。それは、このアパートで長く生活した俺や小日向さんにとって、それほどのメリットにはならない。
かと言って、家賃が十万もするようなマンションに引っ越す程の余裕は無い。
その為に俺は貯金をしているのだ。
最近では仕事を貰えるようになって給料が徐々に上がり始めたけれど、大した額ではない。これから先みさきの為に金が必要になることもあるだろうし、今の段階で良い所に引っ越すのはキツイ。
ただ、アイデアはある。
ずっと考えていたことがある。
「なあ小日向さん。ここから小学校に向かって、もうちょい歩いた所にあるマンション、知ってるか?」
「えっと……あー、あのデッカイところですよね。あんなところに住めたらいいですけど……お値段すごそうです」
「九万円ちょいらしい」
「うへぇ、そんなにあったらシャイゼリアで二ヶ月暮らせますよ……」
小日向さんの例えは良く分からないが、金がかかるのは間違いない。
家賃だけで九万。
それが毎月で、他にも水道代とか電気代とか、いろんなことに金がかかる。
繰り返すが、そんな余裕は無い。
だけど、
「それ、半分ならどうだ?」
「……え?」
昨日みさきの学校では始業式が行われ、三学期が始まった。
しかし翌日である今日は土曜日で、本格的に授業が始まるのは月曜日からになる。
俺個人としては初めから月曜日に始業式を行えよと思うのだが、きっとそうする理由があるのだろう。
ともあれ、今日もみさき色の一日が始まろうと――
『いいぃぃぃやっったぁあああああ!
《バキッ》
うえへぁアば!?』
……なんか、隣からスゲェ音がした。
*
俺はみさきと二人で小日向さんの部屋まで歩いてドアをノックした。
しかし返事は無く、ドアを開けると床に埋まった小日向さんと目があった。
とりあえず小日向さんを助けた後、簡単に事情を聞いた。
ちょっと嬉しいことがあって飛び跳ねたら床が抜けてしまったらしい。
「……死にたい」
穴の直ぐ近くで膝を抱えている小日向さん。
みさきはチラチラ穴の方を見ながら、小日向さんの背中を撫でていた。
「まあ、こんなボロアパートだし仕方ねぇよ」
「……ふひひ、でも天童さんの方は無事じゃないですか。私なんて天童さんと比べたら大人と子供くらいの身長差があるのに、この有り様でふへへ……死のう」
見たところ外傷は無い。部屋の中も穴が開いた以外は無事っぽいが、とにかく小日向さんの落ち込み方が半端じゃない。
「ほら、俺の部屋はアレだ。守り神が住んでるから」
「……わー、みさきちゃんすごいなー。レジェンドレアかなー? 諭吉さん何人くらい犠牲にしたら当たりますか? 表示上はゼロだが小数点以下に存在する確率で分母を明記していないから実質的には天文学的な数字が私の体重……死のう」
ダメだ、いつも以上に何を言ってるのか分からん。
「そういえばほら、嬉しいことがあったとか言ってなかったか?」
ハッとした様子で顔をあげて俺の方を見る小日向さん。
「聞いてください!」
「お、おう……」
「実はですね、さっき電話があってですね……ふ、ふひひ。新人賞で大賞に選ばれてしまいました!!」
パンパカパーンと言いながら拍手をする小日向さん。
俺も一緒になって拍手しながら、何の話なのか考える。
新人賞で、大将。
……新人戦で大将じゃねぇのか?
いやいや、小日向さんの職業的に新人賞で大賞って方が自然だ。
でも小日向さんって新人なのか? 二年前にはもう漫画家だったよな?
「その大賞ってやつに選ばれると、どうなるんだ?」
「お金がもらえます!!」
ド直球だな。
「あと連載が決まります!!」
「連載?」
「はい! 結構有名なとこなんですけど! そこに私の漫画が載ります!!」
「おー、なんかスゲェな」
「すごいです!!」
俺には知識が足りないからかピンと来ない内容だが、小日向さんの喜び方を見るに相当な事らしい。みさきも小日向さんの隣でパチパチ手を叩いている。
「それでもう私は舞い上がってしまって、うへへへ、今夜は散財するぞい! ……と思った矢先にこれです。ふへっ、これ修理代とか請求されるんですかね?」
「だ、大丈夫だろ。多分」
このアパートの管理人ってどんなヤツだったっけ。
入居初日に会って以来は一度も顔を見てねぇから忘れちまった。
まあ、この常識外れのアパートだからな……。
「……」
さておき、小日向さんの落ち込み具合がやばい。
こういう時こそ日頃の恩を返さねぇとな。
「小日向さん、お祝いに何か御馳走しようか」
「……よ、よろしいのでせう?」
「もちろんだ」
貯金なら結構あるからな。引っ越しの為に貯めてる金だが、こういう使い方をするのも悪くないだろう。
「で、では……ご厚意に甘えさせて頂きたく存じますん」
なぜか背筋を伸ばして指遊びを始めた小日向さん。
「実は私、前々から気になっていた老舗が在りて候」
綺麗に三指揃えて頭を下げた小日向さん。
さっきからテンションがおかしいのは新人賞がどうとかいう話で舞い上がってるからだよな? 実は頭を打ったりしてねぇよな?
「あっ、老舗といっても普通のレストランというか、語呂が良かったので採用しただけです」
「そうか、よく分からんが何でも言ってくれ」
「ん? あ、いえ、ふへへ、ありがとうございます」
今度は怪しいセールスマンみたいにひょこひょこ頭を下げる小日向さん。
やっぱり漫画を描くような人は引き出しが多いのか、この人の動きは見ていて飽きない。
そのうえ、面白い。
どれくらい面白いかって、みさきが隣で動きをマネしているくらいだ。
……みさき、りょーくん出来ればその動きはマネしてほしくないかなぁ。
「ええっと……この穴、どうしましょうか」
「とりあえず埋めればいいんじゃね? 深さもそんな……うわっ、なんだこれ」
穴を覗きこんで、思わず身を引いた。
そこには信じられないくらい悍《おぞ》ましい闇が広がっていて……。
「引っ越そう。こんなところにみさきを住ませるなんて有り得ない」
「……そ、そうですね」
俺と同じように穴を除き込んで言った小日向さん。
「……あの、とりあえず銭湯に向かってもいいですか? あっ、こんなバッチイ女が行ったら出禁になりますかね?」
「大丈夫だ小日向さん。その証拠に、わりと汚い物を嫌がるみさきも……」
俺と小日向さんは、ほぼ同時にみさきがいた場所を見た。
しかしそこにみさきはいなくて、ふと視線を感じて部屋の外を見ると、鼻をつまんで俺達を見守るみさきの姿があった。
「……死のう」
「違う! みさきは穴にビビっただけで小日向さんにビビったわけじゃない!」
頭から穴に飛び込もうとする小日向さんを全力で止める。
ちくしょうっ、気持ちは分かるし素直なところは大好きだがタイミング悪いぜみさきぃ!
「なんだかんだで先延ばしにしてたが、そろそろマジで引っ越しを考えねぇとな。みさきが家出したら大変だ」
「家出は無いと思いますけど……」
小日向さんは苦笑いした後、少しだけ真面目な顔になって、
「実はその、私も真剣にお引越しを検討しています。はい。商業での活動となると締め切りがキツそうですし、今の環境でも頑張れば大丈夫そうですけど、やっぱりその、もう少し文明レベルを上げたいという思いがあります。主にセキュリティ的なアレで……」
「セキュリティか……確かに、このアパート鍵もついてねぇからな」
「ほんとですよ。すっかり慣れちゃいましたけど、最初は寝るのとかすっごい怖かったです。ふひひ、これが田舎クオリティ」
慣れとは恐ろしいものだ。
少し考えるだけで多くの問題が浮かび上がる環境に生活していても、時間が経って順応すれば、それが当たり前となってしまう。
思えば、かなり長いこと此処で生活していたが……そろそろ潮時か。
「実は結構前から考えていたんですけど、なんだか居心地良くなっちゃいまして……」
小日向さんもこのアパートに愛着のような感情を抱いているのか、少し寂しそうに言った。
「はぁ、でも引っ越したらお金かかりますよね……安いとこでも三万円くらい。電気代とか合わせて諭吉さん五人は必要でしょうか? 安いアパートなら間取りはここと変わらないのに料金五倍、そんなにあったら、いちコミケできちゃいますよ……かといって高いところに住む余裕も無いですし」
少し早口で言って、うーんと考え込む。
思えば、自分のことで悩んでいる小日向さんを見るのは初めてかもしれない。
俺は素直に、力になりたいと思った。
それは今までの恩もあるけれど、きっとそれだけじゃない。
貸し借りとか無しに、彼女の助けになりたい。
漫画についての相談ならお手上げだったが、この案件なら俺も前々から考えていたことだ。
小日向さんの言う通り、引っ越しとなれば金がかかる。
この金は一回払えば終わりというものではなく、確実に毎月の負担を増やす出費となるだろう。しかし、負担を増やしたところで今と大きく生活レベルが変わるということは無いだろう。
銭湯や公園に行かずとも済んで、電気も家の中で手に入るようになる。
字面だけ見れば大きな変化があるように思えるけれど、家の外に出れば満足出来たことが、家の外に出なくても良くなるだけだ。それは、このアパートで長く生活した俺や小日向さんにとって、それほどのメリットにはならない。
かと言って、家賃が十万もするようなマンションに引っ越す程の余裕は無い。
その為に俺は貯金をしているのだ。
最近では仕事を貰えるようになって給料が徐々に上がり始めたけれど、大した額ではない。これから先みさきの為に金が必要になることもあるだろうし、今の段階で良い所に引っ越すのはキツイ。
ただ、アイデアはある。
ずっと考えていたことがある。
「なあ小日向さん。ここから小学校に向かって、もうちょい歩いた所にあるマンション、知ってるか?」
「えっと……あー、あのデッカイところですよね。あんなところに住めたらいいですけど……お値段すごそうです」
「九万円ちょいらしい」
「うへぇ、そんなにあったらシャイゼリアで二ヶ月暮らせますよ……」
小日向さんの例えは良く分からないが、金がかかるのは間違いない。
家賃だけで九万。
それが毎月で、他にも水道代とか電気代とか、いろんなことに金がかかる。
繰り返すが、そんな余裕は無い。
だけど、
「それ、半分ならどうだ?」
「……え?」
0
お気に入りに追加
110
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完結】家族にサヨナラ。皆様ゴキゲンヨウ。
くま
恋愛
「すまない、アデライトを愛してしまった」
「ソフィア、私の事許してくれるわよね?」
いきなり婚約破棄をする婚約者と、それが当たり前だと言い張る姉。そしてその事を家族は姉達を責めない。
「病弱なアデライトに譲ってあげなさい」と……
私は昔から家族からは二番目扱いをされていた。いや、二番目どころでもなかった。私だって、兄や姉、妹達のように愛されたかった……だけど、いつも優先されるのは他のキョウダイばかり……我慢ばかりの毎日。
「マカロン家の長男であり次期当主のジェイコブをきちんと、敬い立てなさい」
「はい、お父様、お母様」
「長女のアデライトは体が弱いのですよ。ソフィア、貴女がきちんと長女の代わりに動くのですよ」
「……はい」
「妹のアメリーはまだ幼い。お前は我慢しなさい。下の子を面倒見るのは当然なのだから」
「はい、わかりました」
パーティー、私の誕生日、どれも私だけのなんてなかった。親はいつも私以外のキョウダイばかり、
兄も姉や妹ばかり構ってばかり。姉は病弱だからと言い私に八つ当たりするばかり。妹は我儘放題。
誰も私の言葉を聞いてくれない。
誰も私を見てくれない。
そして婚約者だったオスカー様もその一人だ。病弱な姉を守ってあげたいと婚約破棄してすぐに姉と婚約をした。家族は姉を祝福していた。私に一言も…慰めもせず。
ある日、熱にうなされ誰もお見舞いにきてくれなかった時、前世を思い出す。前世の私は家族と仲良くもしており、色々と明るい性格の持ち主さん。
「……なんか、馬鹿みたいだわ!」
もう、我慢もやめよう!家族の前で良い子になるのはもうやめる!
ふるゆわ設定です。
※家族という呪縛から解き放たれ自分自身を見つめ、好きな事を見つけだすソフィアを応援して下さい!
※ざまあ話とか読むのは好きだけど書くとなると難しいので…読者様が望むような結末に納得いかないかもしれません。🙇♀️でも頑張るます。それでもよければ、どうぞ!
追加文
番外編も現在進行中です。こちらはまた別な主人公です。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
元平民の義妹は私の婚約者を狙っている
カレイ
恋愛
伯爵令嬢エミーヌは父親の再婚によって義母とその娘、つまり義妹であるヴィヴィと暮らすこととなった。
最初のうちは仲良く暮らしていたはずなのに、気づけばエミーヌの居場所はなくなっていた。その理由は単純。
「エミーヌお嬢様は平民がお嫌い」だから。
そんな噂が広まったのは、おそらく義母が陰で「あの子が私を母親だと認めてくれないの!やっぱり平民の私じゃ……」とか、義妹が「時々エミーヌに睨まれてる気がするの。私は仲良くしたいのに……」とか言っているからだろう。
そして学園に入学すると義妹はエミーヌの婚約者ロバートへと近づいていくのだった……。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。
氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。
私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。
「でも、白い結婚だったのよね……」
奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。
全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。
一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。
断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。
廃妃の再婚
束原ミヤコ
恋愛
伯爵家の令嬢としてうまれたフィアナは、母を亡くしてからというもの
父にも第二夫人にも、そして腹違いの妹にも邪険に扱われていた。
ある日フィアナは、川で倒れている青年を助ける。
それから四年後、フィアナの元に国王から結婚の申し込みがくる。
身分差を気にしながらも断ることができず、フィアナは王妃となった。
あの時助けた青年は、国王になっていたのである。
「君を永遠に愛する」と約束をした国王カトル・エスタニアは
結婚してすぐに辺境にて部族の反乱が起こり、平定戦に向かう。
帰還したカトルは、族長の娘であり『精霊の愛し子』と呼ばれている美しい女性イルサナを連れていた。
カトルはイルサナを寵愛しはじめる。
王城にて居場所を失ったフィアナは、聖騎士ユリシアスに下賜されることになる。
ユリシアスは先の戦いで怪我を負い、顔の半分を包帯で覆っている寡黙な男だった。
引け目を感じながらフィアナはユリシアスと過ごすことになる。
ユリシアスと過ごすうち、フィアナは彼と惹かれ合っていく。
だがユリシアスは何かを隠しているようだ。
それはカトルの抱える、真実だった──。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる