109 / 221
第三章 りょーくんのうた
第十三話:みさきとりょーくん
しおりを挟む
ギコギコ、ぺたぺた。
土曜日の昼過ぎ。
みさきと龍誠はスーパーで集めたダンボールを切り貼りして、収納箱を作っていた。
お片付けだ。
全ては龍誠の一言から始まった。
みさきが住むようになってから、部屋の中には物が増えた。衣服や洗面用具、本や勉強道具など。種類はそれほど多くないが、やはり時間と共に数は増えていった。当然、どんどん増える物は狭い部屋を圧迫していった。
もちろん一箇所に集められてはいるものの、龍誠はそれを好ましく思わなかった。なにより図画工作の授業で作った紙のウサギについて話をするみさきが楽しそうだったというのが大きい。
これはもう収納用の箱を作るしかない。
購入なんて言葉は、今の龍誠の辞書には無い。
「上手いぞみさき。その調子だ」
「んっ」
龍誠の狙い通り、みさきは見るからに楽しそうな様子でガムテープをペタペタしていた。
多くの人が知っているように、ダンボールはガムテープによって耐久力を増し、全体をガムテープで囲めば水にも浮く。もちろん物理的な根拠を持った現象であり、貼るべき場所は決まっているのだが、何も考えずガムテープの海に沈めてもある程度の効果はある。
龍誠が作ろうとしているのは、四方を二重にした収納箱で、長持ちすることを意識している。その為には多くのパーツが必要で、龍誠は三十センチ定規を片手に、せっせとカッターナイフを動かしていた。そして切り分けられたダンボールは、みさきによってガムテープの化粧を施される。
「よし、これで最後だ。みさき、俺もガムテープ貼るの手伝った方がいいか?」
ふるふると首を振ったみさき。
こいつぁあたいの仕事なんだぜ、と龍誠は受け取った。
ぺたぺたガムテープを貼るみさきを騒がしく見守ること数分、全てのパーツがガムテープに包まれた。そのあとは滞り無くパーツを組み立てて、見事に収納箱が完成した。
ちょっとやそっとでは壊れないダンボール製の箱。一辺が1みさきセンチメートルもとい九十センチ程度の正方形で、服という文字を書いた紙が貼られている。
「よしみさき、服をたたんで片付けるぞ。どっちが多く片付けられるか競争だ!」
「ゆっくり」
ゲーム感覚で片付けようとした龍誠を冷静に止めたみさき。
こんな具合に――さらに個人用の箱と日用品用の箱が増えて、部屋の隅には合わせて四個の箱が並べられた。もちろん長い時間が経っていて、始めた時には真上で笑っていたはずの太陽は、今は真横であくびをしている。
「お疲れ様。どうだみさき、片付けた後の部屋は」
「ひろい」
うんと背伸びをして両手を広げた龍誠。
みさきは少し落ち着かない様子で、くるくる部屋の中を見ていた。
もちろん部屋が広くなったなんてことは無く、隅に積まれていた物が箱に収納されただけなのだが、それでも感覚としては部屋を大きくしたかのようである。
「若干ほこり臭いな。掃除機、いや、空気清浄機でも……って電気が無いんだった」
「でんき?」
この部屋は電気やガス、水道といった設備とは無縁だ。ポータブル電源という便利な道具によって電子ピアノへの電源供給は行われているが、もちろん大本となる電気は必要で、それは主に兄貴の店で盗電している。電子ピアノの分だけなら問題無いが、数が増えるとそれ以上に手間が掛かるし、また部屋が狭くなる。
「……掃除機なら小日向さんが持ってたよな。それ借りるか」
「ういーん?」
掃除機という単語に反応して、小学校で聞いた擬音を言ってみたみさき。龍誠は思わず破顔して、くすくすと肩を揺らした。その姿を見て、みさきは「りょーくんがよろこんでる」と嬉しくなる。
「ういーん」
もう一回。
「……ふふ」
少し間が開いて、龍誠は静かに笑った。
「ういーんっ」
嬉しくなってもう一回。
「みさき、どうした。掃除機大好きか?」
「……ん」
ちょっと悩んだ後に頷いたみさき。
これが龍誠に掃除機の購入を検討させることになったことをみさきは知らない。
「さて、小日向さんといえば、そろそろ風呂に入る時間だな。どうする?」
「うーん……おなかすいた」
「そうか、なら先に飯にするか」
「んっ、たべる」
最近ますます口数が増えてきたみさき。
それが龍誠にとっては堪らなく嬉しくて、もっとみさきと話をしたくなる。
「今日は何が食べたい?」
「ぎゅーどん」
「ははは、相変わらず大好きだな。でも、ここ三日続けて牛丼だろ? そろそろ野菜が食べたくならないか?」
「さらだばー?」
「そう、サラダバー」
「うーん……がっこう?」
「そうか、給食でちゃんと野菜が出るよな……」
「ん、たくさん」
給食の時間。
みさきの皿にはピーマンと人参が集まる。
それは他の子に押し付けられるからというわけでは無くて、苦手な子が量を減らしたせいで余った野菜をみさきが喜んで処理しているからだ。好き嫌いの無いみさきは何でも食べるけれど、おかわりできるのは余り物であるから、自然とピーマンや人参が集まることになる。
そんな事情は知らない龍誠。
学校で食べているのなら問題は無いのかと思いつつ、それだけで足りるのかとも思う。それに、いくら一食だけ健康的な食事をしていても朝はコンビニ弁当で夜は牛丼。それで将来的に健康被害が出ないかと考えると、とても不安になる。
「やっぱりサラダバーにしよう。いや、俺が食べたいから付き合ってくれ」
「……ん」
素直に頷いたみさき。
りょーくんが言うなら、しかたない。
「ありがとう。みさきは本当に良い子だな」
「……ひひ」
褒められて素直に嬉しいみさき。
「りょーくん」
「どうした?」
「…………」
何かを言おうとして、やっぱり言えなくて、みさきはぷいと顔を逸らす。
「みさき? いま俺なんか間違えたか?」
面白いくらいに取り乱す龍誠。
みさきは慌てて首を振って、ドアの近くまで走る。
それから少し背伸びをして、えいとドアノブを回した。
一歩外に出て、龍誠を促すみさき。
龍誠は「なんだったんだ……?」と肩を落として、みさきの後に続いた。
りょーくんの誕生日まで、あと半年と少し。
みさきの想いは、時間と共に大きくなる。
その一方で、龍誠が何をしているのかみさきは知らない。
もちろん龍誠もみさきが何をしているのか知らない。
けれども二人の日々は変わること無く続き、サプライズの日は少しずつ近付いていく。
土曜日の昼過ぎ。
みさきと龍誠はスーパーで集めたダンボールを切り貼りして、収納箱を作っていた。
お片付けだ。
全ては龍誠の一言から始まった。
みさきが住むようになってから、部屋の中には物が増えた。衣服や洗面用具、本や勉強道具など。種類はそれほど多くないが、やはり時間と共に数は増えていった。当然、どんどん増える物は狭い部屋を圧迫していった。
もちろん一箇所に集められてはいるものの、龍誠はそれを好ましく思わなかった。なにより図画工作の授業で作った紙のウサギについて話をするみさきが楽しそうだったというのが大きい。
これはもう収納用の箱を作るしかない。
購入なんて言葉は、今の龍誠の辞書には無い。
「上手いぞみさき。その調子だ」
「んっ」
龍誠の狙い通り、みさきは見るからに楽しそうな様子でガムテープをペタペタしていた。
多くの人が知っているように、ダンボールはガムテープによって耐久力を増し、全体をガムテープで囲めば水にも浮く。もちろん物理的な根拠を持った現象であり、貼るべき場所は決まっているのだが、何も考えずガムテープの海に沈めてもある程度の効果はある。
龍誠が作ろうとしているのは、四方を二重にした収納箱で、長持ちすることを意識している。その為には多くのパーツが必要で、龍誠は三十センチ定規を片手に、せっせとカッターナイフを動かしていた。そして切り分けられたダンボールは、みさきによってガムテープの化粧を施される。
「よし、これで最後だ。みさき、俺もガムテープ貼るの手伝った方がいいか?」
ふるふると首を振ったみさき。
こいつぁあたいの仕事なんだぜ、と龍誠は受け取った。
ぺたぺたガムテープを貼るみさきを騒がしく見守ること数分、全てのパーツがガムテープに包まれた。そのあとは滞り無くパーツを組み立てて、見事に収納箱が完成した。
ちょっとやそっとでは壊れないダンボール製の箱。一辺が1みさきセンチメートルもとい九十センチ程度の正方形で、服という文字を書いた紙が貼られている。
「よしみさき、服をたたんで片付けるぞ。どっちが多く片付けられるか競争だ!」
「ゆっくり」
ゲーム感覚で片付けようとした龍誠を冷静に止めたみさき。
こんな具合に――さらに個人用の箱と日用品用の箱が増えて、部屋の隅には合わせて四個の箱が並べられた。もちろん長い時間が経っていて、始めた時には真上で笑っていたはずの太陽は、今は真横であくびをしている。
「お疲れ様。どうだみさき、片付けた後の部屋は」
「ひろい」
うんと背伸びをして両手を広げた龍誠。
みさきは少し落ち着かない様子で、くるくる部屋の中を見ていた。
もちろん部屋が広くなったなんてことは無く、隅に積まれていた物が箱に収納されただけなのだが、それでも感覚としては部屋を大きくしたかのようである。
「若干ほこり臭いな。掃除機、いや、空気清浄機でも……って電気が無いんだった」
「でんき?」
この部屋は電気やガス、水道といった設備とは無縁だ。ポータブル電源という便利な道具によって電子ピアノへの電源供給は行われているが、もちろん大本となる電気は必要で、それは主に兄貴の店で盗電している。電子ピアノの分だけなら問題無いが、数が増えるとそれ以上に手間が掛かるし、また部屋が狭くなる。
「……掃除機なら小日向さんが持ってたよな。それ借りるか」
「ういーん?」
掃除機という単語に反応して、小学校で聞いた擬音を言ってみたみさき。龍誠は思わず破顔して、くすくすと肩を揺らした。その姿を見て、みさきは「りょーくんがよろこんでる」と嬉しくなる。
「ういーん」
もう一回。
「……ふふ」
少し間が開いて、龍誠は静かに笑った。
「ういーんっ」
嬉しくなってもう一回。
「みさき、どうした。掃除機大好きか?」
「……ん」
ちょっと悩んだ後に頷いたみさき。
これが龍誠に掃除機の購入を検討させることになったことをみさきは知らない。
「さて、小日向さんといえば、そろそろ風呂に入る時間だな。どうする?」
「うーん……おなかすいた」
「そうか、なら先に飯にするか」
「んっ、たべる」
最近ますます口数が増えてきたみさき。
それが龍誠にとっては堪らなく嬉しくて、もっとみさきと話をしたくなる。
「今日は何が食べたい?」
「ぎゅーどん」
「ははは、相変わらず大好きだな。でも、ここ三日続けて牛丼だろ? そろそろ野菜が食べたくならないか?」
「さらだばー?」
「そう、サラダバー」
「うーん……がっこう?」
「そうか、給食でちゃんと野菜が出るよな……」
「ん、たくさん」
給食の時間。
みさきの皿にはピーマンと人参が集まる。
それは他の子に押し付けられるからというわけでは無くて、苦手な子が量を減らしたせいで余った野菜をみさきが喜んで処理しているからだ。好き嫌いの無いみさきは何でも食べるけれど、おかわりできるのは余り物であるから、自然とピーマンや人参が集まることになる。
そんな事情は知らない龍誠。
学校で食べているのなら問題は無いのかと思いつつ、それだけで足りるのかとも思う。それに、いくら一食だけ健康的な食事をしていても朝はコンビニ弁当で夜は牛丼。それで将来的に健康被害が出ないかと考えると、とても不安になる。
「やっぱりサラダバーにしよう。いや、俺が食べたいから付き合ってくれ」
「……ん」
素直に頷いたみさき。
りょーくんが言うなら、しかたない。
「ありがとう。みさきは本当に良い子だな」
「……ひひ」
褒められて素直に嬉しいみさき。
「りょーくん」
「どうした?」
「…………」
何かを言おうとして、やっぱり言えなくて、みさきはぷいと顔を逸らす。
「みさき? いま俺なんか間違えたか?」
面白いくらいに取り乱す龍誠。
みさきは慌てて首を振って、ドアの近くまで走る。
それから少し背伸びをして、えいとドアノブを回した。
一歩外に出て、龍誠を促すみさき。
龍誠は「なんだったんだ……?」と肩を落として、みさきの後に続いた。
りょーくんの誕生日まで、あと半年と少し。
みさきの想いは、時間と共に大きくなる。
その一方で、龍誠が何をしているのかみさきは知らない。
もちろん龍誠もみさきが何をしているのか知らない。
けれども二人の日々は変わること無く続き、サプライズの日は少しずつ近付いていく。
0
お気に入りに追加
110
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完結】家族にサヨナラ。皆様ゴキゲンヨウ。
くま
恋愛
「すまない、アデライトを愛してしまった」
「ソフィア、私の事許してくれるわよね?」
いきなり婚約破棄をする婚約者と、それが当たり前だと言い張る姉。そしてその事を家族は姉達を責めない。
「病弱なアデライトに譲ってあげなさい」と……
私は昔から家族からは二番目扱いをされていた。いや、二番目どころでもなかった。私だって、兄や姉、妹達のように愛されたかった……だけど、いつも優先されるのは他のキョウダイばかり……我慢ばかりの毎日。
「マカロン家の長男であり次期当主のジェイコブをきちんと、敬い立てなさい」
「はい、お父様、お母様」
「長女のアデライトは体が弱いのですよ。ソフィア、貴女がきちんと長女の代わりに動くのですよ」
「……はい」
「妹のアメリーはまだ幼い。お前は我慢しなさい。下の子を面倒見るのは当然なのだから」
「はい、わかりました」
パーティー、私の誕生日、どれも私だけのなんてなかった。親はいつも私以外のキョウダイばかり、
兄も姉や妹ばかり構ってばかり。姉は病弱だからと言い私に八つ当たりするばかり。妹は我儘放題。
誰も私の言葉を聞いてくれない。
誰も私を見てくれない。
そして婚約者だったオスカー様もその一人だ。病弱な姉を守ってあげたいと婚約破棄してすぐに姉と婚約をした。家族は姉を祝福していた。私に一言も…慰めもせず。
ある日、熱にうなされ誰もお見舞いにきてくれなかった時、前世を思い出す。前世の私は家族と仲良くもしており、色々と明るい性格の持ち主さん。
「……なんか、馬鹿みたいだわ!」
もう、我慢もやめよう!家族の前で良い子になるのはもうやめる!
ふるゆわ設定です。
※家族という呪縛から解き放たれ自分自身を見つめ、好きな事を見つけだすソフィアを応援して下さい!
※ざまあ話とか読むのは好きだけど書くとなると難しいので…読者様が望むような結末に納得いかないかもしれません。🙇♀️でも頑張るます。それでもよければ、どうぞ!
追加文
番外編も現在進行中です。こちらはまた別な主人公です。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
元平民の義妹は私の婚約者を狙っている
カレイ
恋愛
伯爵令嬢エミーヌは父親の再婚によって義母とその娘、つまり義妹であるヴィヴィと暮らすこととなった。
最初のうちは仲良く暮らしていたはずなのに、気づけばエミーヌの居場所はなくなっていた。その理由は単純。
「エミーヌお嬢様は平民がお嫌い」だから。
そんな噂が広まったのは、おそらく義母が陰で「あの子が私を母親だと認めてくれないの!やっぱり平民の私じゃ……」とか、義妹が「時々エミーヌに睨まれてる気がするの。私は仲良くしたいのに……」とか言っているからだろう。
そして学園に入学すると義妹はエミーヌの婚約者ロバートへと近づいていくのだった……。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。
氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。
私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。
「でも、白い結婚だったのよね……」
奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。
全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。
一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。
断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。
廃妃の再婚
束原ミヤコ
恋愛
伯爵家の令嬢としてうまれたフィアナは、母を亡くしてからというもの
父にも第二夫人にも、そして腹違いの妹にも邪険に扱われていた。
ある日フィアナは、川で倒れている青年を助ける。
それから四年後、フィアナの元に国王から結婚の申し込みがくる。
身分差を気にしながらも断ることができず、フィアナは王妃となった。
あの時助けた青年は、国王になっていたのである。
「君を永遠に愛する」と約束をした国王カトル・エスタニアは
結婚してすぐに辺境にて部族の反乱が起こり、平定戦に向かう。
帰還したカトルは、族長の娘であり『精霊の愛し子』と呼ばれている美しい女性イルサナを連れていた。
カトルはイルサナを寵愛しはじめる。
王城にて居場所を失ったフィアナは、聖騎士ユリシアスに下賜されることになる。
ユリシアスは先の戦いで怪我を負い、顔の半分を包帯で覆っている寡黙な男だった。
引け目を感じながらフィアナはユリシアスと過ごすことになる。
ユリシアスと過ごすうち、フィアナは彼と惹かれ合っていく。
だがユリシアスは何かを隠しているようだ。
それはカトルの抱える、真実だった──。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる