80 / 221
第二章 仕事と子育て
SS:みさきと誕生日
しおりを挟む
みさきという女の子について話をしよう。
彼女は六年前に生まれ、母親と共に五年間を過ごした。
気が付いた時には父親が居なくて、気が付いた時には母親と話をしなくなっていた。
彼女は無口な女の子だが、最初からそうだったわけではない。
むしろ、おしゃべりな女の子だった。
甘えん坊で、いつも母親にくっついて「あのねあのね」と話をしていた。
それが変わったのは、三歳の誕生日がキッカケだ。
誕生日が近付くにつれて、母親は冷たくなった。いつものようにみさきが甘えると、少し嫌そうな顔をするようになった。
みさきは幼いながら、母親が忙しそうなのを感じていた。
みさきの母親は、バレンタインデーの準備で忙しかった。
彼女は男にだらしない。そのくせ惚れやすくて、一度恋をすると他の事が見えなくなる。
一生懸命チョコを作る彼女に、みさきと遊んでいる時間は無かった。
むしろ、甘えてくるみさきが鬱陶しくて仕方なかった。
みさきは三歳になった。
母親に甘えることを遠慮するようになっていた。
だって、甘えたら怒られるから。
甘えたら、嫌われるから。
それでも我慢できるわけ無いから、みさきは母親の表情を伺いながら甘えていた。
そして次の誕生日が近付く。
その頃、また母親は忙しそうな姿を見せるようになった。
今は甘えちゃダメだ。
みさきは我慢した。
それは正しくて、同時に間違いでもあった。
もうこの時、みさきの姿は母親には見えていなかった。
新しい男に夢中になった母親は、完全に育児を放棄した。
寂しかった。
お腹が空いた。
何かが食べたかったみさきは、ふらふらと椅子を伝って机の上に乗った。
そこには食べ物が置いてあった。みさきはそれを食べた。
今度は喉が渇いた。
みさきは蛇口を捻ったら水が出るところを見た事がある。
だけど蛇口がある洗面台は、みさきの身長ではとても届かなかった。
みさきは考えた。
やがて重たい椅子を動かして洗面台にのぼり、水を飲んだ。
みさきにとって、生きる為には考える事が不可欠だった。
親子の会話はとっくに失われていた。
四歳になってから、みさきは一度も声を出していなかった。
それはつまり、一度も母親に声をかけられていないことを意味している。
一人で虚空を見ている時、みさきは考えた。
何がいけなかったのだろう。
あんなに優しかったお母さんは、どうしてみさきのことを嫌いになったのだろう。
きっと困らせてしまったからだ。
甘えてしまったからだ。
そうか、それがいけなかったのか。
なら、もしも次にチャンスがあったら、今度は間違えないようにしよう。
ある日、みさきは楽しそうな声を聞いた。
子供の声だった。
てくてく歩いて玄関を開けると、母親と手を繋いで歩く男の子の姿があった。
みさきは引き寄せられるようにして、二人の後を追いかけた。
やがて公園に辿り着いた。
男の子がブランコをこぐ。
母親は男の子を褒めた。
男の子が滑り台をすべる。
母親は男の子を褒めた。
男の子が鉄棒で遊ぶ。
母親は男の子を褒めた。
男の子が何かをすると、必ず母親が褒める。
みさきは、それを羨ましそうに見ていた。
だけどそのうちたまらなくなって、そこから逃げ出した。
家に帰ったあと、みさきは思った。あの男の子のように何かが出来れば、お母さんが自分の事を見てくれるようになるかもしれない。
みさきは考えた。
みさきに出来るのは、考えることだけだった。
その日から、みさきは目を合わせてくれない母親のことを見ていた。
何をすれば喜ぶのか、じーっと観察していた。
そして、五歳の誕生日が近付く。
みさきは誕生日が近付くと、母親が忙しくなることを知っていた。
それは何故だろうと考えた。
思えば、母親は何かを作っていた。
なら、もしもみさきがそれを手伝ったら、褒めてもらえるかもしれない。
みさきは一生懸命に考えた。母親は何を作っていて、それはどうやったら作る事が出来て、どうやったら手伝うことが出来るのか。
果たして、みさきはチョコレートを作り上げた。
完成したチョコレートは、とても美味しかった。
これを渡せば、きっと喜んでくれる。
きっと、また仲良くしてくれる。
そして五歳の誕生日――みさきは、龍誠と出会った。
最初は怖かった。
部屋に入った時は臭いで倒れそうになった。
だけど、りょーくんは優しかった。
みさきの為に一生懸命になってくれた。
みさきは、あっという間にりょーくんの事が好きになった。お母さんとお別れしたことは悲しいけど、それを忘れさせてくれるくらい、りょーくんとの時間は楽しかった。
甘えたかった。
頬をすりすりして、いっぱい撫でて欲しかった。
歩くときは手をつないで歩きたかった。
でも、それをしたら嫌われてしまうかもしれない。
だからみさきは甘えることが出来なかった。
怖くて仕方なかった。
そして、六歳の誕生日が近付いた。
りょーくんは傍にいない。
みさきは誕生日が嫌いだ。
誕生日は、いつもみさきから大事な何かを奪っていく。
何も悪い事はしていないのに。
ゆいちゃんの家に住むようになった理由は知っている。
半年経ったら、またりょーくんと一緒に居られるようになることも知っている。
だけど、みさきはそれが信じられなかった。
りょーくんはみさきのことが嫌になったんじゃないかと思った。
なんで?
みさきが面白い話を出来なかったから?
りょーくんに助けられてばかりだったから?
毎朝、いなくなってないか心配でりょーくんの寝顔を見ていたから?
誕生日なんて嫌いだ。
大嫌いだ。
その日の夜、ゆいちゃんと、ゆいちゃんのママと一緒に歩いて家まで帰った。
すっかり慣れてしまった日常だった。
今日はみさきの誕生日だ。
みさきは今日、六歳になる。
特に何もなかった。
普通にご飯を食べて、お風呂に入った。
ただ、今日はゆいちゃんと二人だった。
いつもはゆいちゃんのママも一緒に入るのに、今日だけはゆいちゃんと二人だった。
おねえちゃんにまかせて!
そういって、ゆいちゃんはみさきの世話をしてくれる。
みさきはゆいちゃんのことが好きだ。
だけど、りょーくんのことはもっと好きだ。
りょーくんに会いたい。
会いたい、会いたい、会いたい。
お風呂から出ると、どうしてか周りは暗くなっていた。
ゆいちゃんはタッタカ歩いて、暗闇の中を進んでいった。
みさきは不思議に思いながら、ゆいちゃんの後を追いかけた。
そして――
パンッ、という音がした。
「みさきちゃん! 誕生日おめでとう!」
そこには、ゆいちゃんのママが居た。小さな袋を持っていた。
そこには、ゆいちゃんが居た。口元にクリームがついていた。
そこには、まゆみさんが居た。四角い袋を持っていた。
そこには――りょーくんが居た。大きな袋を持っていた。
なんで?
ゆめ?
パチパチと瞬きを繰り返すみさきに、りょーくんは大きな袋を差し出した。
「みさき、誕生日プレゼントだ」
みさきよりも大きな袋の中身は、みさきが欲しがっていたピアノ――電子ピアノだった。
だけど、そんなこと考える余裕は無かった。
中身なんてどうでもよかった。
「…………」
みさきは、グッと口を一の字にした。
我慢しなきゃダメだ。だって、あの日りょーくんと約束したから。
「……みさき、どうかしたか?」
でも、りょーくんの声を聞いたら我慢なんて出来るわけ無かった。
「あー! みさきのことなかせたー!」
「いや、えっ、俺!?」
「まったく、相変わらずのクズですね」
「だからっ、えっ、俺が悪いの!?」
ゆいちゃん達の言葉に戸惑うりょーくんを見て、まゆみさんはふひひと笑っていた。
夢のような時間だった。
みさきはお風呂で寝てしまって、夢を見ているのだと思った。
「おいみさき、大丈夫か? 俺なにかしたか?」
困った顔をして、りょーくんがみさきを見ている。
みさきは思い切って、りょーくんの胸に飛び込んだ。
そこには、しっかりとした感触があった。
これが夢ではないと伝えていた。
みさきは、思い切り泣いた。
わんわん泣いた。
りょーくんが戸惑いながら頭を撫でてくれているけれど、それがもっと涙を流させた。
嬉しいのに涙が止まらなかった。
初めて、みさきは誕生日が好きになれそうだった。
「みさき、どうしたんだよ」
「…………き」
「なに、なんだって?」
「……すきっ」
初めて、素直になれた。
「すき! だいすき! だいすき! だいすき! だいすき!」
りょーくんの服を涙と鼻水で濡らしながら、みさきは大好きと叫んだ。
りょーくんは、ぎゅっとみさきのことを抱きしめる。
「バカ、俺の方が大好きに決まってるだろ」
それは、みさきが一番聞きたかった言葉だった。
「みさき、こと、いやじゃない?」
「当たり前だろ」
それは、ずっと前から知っていたことだった。
「みさき、こと、すき?」
「そう言っただろ」
それも、ずっと前から知っていたことだった。
みさきが泣き止むまで、りょーくんはずっとみさきのことを抱き締めていた。
そしてみさきが泣き止んだ後、みさきにとって初めての、嬉しい誕生日パーティーが始まった。
彼女は六年前に生まれ、母親と共に五年間を過ごした。
気が付いた時には父親が居なくて、気が付いた時には母親と話をしなくなっていた。
彼女は無口な女の子だが、最初からそうだったわけではない。
むしろ、おしゃべりな女の子だった。
甘えん坊で、いつも母親にくっついて「あのねあのね」と話をしていた。
それが変わったのは、三歳の誕生日がキッカケだ。
誕生日が近付くにつれて、母親は冷たくなった。いつものようにみさきが甘えると、少し嫌そうな顔をするようになった。
みさきは幼いながら、母親が忙しそうなのを感じていた。
みさきの母親は、バレンタインデーの準備で忙しかった。
彼女は男にだらしない。そのくせ惚れやすくて、一度恋をすると他の事が見えなくなる。
一生懸命チョコを作る彼女に、みさきと遊んでいる時間は無かった。
むしろ、甘えてくるみさきが鬱陶しくて仕方なかった。
みさきは三歳になった。
母親に甘えることを遠慮するようになっていた。
だって、甘えたら怒られるから。
甘えたら、嫌われるから。
それでも我慢できるわけ無いから、みさきは母親の表情を伺いながら甘えていた。
そして次の誕生日が近付く。
その頃、また母親は忙しそうな姿を見せるようになった。
今は甘えちゃダメだ。
みさきは我慢した。
それは正しくて、同時に間違いでもあった。
もうこの時、みさきの姿は母親には見えていなかった。
新しい男に夢中になった母親は、完全に育児を放棄した。
寂しかった。
お腹が空いた。
何かが食べたかったみさきは、ふらふらと椅子を伝って机の上に乗った。
そこには食べ物が置いてあった。みさきはそれを食べた。
今度は喉が渇いた。
みさきは蛇口を捻ったら水が出るところを見た事がある。
だけど蛇口がある洗面台は、みさきの身長ではとても届かなかった。
みさきは考えた。
やがて重たい椅子を動かして洗面台にのぼり、水を飲んだ。
みさきにとって、生きる為には考える事が不可欠だった。
親子の会話はとっくに失われていた。
四歳になってから、みさきは一度も声を出していなかった。
それはつまり、一度も母親に声をかけられていないことを意味している。
一人で虚空を見ている時、みさきは考えた。
何がいけなかったのだろう。
あんなに優しかったお母さんは、どうしてみさきのことを嫌いになったのだろう。
きっと困らせてしまったからだ。
甘えてしまったからだ。
そうか、それがいけなかったのか。
なら、もしも次にチャンスがあったら、今度は間違えないようにしよう。
ある日、みさきは楽しそうな声を聞いた。
子供の声だった。
てくてく歩いて玄関を開けると、母親と手を繋いで歩く男の子の姿があった。
みさきは引き寄せられるようにして、二人の後を追いかけた。
やがて公園に辿り着いた。
男の子がブランコをこぐ。
母親は男の子を褒めた。
男の子が滑り台をすべる。
母親は男の子を褒めた。
男の子が鉄棒で遊ぶ。
母親は男の子を褒めた。
男の子が何かをすると、必ず母親が褒める。
みさきは、それを羨ましそうに見ていた。
だけどそのうちたまらなくなって、そこから逃げ出した。
家に帰ったあと、みさきは思った。あの男の子のように何かが出来れば、お母さんが自分の事を見てくれるようになるかもしれない。
みさきは考えた。
みさきに出来るのは、考えることだけだった。
その日から、みさきは目を合わせてくれない母親のことを見ていた。
何をすれば喜ぶのか、じーっと観察していた。
そして、五歳の誕生日が近付く。
みさきは誕生日が近付くと、母親が忙しくなることを知っていた。
それは何故だろうと考えた。
思えば、母親は何かを作っていた。
なら、もしもみさきがそれを手伝ったら、褒めてもらえるかもしれない。
みさきは一生懸命に考えた。母親は何を作っていて、それはどうやったら作る事が出来て、どうやったら手伝うことが出来るのか。
果たして、みさきはチョコレートを作り上げた。
完成したチョコレートは、とても美味しかった。
これを渡せば、きっと喜んでくれる。
きっと、また仲良くしてくれる。
そして五歳の誕生日――みさきは、龍誠と出会った。
最初は怖かった。
部屋に入った時は臭いで倒れそうになった。
だけど、りょーくんは優しかった。
みさきの為に一生懸命になってくれた。
みさきは、あっという間にりょーくんの事が好きになった。お母さんとお別れしたことは悲しいけど、それを忘れさせてくれるくらい、りょーくんとの時間は楽しかった。
甘えたかった。
頬をすりすりして、いっぱい撫でて欲しかった。
歩くときは手をつないで歩きたかった。
でも、それをしたら嫌われてしまうかもしれない。
だからみさきは甘えることが出来なかった。
怖くて仕方なかった。
そして、六歳の誕生日が近付いた。
りょーくんは傍にいない。
みさきは誕生日が嫌いだ。
誕生日は、いつもみさきから大事な何かを奪っていく。
何も悪い事はしていないのに。
ゆいちゃんの家に住むようになった理由は知っている。
半年経ったら、またりょーくんと一緒に居られるようになることも知っている。
だけど、みさきはそれが信じられなかった。
りょーくんはみさきのことが嫌になったんじゃないかと思った。
なんで?
みさきが面白い話を出来なかったから?
りょーくんに助けられてばかりだったから?
毎朝、いなくなってないか心配でりょーくんの寝顔を見ていたから?
誕生日なんて嫌いだ。
大嫌いだ。
その日の夜、ゆいちゃんと、ゆいちゃんのママと一緒に歩いて家まで帰った。
すっかり慣れてしまった日常だった。
今日はみさきの誕生日だ。
みさきは今日、六歳になる。
特に何もなかった。
普通にご飯を食べて、お風呂に入った。
ただ、今日はゆいちゃんと二人だった。
いつもはゆいちゃんのママも一緒に入るのに、今日だけはゆいちゃんと二人だった。
おねえちゃんにまかせて!
そういって、ゆいちゃんはみさきの世話をしてくれる。
みさきはゆいちゃんのことが好きだ。
だけど、りょーくんのことはもっと好きだ。
りょーくんに会いたい。
会いたい、会いたい、会いたい。
お風呂から出ると、どうしてか周りは暗くなっていた。
ゆいちゃんはタッタカ歩いて、暗闇の中を進んでいった。
みさきは不思議に思いながら、ゆいちゃんの後を追いかけた。
そして――
パンッ、という音がした。
「みさきちゃん! 誕生日おめでとう!」
そこには、ゆいちゃんのママが居た。小さな袋を持っていた。
そこには、ゆいちゃんが居た。口元にクリームがついていた。
そこには、まゆみさんが居た。四角い袋を持っていた。
そこには――りょーくんが居た。大きな袋を持っていた。
なんで?
ゆめ?
パチパチと瞬きを繰り返すみさきに、りょーくんは大きな袋を差し出した。
「みさき、誕生日プレゼントだ」
みさきよりも大きな袋の中身は、みさきが欲しがっていたピアノ――電子ピアノだった。
だけど、そんなこと考える余裕は無かった。
中身なんてどうでもよかった。
「…………」
みさきは、グッと口を一の字にした。
我慢しなきゃダメだ。だって、あの日りょーくんと約束したから。
「……みさき、どうかしたか?」
でも、りょーくんの声を聞いたら我慢なんて出来るわけ無かった。
「あー! みさきのことなかせたー!」
「いや、えっ、俺!?」
「まったく、相変わらずのクズですね」
「だからっ、えっ、俺が悪いの!?」
ゆいちゃん達の言葉に戸惑うりょーくんを見て、まゆみさんはふひひと笑っていた。
夢のような時間だった。
みさきはお風呂で寝てしまって、夢を見ているのだと思った。
「おいみさき、大丈夫か? 俺なにかしたか?」
困った顔をして、りょーくんがみさきを見ている。
みさきは思い切って、りょーくんの胸に飛び込んだ。
そこには、しっかりとした感触があった。
これが夢ではないと伝えていた。
みさきは、思い切り泣いた。
わんわん泣いた。
りょーくんが戸惑いながら頭を撫でてくれているけれど、それがもっと涙を流させた。
嬉しいのに涙が止まらなかった。
初めて、みさきは誕生日が好きになれそうだった。
「みさき、どうしたんだよ」
「…………き」
「なに、なんだって?」
「……すきっ」
初めて、素直になれた。
「すき! だいすき! だいすき! だいすき! だいすき!」
りょーくんの服を涙と鼻水で濡らしながら、みさきは大好きと叫んだ。
りょーくんは、ぎゅっとみさきのことを抱きしめる。
「バカ、俺の方が大好きに決まってるだろ」
それは、みさきが一番聞きたかった言葉だった。
「みさき、こと、いやじゃない?」
「当たり前だろ」
それは、ずっと前から知っていたことだった。
「みさき、こと、すき?」
「そう言っただろ」
それも、ずっと前から知っていたことだった。
みさきが泣き止むまで、りょーくんはずっとみさきのことを抱き締めていた。
そしてみさきが泣き止んだ後、みさきにとって初めての、嬉しい誕生日パーティーが始まった。
0
お気に入りに追加
110
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完結】家族にサヨナラ。皆様ゴキゲンヨウ。
くま
恋愛
「すまない、アデライトを愛してしまった」
「ソフィア、私の事許してくれるわよね?」
いきなり婚約破棄をする婚約者と、それが当たり前だと言い張る姉。そしてその事を家族は姉達を責めない。
「病弱なアデライトに譲ってあげなさい」と……
私は昔から家族からは二番目扱いをされていた。いや、二番目どころでもなかった。私だって、兄や姉、妹達のように愛されたかった……だけど、いつも優先されるのは他のキョウダイばかり……我慢ばかりの毎日。
「マカロン家の長男であり次期当主のジェイコブをきちんと、敬い立てなさい」
「はい、お父様、お母様」
「長女のアデライトは体が弱いのですよ。ソフィア、貴女がきちんと長女の代わりに動くのですよ」
「……はい」
「妹のアメリーはまだ幼い。お前は我慢しなさい。下の子を面倒見るのは当然なのだから」
「はい、わかりました」
パーティー、私の誕生日、どれも私だけのなんてなかった。親はいつも私以外のキョウダイばかり、
兄も姉や妹ばかり構ってばかり。姉は病弱だからと言い私に八つ当たりするばかり。妹は我儘放題。
誰も私の言葉を聞いてくれない。
誰も私を見てくれない。
そして婚約者だったオスカー様もその一人だ。病弱な姉を守ってあげたいと婚約破棄してすぐに姉と婚約をした。家族は姉を祝福していた。私に一言も…慰めもせず。
ある日、熱にうなされ誰もお見舞いにきてくれなかった時、前世を思い出す。前世の私は家族と仲良くもしており、色々と明るい性格の持ち主さん。
「……なんか、馬鹿みたいだわ!」
もう、我慢もやめよう!家族の前で良い子になるのはもうやめる!
ふるゆわ設定です。
※家族という呪縛から解き放たれ自分自身を見つめ、好きな事を見つけだすソフィアを応援して下さい!
※ざまあ話とか読むのは好きだけど書くとなると難しいので…読者様が望むような結末に納得いかないかもしれません。🙇♀️でも頑張るます。それでもよければ、どうぞ!
追加文
番外編も現在進行中です。こちらはまた別な主人公です。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
元平民の義妹は私の婚約者を狙っている
カレイ
恋愛
伯爵令嬢エミーヌは父親の再婚によって義母とその娘、つまり義妹であるヴィヴィと暮らすこととなった。
最初のうちは仲良く暮らしていたはずなのに、気づけばエミーヌの居場所はなくなっていた。その理由は単純。
「エミーヌお嬢様は平民がお嫌い」だから。
そんな噂が広まったのは、おそらく義母が陰で「あの子が私を母親だと認めてくれないの!やっぱり平民の私じゃ……」とか、義妹が「時々エミーヌに睨まれてる気がするの。私は仲良くしたいのに……」とか言っているからだろう。
そして学園に入学すると義妹はエミーヌの婚約者ロバートへと近づいていくのだった……。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。
氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。
私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。
「でも、白い結婚だったのよね……」
奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。
全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。
一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。
断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。
廃妃の再婚
束原ミヤコ
恋愛
伯爵家の令嬢としてうまれたフィアナは、母を亡くしてからというもの
父にも第二夫人にも、そして腹違いの妹にも邪険に扱われていた。
ある日フィアナは、川で倒れている青年を助ける。
それから四年後、フィアナの元に国王から結婚の申し込みがくる。
身分差を気にしながらも断ることができず、フィアナは王妃となった。
あの時助けた青年は、国王になっていたのである。
「君を永遠に愛する」と約束をした国王カトル・エスタニアは
結婚してすぐに辺境にて部族の反乱が起こり、平定戦に向かう。
帰還したカトルは、族長の娘であり『精霊の愛し子』と呼ばれている美しい女性イルサナを連れていた。
カトルはイルサナを寵愛しはじめる。
王城にて居場所を失ったフィアナは、聖騎士ユリシアスに下賜されることになる。
ユリシアスは先の戦いで怪我を負い、顔の半分を包帯で覆っている寡黙な男だった。
引け目を感じながらフィアナはユリシアスと過ごすことになる。
ユリシアスと過ごすうち、フィアナは彼と惹かれ合っていく。
だがユリシアスは何かを隠しているようだ。
それはカトルの抱える、真実だった──。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる