62 / 221
第二章 仕事と子育て
SS:へっちゃらです!
しおりを挟む
「おかえり!」
午後八時。結衣が仕事から帰宅して玄関のドアを開けた直後、ゆいが彼女の胸に飛び込んだ。
「はい、ただいま帰りました。今日は何をしていましたか?」
結衣は鞄を持っていない方の左手でゆいの頭を撫でる。ゆいは頬をすりすりしながら顔を上げて、とびきりの笑顔で言った。
「ピアノひいてました!」
「ピアノは楽しいですか?」
「たのしい!」
「そうですか。では、ママはこれから手洗いうがいをして晩御飯を準備するので、その間ゆいのピアノを聴かせてください」
ゆいは使命感に満ちた目で頷くと、ぴょんと結衣から離れ、えっへんと腰に手を当てて胸を張った。
「まかせて!」
「はい、任せました」
「しふくのひとときをごていきょうします!」
ゆいはタタタとピアノに向かって駆けだす。それを見送った後、結衣は開いたままのドアを閉めた。
……至福の時なら、玄関のドアを開けた時から始まっていますよ。
結衣が洗面台の前に立ち、蛇口を捻った辺りで静かなピアノの音が聞こえてきた。彼女達が暮らしているのはマンションの一室だが、部屋を仕切る壁はピアノの音を防げる程度には分厚い。
ゆいが演奏しているのは、ノクターンの第2番。夜を想う曲という名に相応しい静かで優しい曲だ。とても有名な曲で、普段クラシックを聴かない人でも一度は耳にしたことがあるはずだ。演奏の難度についても、子供が無理なく演奏できる程度の優しいものである。もちろん上手く弾けるかどうかは別問題だが、その観点から見るなら、結衣にとっては百点満点だと言う他ない。
「チャララララランっ、ッタ、タンタン~♪」
耳を澄ませば、楽しそうな声が聞こえてくる。結衣は鞄の中にあるプレゼントに意識を向けつつ、エプロンを身に着けた。今晩は肉じゃがだ。
果たして五曲目の演奏が終わった頃、食卓には肉じゃがと白米、それから千切りにしたキャベツにキュウリとトマトを添えた物が並んでいた。
「できた?」
「はい、素敵な演奏でした」
ゆいはピアノにカバーをして、タタタっと駆け足で椅子までやって来た。
「……トマト」
ゆいはトマトが好きじゃない。
ドロドロでブチっとした感覚が気に入らない。
「ひとつは食べましょう。いいですね?」
「……がんばる」
手を合わせましょう。
あわせました!
頂きます。
いただきます!
元気な声と共に食事が始まった。
普段の様子とは違って、食事中のゆいは静かである。それは結衣の所作を模倣しているからで、それはもう穴が開くくらいに結衣の姿を見ている。もちろん視線に気が付いている結衣は、ゆいにテーブルマナーを教えるつもりで模範的な動きを見せるのだが……。
「むっ」
と声を出して、ゆいは口に入らなかった大きなジャガイモと睨めっこを始めた。
手元が疎かになっているせいで、時々こんな失敗する。
「ゆい、ちゃんと手元を見て食べましょう」
「はいっ、ていたいしっぱい!」
目をバッテンにしてスプーンでジャガイモをザクザクして小さくするゆい。
そんなゆいを優しい目で見守りながら、結衣はゆっくりと食事を続けた。
「むむむ……」
ついにトマトに手を付けたゆい。子供用の小さなスプーンで持ち上げたトマトは小刻みに震えていて、それを見るゆいの口元はトマトの二倍くらいの速さで震えている。
心の準備は出来た?
行くよ……やっぱりダメっ!
もういっかい……ああやっぱり無理っ!
でも負けるわけには……
「うぇっ、ち! ちがでたよママ!」
「トマトの果汁です」
「トマトさんがかわいそうなのでたべられません!」
「残念ですが、フォークでブスっとした時点でトマトさんは意識を失っています。次に目を覚ましたら、きっと悲鳴をあげるほど痛いでしょう。そうならない為に、早く食べてあげましょう」
「いただきます!」
ぱくりっ、
むむむっ……むむっ、
むぅぅ……むっ、
ぐむむむむ……、
…………、
ごくり。
飲み込んだゆいは、ちょっと人には見せられない顔をして両手でコップを持ち、ごくごく水を飲んだ。
「つらいたたかいでした」
「はい、よく頑張りました」
ゆいは神妙な面持ちで頷く。
「ゆいはレベルアップしました」
「しましたか」
「はい。なので、つぎのトマトさんとのたたかいは、ふせんしょうとします」
「認めません」
「トマトさんはにげだした!」
「しかし周りを囲まれてしまいました。どうしますか?」
「むむむ……」
いつも通りの食事風景。
ゆいと結衣の楽しい時間はまだまだ続く。
食事を終えた後、二人はお風呂に入った。
「おせなか、ながします!」
「はい、お願いします」
タオルでよいしょよいしょするだけでなく、小さな手で肩を揉んだりもする。
そうして互いの体を洗ったあと湯船に浸かって、仲良く会話する。
それほど広い風呂ではないが、まだゆいが小さいおかげで二人で入っても窮屈という感じはしない。あと十年も経てば話が変わってくるだろうが、その時まで二人で入るということは無いだろう。だからこれは、今しかない大切な時間だ。
「……ママ?」
「すみません、少し考え事をしていました」
「むむむ?」
なんだろう、とゆいは眉を寄せる。
ゆいが何を考えているのか、ゆいを喜ばせる為には何をすれば良いか、それが結衣には分かっている。だけどそれをするのは難しい。
何の話って、仕事の話だ。
べつに昼間出会った男性との会話を気にしているわけではない。これは結衣が常に考えていることだ。精一杯考えて、自分が最善だと思う選択をしている。だけどそれは、最高の選択ではないのだ。だけど仕方ない。限界まで努力したって、理想に届かないことは有る。
「……ゆいは、次のお楽しみ会、ママと一緒に行きたいですか?」
「だいじょうぶ!」
即答だった。
一切の迷いを感じさせない真っ直ぐな言葉だった。
しかし言葉と本音が一致していないことなんて、考えるまでもなく分かる。
そんな結衣の迷いを打ち消すかのように、ゆいは言葉を続ける。
「おふろもプールもおなじ!」
結衣の膝の上で、ゆいはとびきり元気に言う。
「みさきもいる!」
必要以上に、声を張り上げて。
「だから、へっちゃらです! ママは、おしごとがんばって!」
結衣は返事をする代わりに、ゆいを強く抱きしめた。
「ママ?」
「はい、ママです」
返事になっていない返事をして、すりすりと頬を擦り付ける。
ゆいはえへへと笑った。
「実は、ゆいにプレゼントがあります」
「なんと!」
果たして、結衣はゆいに水着をプレゼントした。
結衣は水着を着たゆいをケータイのカメラで撮影して、それからまた暫く話をした。
特に意味の無い、だけど特別な親子の会話。
たっぷり話をした後、風呂から出て、歯磨きをして、布団に入った。
ゆいの寝息が聞こえた頃、結衣はコソっと布団から出て書類を机に並べる。
今日決まった商談のまとめ、新たに得た取引先のまとめ。
明日行う商談の確認、明日得られるであろう取引先のまとめ、その為の会話シミュレーション。
それから――
結衣は一度動きを止め、強く歯を食いしばった。
そしてまた、仕事を再開する。
世間が盆休みという長期休暇に浮かれる時期であっても、結衣は仕事を続けている。
それは全て、ゆいの為だ。
ゆいの為なら、結衣は何を犠牲にしても構わない。
ただゆいが幸せで居られれば、それでいい。
ゆいがずっと幸せで居られれば、それでいい。
午後八時。結衣が仕事から帰宅して玄関のドアを開けた直後、ゆいが彼女の胸に飛び込んだ。
「はい、ただいま帰りました。今日は何をしていましたか?」
結衣は鞄を持っていない方の左手でゆいの頭を撫でる。ゆいは頬をすりすりしながら顔を上げて、とびきりの笑顔で言った。
「ピアノひいてました!」
「ピアノは楽しいですか?」
「たのしい!」
「そうですか。では、ママはこれから手洗いうがいをして晩御飯を準備するので、その間ゆいのピアノを聴かせてください」
ゆいは使命感に満ちた目で頷くと、ぴょんと結衣から離れ、えっへんと腰に手を当てて胸を張った。
「まかせて!」
「はい、任せました」
「しふくのひとときをごていきょうします!」
ゆいはタタタとピアノに向かって駆けだす。それを見送った後、結衣は開いたままのドアを閉めた。
……至福の時なら、玄関のドアを開けた時から始まっていますよ。
結衣が洗面台の前に立ち、蛇口を捻った辺りで静かなピアノの音が聞こえてきた。彼女達が暮らしているのはマンションの一室だが、部屋を仕切る壁はピアノの音を防げる程度には分厚い。
ゆいが演奏しているのは、ノクターンの第2番。夜を想う曲という名に相応しい静かで優しい曲だ。とても有名な曲で、普段クラシックを聴かない人でも一度は耳にしたことがあるはずだ。演奏の難度についても、子供が無理なく演奏できる程度の優しいものである。もちろん上手く弾けるかどうかは別問題だが、その観点から見るなら、結衣にとっては百点満点だと言う他ない。
「チャララララランっ、ッタ、タンタン~♪」
耳を澄ませば、楽しそうな声が聞こえてくる。結衣は鞄の中にあるプレゼントに意識を向けつつ、エプロンを身に着けた。今晩は肉じゃがだ。
果たして五曲目の演奏が終わった頃、食卓には肉じゃがと白米、それから千切りにしたキャベツにキュウリとトマトを添えた物が並んでいた。
「できた?」
「はい、素敵な演奏でした」
ゆいはピアノにカバーをして、タタタっと駆け足で椅子までやって来た。
「……トマト」
ゆいはトマトが好きじゃない。
ドロドロでブチっとした感覚が気に入らない。
「ひとつは食べましょう。いいですね?」
「……がんばる」
手を合わせましょう。
あわせました!
頂きます。
いただきます!
元気な声と共に食事が始まった。
普段の様子とは違って、食事中のゆいは静かである。それは結衣の所作を模倣しているからで、それはもう穴が開くくらいに結衣の姿を見ている。もちろん視線に気が付いている結衣は、ゆいにテーブルマナーを教えるつもりで模範的な動きを見せるのだが……。
「むっ」
と声を出して、ゆいは口に入らなかった大きなジャガイモと睨めっこを始めた。
手元が疎かになっているせいで、時々こんな失敗する。
「ゆい、ちゃんと手元を見て食べましょう」
「はいっ、ていたいしっぱい!」
目をバッテンにしてスプーンでジャガイモをザクザクして小さくするゆい。
そんなゆいを優しい目で見守りながら、結衣はゆっくりと食事を続けた。
「むむむ……」
ついにトマトに手を付けたゆい。子供用の小さなスプーンで持ち上げたトマトは小刻みに震えていて、それを見るゆいの口元はトマトの二倍くらいの速さで震えている。
心の準備は出来た?
行くよ……やっぱりダメっ!
もういっかい……ああやっぱり無理っ!
でも負けるわけには……
「うぇっ、ち! ちがでたよママ!」
「トマトの果汁です」
「トマトさんがかわいそうなのでたべられません!」
「残念ですが、フォークでブスっとした時点でトマトさんは意識を失っています。次に目を覚ましたら、きっと悲鳴をあげるほど痛いでしょう。そうならない為に、早く食べてあげましょう」
「いただきます!」
ぱくりっ、
むむむっ……むむっ、
むぅぅ……むっ、
ぐむむむむ……、
…………、
ごくり。
飲み込んだゆいは、ちょっと人には見せられない顔をして両手でコップを持ち、ごくごく水を飲んだ。
「つらいたたかいでした」
「はい、よく頑張りました」
ゆいは神妙な面持ちで頷く。
「ゆいはレベルアップしました」
「しましたか」
「はい。なので、つぎのトマトさんとのたたかいは、ふせんしょうとします」
「認めません」
「トマトさんはにげだした!」
「しかし周りを囲まれてしまいました。どうしますか?」
「むむむ……」
いつも通りの食事風景。
ゆいと結衣の楽しい時間はまだまだ続く。
食事を終えた後、二人はお風呂に入った。
「おせなか、ながします!」
「はい、お願いします」
タオルでよいしょよいしょするだけでなく、小さな手で肩を揉んだりもする。
そうして互いの体を洗ったあと湯船に浸かって、仲良く会話する。
それほど広い風呂ではないが、まだゆいが小さいおかげで二人で入っても窮屈という感じはしない。あと十年も経てば話が変わってくるだろうが、その時まで二人で入るということは無いだろう。だからこれは、今しかない大切な時間だ。
「……ママ?」
「すみません、少し考え事をしていました」
「むむむ?」
なんだろう、とゆいは眉を寄せる。
ゆいが何を考えているのか、ゆいを喜ばせる為には何をすれば良いか、それが結衣には分かっている。だけどそれをするのは難しい。
何の話って、仕事の話だ。
べつに昼間出会った男性との会話を気にしているわけではない。これは結衣が常に考えていることだ。精一杯考えて、自分が最善だと思う選択をしている。だけどそれは、最高の選択ではないのだ。だけど仕方ない。限界まで努力したって、理想に届かないことは有る。
「……ゆいは、次のお楽しみ会、ママと一緒に行きたいですか?」
「だいじょうぶ!」
即答だった。
一切の迷いを感じさせない真っ直ぐな言葉だった。
しかし言葉と本音が一致していないことなんて、考えるまでもなく分かる。
そんな結衣の迷いを打ち消すかのように、ゆいは言葉を続ける。
「おふろもプールもおなじ!」
結衣の膝の上で、ゆいはとびきり元気に言う。
「みさきもいる!」
必要以上に、声を張り上げて。
「だから、へっちゃらです! ママは、おしごとがんばって!」
結衣は返事をする代わりに、ゆいを強く抱きしめた。
「ママ?」
「はい、ママです」
返事になっていない返事をして、すりすりと頬を擦り付ける。
ゆいはえへへと笑った。
「実は、ゆいにプレゼントがあります」
「なんと!」
果たして、結衣はゆいに水着をプレゼントした。
結衣は水着を着たゆいをケータイのカメラで撮影して、それからまた暫く話をした。
特に意味の無い、だけど特別な親子の会話。
たっぷり話をした後、風呂から出て、歯磨きをして、布団に入った。
ゆいの寝息が聞こえた頃、結衣はコソっと布団から出て書類を机に並べる。
今日決まった商談のまとめ、新たに得た取引先のまとめ。
明日行う商談の確認、明日得られるであろう取引先のまとめ、その為の会話シミュレーション。
それから――
結衣は一度動きを止め、強く歯を食いしばった。
そしてまた、仕事を再開する。
世間が盆休みという長期休暇に浮かれる時期であっても、結衣は仕事を続けている。
それは全て、ゆいの為だ。
ゆいの為なら、結衣は何を犠牲にしても構わない。
ただゆいが幸せで居られれば、それでいい。
ゆいがずっと幸せで居られれば、それでいい。
0
お気に入りに追加
110
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完結】家族にサヨナラ。皆様ゴキゲンヨウ。
くま
恋愛
「すまない、アデライトを愛してしまった」
「ソフィア、私の事許してくれるわよね?」
いきなり婚約破棄をする婚約者と、それが当たり前だと言い張る姉。そしてその事を家族は姉達を責めない。
「病弱なアデライトに譲ってあげなさい」と……
私は昔から家族からは二番目扱いをされていた。いや、二番目どころでもなかった。私だって、兄や姉、妹達のように愛されたかった……だけど、いつも優先されるのは他のキョウダイばかり……我慢ばかりの毎日。
「マカロン家の長男であり次期当主のジェイコブをきちんと、敬い立てなさい」
「はい、お父様、お母様」
「長女のアデライトは体が弱いのですよ。ソフィア、貴女がきちんと長女の代わりに動くのですよ」
「……はい」
「妹のアメリーはまだ幼い。お前は我慢しなさい。下の子を面倒見るのは当然なのだから」
「はい、わかりました」
パーティー、私の誕生日、どれも私だけのなんてなかった。親はいつも私以外のキョウダイばかり、
兄も姉や妹ばかり構ってばかり。姉は病弱だからと言い私に八つ当たりするばかり。妹は我儘放題。
誰も私の言葉を聞いてくれない。
誰も私を見てくれない。
そして婚約者だったオスカー様もその一人だ。病弱な姉を守ってあげたいと婚約破棄してすぐに姉と婚約をした。家族は姉を祝福していた。私に一言も…慰めもせず。
ある日、熱にうなされ誰もお見舞いにきてくれなかった時、前世を思い出す。前世の私は家族と仲良くもしており、色々と明るい性格の持ち主さん。
「……なんか、馬鹿みたいだわ!」
もう、我慢もやめよう!家族の前で良い子になるのはもうやめる!
ふるゆわ設定です。
※家族という呪縛から解き放たれ自分自身を見つめ、好きな事を見つけだすソフィアを応援して下さい!
※ざまあ話とか読むのは好きだけど書くとなると難しいので…読者様が望むような結末に納得いかないかもしれません。🙇♀️でも頑張るます。それでもよければ、どうぞ!
追加文
番外編も現在進行中です。こちらはまた別な主人公です。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
元平民の義妹は私の婚約者を狙っている
カレイ
恋愛
伯爵令嬢エミーヌは父親の再婚によって義母とその娘、つまり義妹であるヴィヴィと暮らすこととなった。
最初のうちは仲良く暮らしていたはずなのに、気づけばエミーヌの居場所はなくなっていた。その理由は単純。
「エミーヌお嬢様は平民がお嫌い」だから。
そんな噂が広まったのは、おそらく義母が陰で「あの子が私を母親だと認めてくれないの!やっぱり平民の私じゃ……」とか、義妹が「時々エミーヌに睨まれてる気がするの。私は仲良くしたいのに……」とか言っているからだろう。
そして学園に入学すると義妹はエミーヌの婚約者ロバートへと近づいていくのだった……。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。
氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。
私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。
「でも、白い結婚だったのよね……」
奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。
全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。
一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。
断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。
廃妃の再婚
束原ミヤコ
恋愛
伯爵家の令嬢としてうまれたフィアナは、母を亡くしてからというもの
父にも第二夫人にも、そして腹違いの妹にも邪険に扱われていた。
ある日フィアナは、川で倒れている青年を助ける。
それから四年後、フィアナの元に国王から結婚の申し込みがくる。
身分差を気にしながらも断ることができず、フィアナは王妃となった。
あの時助けた青年は、国王になっていたのである。
「君を永遠に愛する」と約束をした国王カトル・エスタニアは
結婚してすぐに辺境にて部族の反乱が起こり、平定戦に向かう。
帰還したカトルは、族長の娘であり『精霊の愛し子』と呼ばれている美しい女性イルサナを連れていた。
カトルはイルサナを寵愛しはじめる。
王城にて居場所を失ったフィアナは、聖騎士ユリシアスに下賜されることになる。
ユリシアスは先の戦いで怪我を負い、顔の半分を包帯で覆っている寡黙な男だった。
引け目を感じながらフィアナはユリシアスと過ごすことになる。
ユリシアスと過ごすうち、フィアナは彼と惹かれ合っていく。
だがユリシアスは何かを隠しているようだ。
それはカトルの抱える、真実だった──。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる