日刊幼女みさきちゃん!

下城米雪

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第二章 仕事と子育て

夏祭りに行った日(3)

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 花火の光に照らし出されたのは、やはり何処かで見たことのある姿だった。

 整った目鼻立ちに、短く切り揃えられた髪。すらっと伸びた四肢は、深紫色の浴衣に包まれていた。

 真っ先に思い出したのは、路地から出る度に全力で追いかけてくる姿。次に思い出したのは、ゆいちゃんから聞かされていた『とても魅力的な女性』

 ……重なるところが、外見しか無い。

「むむむ? ママどうしたの?」

 ゆいちゃんに袖を引かれ、彼女は一瞬だけ慌てたような表情を見せた。だが直ぐに笑顔を作ると、お手本のような所作で言う。

「初めまして。娘がいつもお世話になっております」

 ほー、無かったことにしようってか?
 いいだろう。俺も面倒事は避けたい。

「いえいえ、こっちもヒールで全力疾走する危ない人とは違って運動靴を大切に扱うことが出来るくらい淑やかなゆいちゃんがみさきと遊んでくれていると思うと、安心して仕事が出来るっす」

 面倒事は避けたいが、面白いことは大歓迎だ。

 ふっ、効いてる効いてる。事情を知らないヤツが聞けば意味不明でしかない言葉だが、この場においてはこれ以上無いほどに効果的だったはずだ。

 正直こいつに恨みは無い。
 だが無意味に絡んでくることに対するちょっとした鬱憤《うっぷん》とかならある。
 
 ……見ろよこの顔、平静を装ってるように見えて頬がピックピクしてるぜ。うひゃはは面白い。
 
 さぁ! どうする!?

「りょーくん!」
「どうした、ゆいちゃん」
「いまのはしょーじきないとおもいます!」

 え、あれ、こっからダメ出しされんの?

「ええ、そうですね。何を言っているのか全く分かりませんでした」

 チクショウここぞとばかりに乗っかりやがって!

「ママのきをひきたいなら、もっとしんしてきなことばじゃないとダメ!」
「ええそうです。私の気が惹きたいのなら、もっと紳士的な言葉をかけてくださらないと」

 ムッとする娘の背後でニヤリと笑う親。
 このアマ汚ねぇぞ! 娘を盾にしやがって!

 みさき出番だ! 俺の盾に……出来ないっ!
 俺には、みさきを盾にするなんてこと出来ない!

 すまねぇみさき。一瞬でもみさきを盾にするなんて考えちまったりょーくんを許して……あれ、どこ見てんだ……って花火か。

 星空を見ていた時から予想はしてたが、やっぱ綺麗だ。これで余計な邪魔が入らなければ完璧だったんだが……仕方ない。みさきの嬉しそうな顔が見られただけで良しとしよう。

 さておき、紳士的な台詞とかなんとか言ってたな。やっぱ女ってのはそういうこと言われると嬉しかったりすんのか? なら試しに、みさきに向かって花火よりもお前の方が綺麗だぜ的なことを……いやいや五歳相手に言っても効果ねぇだろ、馬鹿か俺は。

「ふむふむ、なるほど」

 俺の足元で、耳に手を当てコクコク頷くゆいちゃん。何してんだ?

「ママ! りょーくんがはなびきれーだって!」
「ええ。この花火は、どんな人が見ても美しいと思うでしょうね」
「でもママのほうがきれーだって!」

 そいつには言ってねぇよ!?
 つうか心を読まれた!?

 ……なんか前にも似たようなことあったな。こいつら親子そろってエスパーかよ。

「はは、片腹痛いですね」

 彼女は無表情で俺を嘲笑い、ふっと息を吐いた。次の瞬間には優しい笑顔が浮かべられていて、その仮面をつけたままみさきの方を見る。俺は反射的に手を伸ばしてみさきを隠した。

「なんですか?」
「なんでもねぇよ。下じゃなくて上を見たらどうだ? 花火が綺麗だぞ」
「りょーくん! そこはうえじゃなくておれをみたらどうだ? だよ!」
「ゆい、少し静かにしていてください」
「ゆいちゃん、少し黙っててくれるか?」
「わーい! いきピッタリ!」
「「……」」

 なんっか調子狂うな。もともとこの不審者さんとは険悪ってワケじゃなくて、ちょっと面白そうだから揶揄ってみただけなんだが……よくよく考えればおかしいな。どうしてそんな気分になったんだ? 祭りでテンション上がってたからか?

「みさきちゃん、いつもゆいと遊んでくれてありがとね」

 ってこいつ何時の間に!?

「……だれ?」
「ゆいのママです」
「……だれ?」

 ふはははざまあみろ!
 いいぞみさき! もっとやれ!

「みさき! みさきもおまつりきてたんだね!」

 チクショウ、ナイスフォローじゃねぇかゆいちゃん。きっと将来大物になれるぜ。

「……ママ?」
「うん! あたしのママだよ!」

 ゆいちゃんから話を聞くと、みさきは不審人物の顔をまじまじと見た。
 そして一歩身を引き、ぺこりと頭を下げる。

「みさき、よろしくします」

 偉いぞみさき! でもその挨拶は近いうちに直さないとな!

「はい、よろしくおねがいします。みさきちゃんは、とてもしっかりしていますね」

 と言って、此方を一瞥する不審者。
 保護者とは違って、そう聞こえたような気がした。

「ママみて! シャワーはなび!」
「はい、綺麗です。ゆいは本当にシャワー花火が好きですね」

 つられて俺も空を見る。そこには、まるで夜空に七色のカーテンをおろしたかのような光景が広がっていた。無数の光点が広範囲にゆっくりと流れ落ちる様は、見方によってはシャワーのようでもある。ゆいちゃんらしい可愛らしいネーミングだ。

「……」

 保護者とは違って、そんな思いで不審者さんの後頭部を見た途端にギロリと睨まれた。やっぱこいつエスパーだろ。

 さておき、この不審者とは嫌な偶然で何度か会って、これまた嫌な偶然で何度か口を聞いただけだが……なんだか印象が違う。なんというか、機嫌が良い。やっぱ子供と居るからか? たぶん俺も同じだから、少しは理解出来る。

 俺が考え事をしている間、みさきはゆいちゃん親子と並んで花火を見ていた。ゆいちゃんは二人の間に入って、わーわー元気にはしゃいでいる。その度にみさきは小さく頷く程度の反応しかしないのだが、逆に不審者さんは大きく頷いたり、ゆいちゃんに微笑みかけたりと、見ているだけで頬が緩んでくるような反応をしていた。

 見るだけで親子の仲がどれほどなのかということが分かる。だからこそ俺は、それほど大切な娘の運動会やイベント事よりも仕事を優先させることに疑問を覚えた。

 断ることなんていくらでも出来ると思うんだが……そんなに甘くねぇのかな。

「……おどろきました」

 子供達が花火に夢中になった頃、不審者さんはこっそりと二人から離れて俺の隣に来た。

「え、なに? すまん、聞こえなかった」
「驚いたと言いました。まさか、あなたが、みさきちゃんの父親だったなんて」
「そっくりそのまま返してやるよ」
「……そうですね。ゆいは私とは少しも似ていませんから」

 そうか? よくよく考えると面影あるような気がするぞ?
 そりゃ顔は似てねぇような気がするけど、まだ子供だしな。

「お嫁さんには逃げられたんですか?」

 いきなり難しい内容を最悪の言葉で確認してきやがった。やっぱこいつ友達いねぇだろ。

「あんたこそ、旦那さんには逃げられたのか?」
「ええ、逃がしてしまいました。ゆいと住むようになってから一度も会っていません」

 これテキトー言ってるだけだな。答える気は無いってか?

「俺の方も似たようなもんだ。見事に逃げられちまったよ」
「そうですか。では、そんな貴方にご相談があります」

 この流れで相談……?
 いや、それって……いやいや、でもそんな、え、ええええ……。

「まぁ、話だけなら聞いてやるよ」

 チクショウっ、恋愛感情なんて一切ねぇのに面だけはいいせいでドキドキしちまう……まぁ、冗談だけどな。きっと事務的な相談なんだろうよ。

「みさきちゃんは、母親が居ない事を気にしている素振りを見せたことがありますか?」

 ……事務的、じゃねぇな。

「さぁ、みさきはあまり感情を出さないタイプだから良く分からん。だけど、気にしてるとは思う……もしかして、ゆいちゃんもか?」
「いえ、あまり気にしていないように感じています」

 長く息を吸った後、少しだけ声のトーンを落として言う。

「あの子は、あまりにも関心がありません。私には、それが気になるのです」

 気にしなければいい、なんて風には思えなかった。俺は少し前まで、みさきは母親のことなんて少しも気にしていないと思っていた。だけどそれは間違いだった。あれから、みさきは一度も母親を気にする素振りを見せないが、気にしていないはずが無いんだ。きっと外に出さないだけで、どこかで、ふとした瞬間に思い出すことがあるに違いない。

 彼女も、同じようなことを想像しているのだろう。

「……そうですか」

 彼女は一瞬だけ俺の方を見ると、まるで返事を聞いたかのように呟いた。

「俺、今の口に出てたか?」
「いえ、何も言っていませんでしたよ」
「そうか。ついでに、俺も聞いていいか?」
「はい、どうぞ」
「仕事、そんなに忙しいのか?」

 ずっと気になっていた事をようやく問いかけられた。
 彼女は真剣な表情で俺の目を見て言う。

「ゆいは、どんな様子でしたか?」
「今と同じだよ」

 花火を見ながら元気よくみさきに話しかけるゆいちゃんの方に彼女の視線を促す。

「だけど、時々寂しそうだった」
「…………」

 返事は無かった。目を向けると、彼女は俯いていた。その雰囲気に俺は言葉を失ってしまう。理由は分からないけれど、ずっしりとした重みが感じられた。

 何か声をかけたい。
 それは問いか、答えか、気休めか。
 いずれにせよ、頭には何も浮かんで来ない。
 
 真っ白になった頭に、花火の音が次々と入り込んでくる。
 何かを言わなければならない、それだけは理解できる。だから俺は、無理矢理に口を開いて声を出そうとした。しかし、まるでそんな曖昧な言葉は許さないとでも言うかのように、一際大きな音が俺を遮った。

「あ~らあら~、戸崎さんではありませんか~」

 佐藤だ。

「佐藤さん、お久しぶりです」
「ええ。お仕事、ご苦労様です~」
「本日は、ご家族と?」
「子供達は主人に任せておりますわ。私は、戸崎さんの姿が見えたものですから」
「それはそれは。私も、本日は娘と来ております」
「あら~、ゆいちゃん、きっと喜んでいますわ」

 やっぱ腹立つなこのおばさんの話し方。
 しかし不審者さん、まったく動じない所は流石社会人というべきか。直前と比べると事務的で違和感があるけども……まぁ、気のせいか。

「そうだ。次の父母の会には出られるんですの?」
「恐縮ですが、先約が入っております」
「それは残念です。戸崎結衣さん。娘に同じ名前を付けるくらい娘が好きなのに、子供の為の集まりには参加してくれませんの? あらやだ、私ったら皮肉っぽいことを。決してそんなつもりはございませんですことよ?」

 嘘だろ、絶対嫌味だろ。
 てか不審者さんの名前ってゆいなのかよ。娘に同じ名前付ける母親とか実在すんのかビックリだぜ。

「真に恐縮ですが、まだ新人なので、自由に休める立場では無いのです」
「あら、確かにお若いですものね。二十三でしたか?」

 うそだろ!?
 え、こいつ俺と同じなの!? 今日一番の衝撃!!

「ええ。私も参加したいとは思っているのですが……真に残念です」
「そうですか。天童さんは、次も来てくださるのよね?」
「え、あ、おう、いや、はい、もちろん」

 やっべ、突然過ぎてテンパった。

「それでは、よろしくお願いしますね」
「はい、こっちこそ」

 では~、と言って佐藤は去っていた。
 ……嵐のようなおばさんだったな。

 残された俺と不審者さん。俺は佐藤の背中を見送った後、はぁと息を吐いて脱力した。それを合図にしたかのように、不審者さんが口を開く。

「ゆい達の元に戻りましょうか」
「……そうだな」

 頷いて、

「今のゆいって、自分のこと?」
「娘の事ですっ、どんな文脈ですか」

 少し強い口調で否定して、彼女はスタスタ先に歩いた。その後ろを歩きながら、わりと仲良くなれそうなんじゃねぇの? なんて思ったのだった。
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