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最初の一歩
人生ゲームを作った日(1)
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エロ漫画家さんに風呂のことを頼んだ後、俺は部屋に戻って勉強を始めた。
期限は一週間。金にも余裕があるし、死ぬ気でやってやるよ。
気合は十分……だった。
勉強を始めてから1時間。
俺は、僅か30ページ程の薄い教材を読破した。
結論から言おう。
まるで分からん。
この本で得た情報をどう使えば人生ゲームを作れるのか、まったく想像できない。
まずは俺が勉強したことを紹介しよう。
『
~ドキ☆三種の神器~
プログラムに必要なのは、たった3つ!
ひとつ! 箱!
ひとつ! 鍵!
ひとつ! 眼鏡!
たったこれだけで、世界征服だって出来ちゃう☆
』
1ページ目にして本を破り捨てようと思ったが、最近の教本はこんなノリが主流なのかもしれないと踏み止まった。タイトルからして『猿にも分かる』だからな。あえて砕けた表現をしているのかもしれない。
……それにしたって砕けすぎだろ。バカにしてんのかよ。
ふと、著者が気になった。
著:和崎優斗
「やっぱバカにしてんだろ!? そうなんだろ!?」
あ、ちょ、やばっ、ビリって聞こえた……よし、これならまだ読める。
「……冷静になろう」
ふざけた本ではあったが、内容はまともだった。プログラムについて理解が深まったような気がするというか、本を読む前と今では明らかに印象が違う。
もっとこう、プログラムって意味不明な物だと思っていたが、そんなことは無い。理解するだけなら、きっとみさきにだって出来る内容だった。
例えば最初に挙げた三種の神器。
箱、鍵、眼鏡。
プログラムってのは計算機で、計算結果を箱に突っ込んでどうこうする物らしい。
int hako = 1 + 1 ;
こうすれば「hako」という名前の箱に「1 + 1」の計算結果「2」が収納される。
hako = hako + 5 ;
とすれば「2 + 5」としたことになり、箱の中に「7」が収納される。
眼鏡ってのは、箱の中に入っている物を確認する道具で、
printf(" %d " , hako );
こんな風に使う。
最後に鍵だが、
if( hako < 10 )
hako = hako + 1;
これは箱に入ってる数字が10を下回っていたら1を足すという処理をしている。
以上が、プログラムの全てだそうだ。
他にも小難しい事が沢山あるが、結局は箱を沢山使う方法だったり、計算速度を早くする方法だったりで、三種の神器さえ使いこなせれば、どんなものだって作れると本に書いてあった。
どうだ、理解は出来るだろ?
そこで問題だ。
たったコレだけの知識を使って、いったいどうやって人生ゲームを作ればいい?
「……ダメだ、さっぱり分からねぇ」
人生ゲームといえばアレだろ?
ルーレット回して、ボードの上をクルクル周って、死ぬまでにいくら稼げるかっていうゲームだろ?
「頭使うのは苦手なんだよな……」
文句を言っても解決しないことは分かっているけれど、思わず呟いてしまう。頭を使わなければ人生ゲームを作ることは出来ないと直感的に理解できるが、猿にも分かるらしい本は、とことん頭を空っぽにして書いたような内容だった。他の入門者達は本当にこんな本で理解できるのか? そう思ってしまう。
例えば初めてプログラムを実行する時の原文はこうだった。
流れとしては、箱を作って、そこに数字を入れ、内容を確認するという具合。
『
ほんとぅに箱に入ったか気になるよね?
そんなキミに、
眼☆鏡をプレゼントだ( *´艸`)
printf(" %d \n " , a);
と書いて、プログラムを実行してみよう!
1.vim 1.cpp でエディタを開く
2.前回と同じ手順で、mainの中に書き加える。
#include <stdio.h>
int main()
{
int a = 1 + 1 ;
printf("%d \n",a);
return 0;
}
3.g++ 1.cpp でコンパイルする
4../a.out でプログラムを実行
てへ☆初めてのプログラム実行が完了しちゃったね♪
』
ブイアイエムとかエディタとかシーピーピーとかジープラスプラスとか、そういう専門用語の説明は、どこにも書いてない。分かるという前提なのか、自分で考えろという意味なのか……どちらにせよ、ふざけてる。
「ああクソっ、文句ばっか言ってても始まんねぇ」
1日目。
俺は何度も本を読み直して勉強した。読む度に理解は深まっていくが、肝心のゲームについては少しも進展しなかった。
期限は一週間。金にも余裕があるし、死ぬ気でやってやるよ。
気合は十分……だった。
勉強を始めてから1時間。
俺は、僅か30ページ程の薄い教材を読破した。
結論から言おう。
まるで分からん。
この本で得た情報をどう使えば人生ゲームを作れるのか、まったく想像できない。
まずは俺が勉強したことを紹介しよう。
『
~ドキ☆三種の神器~
プログラムに必要なのは、たった3つ!
ひとつ! 箱!
ひとつ! 鍵!
ひとつ! 眼鏡!
たったこれだけで、世界征服だって出来ちゃう☆
』
1ページ目にして本を破り捨てようと思ったが、最近の教本はこんなノリが主流なのかもしれないと踏み止まった。タイトルからして『猿にも分かる』だからな。あえて砕けた表現をしているのかもしれない。
……それにしたって砕けすぎだろ。バカにしてんのかよ。
ふと、著者が気になった。
著:和崎優斗
「やっぱバカにしてんだろ!? そうなんだろ!?」
あ、ちょ、やばっ、ビリって聞こえた……よし、これならまだ読める。
「……冷静になろう」
ふざけた本ではあったが、内容はまともだった。プログラムについて理解が深まったような気がするというか、本を読む前と今では明らかに印象が違う。
もっとこう、プログラムって意味不明な物だと思っていたが、そんなことは無い。理解するだけなら、きっとみさきにだって出来る内容だった。
例えば最初に挙げた三種の神器。
箱、鍵、眼鏡。
プログラムってのは計算機で、計算結果を箱に突っ込んでどうこうする物らしい。
int hako = 1 + 1 ;
こうすれば「hako」という名前の箱に「1 + 1」の計算結果「2」が収納される。
hako = hako + 5 ;
とすれば「2 + 5」としたことになり、箱の中に「7」が収納される。
眼鏡ってのは、箱の中に入っている物を確認する道具で、
printf(" %d " , hako );
こんな風に使う。
最後に鍵だが、
if( hako < 10 )
hako = hako + 1;
これは箱に入ってる数字が10を下回っていたら1を足すという処理をしている。
以上が、プログラムの全てだそうだ。
他にも小難しい事が沢山あるが、結局は箱を沢山使う方法だったり、計算速度を早くする方法だったりで、三種の神器さえ使いこなせれば、どんなものだって作れると本に書いてあった。
どうだ、理解は出来るだろ?
そこで問題だ。
たったコレだけの知識を使って、いったいどうやって人生ゲームを作ればいい?
「……ダメだ、さっぱり分からねぇ」
人生ゲームといえばアレだろ?
ルーレット回して、ボードの上をクルクル周って、死ぬまでにいくら稼げるかっていうゲームだろ?
「頭使うのは苦手なんだよな……」
文句を言っても解決しないことは分かっているけれど、思わず呟いてしまう。頭を使わなければ人生ゲームを作ることは出来ないと直感的に理解できるが、猿にも分かるらしい本は、とことん頭を空っぽにして書いたような内容だった。他の入門者達は本当にこんな本で理解できるのか? そう思ってしまう。
例えば初めてプログラムを実行する時の原文はこうだった。
流れとしては、箱を作って、そこに数字を入れ、内容を確認するという具合。
『
ほんとぅに箱に入ったか気になるよね?
そんなキミに、
眼☆鏡をプレゼントだ( *´艸`)
printf(" %d \n " , a);
と書いて、プログラムを実行してみよう!
1.vim 1.cpp でエディタを開く
2.前回と同じ手順で、mainの中に書き加える。
#include <stdio.h>
int main()
{
int a = 1 + 1 ;
printf("%d \n",a);
return 0;
}
3.g++ 1.cpp でコンパイルする
4../a.out でプログラムを実行
てへ☆初めてのプログラム実行が完了しちゃったね♪
』
ブイアイエムとかエディタとかシーピーピーとかジープラスプラスとか、そういう専門用語の説明は、どこにも書いてない。分かるという前提なのか、自分で考えろという意味なのか……どちらにせよ、ふざけてる。
「ああクソっ、文句ばっか言ってても始まんねぇ」
1日目。
俺は何度も本を読み直して勉強した。読む度に理解は深まっていくが、肝心のゲームについては少しも進展しなかった。
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