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最初の一歩
送り迎えをした日(迎)
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何年か過ごしたことで少しだけ、ほんの少しだけ愛着がわいてしまったのか、家具のある部屋というのが落ち着かない。家具といっても布団と枕だけなのだが、とにもかくも落ち着かねぇ。
平日の朝。
部屋で独り。
こんなの、ほんの一週間前には当たり前だったのに……ああクソっ、じっとしてられない小学生かよ。
現在10時。
お迎えまで7時間。
こりゃもう働くしかねぇ!
部屋を出た俺は近所の公衆電話に飛び込んだ。
「俺だ。午後4時までに終わる仕事を回してくれ」
「これまたいきなりだな龍誠。やれやれ、いい加減学習したらどうなんだ?」
「あ?」
「どうせまた生活保護費回収箱《パチンコ》で募金《とか》したんだろ?」
「違う。暇つぶしに働くだけだ」
「なんだそれ」
電話の先で笑い声。
あ? 今笑われるようなこと言ったか?
「ほんとどうしちまったんだよ龍誠。女でも出来たのか?」
「うるさい、いいから仕事を回してくれ。なんかあんだろ」
「はいはい分かりましたよ。PR様を怒らせると後が怖いですからねぇ」
「その名で俺を呼ぶんじゃねぇ!」
クソがっ、最初にPRとか言いやがったの誰なんだよほんと。いつか後悔させてやる。
「2丁目の交差点、コンビニがあるとこって言ったら分かるか?」
「コンビニ……ああ、分かる」
「そこの工事で人が足りてねぇらしい。11時までなんだが、間に合うか?」
「……急いでギリってところだな」
「よし、決まりだな。話つけとくから、遅刻は最悪でも10分にしてくれよ」
「ああ、分かった」
電話ボックスから出て、わりと必死に走り出す。
いやほんと、マジでギリだ。
平日の昼間だけあって人通りが少なく、ついでにちょっとした赤信号も無視できる程度に車通りも少ないのだが、それでも時間に余裕があるようには思えない。というか、現在時刻が分からない。みさき用の時計と一緒に自分用の時計も買っておくべきだった。
……抜け道を使うか。
車はもちろん自転車もガキも年寄りも通れない道をアクロバティックに走っていると、いい感じにアドレナリンが出て気分が盛り上がった。言い換えるなら、少し調子に乗った。
出口がある路地へと繋がる少し高い壁を無駄に回転しながら飛び越えた結果……それはそれは見事に背中を打った。
「……くっ、はははは」
恥ずかしさと痛みで思わず笑いが込み上げる。
まぁ誰も見てねぇし、さっさと起き上がって現場に急ごう。
「ちょ、なにしてんすか」
あ?
「なになに、なんで空から降って来たの、この人」
うわぁ、頭の悪そうなガキが二人。
なんだその髪型、世紀末かよ。
さておき、こういうのは無視に限る。
「ちょいちょい、逃げんなよ」
起き上がって走り去ろうとしたところで肩を掴まれ、逃走に失敗した。
それと同時に、体に染み込んだクセが状況を悪化させてしまう。
「おーこわいこわーい。なにガン飛ばしてくれちゃってるんすかぁ?」
「お、やる? なに、やっちゃう?」
うぜぇ……が、こんなもんKOYに来店する客に比べたら可愛いもんだな。軽くスルーして仕事に行こう。
「何をしているの!?」
うわぁ、最悪のタイミングで新たなバカが……なんだコレ、ついてねぇな今日の俺。
「こんな昼間からケンカ? 学校はどうしたの?」
ほんとバカな女だなぁこいつ。無視すりゃいいのに。見たところ金持ってそうっていうか、雰囲気が一般人と違うっていうか……泥水の上で殴り合う世界とか知らねぇんだろうなぁこいつ。
「なぁに? せんせーですかー?」
「いやいや、俺達と仲良くしたいのかもよ? ツンデレってヤツかもよ?」
この隙に逃げてぇけど、それだとこの女が……ああもう、めんどくせぇ。
俺は無防備に背中を向けているバカ二人の脚を切断するつもりで蹴った。見事にノーガードでローキックを喰らった二人は、悲鳴を上げてのたうちまわる。これで五分は歩けないだろう。
よし、あとはバカ女の横を通り抜ければサクっと解決だ。
「待ちなさい」
なんでだよ……俺の肩大人気だなおい。
「あなたが行ったのは暴行罪という犯罪です。私が証人なので、おとなしく刑務所に入ってもらいます」
……珍しいタイプだな。正義感が強すぎるとこうなるのか? みさきにはこうなってほしくねぇな。
「睨んでいないで、言い訳のひとつでもしたらどうですか? その全てを否定して、あなたを更生してさしあげます。感謝しなさい」
「……あのさ、こういう初めて?」
「いいえ、もう数え切れないくらい繰り返しています」
「だったら、そのうち後悔するから止めた方がいいぞ」
「後悔? それは此方の台詞です。私は他人に害を成す存在を許さない。貴方の様な人が居るから、優秀な人間が不当な評価を受けるのです!」
「なに言ってんのか分かんねぇけど、世の中には怖い人がいっぱい居るんだよ。だから警告だ、後悔する前に止めておけ」
親切心で言ってやると、女は呆れたような表情で首を振った。
「貴方の言いたい事は分かりました。つまり、テメェみたいな女はいつでも羽交い絞めにして滅茶苦茶にしてやれるぜ、げっへっへ……ということですね?」
「そこまで言ってねぇけど、まぁそんなところだ」
自分で言って恥ずかしそうな顔してやがるよ、面白いなこの人。
てかヤベェ、何分経った? こんなバカと話してる場合じゃねぇ。
「じゃ、急いでるから」
「待ちなさい」
「あんたさっき暴行罪がどうとか言ってたよな? これ、立派な有形力の行使なんだが?」
暴行の定義は有形力の行使。有形力というのは、つまり物理。指一本が接触しただけでも暴行罪。ハンカチを落としたあの人の背中に触れるのも暴行罪。肩を掴むとか完全にアウト。情報源は五年くらい前お世話になった警察署の柴田さん。
「ま、まさか、ぁ、ぁぁあなたみたいな人の口から、ゆ、ゆゆ、有形力なんて言葉が聞けるとは思いませんでした」
ぎゃはははスゲェ動揺っぷり。マジで面白いなこの人。
さておきチャンスだ、今の内に逃げよう。
「あ、こらっ、待ちなさい!」
「わりぃな、本当に急いでるんだ」
「逃がしません!」
うっそだろ走って追いかけて来たぞ!?
「あんたほんと頭おかしいだろ!」
「なんて失礼な人! 絶対に更生します!」
チクショウっ! なんでこんなバカに絡まれてんだ俺! 底辺の馬鹿と違って殴って黙らせらんねぇから性質が悪い……いいや、一度脅かしてやりゃいいのか? ダメだ、一般人を脅すのは流儀に反する!
とにかく走れ! 走れ俺!
「待ちな――え、わっ、ぁぁぁっと、っと! ……やぁぁぁ! ヒール折れたぁぁぁ!」
なにあのバカヒールで追いかけてたの!?
いやいや振り返るなチャンスだ。一気に逃げろ!
「――ということがあったんだよ」
「……んん?」
果たして、みさきとの帰り道。
俺は昼間あった出来事を伝えていた。
「だからな、みさきもほどほどにヤンチャしろよ?」
「……やんちゃ?」
「ああ。たとえば……」
ヤンチャなみさきか……難しいな。
ほらほら、見ろよこの純粋な目。たぶん俺が何を言っても信じちゃうんだぜ? でも、これが後10年もしたら「りょーくんうざい」とか言うようになんのかなぁ……いやいやっ、みさきに反抗期なんて来ねぇ!
「みさきは、いつまでもピュアなみさきで居てくれよ!」
「……んん?」
なに言ってんだよ俺、こんなのみさきじゃなくても意味不明だっつうの。
「そういや、保育園どうだった?」
「……どう?」
「ああ。友達は出来たか?」
「……ん」
「おお! どんなヤツなんだ?」
「……ゆいちゃん」
「そうかそうか」
……くぅぅぅ、ゆいちゃんだってよ! 「みさきちゃん」「ゆいちゃん」って感じに呼び合ってんのかな!? ああもう、なんだよなんだよ仲良さそうな感じじゃねぇかよ!
「今日はどんなことして遊んだんだ?」
「……おべんきょう」
「勉強?」
「……ほん、よんだ」
あー、そういう感じの子か。
まぁみさきが外で走り回って怪我とかしたら大変だし、そういう友達の方が俺としては安心……なのか?
「どんな本を読んだんだ?」
「……いろいろ」
「絵本とかか?」
「……さいしょだけ」
「最初だけ?」
「……なつめ?」
「なつめ? ああ、夏目漱石?」
「……ん」
……子供向けに書き直した本とかがあるのだろうか?
「れでぃーのたしなみ」
なんか流暢に舌足らずな横文字が出て来たぞ。何だ今の、聞き間違えたか?
「あしたも、よむ」
……いろいろ不安だが、まぁ、楽しそうだからいいか。
「みさき、今夜は何が食べたい?」
「……ぎゅーどん」
「おぅ、任せろ」
それからも、みさきとの会話は続く。部屋に二人で居る時とは違って、妙に会話が弾んだ。ほとんど俺が一方的に話題を振っているだけなのだが、どうしてかネタが尽きなかった。それは、みさきが嬉しそうな顔で返事をしてくれるからかもしれない。
みさきと話をするのが、素直に楽しい。
俺は少し前までは想像も出来なかった感情に少なからぬ戸惑いを覚えつつ、みさきの小さな歩幅に合わせて夕陽に照らされた道路の上をゆっくりと歩いた。
……さて、次は何を話そうか。
平日の朝。
部屋で独り。
こんなの、ほんの一週間前には当たり前だったのに……ああクソっ、じっとしてられない小学生かよ。
現在10時。
お迎えまで7時間。
こりゃもう働くしかねぇ!
部屋を出た俺は近所の公衆電話に飛び込んだ。
「俺だ。午後4時までに終わる仕事を回してくれ」
「これまたいきなりだな龍誠。やれやれ、いい加減学習したらどうなんだ?」
「あ?」
「どうせまた生活保護費回収箱《パチンコ》で募金《とか》したんだろ?」
「違う。暇つぶしに働くだけだ」
「なんだそれ」
電話の先で笑い声。
あ? 今笑われるようなこと言ったか?
「ほんとどうしちまったんだよ龍誠。女でも出来たのか?」
「うるさい、いいから仕事を回してくれ。なんかあんだろ」
「はいはい分かりましたよ。PR様を怒らせると後が怖いですからねぇ」
「その名で俺を呼ぶんじゃねぇ!」
クソがっ、最初にPRとか言いやがったの誰なんだよほんと。いつか後悔させてやる。
「2丁目の交差点、コンビニがあるとこって言ったら分かるか?」
「コンビニ……ああ、分かる」
「そこの工事で人が足りてねぇらしい。11時までなんだが、間に合うか?」
「……急いでギリってところだな」
「よし、決まりだな。話つけとくから、遅刻は最悪でも10分にしてくれよ」
「ああ、分かった」
電話ボックスから出て、わりと必死に走り出す。
いやほんと、マジでギリだ。
平日の昼間だけあって人通りが少なく、ついでにちょっとした赤信号も無視できる程度に車通りも少ないのだが、それでも時間に余裕があるようには思えない。というか、現在時刻が分からない。みさき用の時計と一緒に自分用の時計も買っておくべきだった。
……抜け道を使うか。
車はもちろん自転車もガキも年寄りも通れない道をアクロバティックに走っていると、いい感じにアドレナリンが出て気分が盛り上がった。言い換えるなら、少し調子に乗った。
出口がある路地へと繋がる少し高い壁を無駄に回転しながら飛び越えた結果……それはそれは見事に背中を打った。
「……くっ、はははは」
恥ずかしさと痛みで思わず笑いが込み上げる。
まぁ誰も見てねぇし、さっさと起き上がって現場に急ごう。
「ちょ、なにしてんすか」
あ?
「なになに、なんで空から降って来たの、この人」
うわぁ、頭の悪そうなガキが二人。
なんだその髪型、世紀末かよ。
さておき、こういうのは無視に限る。
「ちょいちょい、逃げんなよ」
起き上がって走り去ろうとしたところで肩を掴まれ、逃走に失敗した。
それと同時に、体に染み込んだクセが状況を悪化させてしまう。
「おーこわいこわーい。なにガン飛ばしてくれちゃってるんすかぁ?」
「お、やる? なに、やっちゃう?」
うぜぇ……が、こんなもんKOYに来店する客に比べたら可愛いもんだな。軽くスルーして仕事に行こう。
「何をしているの!?」
うわぁ、最悪のタイミングで新たなバカが……なんだコレ、ついてねぇな今日の俺。
「こんな昼間からケンカ? 学校はどうしたの?」
ほんとバカな女だなぁこいつ。無視すりゃいいのに。見たところ金持ってそうっていうか、雰囲気が一般人と違うっていうか……泥水の上で殴り合う世界とか知らねぇんだろうなぁこいつ。
「なぁに? せんせーですかー?」
「いやいや、俺達と仲良くしたいのかもよ? ツンデレってヤツかもよ?」
この隙に逃げてぇけど、それだとこの女が……ああもう、めんどくせぇ。
俺は無防備に背中を向けているバカ二人の脚を切断するつもりで蹴った。見事にノーガードでローキックを喰らった二人は、悲鳴を上げてのたうちまわる。これで五分は歩けないだろう。
よし、あとはバカ女の横を通り抜ければサクっと解決だ。
「待ちなさい」
なんでだよ……俺の肩大人気だなおい。
「あなたが行ったのは暴行罪という犯罪です。私が証人なので、おとなしく刑務所に入ってもらいます」
……珍しいタイプだな。正義感が強すぎるとこうなるのか? みさきにはこうなってほしくねぇな。
「睨んでいないで、言い訳のひとつでもしたらどうですか? その全てを否定して、あなたを更生してさしあげます。感謝しなさい」
「……あのさ、こういう初めて?」
「いいえ、もう数え切れないくらい繰り返しています」
「だったら、そのうち後悔するから止めた方がいいぞ」
「後悔? それは此方の台詞です。私は他人に害を成す存在を許さない。貴方の様な人が居るから、優秀な人間が不当な評価を受けるのです!」
「なに言ってんのか分かんねぇけど、世の中には怖い人がいっぱい居るんだよ。だから警告だ、後悔する前に止めておけ」
親切心で言ってやると、女は呆れたような表情で首を振った。
「貴方の言いたい事は分かりました。つまり、テメェみたいな女はいつでも羽交い絞めにして滅茶苦茶にしてやれるぜ、げっへっへ……ということですね?」
「そこまで言ってねぇけど、まぁそんなところだ」
自分で言って恥ずかしそうな顔してやがるよ、面白いなこの人。
てかヤベェ、何分経った? こんなバカと話してる場合じゃねぇ。
「じゃ、急いでるから」
「待ちなさい」
「あんたさっき暴行罪がどうとか言ってたよな? これ、立派な有形力の行使なんだが?」
暴行の定義は有形力の行使。有形力というのは、つまり物理。指一本が接触しただけでも暴行罪。ハンカチを落としたあの人の背中に触れるのも暴行罪。肩を掴むとか完全にアウト。情報源は五年くらい前お世話になった警察署の柴田さん。
「ま、まさか、ぁ、ぁぁあなたみたいな人の口から、ゆ、ゆゆ、有形力なんて言葉が聞けるとは思いませんでした」
ぎゃはははスゲェ動揺っぷり。マジで面白いなこの人。
さておきチャンスだ、今の内に逃げよう。
「あ、こらっ、待ちなさい!」
「わりぃな、本当に急いでるんだ」
「逃がしません!」
うっそだろ走って追いかけて来たぞ!?
「あんたほんと頭おかしいだろ!」
「なんて失礼な人! 絶対に更生します!」
チクショウっ! なんでこんなバカに絡まれてんだ俺! 底辺の馬鹿と違って殴って黙らせらんねぇから性質が悪い……いいや、一度脅かしてやりゃいいのか? ダメだ、一般人を脅すのは流儀に反する!
とにかく走れ! 走れ俺!
「待ちな――え、わっ、ぁぁぁっと、っと! ……やぁぁぁ! ヒール折れたぁぁぁ!」
なにあのバカヒールで追いかけてたの!?
いやいや振り返るなチャンスだ。一気に逃げろ!
「――ということがあったんだよ」
「……んん?」
果たして、みさきとの帰り道。
俺は昼間あった出来事を伝えていた。
「だからな、みさきもほどほどにヤンチャしろよ?」
「……やんちゃ?」
「ああ。たとえば……」
ヤンチャなみさきか……難しいな。
ほらほら、見ろよこの純粋な目。たぶん俺が何を言っても信じちゃうんだぜ? でも、これが後10年もしたら「りょーくんうざい」とか言うようになんのかなぁ……いやいやっ、みさきに反抗期なんて来ねぇ!
「みさきは、いつまでもピュアなみさきで居てくれよ!」
「……んん?」
なに言ってんだよ俺、こんなのみさきじゃなくても意味不明だっつうの。
「そういや、保育園どうだった?」
「……どう?」
「ああ。友達は出来たか?」
「……ん」
「おお! どんなヤツなんだ?」
「……ゆいちゃん」
「そうかそうか」
……くぅぅぅ、ゆいちゃんだってよ! 「みさきちゃん」「ゆいちゃん」って感じに呼び合ってんのかな!? ああもう、なんだよなんだよ仲良さそうな感じじゃねぇかよ!
「今日はどんなことして遊んだんだ?」
「……おべんきょう」
「勉強?」
「……ほん、よんだ」
あー、そういう感じの子か。
まぁみさきが外で走り回って怪我とかしたら大変だし、そういう友達の方が俺としては安心……なのか?
「どんな本を読んだんだ?」
「……いろいろ」
「絵本とかか?」
「……さいしょだけ」
「最初だけ?」
「……なつめ?」
「なつめ? ああ、夏目漱石?」
「……ん」
……子供向けに書き直した本とかがあるのだろうか?
「れでぃーのたしなみ」
なんか流暢に舌足らずな横文字が出て来たぞ。何だ今の、聞き間違えたか?
「あしたも、よむ」
……いろいろ不安だが、まぁ、楽しそうだからいいか。
「みさき、今夜は何が食べたい?」
「……ぎゅーどん」
「おぅ、任せろ」
それからも、みさきとの会話は続く。部屋に二人で居る時とは違って、妙に会話が弾んだ。ほとんど俺が一方的に話題を振っているだけなのだが、どうしてかネタが尽きなかった。それは、みさきが嬉しそうな顔で返事をしてくれるからかもしれない。
みさきと話をするのが、素直に楽しい。
俺は少し前までは想像も出来なかった感情に少なからぬ戸惑いを覚えつつ、みさきの小さな歩幅に合わせて夕陽に照らされた道路の上をゆっくりと歩いた。
……さて、次は何を話そうか。
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