55 / 68
みんなの反応:保護者の場合
しおりを挟む
「んふぅ~、捗るぅ~」
むしゃピョコは絵を描いていた。
「お耳ぴこぴこ、お目目ぱちぱち」
ミーコのイラストである。
フォロワー数の多いむしゃピョコは、良くも悪くも影響力が大きい。彼女が全力でミーコを推せば、確実にファンが増える。だからこそ、彼女は発言を控えていた。
――の目的は、お兄ちゃんを安心させること。
むしゃピョコというブランドを使ってキャリーしても、長期的な目で見た時に――の足かせとなる可能性が高い。
だけど近いうちに特別な機会がある。
確実じゃないけど、多分、きっと、そうなる。
「ふん、ふふふ~ん♪」
むしゃピョコは鼻歌交じりに絵を描き続ける。
まだ未完成の絵だが、「生徒数10万人&大会優勝おめでとう」と記されていた。
この絵が完成するのは祝いの言葉が現実になった時。
むしゃピョコは未来に想いを馳せながら、少しずつ、その絵を完成に近づける日々を過ごしていた。
むしゃピョコは、まるで本当の親みたいな気持ちでミーコを応援している。
ミーコの配信は全てチェックした。真希とコラボする際には何度か相談を受けた。ミーコは配信でもSNSでもむしゃピョコの話題をあんまり口に出さないが、配信外では子供みたいにベッタリなのである。
むしゃピョコは溢れ出る感情を「裏垢」で発散していた。でも、ほんの少し前からフォロワーが増え始め、まるで「お前を見ている」とでも言わんばかりの「いいね」が届くようになった。怖くなったむしゃピョコは、裏垢の運用を中止した。
なぜ削除しないのか。
それができる者ならば、あんな痛々し……素敵なポエムを全世界に発信しない。
「ふぅん~! ちょっと休憩~」
むしゃピョコをグッと伸びをして、仕事場から離れた。
真っ先に向かったのは冷蔵庫。パックのイチゴ牛乳を取り出すと、コップに移してから一気に飲んだ。
「ん~、やっぱり絵を描いた後は甘い物が染みる~!」
※個人の感想。
「甘い物を飲んだ後は、甘い言葉が聞きたくなるよね。なんちゃって」
※恋する独身女性の感想。
「最近、――ちゃんの様子、どうですか」
むしゃピョコは声を出しながらミーコの兄に連絡した。
三秒後に既読が付き、「欲しいものを聞かれた」という返事。
「うへへっ、返事早過ぎ。これもう実質……危ない危ない」
ギリギリで理性を取り戻す。
その後、想い人との会話を続けた。
む:ほー、なるほどねー
兄:何か聞いてる?
む:配信のネタにしたいのかもね~
むしゃピョコは全て察した上ですっとぼけた。
繰り返すが、彼女はミーコの配信を「全て」観ている。
ヒントは、収益化。
これ以上の説明は蛇足というものだろう。
む:鈍感主人公め!(スタンプ)
兄:ごめん(スタンプ)
むしゃピョコは幸せそうな表情を見せる。
ふーん、そっか、――ちゃん、そうなのか~、という気持ちだった。
(私にも相談してくれないのは、ちょっと寂しいかなぁ)
母親のような気持ちで、やりとりを続ける。
そのうち、ふと思った。まるで娘の話をする夫婦みたいではないか。
事実、二人はミーコのパパとママである。
はじめての共同作業によってミーコを出産したと言える。
もはや結婚(仮)の関係と言えるのではないだろうか。
だったら今度の休日に芝刈りにでも誘ってみようかな。
刈り取る。
かりとる。
仮、取る。
結婚♡
「なーんてね! あは、あは、あはは!」
むしゃピョコはハイになっていた。
自室で良かったね。
「あんまり長く続けると迷惑だよね」
賢者タイム(仮)
む:――ちゃん、最近どう?
兄:何かに取り組んでいる様子だ
兄:とても好ましい
兄:妹の前で威厳を保つのが大変だ
兄:泣きそうになる
む:そっかそっか
「大会に向けて頑張ってるのかな~」
――瞬間、むしゃピョコの表情が引き締まる。
む:旅行の予定とかある?
兄:無い。突然どうした
む:なんでもない。――ちゃんのこと、しっかり見ててあげて欲しくて
既読、後、十数秒の間。
兄:分かった
「……好き」
とても意味深なことを言ってしまった。
でも何も聞かず頷いてくれた。これが適当に返事をしているだけなら友達を集めて愚痴パーティ開催だ。しかし彼には実績がある。大きな信頼と安心感がある。
「……大丈夫、だよね」
ミーコの活動を応援する者の中で、兄を除き、むしゃピョコだけが、彼女の悲鳴を知っている。聴いているだけで涙が出るような叫び声を知っている。
私、ちょっと過保護かな。
そう思いながらも、ひとつの懸念について、本当の保護者に共有した。
――大会まで、残り2日。
むしゃピョコは絵を描いていた。
「お耳ぴこぴこ、お目目ぱちぱち」
ミーコのイラストである。
フォロワー数の多いむしゃピョコは、良くも悪くも影響力が大きい。彼女が全力でミーコを推せば、確実にファンが増える。だからこそ、彼女は発言を控えていた。
――の目的は、お兄ちゃんを安心させること。
むしゃピョコというブランドを使ってキャリーしても、長期的な目で見た時に――の足かせとなる可能性が高い。
だけど近いうちに特別な機会がある。
確実じゃないけど、多分、きっと、そうなる。
「ふん、ふふふ~ん♪」
むしゃピョコは鼻歌交じりに絵を描き続ける。
まだ未完成の絵だが、「生徒数10万人&大会優勝おめでとう」と記されていた。
この絵が完成するのは祝いの言葉が現実になった時。
むしゃピョコは未来に想いを馳せながら、少しずつ、その絵を完成に近づける日々を過ごしていた。
むしゃピョコは、まるで本当の親みたいな気持ちでミーコを応援している。
ミーコの配信は全てチェックした。真希とコラボする際には何度か相談を受けた。ミーコは配信でもSNSでもむしゃピョコの話題をあんまり口に出さないが、配信外では子供みたいにベッタリなのである。
むしゃピョコは溢れ出る感情を「裏垢」で発散していた。でも、ほんの少し前からフォロワーが増え始め、まるで「お前を見ている」とでも言わんばかりの「いいね」が届くようになった。怖くなったむしゃピョコは、裏垢の運用を中止した。
なぜ削除しないのか。
それができる者ならば、あんな痛々し……素敵なポエムを全世界に発信しない。
「ふぅん~! ちょっと休憩~」
むしゃピョコをグッと伸びをして、仕事場から離れた。
真っ先に向かったのは冷蔵庫。パックのイチゴ牛乳を取り出すと、コップに移してから一気に飲んだ。
「ん~、やっぱり絵を描いた後は甘い物が染みる~!」
※個人の感想。
「甘い物を飲んだ後は、甘い言葉が聞きたくなるよね。なんちゃって」
※恋する独身女性の感想。
「最近、――ちゃんの様子、どうですか」
むしゃピョコは声を出しながらミーコの兄に連絡した。
三秒後に既読が付き、「欲しいものを聞かれた」という返事。
「うへへっ、返事早過ぎ。これもう実質……危ない危ない」
ギリギリで理性を取り戻す。
その後、想い人との会話を続けた。
む:ほー、なるほどねー
兄:何か聞いてる?
む:配信のネタにしたいのかもね~
むしゃピョコは全て察した上ですっとぼけた。
繰り返すが、彼女はミーコの配信を「全て」観ている。
ヒントは、収益化。
これ以上の説明は蛇足というものだろう。
む:鈍感主人公め!(スタンプ)
兄:ごめん(スタンプ)
むしゃピョコは幸せそうな表情を見せる。
ふーん、そっか、――ちゃん、そうなのか~、という気持ちだった。
(私にも相談してくれないのは、ちょっと寂しいかなぁ)
母親のような気持ちで、やりとりを続ける。
そのうち、ふと思った。まるで娘の話をする夫婦みたいではないか。
事実、二人はミーコのパパとママである。
はじめての共同作業によってミーコを出産したと言える。
もはや結婚(仮)の関係と言えるのではないだろうか。
だったら今度の休日に芝刈りにでも誘ってみようかな。
刈り取る。
かりとる。
仮、取る。
結婚♡
「なーんてね! あは、あは、あはは!」
むしゃピョコはハイになっていた。
自室で良かったね。
「あんまり長く続けると迷惑だよね」
賢者タイム(仮)
む:――ちゃん、最近どう?
兄:何かに取り組んでいる様子だ
兄:とても好ましい
兄:妹の前で威厳を保つのが大変だ
兄:泣きそうになる
む:そっかそっか
「大会に向けて頑張ってるのかな~」
――瞬間、むしゃピョコの表情が引き締まる。
む:旅行の予定とかある?
兄:無い。突然どうした
む:なんでもない。――ちゃんのこと、しっかり見ててあげて欲しくて
既読、後、十数秒の間。
兄:分かった
「……好き」
とても意味深なことを言ってしまった。
でも何も聞かず頷いてくれた。これが適当に返事をしているだけなら友達を集めて愚痴パーティ開催だ。しかし彼には実績がある。大きな信頼と安心感がある。
「……大丈夫、だよね」
ミーコの活動を応援する者の中で、兄を除き、むしゃピョコだけが、彼女の悲鳴を知っている。聴いているだけで涙が出るような叫び声を知っている。
私、ちょっと過保護かな。
そう思いながらも、ひとつの懸念について、本当の保護者に共有した。
――大会まで、残り2日。
1
お気に入りに追加
19
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
借金背負ったので死ぬ気でダンジョン行ったら人生変わった件 やけくそで潜った最凶の迷宮で瀕死の国民的美少女を救ってみた
羽黒 楓
ファンタジー
旧題:借金背負ったので兄妹で死のうと生還不可能の最難関ダンジョンに二人で潜ったら瀕死の人気美少女配信者を助けちゃったので連れて帰るしかない件
借金一億二千万円! もう駄目だ! 二人で心中しようと配信しながらSSS級ダンジョンに潜った俺たち兄妹。そしたらその下層階で国民的人気配信者の女の子が遭難していた! 助けてあげたらどんどんとスパチャが入ってくるじゃん! ってかもはや社会現象じゃん! 俺のスキルは【マネーインジェクション】! 預金残高を消費してパワーにし、それを自分や他人に注射してパワーアップさせる能力。ほらお前ら、この子を助けたければどんどんスパチャしまくれ! その金でパワーを女の子たちに注入注入! これだけ金あれば借金返せそう、もうこうなりゃ絶対に生還するぞ! 最難関ダンジョンだけど、絶対に生きて脱出するぞ! どんな手を使ってでも!
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる