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第41話 凝視ミーコ

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 深夜3時15分。
 いつもと少し違う時間。

『にゃっほろぉ~!』

:にゃほ~!
:ほ~!
:にゃ~!
:舞ってた! 今日ちょっと遅かったね

『ふっふっふ』

:!?
:( ゚Д゚)?

『3時、15分』

:ミーコ!
:なるほどw
:ミーコタイムか

『せいか~い!』

 ちょっとした思い付き。
 これまで3時ピッタリくらいに配信していたミーコだが、今日は戯れに「3時15分」という語呂合わせで配信を開始した。

:終わりは4時15分、よいこか?

『ぐわぁっ』

 突然の負けボイス

『バレた~!』

:かわいい
:草
:分かりやすいwww

 ミーコはそっぽを向いた。

『生徒諸君を良い子だねって褒めようと思ったけどやめます』

:求、記憶を消す方法
:住所を晒すとかオススメだよ^q^
:この場合ミーコの記憶を消す必要があるのでは?
:住所を晒すとかオススメだよ^q^
:ダメだこいつ無敵だわ。ワイの負けや

『ヌヒヒッ、生徒諸君、今日も仲良しだ』

:その笑い方すこ
:音にすると、ひゅひゅひゅ?
:ぬひひ、じゃね?
:みゅひひ?

『にっしっし』

:それは違う
:かわいい
:新しい音素材たすかる

 普段よりも十五分長く待たされた生徒達。
 待望のミーコと会えた彼ら彼女らは、今宵も元気だった。

『りっすん!』

:はい
:( ゚Д゚)?
:突然の英語

『ミーコ、またスキルが増えました!』

:おぉ~!
:ぽよ?

『ぽよ~』

:流石、成長が早い
:どんなスキル?

『ぬんっ!』

 真剣な顔をするミーコ。

:?
:( ゚Д゚)?
:(。・ω・。)じっ

『凝視!』

:あ~
:えっ、もう?
:( ゚Д゚)?

 凝視とは、相手の盤面を見ることである。
 ただ見るだけではない。現在の最大火力、戦略などを読み取る必要がある。

 もちろん難しい。
 自分の盤面を作りながら、相手の盤面も把握するなどマルチタスクにも程がある。

 だが、上級者はみんなできる。
 相手の状況によって「フェイント」を打ち込んだり、自分の戦略を変えたり、一瞬の隙を見つけて速攻を仕掛けたりする。

 そのスキルを、初心者であるはずのミーコが習得した。
 自称しているわけではない。真希が「ヨシ!」と認めたのだ。

『レートも2600まで増えた~!』

:ふぁっ!?
:お~
:昨日より300増えてる!
:真希どんな特訓してるの……?
:そういえば真希のレートどれくらいなの?

『真希さんのレート知らない。
 でも気になる。明日聞いてみるね』

:明日? 日付変わる?

『おじいちゃん、その話は昨日もしたよ』

:今日もして

『寝て起きたら明日!』

:寝なければ今日は終わらないってコト?

『寝ろ!』

:はい
:草
:なにこれwww
:実家のような安心感ある
:実家で安心できるとか親ガチャ当たりかよ

『ところで!』

 ミーコは流れをぶった切る。

『予告どう!? ミーコ出た!?』
 
:出てたよ~
:出てた
:ちょっと出た

『おぉぉぉぉお!?』

:かわいい

『どうだった? どんな感じだった!?』

 生徒一同、悩む。
 あの予告配信では完全に「二ノ宮ホタル」が主役だった。

:真希の弟子って言われてた
:謎の新人。ダークホースに成り得るか、みたいな扱いだったよ

 発言しなかった生徒達は、絶妙な切り抜き方をした二人を尊敬した。

『ダークホース!?』

 ミーコはとても無邪気な反応を見せる。

『闇の力!』

:それはダークフォース

『しゅこぉ~!』

:かわいい
:しゅこぉ~
:しゅこぉ~٩( ''ω'' )و

『ヌヒヒッ、楽しい~!』

:こっちの方が楽しいが?
:生きがい

 今宵もミーコの深夜配信は平和だった。
 誰でも参加できるはずなのに、人が少ないこともあり、メンバーシップ限定配信に近いアットホームな雰囲気となっている。

 ただ、一部の生徒は、いくつかの言葉を呑み込んでいた。

 大会、出ない方が良いかもしれない。
 理由は言語化できない。ただ、なんとなく、そう思った。

 だけど行動には繋がらない。こちらの理由は明確である。
 全力で頑張るミーコに向かって「やめとけ」なんて、言えるわけがないのだ。



 ――大会まで、残り11日。
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