マイナーVtuberミーコの弱くてニューゲーム

下城米雪

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第39話 報告ミーコ

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 深夜3時。
 今宵もミーコ学園のPTA会議が始まる。

『ぽよぽよ~!』

:ぽ~!
:ぽよ~!
:ぽぽぽ~!
:ぽよ~!

『ぽぽぽって聞くと、背が高いあいつを思い出すよね』

:名前を言ってはイケないあの人
:ミーコの身長どれくらいだっけ?

『ミーコの身長は非公開です』

:130センチくらいかな
:小さそう
:小学生くらいのイメージ

『小っちゃいよ!』

:かわ……ん?
:否定してると思ったら肯定してて草
:解釈一致

 今宵も穏やかな時間が始まった。
 のんびり五分ほど経った後、ミーコが大きな声で言う。

『スキルを獲得しました!』

:ゲームかな?
:お?
:どんなスキル?

『時間差式にだぶごれんアタック!』

:真希の得意技じゃん……
:( ゚Д゚)?
:ラーメンの注文かな?

 分かる人、分からない人、お腹が空いてる人。
 色々な反応を見た後、ミーコは目を細めて言う。

『ちょっと待って。思い出してる』

 ミーコの発言を分解すると「2ダブル+5連鎖攻撃」となる。
 ぽよぽよにおける「ダブル」とは、2カ所で同時にぽよを昇天させることを言う。また、直前に付与されている数字は連鎖数である。

 要するに「時間差式2ダブ5連アタック」とは、2連鎖目に2カ所同時に昇天させた後、少し間をあけてから5連鎖を決める攻撃である。

 ぽよは連鎖をするゲームだと思われがちだが、実は違う。
 大切なのは、相手が嫌がるタイミングでぽよを昇天させること。

 と、真希は説明した。

 なぜ2ダブなのか。なぜ5連鎖なのか。
 その理由についても、真希はミーコに詳しく説明した。

『整った!』

 ミーコはそれを自分の言葉に変えて説明する。

『まずは2連鎖を作ります』

:はい
:分かる
:うんうん

『2連鎖目で2カ所同時に昇天させます』

:なるほど
:2ダブの説明だね

『相手は困る!』

:確かに
:かわいい

『この時ひとつ大事なことがあって……えっと……』

:なんだろう
:タイミングかな?

『仲良しパワーが強いほど強い!』

:仲良しパワーとは
:連結数のことだろ
:いっぱい一緒に昇天するほど仲良し
:偶数ボーナスありそう
:それからそれから?

『それから……時間を空けて追加攻撃!』

:おぉぉ
:なんか強そう

『相手は……とても困る!』

:草
:語彙力w
:かわいい
:ガチ勢の得意技を説明されてこんなほっこりすることある?

『ふふんっ!』

 ミーコは勝ち誇った。
 誰に勝ったのかは分からない。
 ただ、この瞬間、ミーコは確かに勝利したのである。

『今は……レート? 増やしてるよ!』

 レート。
 オンライン対戦における戦闘力。

 勝てば増える。
 負ければ減る。

『今日ね! 6連勝できた~! すごいでしょ~!』

:お~
:ミーコえらい!
:今レートいくつなん?

『ヌヒヒッ、今日はレート2300を達成したよ!』

:ほえー
:どれくらい強いのか分からん
:順調だね

『真希さん曰く、3000超えてからが本番っぽい』

:プロ基準定期
:いやいやいやいや……
:ミーコもうちょっと!

『そう! もうちょっと!』

 分かる人、分からない人。
 双方の立場からコメントが発せられる。

 ちょっと良い気分なミーコ。
 今は意図的に褒めてくれるコメントだけを見ていた。

 ミーコだって人間だもの。
 調子に乗りたい時はあるのだ。

 因みに、レート2300から3000は全然もうちょっとじゃない。東京から大阪に徒歩で移動するくらいの隔たりがある。

『あー!』

 ひとしきり無邪気な喜びを見せた後、突然の悲鳴。
 
『思い出した。明日、大会の予告配信があるっぽい』

:明日?
:日付変わる? 変わらない?

『寝て起きたら明日!』

:りょ
:把握した
:寝るまでは予告配信が始まらないってコト?

『寝ろ!』

:はい
:草
:力強い

『えっと、出場者の紹介とかあるっぽい!』

:ほえー
:ミーコ出るのか!

『名前だけ出るかも!』

:おー!
:あの予告配信、そこそこ同接あるよな
:俺のミーコが知られてしまう……
:は? お前のじゃないが?
:俺たちのミーコが知られてしまう……
:よろしい

『仲良くして』

:はい
:ごめんね
:いいよ
:やさい生活

『楽しみ! ミーコどんな風に紹介して貰えるかな?』

:かわいい
:ゆーて有名配信者メインっしょ
:むしろ今は目立たず本番でかましていけ卍

『むぅ、あんまり期待できなそう?』

:ハードル下げとこ

『埋めた!』

:思い切りの良さ
:草

『えっへっへ』

 ミーコの耳がぴこぴこする。

『まあ、正直、名前だけ呼ばれて終わりかなって思う。
 それでも、やっぱりちょっとワクワクする』

:同時視聴する?

『同時視聴やりたい!
 でも、その時間は真希さんと練習する予定……』

:マジか
:めちゃストイックじゃん
:ゆーてガチ勢が集まる大会ではある
:あくまでVtuberレベルだけどね
:真希は除く
:真希は除かれた定期
:草

 以上、ミーコは伝えるべきことを言い切った。
 
『ふぅ……』

 一仕事終えた後の満足した声である。
 ミーコは額の汗を拭い、手元の水を飲んでから言った。

『雑談しようぜ!』

:舞ってた
:来た
:とっておきのネタを仕入れておいたぜ!

 その後、ミーコは生徒達と楽しく会話した。
 ミーコは今日も元気いっぱい。どんな話でも心から楽しそうに笑った。



 ――大会まで、残り12日。
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