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第37話 真希ミーコ
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真希とミーコの練習は「非公開」となっている。
このため、しばらく二人のコラボ配信は休止となる。
しかし、配信は行う。
毎日当たり前のように三回行動するミーコはさておき、ここ数ヵ月は週に一回程度の頻度でしか活動していなかった真希が、ここ数日は、毎日配信を行っていた。
いつも理由がある。
一言で言えば、ミーコのためである。ミーコをバズらせ、ついでに自分もバズり、広告収入でウッハウハになるためである。
途中まで良い話だったんだよなぁ。
という幻聴が聞こえるような文言だが、事実である。
真希のモチベーションはお金なのだ。
まだ見ぬ新人を発掘したいという「愛」だけなら、とっくに活動をやめていることだろう。愛は三年しか続かないのだ。でも不思議だよね。だって、推し活は何年でも続けられるから。どうしてだろう。それは、何度も推しの新しい一面を知って、何度も好きになれるから。ビッグラブ。
そんなポエムを胸に、真希は挨拶をした。
『ぽよ~』
:えぇぇ……
:それ引っ張るのかよwww
:何それ!?
『ねぇみんな聴いて?
真希ね、今日ね、ミーコとオフコラボしたったぽよ』
:あ”?
:はいライン超え
『嫉妬が心地よいぽよ~』
:嫉妬じゃないが?
:は?
『ぽよぽよぽよ~』
真希は思った。
ミーコとのコラボ中と違ってリスナーども容赦ねぇな、と。
『まぁ、配信外で特訓しただけで顔も見てないけどね』
:急に冷静になるじゃん
:草
:安心した
:ミーコが朝の配信しなかった理由それか?
『配信してない時間をオフ扱いするとか~、真希ぽよ意識高過ぎぃ?』
:お前最近どこに向かってるの?w
:迷走してる
:むしろ瞑想してくれ
:正直俺は好き
『というわけで、こちらは惚気配信となります。
真希ミーコ、カップルチャンネル誕生も秒読みってわけ』
:妄想乙
:練習気になってたから助かる
:なんで非公開なん?
『非公開の理由は前も話したけど、ガチで勝つため』
真希はふざけた発言を繰り返しながらも、しっかりと視聴者の反応を見ている。
目的は、適度なファンサを共有して、満足度を高めることである。お金のために。
今、視聴者が最も求めているのはミーコとの絡み。
大会に向けた練習など、撮れ高が量産されること間違いなし。
全て理解した上で非公開とした。
シンプルに、勝つため。大会で目立ち、十万人前後の視聴者が集まる決勝にミーコを送り込むためである。
しかし、そういうガチな部分は極力視聴者に見せない。
『ぽよぽよぽよ~』
:うっざ
:きっつ
と、友達のような距離感で罵倒されるくらいがちょうど良い。
『そろそろ惚気るね』
そして真希は語り始める。
『ミーコかわいい。もうほんとかわいい。なんだろう。徐々に慣れてる感じが良いのかな。本来の意味でツンデレみたいな感じ? ほら、こたつにこもって最初はウチと会話拒否って感じだったじゃん? あれ正直ガチ焦ったんだよねぇ。ミーコの配信を見てたら『活発な子なのかな』って印象だったから、台本とか用意しなかったのよ。その後もさぁ……あれ、これ前の配信でも話したっけ? まあいいや言うか。ミーコ最初のコラボの後にメールくれて……これがもう本当にかわぁやぁごぉにゃばぁ! はぁ、はぁ、メールの文面から清楚の香りがするよぉ……すぅぅぅぅぅ。ふぁーw』
:えぇぇ……
:想像の五倍きしょいwwww
:何これ
:めっちゃ語るじゃん
:wwww
:草
『コラボとか見てくれてる人は察してると思うけど、ミーコは自称コミュ障みたいなレベルじゃなくて、ガチで会話が、というか、人間がダメみたいなんだよね。言葉が難しいけど……うーん、鬱とかじゃなくて、トラウマ的な感じ? だから本人的には仲良く普通に会話したいんだけど、体が拒否しちゃうのよ。ウチのこと生理的に無理とかじゃなくて。まとも話せる人間はお兄ちゃんだけ。なんか、もう、ね。邪推するのはダメだけど、色々と想像しちゃうよね。ミーコのことまとめた切り抜きとか見て欲しいんだけど、ずっとヒキニートだったミーコが、人生の中で唯一信頼できる兄を安心させるために活動を始めたわけ。頑張ってるよねぇ。それがダイレクトに伝わるというか、直接話してると、ほんと、がんばってて、ちょっとずつ心を許して貰える感覚って言えば良いのかな? 最初は人間のこと警戒してた野良猫が、徐々に威嚇をしなくなって、たまーに足元に来て『にゃー』って鳴いてくれるようになる感覚? あー、やばい。思い出したら。ぐへ、ぐへへ。ちょっと待ってティッシュ無い。涎拭いてくる』
:だ い な し
:途中まで良い話だったんだよなぁ
:ミーコってそんな感じなんだ
:真希のこと警戒してるわけじゃなかったのか?
:他の人とコラボしたらどうなるんだろ
:お兄さま……素敵……結婚したい
:はえー
こんな調子で。
真希は一時間ほどノンストップで語り続けたのだった。
――大会まで、残り14日。
このため、しばらく二人のコラボ配信は休止となる。
しかし、配信は行う。
毎日当たり前のように三回行動するミーコはさておき、ここ数ヵ月は週に一回程度の頻度でしか活動していなかった真希が、ここ数日は、毎日配信を行っていた。
いつも理由がある。
一言で言えば、ミーコのためである。ミーコをバズらせ、ついでに自分もバズり、広告収入でウッハウハになるためである。
途中まで良い話だったんだよなぁ。
という幻聴が聞こえるような文言だが、事実である。
真希のモチベーションはお金なのだ。
まだ見ぬ新人を発掘したいという「愛」だけなら、とっくに活動をやめていることだろう。愛は三年しか続かないのだ。でも不思議だよね。だって、推し活は何年でも続けられるから。どうしてだろう。それは、何度も推しの新しい一面を知って、何度も好きになれるから。ビッグラブ。
そんなポエムを胸に、真希は挨拶をした。
『ぽよ~』
:えぇぇ……
:それ引っ張るのかよwww
:何それ!?
『ねぇみんな聴いて?
真希ね、今日ね、ミーコとオフコラボしたったぽよ』
:あ”?
:はいライン超え
『嫉妬が心地よいぽよ~』
:嫉妬じゃないが?
:は?
『ぽよぽよぽよ~』
真希は思った。
ミーコとのコラボ中と違ってリスナーども容赦ねぇな、と。
『まぁ、配信外で特訓しただけで顔も見てないけどね』
:急に冷静になるじゃん
:草
:安心した
:ミーコが朝の配信しなかった理由それか?
『配信してない時間をオフ扱いするとか~、真希ぽよ意識高過ぎぃ?』
:お前最近どこに向かってるの?w
:迷走してる
:むしろ瞑想してくれ
:正直俺は好き
『というわけで、こちらは惚気配信となります。
真希ミーコ、カップルチャンネル誕生も秒読みってわけ』
:妄想乙
:練習気になってたから助かる
:なんで非公開なん?
『非公開の理由は前も話したけど、ガチで勝つため』
真希はふざけた発言を繰り返しながらも、しっかりと視聴者の反応を見ている。
目的は、適度なファンサを共有して、満足度を高めることである。お金のために。
今、視聴者が最も求めているのはミーコとの絡み。
大会に向けた練習など、撮れ高が量産されること間違いなし。
全て理解した上で非公開とした。
シンプルに、勝つため。大会で目立ち、十万人前後の視聴者が集まる決勝にミーコを送り込むためである。
しかし、そういうガチな部分は極力視聴者に見せない。
『ぽよぽよぽよ~』
:うっざ
:きっつ
と、友達のような距離感で罵倒されるくらいがちょうど良い。
『そろそろ惚気るね』
そして真希は語り始める。
『ミーコかわいい。もうほんとかわいい。なんだろう。徐々に慣れてる感じが良いのかな。本来の意味でツンデレみたいな感じ? ほら、こたつにこもって最初はウチと会話拒否って感じだったじゃん? あれ正直ガチ焦ったんだよねぇ。ミーコの配信を見てたら『活発な子なのかな』って印象だったから、台本とか用意しなかったのよ。その後もさぁ……あれ、これ前の配信でも話したっけ? まあいいや言うか。ミーコ最初のコラボの後にメールくれて……これがもう本当にかわぁやぁごぉにゃばぁ! はぁ、はぁ、メールの文面から清楚の香りがするよぉ……すぅぅぅぅぅ。ふぁーw』
:えぇぇ……
:想像の五倍きしょいwwww
:何これ
:めっちゃ語るじゃん
:wwww
:草
『コラボとか見てくれてる人は察してると思うけど、ミーコは自称コミュ障みたいなレベルじゃなくて、ガチで会話が、というか、人間がダメみたいなんだよね。言葉が難しいけど……うーん、鬱とかじゃなくて、トラウマ的な感じ? だから本人的には仲良く普通に会話したいんだけど、体が拒否しちゃうのよ。ウチのこと生理的に無理とかじゃなくて。まとも話せる人間はお兄ちゃんだけ。なんか、もう、ね。邪推するのはダメだけど、色々と想像しちゃうよね。ミーコのことまとめた切り抜きとか見て欲しいんだけど、ずっとヒキニートだったミーコが、人生の中で唯一信頼できる兄を安心させるために活動を始めたわけ。頑張ってるよねぇ。それがダイレクトに伝わるというか、直接話してると、ほんと、がんばってて、ちょっとずつ心を許して貰える感覚って言えば良いのかな? 最初は人間のこと警戒してた野良猫が、徐々に威嚇をしなくなって、たまーに足元に来て『にゃー』って鳴いてくれるようになる感覚? あー、やばい。思い出したら。ぐへ、ぐへへ。ちょっと待ってティッシュ無い。涎拭いてくる』
:だ い な し
:途中まで良い話だったんだよなぁ
:ミーコってそんな感じなんだ
:真希のこと警戒してるわけじゃなかったのか?
:他の人とコラボしたらどうなるんだろ
:お兄さま……素敵……結婚したい
:はえー
こんな調子で。
真希は一時間ほどノンストップで語り続けたのだった。
――大会まで、残り14日。
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