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第36話 ぽよを消す理由
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午前三時。
今日もPTA会議が始まる。
『にゃほぉ……』
:元気ない。どうした?
:にゃほ~!
『……うぐ、ひぐっ、うぅぅ』
:ミーコ!?
:泣いてる?
『……ぽよぉ』
:まだ引きずってるのかwww
:どんだけ消したくなかったのw
『……ひどすぎる』
恒例となった真希とのコラボ配信。
ミーコは圧に屈して「ぽよ」をプレイした。
最初は連鎖を学ぶところから。
ミーコは断腸の思いで「一連鎖」をした。
ぽよが消える。
ミーコは「あぁぁっ」と悲鳴を上げる。
真希がお手本を見せた。
オーソドックスな「階段詰み」からの8連鎖。
ミーコはぽよが消える度に悲鳴を上げ、最後には「大虐殺~」「酷過ぎる」などと発言して視聴者からの笑いを誘った。
:なんでそんなに消したくないん?
視聴者からの純粋な質問。
コラボ中には「コミュ障」を発揮して視聴者と会話できないミーコだが、今は彼女のホームであり、きちんと返事ができる。
『……消える瞬間の、目が』
:あー
:確かにビックリした感じになってるな
『……昔のミーコと、重なって』
:この話やめよっか
:昔のミーコ?
:終わり。終わりでーす。終了~!
何も知らない視聴者達。その中に紛れ込んだ、ある程度を知っている四天王達が、会話を打ち切るコメントを連打した。
『うぅぅぅ~』
:そんなに嫌なら断ろうぜ
:テトでも十分強いじゃん。テク磨けばワンチャンあるよ
:雨ふれば太陽さんとかに相談しようぜ
:あーダメダメ。ダメです。男性とのコラボはユニコーン筆頭であるわたくしが拒否
鳴き声を発するミーコを差し置き、盛り上がるコメント欄。
それをしばらく静観した後、ミーコは言った。
『大会、あるから』
それは、真希が「ぽよテト」を進めた理由。
開催まで残り15日となった「Vtuberぽよテト最強決定戦」のこと。
:あ~!
:なるほど! あれに出るのか!
:出られるの?
『真希さんが、エントリーしたって』
Vtuberぽよテト最強決定戦。
最大手の箱からも出場者が出るため、毎年十万人近い視聴者を集める企画である。
『……チャンス、だから』
この大会には予選がある。
しかし、予選の注目度は低い。
多くの視聴者が集まるのは、大人の事情でシード枠を調整されたり、なんやかんやで勝ち残った有名Vtuberが参加する決勝大会である。
ミーコは、そこに出たい。
そして生徒数を爆増させたい。
だから、勝ちたい。
多分、きっと、生まれて初めて、誰かに勝ちたいと思った。
『……だから、ミーコは』
そのためなら。
『ぽよ、をぉ……』
鼻をすすり、
『げずぅぅぅ!』
涙を流しながら宣言した。
たかがゲーム。されどゲーム。
何年も引きこもり続けたミーコにとっては、唯一の娯楽と言っても良い。
彼女はゲームが上手い。
特に、キャラクターを自在にコントロールする能力に長けている。
境目が無いからだ。
ミーコは、ゲームのキャラクターを自分自身と重ねてプレイするタイプである。
その訓練を、何年も何年も何年も続けた。
普通の人が、普通に生きている間。
普通の人が、学校で友達と青春する間。
ミーコは、一人で、ずっと。ずっと。ずっと。
しかし、彼女には対戦ゲームの経験が全く無い。
それは強すぎる感情移入が理由である。ぽよの消滅にさえ感情移入するのだから、相手を倒すことを目的としたゲームなど、プレイできるわけがない。
そういう意味で、絶妙だった。
シンプルに、ぽよは、人じゃない。
だから、ギリギリ。
涙をのみながらも、がんばれる。
:ミーコ
一人の視聴者が言う。
:ぽよは、消えてないよ
それは、その視聴者が唐突に思い付いた「噓」の設定。
:あの驚きは、仲間と会えた喜び
:その後、超高速で「ヒャッハー」して画面外に旅立っただけ
『……仲間と、会えた、喜び?』
何人かの視聴者は「何その設定w」と思った。
しかし、それをコメントとして残す「キッズ」は、幸運にも、一人もいなかった。
:最高じゃん
:ぽよでも仲間が居るのに、俺は一体……
:ぽよぽよはぼっち救済ゲームだった?
:だから四体集まらないと消えないのか
ミーコの目が大きくなる。
現実世界では、カメラの前で、彼女が目を見開いていた。
『……ぽよには、仲間が、いる』
:そうだよ!
:仲間を作ってあげよう!
『……うん!』
ミーコは吹っ切れた。
こうして、大会参加に向けた挑戦が始まるのだった。
===あとがき
没案。
『……ぽよには、仲間が、いる?』
:そうだよ!
:仲間を作ってあげよう!
『……じゃあ、敵だね』
:ふぁっ!?
:!!!?!?!?
今日もPTA会議が始まる。
『にゃほぉ……』
:元気ない。どうした?
:にゃほ~!
『……うぐ、ひぐっ、うぅぅ』
:ミーコ!?
:泣いてる?
『……ぽよぉ』
:まだ引きずってるのかwww
:どんだけ消したくなかったのw
『……ひどすぎる』
恒例となった真希とのコラボ配信。
ミーコは圧に屈して「ぽよ」をプレイした。
最初は連鎖を学ぶところから。
ミーコは断腸の思いで「一連鎖」をした。
ぽよが消える。
ミーコは「あぁぁっ」と悲鳴を上げる。
真希がお手本を見せた。
オーソドックスな「階段詰み」からの8連鎖。
ミーコはぽよが消える度に悲鳴を上げ、最後には「大虐殺~」「酷過ぎる」などと発言して視聴者からの笑いを誘った。
:なんでそんなに消したくないん?
視聴者からの純粋な質問。
コラボ中には「コミュ障」を発揮して視聴者と会話できないミーコだが、今は彼女のホームであり、きちんと返事ができる。
『……消える瞬間の、目が』
:あー
:確かにビックリした感じになってるな
『……昔のミーコと、重なって』
:この話やめよっか
:昔のミーコ?
:終わり。終わりでーす。終了~!
何も知らない視聴者達。その中に紛れ込んだ、ある程度を知っている四天王達が、会話を打ち切るコメントを連打した。
『うぅぅぅ~』
:そんなに嫌なら断ろうぜ
:テトでも十分強いじゃん。テク磨けばワンチャンあるよ
:雨ふれば太陽さんとかに相談しようぜ
:あーダメダメ。ダメです。男性とのコラボはユニコーン筆頭であるわたくしが拒否
鳴き声を発するミーコを差し置き、盛り上がるコメント欄。
それをしばらく静観した後、ミーコは言った。
『大会、あるから』
それは、真希が「ぽよテト」を進めた理由。
開催まで残り15日となった「Vtuberぽよテト最強決定戦」のこと。
:あ~!
:なるほど! あれに出るのか!
:出られるの?
『真希さんが、エントリーしたって』
Vtuberぽよテト最強決定戦。
最大手の箱からも出場者が出るため、毎年十万人近い視聴者を集める企画である。
『……チャンス、だから』
この大会には予選がある。
しかし、予選の注目度は低い。
多くの視聴者が集まるのは、大人の事情でシード枠を調整されたり、なんやかんやで勝ち残った有名Vtuberが参加する決勝大会である。
ミーコは、そこに出たい。
そして生徒数を爆増させたい。
だから、勝ちたい。
多分、きっと、生まれて初めて、誰かに勝ちたいと思った。
『……だから、ミーコは』
そのためなら。
『ぽよ、をぉ……』
鼻をすすり、
『げずぅぅぅ!』
涙を流しながら宣言した。
たかがゲーム。されどゲーム。
何年も引きこもり続けたミーコにとっては、唯一の娯楽と言っても良い。
彼女はゲームが上手い。
特に、キャラクターを自在にコントロールする能力に長けている。
境目が無いからだ。
ミーコは、ゲームのキャラクターを自分自身と重ねてプレイするタイプである。
その訓練を、何年も何年も何年も続けた。
普通の人が、普通に生きている間。
普通の人が、学校で友達と青春する間。
ミーコは、一人で、ずっと。ずっと。ずっと。
しかし、彼女には対戦ゲームの経験が全く無い。
それは強すぎる感情移入が理由である。ぽよの消滅にさえ感情移入するのだから、相手を倒すことを目的としたゲームなど、プレイできるわけがない。
そういう意味で、絶妙だった。
シンプルに、ぽよは、人じゃない。
だから、ギリギリ。
涙をのみながらも、がんばれる。
:ミーコ
一人の視聴者が言う。
:ぽよは、消えてないよ
それは、その視聴者が唐突に思い付いた「噓」の設定。
:あの驚きは、仲間と会えた喜び
:その後、超高速で「ヒャッハー」して画面外に旅立っただけ
『……仲間と、会えた、喜び?』
何人かの視聴者は「何その設定w」と思った。
しかし、それをコメントとして残す「キッズ」は、幸運にも、一人もいなかった。
:最高じゃん
:ぽよでも仲間が居るのに、俺は一体……
:ぽよぽよはぼっち救済ゲームだった?
:だから四体集まらないと消えないのか
ミーコの目が大きくなる。
現実世界では、カメラの前で、彼女が目を見開いていた。
『……ぽよには、仲間が、いる』
:そうだよ!
:仲間を作ってあげよう!
『……うん!』
ミーコは吹っ切れた。
こうして、大会参加に向けた挑戦が始まるのだった。
===あとがき
没案。
『……ぽよには、仲間が、いる?』
:そうだよ!
:仲間を作ってあげよう!
『……じゃあ、敵だね』
:ふぁっ!?
:!!!?!?!?
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