62 / 68
5-04.小さな希望
しおりを挟む
「やっと見つけた!」
彩音とカリンは同時に振り返った。
二人の目に映ったのは、全裸の少女だった。
「カリンさん淫魔です!」
「まったく、次から次に!」
「わわわ待って! 待って待って!」
少女は慌てた様子で言った。
しかしカリンは待たない。手に稲妻を迸らせ、今まさに攻撃しようとしている。
「私はルリ! 二人を探してたの!」
カリンは腰を落とし、ルリと名乗った少女に肉薄した。
「月影翔馬くんに頼まれて!」
「っ!?」
首を狙った手刀がギリギリのタイミングで止まる。
カリンは目を見開き、そのまま硬直した。
「痛っ~! びりってした! ビリビリしたぁ!」
しかしルリには被害があった。
彼女は首元を抑え、涙目になって悲鳴をあげる。
「……彼に、頼まれた?」
カリンが小さな声で言った。
ルリは首を擦りながら返事をする。
「はい。お二人と強力して、胡桃を救ってくれと」
「……どういうこと?」
「私にも何が何だか……この体だって、自分のモノじゃないというか」
彼女は困惑した様子で自分の体に触れる。
その途中、ふと目を細めた。本人は「生きてた頃より大きい……」などと場違いなことを思っていたのだが、言葉にはしなかった。
「とにかく、協力してください! お願いします!」
カリンは悩んだ。
彼女の言葉が噓かもしれない。
振り向き、彩音に判断を仰ぐ。
彩音もまた難しい表情をしていた。
信じる根拠が無い。
しかし、今は他に手がかりも無い。
「具体的に、何を手伝えば?」
「胡桃を説得する! 二人に頼めば、何とかなるかもって、彼が!」
「何とかなると言われても……」
彩音は窓の外を見た。
上空は、先程から何度も発光している。
光の元は、その胡桃だ。
もはや人間の所業とは思えない。
自分が、あれに対して何かできるとは思えなかった。
「まず、この中に空を飛べる方はいますか?」
ルリは首を横に振った。
カリンも同様に首を横に振る。
彩音は溜息を吐いた。
カリンはルリを警戒しながら彩音の隣に立ち、再び空を見る。
ルリもおっかなびっくり二人に近寄って、空を見上げた。
「……とりあえず」
カリンが言う。
「委員長、予備の服とかあるかしら?」
「無いです」
「……アイテムボックス」
カリンは溜息まじりに「キーワード」を口にした。
それから謎の空間に手を突っ込み、申し訳程度に布がある服を取り出した。
「それは……?」
彩音が問う。
「アイテムボックス。あいつが作ったエロトラップダンジョンで手に入れたもの」
「エロトラップ……?」
彩音は「楽しそう」と思った。
もちろん口には出さず、あえて別の話題を口にする。
「しかし意外です。あなた、そういう落ち着いた喋り方もできるんですね」
「どういう意味?」
「チャラチャラうるさいギャルという印象だったので」
「は?」
カリンは彩音を睨んだ。
「あーしべつに学校で騒いだりしてないけど?」
「あー、それです。しっくりきます。そっちの方が落ち着きます」
「……なんなの?」
カリンは苦笑した。
それからルリに服を渡す。
「これ、どうぞ」
「……ありがと」
ルリは服を受け取り、じっと見た。
「どしたん?」
カリンはすっかりギャルモードだった。
深い理由は無い。なんとなく、委員長の要望に応えることにした。
「……この服、マジですか?」
ルリは言う。
彼女は「全裸の方がマシかも」と思っていた。
「水着だと思えば良くない?」
「ほぼ紐なんですけど……」
「じゃあもう着なくて良いよ。これ結構高性能なのに……」
「ああ、ごめんなさい! 着ます! やっぱり全裸よりは……く~!」
葛藤するルリ。
それを見た彩音が提案する。
「私の教室まで行ければ、ジャージありますよ?」
「行きましょう!」
三人の行き先が決まった。
その後、三人は慎重に進む。
数分後、無事に到着。
ただし、淫魔と化した元生徒と四度の戦闘が発生した。
「念願の服を手に入れた!」
ルリは歓喜した。
その緊張感の無い様子を見て、彩音は微かに笑みを浮かべる。
「これから、どうしましょうか」
「……えーっと、ルリだっけ? なんかアイデアある?」
カリンに問われ、ルリは腕を組む。
答えは出なそうだった。その様子を見て、彩音が言う。
「彼は、何か言ってませんでしたか?」
「……何も。二人と協力して、胡桃を元に戻せとしか」
「そうですか」
沈黙。三人は、それぞれ考え込む。
外の音が入り込んでくる。悲鳴と嬌声、そして爆発音。まるで、この世の終わりのような音だった。実際、外はメチャクチャになっている。
やがて彩音が溜息を吐き、呟くようにして言った。
「……彼は、この状況を予期していた可能性があります」
「どういうこと?」
カリンが問いかける。
彩音は顎に手を当て、少し考えた後で言う。
「ただの勘です」
上手く言語化できなかった。
ただ、なんとなく、そんな気がした。
「……」
「……」
空気が重い。
希望が見えたような気がするのに、その光はあまりにも弱い。
その後、ただただ時間だけが過ぎ去った。
大きな変化が起きたのは、淫魔が現れた後、およそ24時間が経過した頃。
──上空で戦っていた二つの影が、地に落ちた。
彩音とカリンは同時に振り返った。
二人の目に映ったのは、全裸の少女だった。
「カリンさん淫魔です!」
「まったく、次から次に!」
「わわわ待って! 待って待って!」
少女は慌てた様子で言った。
しかしカリンは待たない。手に稲妻を迸らせ、今まさに攻撃しようとしている。
「私はルリ! 二人を探してたの!」
カリンは腰を落とし、ルリと名乗った少女に肉薄した。
「月影翔馬くんに頼まれて!」
「っ!?」
首を狙った手刀がギリギリのタイミングで止まる。
カリンは目を見開き、そのまま硬直した。
「痛っ~! びりってした! ビリビリしたぁ!」
しかしルリには被害があった。
彼女は首元を抑え、涙目になって悲鳴をあげる。
「……彼に、頼まれた?」
カリンが小さな声で言った。
ルリは首を擦りながら返事をする。
「はい。お二人と強力して、胡桃を救ってくれと」
「……どういうこと?」
「私にも何が何だか……この体だって、自分のモノじゃないというか」
彼女は困惑した様子で自分の体に触れる。
その途中、ふと目を細めた。本人は「生きてた頃より大きい……」などと場違いなことを思っていたのだが、言葉にはしなかった。
「とにかく、協力してください! お願いします!」
カリンは悩んだ。
彼女の言葉が噓かもしれない。
振り向き、彩音に判断を仰ぐ。
彩音もまた難しい表情をしていた。
信じる根拠が無い。
しかし、今は他に手がかりも無い。
「具体的に、何を手伝えば?」
「胡桃を説得する! 二人に頼めば、何とかなるかもって、彼が!」
「何とかなると言われても……」
彩音は窓の外を見た。
上空は、先程から何度も発光している。
光の元は、その胡桃だ。
もはや人間の所業とは思えない。
自分が、あれに対して何かできるとは思えなかった。
「まず、この中に空を飛べる方はいますか?」
ルリは首を横に振った。
カリンも同様に首を横に振る。
彩音は溜息を吐いた。
カリンはルリを警戒しながら彩音の隣に立ち、再び空を見る。
ルリもおっかなびっくり二人に近寄って、空を見上げた。
「……とりあえず」
カリンが言う。
「委員長、予備の服とかあるかしら?」
「無いです」
「……アイテムボックス」
カリンは溜息まじりに「キーワード」を口にした。
それから謎の空間に手を突っ込み、申し訳程度に布がある服を取り出した。
「それは……?」
彩音が問う。
「アイテムボックス。あいつが作ったエロトラップダンジョンで手に入れたもの」
「エロトラップ……?」
彩音は「楽しそう」と思った。
もちろん口には出さず、あえて別の話題を口にする。
「しかし意外です。あなた、そういう落ち着いた喋り方もできるんですね」
「どういう意味?」
「チャラチャラうるさいギャルという印象だったので」
「は?」
カリンは彩音を睨んだ。
「あーしべつに学校で騒いだりしてないけど?」
「あー、それです。しっくりきます。そっちの方が落ち着きます」
「……なんなの?」
カリンは苦笑した。
それからルリに服を渡す。
「これ、どうぞ」
「……ありがと」
ルリは服を受け取り、じっと見た。
「どしたん?」
カリンはすっかりギャルモードだった。
深い理由は無い。なんとなく、委員長の要望に応えることにした。
「……この服、マジですか?」
ルリは言う。
彼女は「全裸の方がマシかも」と思っていた。
「水着だと思えば良くない?」
「ほぼ紐なんですけど……」
「じゃあもう着なくて良いよ。これ結構高性能なのに……」
「ああ、ごめんなさい! 着ます! やっぱり全裸よりは……く~!」
葛藤するルリ。
それを見た彩音が提案する。
「私の教室まで行ければ、ジャージありますよ?」
「行きましょう!」
三人の行き先が決まった。
その後、三人は慎重に進む。
数分後、無事に到着。
ただし、淫魔と化した元生徒と四度の戦闘が発生した。
「念願の服を手に入れた!」
ルリは歓喜した。
その緊張感の無い様子を見て、彩音は微かに笑みを浮かべる。
「これから、どうしましょうか」
「……えーっと、ルリだっけ? なんかアイデアある?」
カリンに問われ、ルリは腕を組む。
答えは出なそうだった。その様子を見て、彩音が言う。
「彼は、何か言ってませんでしたか?」
「……何も。二人と協力して、胡桃を元に戻せとしか」
「そうですか」
沈黙。三人は、それぞれ考え込む。
外の音が入り込んでくる。悲鳴と嬌声、そして爆発音。まるで、この世の終わりのような音だった。実際、外はメチャクチャになっている。
やがて彩音が溜息を吐き、呟くようにして言った。
「……彼は、この状況を予期していた可能性があります」
「どういうこと?」
カリンが問いかける。
彩音は顎に手を当て、少し考えた後で言う。
「ただの勘です」
上手く言語化できなかった。
ただ、なんとなく、そんな気がした。
「……」
「……」
空気が重い。
希望が見えたような気がするのに、その光はあまりにも弱い。
その後、ただただ時間だけが過ぎ去った。
大きな変化が起きたのは、淫魔が現れた後、およそ24時間が経過した頃。
──上空で戦っていた二つの影が、地に落ちた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。
たかなしポン太
青春
僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。
助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。
でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。
「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」
「ちょっと、確認しなくていいですから!」
「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」
「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」
天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。
異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー!
※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。
※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。
痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~
ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。
食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。
最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。
それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。
※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。
カクヨムで先行投稿中!
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
貞操逆転世界に転生したのに…男女比一対一って…
美鈴
ファンタジー
俺は隼 豊和(はやぶさ とよかず)。年齢は15歳。今年から高校生になるんだけど、何を隠そう俺には前世の記憶があるんだ。前世の記憶があるということは亡くなって生まれ変わったという事なんだろうけど、生まれ変わった世界はなんと貞操逆転世界だった。これはモテると喜んだのも束の間…その世界の男女比の差は全く無く、男性が優遇される世界ではなかった…寧ろ…。とにかく他にも色々とおかしい、そんな世界で俺にどうしろと!?また誰とも付き合えないのかっ!?そんなお話です…。
※カクヨム様にも投稿しております。内容は異なります。
※イラストはAI生成です
マンションのオーナーは十六歳の不思議な青年 〜マンションの特別室は何故か女性で埋まってしまう〜
美鈴
ファンタジー
ホットランキング上位ありがとうございます😊
ストーカーの被害に遭うアイドル歌羽根天音。彼女は警察に真っ先に相談する事にしたのだが…結果を言えば解決には至っていない。途方にくれる天音。久しぶりに会った親友の美樹子に「──なんかあった?」と、聞かれてその件を伝える事に…。すると彼女から「なんでもっと早く言ってくれなかったの!?」と、そんな言葉とともに彼女は誰かに電話を掛け始め…
※カクヨム様にも投稿しています
※イラストはAIイラストを使用しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる