異世界帰りの元陰キャ、今は淫キャ

下城米雪

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5-04.小さな希望

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「やっと見つけた!」

 彩音とカリンは同時に振り返った。
 二人の目に映ったのは、全裸の少女だった。

「カリンさん淫魔です!」
「まったく、次から次に!」
「わわわ待って! 待って待って!」

 少女は慌てた様子で言った。
 しかしカリンは待たない。手に稲妻を迸らせ、今まさに攻撃しようとしている。

「私はルリ! 二人を探してたの!」

 カリンは腰を落とし、ルリと名乗った少女に肉薄した。

「月影翔馬くんに頼まれて!」
「っ!?」

 首を狙った手刀がギリギリのタイミングで止まる。
 カリンは目を見開き、そのまま硬直した。

「痛っ~! びりってした! ビリビリしたぁ!」

 しかしルリには被害があった。
 彼女は首元を抑え、涙目になって悲鳴をあげる。

「……彼に、頼まれた?」

 カリンが小さな声で言った。
 ルリは首を擦りながら返事をする。

「はい。お二人と強力して、胡桃を救ってくれと」
「……どういうこと?」
「私にも何が何だか……この体だって、自分のモノじゃないというか」

 彼女は困惑した様子で自分の体に触れる。
 その途中、ふと目を細めた。本人は「生きてた頃より大きい……」などと場違いなことを思っていたのだが、言葉にはしなかった。

「とにかく、協力してください! お願いします!」

 カリンは悩んだ。
 彼女の言葉が噓かもしれない。

 振り向き、彩音に判断を仰ぐ。
 彩音もまた難しい表情をしていた。

 信じる根拠が無い。
 しかし、今は他に手がかりも無い。

「具体的に、何を手伝えば?」
「胡桃を説得する! 二人に頼めば、何とかなるかもって、彼が!」
「何とかなると言われても……」

 彩音は窓の外を見た。
 上空は、先程から何度も発光している。

 光の元は、その胡桃だ。
 もはや人間の所業とは思えない。
 自分が、あれに対して何かできるとは思えなかった。

「まず、この中に空を飛べる方はいますか?」

 ルリは首を横に振った。
 カリンも同様に首を横に振る。

 彩音は溜息を吐いた。
 カリンはルリを警戒しながら彩音の隣に立ち、再び空を見る。

 ルリもおっかなびっくり二人に近寄って、空を見上げた。

「……とりあえず」

 カリンが言う。

「委員長、予備の服とかあるかしら?」
「無いです」
「……アイテムボックス」

 カリンは溜息まじりに「キーワード」を口にした。
 それから謎の空間に手を突っ込み、申し訳程度に布がある服を取り出した。

「それは……?」

 彩音が問う。

「アイテムボックス。あいつが作ったエロトラップダンジョンで手に入れたもの」
「エロトラップ……?」

 彩音は「楽しそう」と思った。
 もちろん口には出さず、あえて別の話題を口にする。

「しかし意外です。あなた、そういう落ち着いた喋り方もできるんですね」
「どういう意味?」
「チャラチャラうるさいギャルという印象だったので」
「は?」

 カリンは彩音を睨んだ。
 
「あーしべつに学校で騒いだりしてないけど?」
「あー、それです。しっくりきます。そっちの方が落ち着きます」
「……なんなの?」

 カリンは苦笑した。
 それからルリに服を渡す。

「これ、どうぞ」
「……ありがと」

 ルリは服を受け取り、じっと見た。

「どしたん?」

 カリンはすっかりギャルモードだった。
 深い理由は無い。なんとなく、委員長の要望に応えることにした。

「……この服、マジですか?」

 ルリは言う。
 彼女は「全裸の方がマシかも」と思っていた。

「水着だと思えば良くない?」
「ほぼ紐なんですけど……」
「じゃあもう着なくて良いよ。これ結構高性能なのに……」
「ああ、ごめんなさい! 着ます! やっぱり全裸よりは……く~!」

 葛藤するルリ。
 それを見た彩音が提案する。

「私の教室まで行ければ、ジャージありますよ?」
「行きましょう!」

 三人の行き先が決まった。
 その後、三人は慎重に進む。

 数分後、無事に到着。
 ただし、淫魔と化した元生徒と四度の戦闘が発生した。

「念願の服を手に入れた!」

 ルリは歓喜した。
 その緊張感の無い様子を見て、彩音は微かに笑みを浮かべる。

「これから、どうしましょうか」
「……えーっと、ルリだっけ? なんかアイデアある?」

 カリンに問われ、ルリは腕を組む。
 答えは出なそうだった。その様子を見て、彩音が言う。

「彼は、何か言ってませんでしたか?」
「……何も。二人と協力して、胡桃を元に戻せとしか」
「そうですか」

 沈黙。三人は、それぞれ考え込む。
 外の音が入り込んでくる。悲鳴と嬌声、そして爆発音。まるで、この世の終わりのような音だった。実際、外はメチャクチャになっている。

 やがて彩音が溜息を吐き、呟くようにして言った。

「……彼は、この状況を予期していた可能性があります」
「どういうこと?」

 カリンが問いかける。
 彩音は顎に手を当て、少し考えた後で言う。

「ただの勘です」

 上手く言語化できなかった。
 ただ、なんとなく、そんな気がした。

「……」
「……」

 空気が重い。
 希望が見えたような気がするのに、その光はあまりにも弱い。

 その後、ただただ時間だけが過ぎ去った。
 大きな変化が起きたのは、淫魔が現れた後、およそ24時間が経過した頃。


 ──上空で戦っていた二つの影が、地に落ちた。
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