異世界帰りの元陰キャ、今は淫キャ

下城米雪

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3-5.狐狩り

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 目の前の人物から後光が見えた。
 今なら強い風が吹いてもノーパンが分からない程に輝いてみえる。

 あまりにも神々しい。
 彼女は本当に人間なの?

 艶のある黒髪。
 シミひとつない肌。
 整った顔立ちと抜群のプロポーション。

 完全に人の域を超えている。
 女神? それとも悪魔? おっと、私か。

 これはうっかり。あまりの神々しさにおかしくなってしまったようね。

 違うの。これは呪いのせいなの。
 私は決してナルシストではないの。

 狐は私に死なれたら困る。
 だから呪いで自己愛の感情を強くした。

 その結果、うっかり自分のことが大好きになってしまっただけで、決して私が……って誰に言い訳してるのかな。

 質問に答えましょう。
 運命に抗う力が手に入るなら何をするか?

 そんなの決まってる
 あのエロ狐をぶちころ──ハッ!?

 しまった! 呪いが来る!
 私は狐に悪意を抱けない! 前後の記憶が曖昧になる呪いが………………。

 あれ? 来ない?
 なんで? いつもなら意識が薄れて──

 はっ!? そうか!
 今は私の体じゃないから! 

 ……実験しましょう。

 エロ狐ぶちころす!

 ……。
 …………。

 来ない!
 やったー! 来ない!

 エロ狐ぶちころす!
 えっろ狐ぶちころすぅ♪

 気持ちィ~!
 呪いが来ない! 凄いよぉ~!

 ──落ち着きなさい。
 
 30秒は経ちました。
 彼、ずっと決め顔を維持しているけれど、流石にちょっと辛そうです。

「恐れることはない」

 彼は言った。
 ごめんなさい。一人ではしゃいでました。

 でも違うの。私は悪くないの。
 多分この体に精神が引っ張られたの。

 あなたは一人遊びがお好きなのね。
 ……いやらしい人!

「……こほん」

 私は気持ちを切り替える。

「運命? 何のこと?」

 とりあえず相手の反応を見る。
 運命とか意味深なことを言ってるけれど、私からすれば、まだ何も分からない。

「貴様の記憶を全て見た」
「ふーん、記憶を……」

 ……記憶を、すべて?

「……」

 待って。
 それはダメ。それは、ダメよ。

「……」

 落ち着きなさい。
 私の名前は御子柴彩音。
 2年D組を仕切る清楚で可憐な委員長よ。

「……」

 プライベートは誰も知らない。
 決して、知られてはいけない。

「違うの」

 私は言う。

「呪いのせいなの」

 そうだ。あれは呪いのせいだ。
 エロ狐が毎日のように淫夢を見せるから、私は耐え難い疼きを鎮めるために、治療行為として自らを慰めていたわけで……。

「呪いのせいなの!」

 学校でトイレに行く頻度が多いのは決して私自身の趣味嗜好ではなくて、

「呪いの! せいなの!!」

 朝昼晩に三度。一度に三度。そんな日々を続けているのは呪いのせいであって、まさに呪いの性とも呼べる現象で──うっさい!

「……お願い」

 私は地面に膝をつき、縋る。

「……誰にも言わないで」

 そして顔を上げて──

 なに、これ。
 股間が……痛い。

 どうして。
 この痛み、私、死ぬの?

「……死にたくない」

 私は涙を流した。
 
「ならば」

 彼は私と目線を合わせた。
 そして優しく頬に触れて、こう言った。

「その元凶を断つと言ったら、どうする?」
 
 元凶を断つ?
 この痛みが消えるということ?

「……できるの?」
「無論だ」

 すごい。すごい。
 そうだよね。自分の体だもんね。

 私には分からない男の子に特有の……

 ああああぁぁぁ!?
 そういうこと!? そういうことなの!?

 元凶を断つ……!?
 いやらしい! 私の体を使って何を!?

「早速、行こうか」
「逝かないですけど!?」
「恐れることはない」
「そりゃあなたは平気だろうけど!」
「俺を信じろ」
「……っ!?」

 この自信、何なの?
 こんなに醜い姿なのに、まるで少女マンガの俺様系イケメンみたいな……。

 ダメ、私の姿で、そんなこと言われたら。

「……世界が、滅んじゃうよ」

 よく耐えた! 自分を褒めたい! 
 そうなのよ。セッだけはダメなのよ。

 あの狐に勝てるわけがない。
 生き延びる道は、交渉しかないんだから。

「言ったはずだ」

 ひゃわ、顎クイらめぇ……。

「俺を信じろ」
「…………ひゃい、信じましゅ」

 彼はフッと勝気な笑みを浮かべた。
 そして私から手を離して言う。

「さて、狐狩りを始めようか」
「……きつね、がり?」

 そういう体位があるのかな?

「そうだ」

 彼は言う。

「貴様を苦しめ続けた妖怪を、狩りに行く」

 …………。

「そうね! 今すぐに行きましょう!」

 こうして私は白狐退治に向かうのだった。 
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