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第一章 汚れた初恋
3.脳を破壊される感覚
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結局、俺は学校へ行った。
いっそ転校したい気分だけど、こんな理由で親に迷惑をかけられない。
「春樹、お前なんかあった?」
体育の時間、友達に言われた。
「ただの寝不足」
「エロ本でも読んでたのか?」
「……まぁ、そんなところ」
彼は目を丸くした。
「お前、エロ本とか読むキャラだっけ」
「……まぁ、読むだろ。男なら」
「マジかよ。クッソ意外だわ」
彼はニヤリと笑って、内緒話をするように肩を組んだ。
「どんなの読んだん?」
俺は口を閉じた。
正直、こういう話題は苦手だ。
「当ててやるよ。そんな表情になるってことはNTRだろ」
「ねとり?」
「幼馴染と一緒に陽キャが集まるカラオケに参加したらエッチなゲームが始まって、雰囲気に流された幼馴染がヤリチンに食われちゃうみたいな話」
「……死ぬほど気持ち悪いな」
「バカ。今や国民的性癖だぞ」
彼は軽い下ネタを言うノリで言った。
普段なら何とも思わないはずなのに、今は彼を消し去りたいと思う程に不愉快だった。
「ははーん、分かったぞ。エロ本と優愛ちゃんを重ねて、脳を破壊されちゃった感じだろ」
否定の言葉は出なかった。
その沈黙は彼の言葉を肯定していた。
大事な部分はバレていないはずだ。
彼もまさか現実の話とは思わないだろう。
俺は取り繕うように笑みを浮かべ、問いかける。
「……脳を破壊って、どういうことだ?」
「なんか脳がダメージ受けるらしいぞ」
「ふわふわしてんな」
「そりゃそうだろ。寝取りとか現実じゃありえねぇからな」
彼は笑って言う。
「もしも俺の彼女が寝取られたら、男のちんこ切り落とすわ」
「……過激だな」
俺は笑えなかった。
乾いた息を吐きながら、ふと思う。
それなら俺は、何人分、切り落とせばいいのだろう。
「まぁ、エロ本の話だけどな」
「……はは、そうだな」
俺は愛想笑いをした。
心から笑えるような気分ではなかった。
(これが、脳を破壊される感覚なのか?)
くだらないことを考えて、わらう。
本当にくだらない。どうでもよくて、涙が出そうだ。
ふと女子の声が聞こえた。
目を向けて、テニスコートに立つ優愛の姿を見つけた。
昨日までなら、そのまま目で追っていた。
彼女を見ているだけで幸せな気持ちになっていたはずだ。
(……あぁ、ほんと、気持ち悪い)
だけど今は不快感しかない。
優愛のことはもちろん──こんなにも失望している自分自身のことも不愉快だ。
耳に届く声、目に映る景色。
何もかも昨日と変わらないはずなのに、何ひとつ同じには思えない。
ありふれた日常がある。
俺だけがポツンと一人、孤独だった。
その後、俺は優愛を避け続けた。
普段なら休み時間に話をしたり、昼食を一緒に食べたりする。だけど今日は、顔を見ることも嫌だった。彼女の声を聞くことさえも不愉快だった。
放課後、俺は彼女を避けるため普段は通らない道を歩いた。
学校からは出ない。きっと校門か帰り道で出くわすからだ。
ふらふらと人目の少ない場所を歩き続ける。辿り着いたのは図書室。俺は適当な席に座って目を閉じた。
静かで、微かに本の匂いがする。
良い場所だ。これが貸し切りなら最高だった。
だけど図書館には別の人物が居た。
この学校一番の有名人。
俺と同じ二年生の美少女が、いつものように一人で本を読んでいた。
いっそ転校したい気分だけど、こんな理由で親に迷惑をかけられない。
「春樹、お前なんかあった?」
体育の時間、友達に言われた。
「ただの寝不足」
「エロ本でも読んでたのか?」
「……まぁ、そんなところ」
彼は目を丸くした。
「お前、エロ本とか読むキャラだっけ」
「……まぁ、読むだろ。男なら」
「マジかよ。クッソ意外だわ」
彼はニヤリと笑って、内緒話をするように肩を組んだ。
「どんなの読んだん?」
俺は口を閉じた。
正直、こういう話題は苦手だ。
「当ててやるよ。そんな表情になるってことはNTRだろ」
「ねとり?」
「幼馴染と一緒に陽キャが集まるカラオケに参加したらエッチなゲームが始まって、雰囲気に流された幼馴染がヤリチンに食われちゃうみたいな話」
「……死ぬほど気持ち悪いな」
「バカ。今や国民的性癖だぞ」
彼は軽い下ネタを言うノリで言った。
普段なら何とも思わないはずなのに、今は彼を消し去りたいと思う程に不愉快だった。
「ははーん、分かったぞ。エロ本と優愛ちゃんを重ねて、脳を破壊されちゃった感じだろ」
否定の言葉は出なかった。
その沈黙は彼の言葉を肯定していた。
大事な部分はバレていないはずだ。
彼もまさか現実の話とは思わないだろう。
俺は取り繕うように笑みを浮かべ、問いかける。
「……脳を破壊って、どういうことだ?」
「なんか脳がダメージ受けるらしいぞ」
「ふわふわしてんな」
「そりゃそうだろ。寝取りとか現実じゃありえねぇからな」
彼は笑って言う。
「もしも俺の彼女が寝取られたら、男のちんこ切り落とすわ」
「……過激だな」
俺は笑えなかった。
乾いた息を吐きながら、ふと思う。
それなら俺は、何人分、切り落とせばいいのだろう。
「まぁ、エロ本の話だけどな」
「……はは、そうだな」
俺は愛想笑いをした。
心から笑えるような気分ではなかった。
(これが、脳を破壊される感覚なのか?)
くだらないことを考えて、わらう。
本当にくだらない。どうでもよくて、涙が出そうだ。
ふと女子の声が聞こえた。
目を向けて、テニスコートに立つ優愛の姿を見つけた。
昨日までなら、そのまま目で追っていた。
彼女を見ているだけで幸せな気持ちになっていたはずだ。
(……あぁ、ほんと、気持ち悪い)
だけど今は不快感しかない。
優愛のことはもちろん──こんなにも失望している自分自身のことも不愉快だ。
耳に届く声、目に映る景色。
何もかも昨日と変わらないはずなのに、何ひとつ同じには思えない。
ありふれた日常がある。
俺だけがポツンと一人、孤独だった。
その後、俺は優愛を避け続けた。
普段なら休み時間に話をしたり、昼食を一緒に食べたりする。だけど今日は、顔を見ることも嫌だった。彼女の声を聞くことさえも不愉快だった。
放課後、俺は彼女を避けるため普段は通らない道を歩いた。
学校からは出ない。きっと校門か帰り道で出くわすからだ。
ふらふらと人目の少ない場所を歩き続ける。辿り着いたのは図書室。俺は適当な席に座って目を閉じた。
静かで、微かに本の匂いがする。
良い場所だ。これが貸し切りなら最高だった。
だけど図書館には別の人物が居た。
この学校一番の有名人。
俺と同じ二年生の美少女が、いつものように一人で本を読んでいた。
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