さみしがりやの恋中さんはあまあまをご所望~お隣の天才プログラマーが俺を離してくれないので諦めてイチャイチャしてたらいつの間にか両想いでした~

下城米雪

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幕間2

恋愛相談:鈴原莉子

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【りこ】
三杉くんかっこよすぎない?

 彼とおやすみをした後、金髪の人からラインが来た。

「…………なんで、連絡先、知ってるの?」

【りこ】
既読無視やめて涙

「…………あっ、そっか。お昼休み」

 私は五分くらい考えて、三杉くんがグループを作ったことを思い出した。

 今回の連絡は個別のトーク。
 連絡先は、グループを見れば分かる。

「……ど、ど、ど、どうすれば」

 今は三杉くんとおやすみをした直後。
 少し働いてから寝ようと思っていた。彼女から連絡を受けることなんて想定外で、混乱してしまう。

「三杉くんっ」

 助けを求めた直後にハッとする。
 もう寝てる。起こすのは申し訳ない。
 
「…………名前、呼んじゃった」

 手で口を覆う。
 心臓の鼓動が早い。
 どうしてか身体が熱くなる。

 独り言で、ここまで。
 もしも本人に言ったら、どうなるの?

【りこ】
(泣いてる兎のスタンプ)

「あ、えっと、返事、しなきゃ」

 私はキーボードに触れ、返事をする。

【hoge】
何の用ですか

「……とりあえず、これだけ」

 一仕事終えた考えて気分で背もたれに体重を預け、ふぅと天を仰いだ。

 タイピングしたことで少しだけ気持ちが落ち着いた。これはKDPのチャレンジ目標を達成するための第一歩だ。

 彼女の目的を考えてみる。
 こんな夜に連絡してくるなんて、何か目的が無ければ有り得ない。

 彼女の目的は三杉くんだ。
 きっと彼は、その気持ちを利用して、私と仲良くするように話してくれている。

 だって私と三杉くんは相性が良い。
 彼の中にある優先順位は、私の方が上。

 つまりこれは、彼がくれたチャンス!

【りこ】
二人、どうやって仲良くなったのかなって

 返事が来ました。
 私と同じことをして三杉くんに取り入ろうという魂胆ですね。そうはさせません。

【りこ】
やっぱ部屋が隣だと色々ある?

 おっと考え過ぎました。別の質問です。
 色々……いろいろって、なんだろう?

 確かに部屋が隣だと接する機会が多いけど、私は彼以外との交友関係を知らない。

 より正確には、空回りして嫌われてフェードアウトされた苦い思い出しかない。

 ……うっ、なんだか少し胸が痛いです。

 さてさて、どう返事をしましょうか?

【りこ】
てか色々と早過ぎん?

【りこ】
あと三年間なにやんの?

「また別の質問……っ!」

 昼間にも感じたことですが、口数の多い人ですね。会話はキャッチボールって知らないのかな。サッカーのシュート練習じゃないんだよ。──ハッ、まさか三杉くんがサッカー部だったことを知って取り入るために!?

【りこ】
既読だけ付けるのやめて

【りこ】
(泣いてる兎のスタンプ)

 ああもう! 待ってください!
 という気持ちでキーボードを叩く。

【hoge】
待て

【りこ】
わん

 わん……One? 
 一分だけ待ってくれるのかな?

【hoge】
まずは手短に要件を教えてください

【hoge】
用件です

 予測変換が憎い。

【りこ】
二人が羨ましくて

【hoge】
二人?

【りこ】
天音っちと三杉くん

「やっぱり三杉くんが目的みたいですね」

 この「天音っち」という呼び方、なんなのでしょう。モドリッチでしょうか。サッカー通アピールなのでしょうか。

【りこ】
莉子も仲良くしたい人がいるんだけどさ……

 諦めてください。
 一度は入力した文字を消して考える。

 これはもしや──
 相談、という行為なのでは?

 いえいえ、待ってください。
 あれは都市伝説です。悩み事を相談するなどそんなの、そんなの……友達っぽい。

【りこ】
なんか、会う度に口喧嘩しちゃってさ……

【りこ】
莉子嫌われてるのかな……

【りこ】
(膝を抱える兎のスタンプ)

 三杉くんと口喧嘩?
 ……そんなシーンあったかな?

【りこ】
天音っちみたいに仲良くしたい。ぴえん

 最後のぴえんって何?
 ピリオド&エンターかな? 

【hoge】
彼を信じてください

 私は疑問に思いながらも、返事をする。

【hoge】
ストレートに気持ちを伝えれば、きっと受け入れてくれます

【りこ】
そうかな?

【hoge】
そうです。彼は良い人ですから

【りこ】
会ったばっかじゃん

【hoge】
じゃあ私に相談しないでください

【りこ】
ごめんて笑

【りこ】
でも、ありがと

【りこ】
やっぱ、言わなきゃ伝わらないよね

【りこ】
うん、なんか勇気出た

【りこ】
天音っち、今度料理教えてくれない?

 ……怖い。
 すっごい連続でメッセージ送ってくる。

【hoge】
なぜですか?

【りこ】
天音っ、料理上手だったから

【hoge】
それほどでもあります

【りこ】
教えてくれる?

【hoge】
……たまになら

【りこ】
やったぜ!

【りこ】
(神に感謝する兎のスタンプ)

【hoge】
(にっこり笑うカエルのスタンプ)

【りこ】
なにそれこわ

【hoge】
怖くないです。かわいいです


 その後、三十分くらいラインを続けた。
 三杉くんと会話する時とは全く違う感じがして、なんだか新鮮な気分だった。

「二人が仲良くなったら、どうなるのかな」

 三杉くんは優しい。鈴原さんが素直に気持ちを伝えれば、きっと無難に接する。

 それは、つまり、どういうこと?

 友達と友達候補が仲良くなる。
 それは良いことだよね。うん、良いこと。

「……良いこと、だよね?」

 どれだけ客観的に考えてもプラスだ。
 そのはずなのに、なぜか心が晴れない。

 そもそも、おかしい。
 どうして私は浮かれていないのだろう。

 同性のクラスメイトと一時間近くラインをしてしまった。すごく友達っぽい。

 初めて三杉くんとラインした時は、電話をかけてしまうくらい嬉しかった。

 だけど今は……とても、冷静だ。

「……これ、なに?」

 言語化できない感情に首を傾げる。
 しばらく考えた後、私は軽く頬を叩いた。

「仕事しよ」
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