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恋中さんとの学校生活2
恋中さんと独占欲
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好奇の目は昼休みと共に消えた。
結局、恋中さんが何を言ったのかは聞けなかったが、今のところ俺に実害は無い。この場合、知らない方が幸せということもあるかもしれない。
さておき、良いことが起きた。
恋中さんが俺以外と会話したことだ。
もちろんフォローは必須だった。
でも最初の一回を経験できたのは大きい。繰り返せば、そのうち一人でも平気になる。
正直、少し寂しい。
だけど俺が恋中さんと会話できる場所は、学校だけではない。むしろ学校では、KDPのため積極的に他の人と話して欲しい。
女子限定で。
「……遺伝子こっわ」
「いんでんし?」
今は授業が終わった後の帰り道。
もはや当然のように隣を歩く恋中さんは、俺の独り言を聞いて首を傾けた。
「ごめん、なんでもない」
ごまかすような笑みを浮かべて、何か雑談でもしようと話題を探す。
瞬間、こつんと二人の肩が触れた。
……まただ。
先程から五十メートルくらいの感覚で肩が触れ合う。
俺が寄っているわけではない。
恋中さんの距離が、なんか近い。
その動きは、何というか、ふらふらしているように見えなくもない。
「恋中さん、もしかして体調悪い?」
「いえ、元気ですよ?」
「でも、なんかふらふらしてない?」
「ふらふら?」
「さっきから何回も肩が当たるから」
「…………」
ストレートに伝えると恋中さんは俯いた。
それから数秒後、ゆっくりと顔を上げる。
「わざとです」
「……わざと?」
純粋な疑問を口に出す。
そして次の瞬間、時間が止まった。
「……あの、恋中さん?」
今度は当たるなんてレベルじゃない。
肩が温かい。ガッツリ、接している。
制服越しでも伝わる体温。
俺は朝の出来事を思い出さないため、腹に力を込めて声を出した。
「やっぱり、体調悪かった?」
「違います」
彼女は否定して、より強く体重を預けた。
避ければ転ぶんじゃないかと思う程の密着具合で、俺は全身をガチガチに硬直させた。
「昼休み、四人でした」
「そうだね」
「二人、増えました」
「増えたね」
「二人分、君と会話する時間が減りました」
「……そっか」
「そっかじゃないです」
これは、つまり、あれだ。
一見すると可愛い嫉妬だけど、違う。
彼女は不安なんだ。
このまま俺が他の人とばかり会話をして、恋中さんの前からフェードアウトするかもしれないとか思っているのだろう。
「この後、ペアプロしよっか」
俺はできるだけ自然な口調で提案する。
「まずはタイピングだけど、また練習に付き合って貰ってもいいなか?」
恋中さんは、笑顔を見せた。
「もちろんです!」
そして俺の手首を掴み、前を歩く。
「恋中さん、急がなくても大丈夫だよ」
彼女は俺を無視して移動を続けた。
……まぁ、いっか。
軽く息を吐いて、素直に引っ張られる。
それから一旦は自室に戻って、荷物を置き手を洗った後で彼女の部屋に入った。
同じ時間、他の生徒は部活をしている。
だから、これを部活動と呼ぶつもりは無いけれど、この時間だけは、二人で過ごそう。
彼女が、俺以外の友達を優先するまでは。
結局、恋中さんが何を言ったのかは聞けなかったが、今のところ俺に実害は無い。この場合、知らない方が幸せということもあるかもしれない。
さておき、良いことが起きた。
恋中さんが俺以外と会話したことだ。
もちろんフォローは必須だった。
でも最初の一回を経験できたのは大きい。繰り返せば、そのうち一人でも平気になる。
正直、少し寂しい。
だけど俺が恋中さんと会話できる場所は、学校だけではない。むしろ学校では、KDPのため積極的に他の人と話して欲しい。
女子限定で。
「……遺伝子こっわ」
「いんでんし?」
今は授業が終わった後の帰り道。
もはや当然のように隣を歩く恋中さんは、俺の独り言を聞いて首を傾けた。
「ごめん、なんでもない」
ごまかすような笑みを浮かべて、何か雑談でもしようと話題を探す。
瞬間、こつんと二人の肩が触れた。
……まただ。
先程から五十メートルくらいの感覚で肩が触れ合う。
俺が寄っているわけではない。
恋中さんの距離が、なんか近い。
その動きは、何というか、ふらふらしているように見えなくもない。
「恋中さん、もしかして体調悪い?」
「いえ、元気ですよ?」
「でも、なんかふらふらしてない?」
「ふらふら?」
「さっきから何回も肩が当たるから」
「…………」
ストレートに伝えると恋中さんは俯いた。
それから数秒後、ゆっくりと顔を上げる。
「わざとです」
「……わざと?」
純粋な疑問を口に出す。
そして次の瞬間、時間が止まった。
「……あの、恋中さん?」
今度は当たるなんてレベルじゃない。
肩が温かい。ガッツリ、接している。
制服越しでも伝わる体温。
俺は朝の出来事を思い出さないため、腹に力を込めて声を出した。
「やっぱり、体調悪かった?」
「違います」
彼女は否定して、より強く体重を預けた。
避ければ転ぶんじゃないかと思う程の密着具合で、俺は全身をガチガチに硬直させた。
「昼休み、四人でした」
「そうだね」
「二人、増えました」
「増えたね」
「二人分、君と会話する時間が減りました」
「……そっか」
「そっかじゃないです」
これは、つまり、あれだ。
一見すると可愛い嫉妬だけど、違う。
彼女は不安なんだ。
このまま俺が他の人とばかり会話をして、恋中さんの前からフェードアウトするかもしれないとか思っているのだろう。
「この後、ペアプロしよっか」
俺はできるだけ自然な口調で提案する。
「まずはタイピングだけど、また練習に付き合って貰ってもいいなか?」
恋中さんは、笑顔を見せた。
「もちろんです!」
そして俺の手首を掴み、前を歩く。
「恋中さん、急がなくても大丈夫だよ」
彼女は俺を無視して移動を続けた。
……まぁ、いっか。
軽く息を吐いて、素直に引っ張られる。
それから一旦は自室に戻って、荷物を置き手を洗った後で彼女の部屋に入った。
同じ時間、他の生徒は部活をしている。
だから、これを部活動と呼ぶつもりは無いけれど、この時間だけは、二人で過ごそう。
彼女が、俺以外の友達を優先するまでは。
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