さみしがりやの恋中さんはあまあまをご所望~お隣の天才プログラマーが俺を離してくれないので諦めてイチャイチャしてたらいつの間にか両想いでした~

下城米雪

文字の大きさ
上 下
23 / 32
恋中さんとの学校生活2

恋中さんと独占欲

しおりを挟む
 好奇の目は昼休みと共に消えた。
 結局、恋中さんが何を言ったのかは聞けなかったが、今のところ俺に実害は無い。この場合、知らない方が幸せということもあるかもしれない。

 さておき、良いことが起きた。
 恋中さんが俺以外と会話したことだ。

 もちろんフォローは必須だった。
 でも最初の一回を経験できたのは大きい。繰り返せば、そのうち一人でも平気になる。

 正直、少し寂しい。
 だけど俺が恋中さんと会話できる場所は、学校だけではない。むしろ学校では、KDPのため積極的に他の人と話して欲しい。

 女子限定で。

「……遺伝子こっわ」

「いんでんし?」

 今は授業が終わった後の帰り道。
 もはや当然のように隣を歩く恋中さんは、俺の独り言を聞いて首を傾けた。

「ごめん、なんでもない」

 ごまかすような笑みを浮かべて、何か雑談でもしようと話題を探す。

 瞬間、こつんと二人の肩が触れた。
 
 ……まただ。

 先程から五十メートルくらいの感覚で肩が触れ合う。

 俺が寄っているわけではない。
 恋中さんの距離が、なんか近い。

 その動きは、何というか、ふらふらしているように見えなくもない。

「恋中さん、もしかして体調悪い?」

「いえ、元気ですよ?」

「でも、なんかふらふらしてない?」

「ふらふら?」

「さっきから何回も肩が当たるから」

「…………」

 ストレートに伝えると恋中さんは俯いた。
 それから数秒後、ゆっくりと顔を上げる。

「わざとです」

「……わざと?」

 純粋な疑問を口に出す。
 そして次の瞬間、時間が止まった。

「……あの、恋中さん?」

 今度は当たるなんてレベルじゃない。
 肩が温かい。ガッツリ、接している。
 
 制服越しでも伝わる体温。
 俺は朝の出来事を思い出さないため、腹に力を込めて声を出した。

「やっぱり、体調悪かった?」

「違います」

 彼女は否定して、より強く体重を預けた。
 避ければ転ぶんじゃないかと思う程の密着具合で、俺は全身をガチガチに硬直させた。

「昼休み、四人でした」

「そうだね」

「二人、増えました」

「増えたね」

「二人分、君と会話する時間が減りました」

「……そっか」

「そっかじゃないです」

 これは、つまり、あれだ。
 一見すると可愛い嫉妬だけど、違う。

 彼女は不安なんだ。
 このまま俺が他の人とばかり会話をして、恋中さんの前からフェードアウトするかもしれないとか思っているのだろう。

「この後、ペアプロしよっか」

 俺はできるだけ自然な口調で提案する。
 
「まずはタイピングだけど、また練習に付き合って貰ってもいいなか?」

 恋中さんは、笑顔を見せた。
 
「もちろんです!」

 そして俺の手首を掴み、前を歩く。

「恋中さん、急がなくても大丈夫だよ」

 彼女は俺を無視して移動を続けた。
 
 ……まぁ、いっか。

 軽く息を吐いて、素直に引っ張られる。
 それから一旦は自室に戻って、荷物を置き手を洗った後で彼女の部屋に入った。

 同じ時間、他の生徒は部活をしている。
 だから、これを部活動と呼ぶつもりは無いけれど、この時間だけは、二人で過ごそう。

 彼女が、俺以外の友達を優先するまでは。
 
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

無敵のイエスマン

春海
青春
主人公の赤崎智也は、イエスマンを貫いて人間関係を完璧に築き上げ、他生徒の誰からも敵視されることなく高校生活を送っていた。敵がいない、敵無し、つまり無敵のイエスマンだ。赤崎は小学生の頃に、いじめられていた初恋の女の子をかばったことで、代わりに自分がいじめられ、二度とあんな目に遭いたくないと思い、無敵のイエスマンという人格を作り上げた。しかし、赤崎は自分がかばった女の子と再会し、彼女は赤崎の人格を変えようとする。そして、赤崎と彼女の勝負が始まる。赤崎が無敵のイエスマンを続けられるか、彼女が無敵のイエスマンである赤崎を変えられるか。これは、無敵のイエスマンの悲哀と恋と救いの物語。

隣の優等生は、デブ活に命を捧げたいっ

椎名 富比路
青春
女子高生の尾村いすゞは、実家が大衆食堂をやっている。 クラスの隣の席の優等生細江《ほそえ》 桃亜《ももあ》が、「デブ活がしたい」と言ってきた。 桃亜は学生の身でありながら、アプリ制作会社で就職前提のバイトをしている。 だが、連日の学業と激務によって、常に腹を減らしていた。 料理の腕を磨くため、いすゞは桃亜に協力をする。

やくびょう神とおせっかい天使

倉希あさし
青春
一希児雄(はじめきじお)名義で執筆。疫病神と呼ばれた少女・神崎りこは、誰も不幸に見舞われないよう独り寂しく過ごしていた。ある日、同じクラスの少女・明星アイリがりこに話しかけてきた。アイリに不幸が訪れないよう避け続けるりこだったが…。

青天のヘキレキ

ましら佳
青春
⌘ 青天のヘキレキ 高校の保健養護教諭である金沢環《かなざわたまき》。 上司にも同僚にも生徒からも精神的にどつき回される生活。 思わぬ事故に巻き込まれ、修学旅行の引率先の沼に落ちて神将・毘沙門天の手違いで、問題児である生徒と入れ替わってしまう。 可愛い女子とイケメン男子ではなく、オバちゃんと問題児の中身の取り違えで、ギャップの大きい生活に戸惑い、落としどころを探って行く。 お互いの抱えている問題に、否応なく向き合って行くが・・・・。 出会いは化学変化。 いわゆる“入れ替わり”系のお話を一度書いてみたくて考えたものです。 お楽しみいただけますように。 他コンテンツにも掲載中です。

ファンファーレ!

ほしのことば
青春
♡完結まで毎日投稿♡ 高校2年生の初夏、ユキは余命1年だと申告された。思えば、今まで「なんとなく」で生きてきた人生。延命治療も勧められたが、ユキは治療はせず、残りの人生を全力で生きることを決意した。 友情・恋愛・行事・学業…。 今まで適当にこなしてきただけの毎日を全力で過ごすことで、ユキの「生」に関する気持ちは段々と動いていく。 主人公のユキの心情を軸に、ユキが全力で生きることで起きる周りの心情の変化も描く。 誰もが感じたことのある青春時代の悩みや感動が、きっとあなたの心に寄り添う作品。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

燦歌を乗せて

河島アドミ
青春
「燦歌彩月第六作――」その先の言葉は夜に消える。 久慈家の名家である天才画家・久慈色助は大学にも通わず怠惰な毎日をダラダラと過ごす。ある日、久慈家を勘当されホームレス生活がスタートすると、心を奪われる被写体・田中ゆかりに出会う。 第六作を描く。そう心に誓った色助は、己の未熟とホームレス生活を満喫しながら作品へ向き合っていく。

青春の初期衝動

微熱の初期衝動
青春
青い春の初期症状について、書き起こしていきます。 少しでも貴方の心を動かせることを祈って。

処理中です...