さみしがりやの恋中さんはあまあまをご所望~お隣の天才プログラマーが俺を離してくれないので諦めてイチャイチャしてたらいつの間にか両想いでした~

下城米雪

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恋中さんとの隣人生活1

第6話 恋中さんとKDP

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 見なかったことにするべきだ。
 分かってる。絶対に見るべきじゃない。
 だが、この吸引力に逆らえる者など、存在するのだろうか?

「恋中さんは、まだ戻らないよな」

 何を作るのかは聞いていない。
 ただ、何ページか読む時間はあるはずだ。

「ごめん」

 俺はノートを開いた。
 最初のページは「はじめに」である。
 そして次のページは目次になっていた。

 パラパラと斜め読みしたところ、目次以降は全て同じフォーマットのようだ。

 ページは三つのブロックに分けられている。最初はタイトル。次が本文。そして最後は結果や感想などを記すための枠。とても頭の良さそうなノートの作り方だ。

 俺はページを目次に戻す。
 パッと目に入ったのは「初対面(男)」という記述。丁寧にページ番号が記されているから、ノートの隅にある数字を頼りに検索できる。

「……引き返すなら今だぞ」

 自分に語りかけたが、俺の目はノートから離れようとしない。

『初対面(男)

 ここでは初対面の男子と仲良くなる方法を検討する。
 匿名掲示板で「男の子は何が好きか教えてください」と質問した結果「おっぱい」という回答が複数得られた。このことから男子は「おっぱい」が好きだと仮定する。この仮説が正しい場合「おっぱい」を話題にすることで好印象を得られる可能性が高い』

 俺は必死に笑いを堪えた。
 笑ってはいけない。彼女は真剣なんだ。

『しかし不慣れな話題では会話が続かない。そこで私が得意とするプログラミングと関連付けるアイデアを提案する』

「あれそういうことだったのかよ」

 謎がひとつ解決した。初対面で下ネタを言っていたのに「本番」の意味を知らなかった理由は多分これだ。

「恋中さん的にはどういう評価だったのかな?」

 俺は内容部分の残りをスキップして、最後の結果部分に目を向けた。

『大成功だった。今後もおっぱいを話題にすることで、より強固な信頼関係を結びたい』

 俺はノートを閉じた。
 それから傍の棚にそっと戻した。

 ……俺、恋中さんにおっぱいが好きだと思われてるのかよっ!

 叫びたい気持ちを必死で堪える。しかし床などを叩くわけにもいかず、俺は行き場の無い感情をパンッと手を叩くことで発散した。

「わっ、何の音かしら!?」

「ごめん、良いバイト先を見つけてテンション上がっただけ」

「それは良かったです。お昼、もう少しですからね!」
 
「ありがとう」

 ドア越しに話をした後、俺は頭を抱えた。
 だって普通は嫌だろ。女子におっぱいが好きだと思われるとか。

 それとなく伝えるか?
 不自然だ。ノートを見たことがバレる。

「……もしかしてこれ、詰んでね?」

 俺は頭を抱えて床に倒れた。
 違うんだ。俺はセクハラをするような人間じゃない。ただ……まあ、べつに誤解というわけでもない。

 逆に好きじゃない奴、いるのかよ。
 すげぇわ恋中さん。完璧なリサーチだ。

「バカなこと考えてないでバイト探そう」

 俺は身体を起こし、恋中さんが送ってくれたURLを開いた。

 それから彼女の料理が終わるまでの間、真面目にバイト先を探した。
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