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永井光

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白目のほくろ

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私の白目にはほくろがある。
16年間ずっとだ。
それがたまらなく嫌だ。
幼い時に「お前、黒目が2つあるみたいで気持ち悪い」と言われてから、みんな私の事そんな風に思っていたんだと分かった。
確かに、みんな私が話しかけるとよそよそしかった。話しかけて来る子は白目のほくろが怖いのか必ず誰かと一緒だった。

誰も話しかけてくれないのも
仲間に入れてくれないのも 
友達になってくれないのも
みんな白目のほくろのせいなんだ。


私は出来るだけ人とは目を合わせないようにしている。もちろん白目のほくろを見られたくないからだ。
だから、人と話す事もあまりない。

でも、私はこの白目のほくろとおさらばする時が来た。高校生になりバイトができるようになった。私はお金を貯めた。
私は白目のほくろをとり除く手術をする。

名前も顔も覚えていないただあの言葉だけが頭からずっと離れなかった。
気持ち悪い。私は皆と違うのかなと思ってしまった。普通の容姿になりたい。ずっとそう思ってきた。
この白目のほくろさえなければ。
私はきっと楽しく生きていける。

お母さんに白目のほくろを取りたいと昔に話した事がある。でも、「お母さんは別に気にならないけど」と相手にしてくれなかった。
お母さんは気にならないかもしれないけど、 他の人は気持ち悪いと思っている。
この白目のほくろさえなければみんな話しかけてくれるのに。
友達だっていっぱい作れるのに。
このほくろさえ。
このほくろさえなければ。

今日、手術して私は生まれ変われる。
そしたら私は……。

手術が終わった。
こんなに世界は綺麗だったんだ。
これで、友達ができる。 

「おはよう。」

私は高校に入って初めて自分から挨拶した。
自分から人に声をかけた。
今までの自分では考えられない。 
私は清々しさを感じていた。 

「おはよう。」

向こうも答えてくれた。
私はものすごく嬉しかった。

「あの子、誰だっけ。」

挨拶した子が隣の子に耳打ちした。

「このクラスの子だっけ?」

「えー。知らなーい。」

そんな。
私の事、知らないの?
周りを見渡した。
みんな私が居ないかのように、友達同士で楽しそうにおしゃべりしていた。 
みんな、私の事なんて見ていなかった。

白目のほくろを見られたくなくて下ばっかりみてたから、分からなかった。
みんな私の白目のほくろを指差して気持ち悪がっているのとばかり思っていた。
だから、私に話しかけてくれないんだと。

私には人としての魅力がなかったのか。
ただ単にみんなは私という人間に興味を示してくれなかっただけたのか。

ほくろ取らなきゃ良かったな。



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