ドブネズミの申

三日月李衣

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第四話

上級国民の仲間入り

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第四話「上級国民の仲間入り」
比呂が死んで、四か月になった。
比呂が死んで自由を手にした申は、十一月から神山書店のWEBマンガレーベルのラッテコミックで、数年ぶりの連載作品を発表された。
申の新連載作品のタイトルは「藤田田、異世界転生して経営マネジメントを始めた」だ。
 連載第一話は藤田田はハンバーガーショップのマクドナルドの経営を始めてから数十年が経ち、幸せな人生を送っていた。
しかし、銀座で交通事故に遭ってしまった田は、その衝撃で異世界セレスティアに転生してしまう。
ファンタスティックな異世界のセレスティアに転生した田は、見た事も無い様な生き物や景色に戸惑う。
未知数の異世界に迷い込んでいた田は、セレスティアのライラック王国の三姉妹の王女マーヤとセイカ、ミレイヤと出会い、ライラック王国の城下町の潰れそうなカフェを再建を命じられて、田はこの世界で生き残るためにカフェを再建することを誓うというストーリーだ。
申の新作漫画は、SNSなどで一気に話題になった。日本の経営者が異世界転生するという、斬新な話にみんな虜になった。
〇 東京都 赤羽区にあるアパートの一室
綺麗に整理整頓された部屋。申の机には漫画道具が一式に並べられていた。
指扇の実家を出て、東京で一人暮らしをしている申は、毎日コツコツと原稿を描いていた。毎日朝四時に起き、朝五時から原稿に取り掛かって夕方四時まで描いていた。
久しぶりの連載を開始した申は、デジタルアシスタントも三人雇った。
デジタルで描いているので、アシスタントとのやり取りもデジタルで行っていた。
コツコツとパソコンで原稿を描いている申は、久しぶりにこんな充実した人生を謳歌している。
夕方五時になり、そろそろ作業を一段落しようとしたその時、申のスマートフォンにメールの受信音が聞こえてきた。
申 誰からだろう?
申は机の上にスマホスタンドに置いてあったスマートフォンを取って、メールボックス内にあるメールを確認した。
申 え、か、神山さんだ……!
彩未からメールが来て、あまりの嬉しさに大泣きして喜んだ。申は何か脈があると思って、すかさずメールを確認した。
彩未 こんにちは。神山書店ラッテコミック編集部の神山です。
佐上先生の新連載「藤田田、異世界転生して経営マネジメントを始めた」がWEBで公開してからあっという間に五百万PVも閲覧されて、口コミでも広がって大好評なんです。
偉大な経営者の藤田田がまた再注目されて、マクドナルドや藤田田の関連書籍などの売り上げがアップしたって、ネットでも注目されているんです。
佐上先生の誠実な筆力とアイデアのおかげです。佐上先生はもっと自信をもって作品を書き続けてください。
私の父も佐上先生の漫画を読んで、これは面白いって太鼓判を押してるくらいなんですから。
申 あ、彩未さん……! 神山社長が俺の漫画が好きってメールしてくれた……!
申は彩未からメールの内容を見て、まさか神山書店の社長である神山太郎が申の漫画が面白いと言っている事に感激した。
申は更に彩未から送られてきたメールを読む。
彩未 そういえば、新連載のヒット祈願に大宮の氷川神社にご祈願したいっておっしゃっていましたね。
私の出版社、土日が休日なんです。今度の土曜か日曜あたりにご祈願にしに行きませんか?
申 こ、これは! 一世一代の大チャンスだ!
申は彩未から今度の土日あたりに大宮の氷川神社にヒット祈願したいというメールの内容に、申は思わず熱を上げた。
申 佐上申です。ご連絡いただきありがとうございます。
今回の連載は絶対に成功させたいので、大宮の氷川神社にヒット祈願に参りたいと思います。
今度の日曜の午前十一時に大宮駅の豆の木で待ち合わせしてから、氷川神社に参拝しましょう。
その後に、大宮のレストランで食事でもしましょう。
神山さんにご馳走してあげたいのです。
それまでに体調を整えてきます。
今度の日曜の午前十一時の大宮駅の豆の木でお会いしましょう。
では。今日はどうもありがとうございました。
ご連絡お待ちしています。
申はすかさず、彩未にメールを返信した。
申 よ、よし! 彩未さんにプロポーズするチャンスだ! 指輪も用意して、ご祈願が終わったら、レストランでプロポーズする!
氷川神社でのご祈願の後に、彩未に結婚申し込んで結婚に踏み切れるチャンスが降ってきたと、申の彩未への熱い想いが一気に噴き出した。
申 絶対にプロポーズ成功させて、上級国民の仲間入りしてみせる……! 神山彩未の婿におさまれば、みんな俺にひれ伏すだろう……! ハハハハハハハー!
申は絶対に彩未の心を掴み、結婚して金と権力を手に入れると野心を露わにした。
それから、申は彩未にプロポーズするために指輪を購入するためにさいたま市大宮区にあるそごうにあるジュエリーショップでダイヤモンドの指輪を買った。
申はとにかく一番高いダイヤモンドの指輪を買って、プロポーズの準備をした。
 それから申は、上手くいくプロポーズのやり方をネットの動画サイトで必死に見て練習した。
ネットで大宮区内で評判の良いレストランを予約した。チャペルのあるフレンチレストランだ。
後、美容院で髪をカットするのと、顔のシェービングをして清潔感のある男に変わっていった。
とにかく申は、彩未を手に入れるためならどんな努力もする。申の野心に満ちた顔が自宅にある鏡に写っていた。

〇 十一月二十日 大宮駅 豆の木前
季節は秋深く、大宮駅の中は秋の装いをして街を闊歩する人々でにぎわっていた。
申 ついに本番だ
髪を整え、かっちりとしたスーツを身にまとった申が豆の木の前で佇んでいた。
緊張気味の申は、スーツの胸ポケットの中に彩未にプロポーズするための指輪の箱を入れていた。
申 (真剣な表情で)必ず成功させてみせる。俺は金と権力を手に入れてみせる。その為に神山書店で連載の仕事をやっているから
と、申は小声でつぶやく。
申が彩未を待っている中、駅の構内で長く濃い茶髪をキラキラとなびかせ、赤いシャネルのワンピースをスラッと着こなしてモデルの様にカッコよく、スレンダーな女性が手を振って歩いてきた。
申 は、あ、彩未さん!
彩未が手を振りながら申の元へ歩く姿を見て、申は後光を放ちながら歩く彩未に思わず、声を上げた。
彩未 おはようございます! 佐上先生! お待たせしました!
 彩未がキラキラと輝く笑顔で申の待つ豆の木前までやって来た。
申 おはようございます!
申は大喜びで彩未に駆け寄る。
彩未がオシャレな装いで来てくれるなんて、申は嬉しくて仕方ない。 
申 僕は神山さんと氷川神社にご祈願に一緒に行けるなんて、幸せなんですよ~!
一緒に氷川神社に行けると、幸せな気持ちを彩未にさらけ出した。
彩未 まあ、佐上先生ってとても前向きですね。嬉しいですわ
申 僕の地元に来ていただけるなんて、嬉しいんですよ
申は自分の地元の大宮に来てくれる彩未に感謝していると頭を下げた。
彩未 私も神社が好きで、大宮の氷川神社に佐上先生とご祈願に行けるなんて、嬉しいですよ。なかなかそういう漫画家さんいなくてね
申 僕も神社が大好きですよ。このままおしゃべりしてたら、レストランの予約時間が来てしまいますよ。早く行きましょう
彩未 じゃあ、早速氷川神社に参りましょう
申と彩未は大宮駅東口から出て、氷川神社の方へと歩いて行った。

〇 大宮氷川神社 鳥居前

大宮氷川神社の鳥居を申と彩未は参道を端の方に寄せて鳥居をくぐった。
氷川神社はまだ午前中だが、散歩に来る老人や幼稚園の先生が無垢な園児たちをカートに乗せて参拝に来ていたり、外国人もチラホラ来ていた。
申と彩未は空気の澄んだ神社の境内をゆったりとした足取りで拝殿の方へ向かった。

〇 大宮氷川神社 祈祷殿内
申と彩未は、申の漫画連載のヒット祈願するためのご祈祷が始まろうとしていた。
祈祷殿内に背筋を伸ばして椅子に座っていた。張り詰めた空気の中、太鼓の音と共に祈祷が始まった。
祈祷殿内で神職の老齢の男性が参拝者の申と彩未の穢れを払う修祓が行われた。
神職の男性が短い祝詞を読み、祭具でお祓いされた。
お祓いされた申は初めてのご祈祷に緊張していた。
申 (ああ、緊張する。彩未さんと一緒にご祈祷するなんて、めったに無いよ)
修祓が終わり、神職が神様に願い事を伝えるために祝詞奏上が行われた。申と彩未は頭を下げたまま、神職が行う祝詞奏上に挑んだ。
祝詞奏上が終わり、神様への感謝を伝えるために巫女がフワリフワリと、軽やかな舞を見せた。
頭を下げたままの申は、チラリと巫女の軽やかで神秘的な舞を見て、ハアッと感動していた。
次は玉串奉奠が行われた。玉串を神前に捧げる儀式だ。申と彩未は榊の枝に紙を付けた玉串を神様に捧げた。
申と彩未は厳かな儀式を真剣にかつ謙虚にご祈祷を行った。
ご祈祷を終えて、お札とお守りと撤下品を受け取った申と彩未は、これで申の連載のヒットは確実だという充実感を味わっていた。

〇 大宮公園周辺にある 高級レストラン
申は あらかじめ予約した大宮公園周辺にある高級レストランに彩未と共に向かった。
申が予約したレストランはフランスの三ツ星レストランで修業したコックが作るフレンチ料理は一口食べると一気にフランスに行ったような気分になるほど美味しいと評判だ。
深い緑が生い茂る中に、外国の教会みたいな建物のレストランで、申はロマンティックな建物を見て、彩未が嬉しそうな顔をしているのを見つめていた。
 彩未 佐上先生、こんな素敵な建物のレストランを予約なさったんですか? 嬉しいわ
彩未がときめく表情で教会みたいなファンタスティックなレストランを予約してくれた申に嬉しいと微笑んだ。
申 神山さんの為なら、何でもしますよ。さあ、入りましょう
申は紳士的な振る舞いで彩未をエスコートした。
この広大な敷地内にあるレストランにはチャペルが温かな雰囲気で佇んでいた。
 温かな木造チャペルをじっと見つめる申は、覚悟を決めた表情をしていた。
申 もう、後に引けない。俺はここで彩未さんに
彩未 佐上先生? どうしました?
彩未が心配そうに見つめられて、申はドキッと顔を真っ赤にして
申 ああ、早くお昼を食べましょう! あらかじめ予約していますので、さあ!
申ははやる気持ちを抑えながら、レストランの受付に走って、ランチの予約を確認した。
解放的なテラスで、ランチをする申と彩未は、スパークリングワインを飲み、オマールエビデクネリゾンを味わった。
申は初めて食べる高級フレンチに舌鼓した。
申 オマールエビって日本のエビより、味が濃くておいしいよ。一生忘れられない味だよ
申は美味しいフレンチを味わえて、幸せそうな顔をしていた。
彩未 まあ、佐上先生ってとても素直ですね。美味しいものを美味しいって言える人は素敵ですよ
彩未が上品な笑みで、申が素直で素敵と褒めてくれて申はキラキラとした笑みを彩未に向けた。
申 本当ですか? 嬉しいです!
彩未 私の為にこんな素敵なレストランを予約していただけるなんて、貴方はジェントルマンですよ。今度何かお礼しますね
彩未が申にお礼したいと、にこやかに伝えられて申は、よし、よし、とほおを緩ませた。
 デザートのケーキを食べて、ランチを終えた彩未はうっとりとした表情で申に
彩未 今日は美味しいフレンチを頂き、誠にありがとうございました。また、機会があればもう一度ここのレストランでディナーにも一緒に行ければ幸いです
申はそろそろ彩未をチャペルに案内して、プロポーズしようと、決意していた。
絶対にプロポーズを成功してみせると意気込む申は、席を立とうとする彩未に
申 あ、あの! ちょっとチャペルにでも見に行きませんか?
緊張気味にチャペルの方に指差して、チャペルを見に行こうと誘う。
申 (これはサプライズである事をバレないようにしなければ)
どうしたのという顔をしている彩未に対し、申は心の中でこのままプロポーズまで持っていこうとしていた。
彩未 は、はい
きょとんとしている彩未に申はニコニコと微笑みながら、
申 せっかく、こんな素敵なチャペルがあるなら中に入ってみましょうよ。僕は一回も教会に入った事なくて、漫画の資料として写真を撮りたいなと思いまして、ね?
漫画の資料にチャペルの写真を撮ってみたいとお願いした。
彩未 まあ、チャペルに行くのはなかなか無いから、良いでしょう
彩未がチャペルの方を見つめながら、申の願いを叶える事にしようと一緒にチャペルに行く事にした。
一緒にチャペルに入れると、申は感動してガッツポーズを取った。
彩未 早く行きましょう
申 あ、待ってください! すぐ行きます!
申は先にチャペルへ行こうとしている彩未から早く行きましょうと、軽く叱られて慌てて彩未の後を追った。
チャペルの中に入った申と彩未は、懐かしい木造のチャペルの雰囲気に思わず笑顔が綻ぶ。
彩未が光り輝く祭壇を目にして、うっとりとロマンティックな気分だ。
申は彩未がこの温かみのあるチャペルを気に入ってくれたみたいで、申はスーツの胸ポケットに入っている指輪の箱に触れる。
申 温かな大人の男になるんだ。繊細な女性を優しく包み込み大人の男になるんだ
申の顔はキリッと大人の男の表情に変わって、祭壇を眺めている彩未に声をかけようとする。
申 彩未さん。実は僕は……
彩未 はい? どうしました?
大人の男の表情をしている申に彩未はちょっとドキッとした。
彩未 あの、漫画の資料として写真は撮らないんですか?
申の変化に戸惑う彩未は、申の真剣な表情は顔を赤らめている。
申は、体を下に屈め、王女に敬礼する騎士のような姿勢をとった。
申 彩未さん、よく聞いてください。僕は今まで暗闇の世界に居ました。漫画家として再び輝くために神山書店のラッテコミックのネームコンテストに血が吐くほど描いて応募しました。最優秀賞をとりました。
何故頑張って描いた理由は、彩未さんに振り向いて欲しいからです
申は胸ポケットから指輪の箱を取り出し、指輪の箱をゆっくりと開ける。
申 僕は彩未さんと初めて打ち合わせした時から、あなたの事を愛しています。
僕は生涯彩未さんをこの身が滅んでもあなたを愛し抜きます!
彩未 佐上先生
 申は箱の中から、光り輝くダイヤモンドの指輪を彩未に差し出す。何の不純物も入っていないダイヤモンドの指輪は、神からの献上品の如く輝いていた。
申 僕は神山彩未さんを愛しています! この指輪を受け取って下さーい!
誠実な姿で彩未にプロポーズする申は、真剣そのものだ。
急に申にプロポーズされる彩未は、誠実な目で彩未をじっと見る申に彩未は、少し考えるしぐさをとった。
申 お願いします。必ず幸せにします
彩未のプロポーズの返事を目を潤ませて申の姿はいじらしいものだった。
彩未……佐上先生。あなたの誠実な想いはとても伝わりました。ありがとうございます
彩未が顔を赤らめて、申が手に持っているダイヤモンドの指輪を上品に受け取った。
彩未 私はあなたのお気持ちを受け取ろうと思います。私も佐上先生みたいな方と出会えて良かったです
申 あ、彩未さん
 彩未がダイヤモンドの指輪を自分の左手の薬指にはめる姿を見ていた申は目を輝かせてみていた。
彩未が左手のほっそりとした薬指に指輪をはめて、笑顔で申に向けた。
彩未 佐上先生と結婚したいと思います。でも……
彩未が笑顔で申と結婚したいと、申の愛する気持ちを申に伝えた。言葉の最後にはでもという言葉に申はエ? と目を点にした。
申 でもって、何でしょうか?
彩未 私達が結婚するには、佐上先生の身辺調査をしてから、お互いの両親とお食事会で話し合いしてからです
申は彩未の身辺調査という言葉に、エエッとなった。申の顔色が一気に真っ青になった。
 申 何故、身辺調査をなさるのでしょうか?
彩未 私の父はとても厳しい父で、私の結婚相手には変な男ではダメと言われているんです。佐上先生も過去に何か悪さしているのを父に知られたら、結婚できなくなってしまうわ
申 え、ェエエ? 彩未さんのお父様ってそんなに厳しいんですか?
申は悲しげな顔で彩未にそんなに神山社長は厳しいのかと、問いかける。
彩未 今日帰ったら両親にあなたからプロポーズを受けた事を話します。私は佐上先生の事信じていますので。身辺調査次第で
彩未から、申にプロポーズされた事を両親に話して、身辺調査の結果次第で、申と結婚すると厳しく告げられて申は受け入れるしかなかった。
申 分かりました。彩未さんのご両親に従います。それまで
申は彩未に頭を下げて、神山太郎に申の身辺調査に協力することになった。

〇 十二月二十九日 申の東京のアパートの一室
彩未へのプロポーズから一ヶ月、あと少しで一年が終わろうとしている。申は今まで通りに連載の仕事をこなしていた。
最新話のペン入れを終えて、効果線をパソコンで引いていた時、申のスマートフォンにメールの着信音が鳴った。
申はスマートフォンを手にして、メールボックスに入っているメールの内容をチェックした。
申 あ、彩未さんからだ!
申は彩未からメールが来て、すぐにそのメールの内容を詳しく見た。
彩未 こんばんは。申先生。彩未です。
あなたに大事なことをお話したいと思います。
実は私の父に申先生にプロポーズを受けた事をお話しました。父は先生の事、「佐上先生はうちのワガママな娘を好きになるとは相当度胸ある男だ!」
と、大笑いしてました。
申 へえ、俺が度胸ある男かー。それで?
まさか神山社長から、申の事を度胸ある男と褒められて申はちょっと照れてしまう。
彩未 それから父は申先生の事をラッテコミックで連載してから、先生の作品を毎日読み込んで、もうセリフを全部覚えたってくらいです。
そのくらい先生の事気に入っているんです。
話は変わりますが、申先生の事を身辺調査の結果を報告して欲しいと、父から言われてて。
身辺調査の結果ですけど、地元やアシスタント先や、同業の漫画家さんとかから特に女性問題とか、人身事故などを起こしていないってことが分かりました。
ただ、ご家族についてなんですけど、お聞きしても良いですか?
 彩未からメールで家族のことについて、聞かせて欲しい事があると、聞かれた申は一瞬動揺した。
申 まさか、まさか……
まさか、比呂のことについて何か怪しんでいるのかと、申は寒い冬に冷や汗をかいた。
申 比呂の死になにか、疑問でもあるのか。
あいつは熱中症で死んだだけだ! バカ野郎!
比呂の事を思い出して、カッとなった申はスマートフォンに向かって、大声で暴言を吐いた。
彩未 私の両親が申先生とご両親にお会いしたいと申してまして。一度食事にでもどうでしょうか?
そこで、申先生のご家族の事を確かめてOKが出たら、入籍しましょう。
もし、ご家族、ご親戚の方々に犯罪歴とかあったら、この話はなかったことにします。
私は心の底から笑える家庭を作りたいのです。私の願いを叶えてくれるのなら、聞き入れていただけませんか?
申は迷っていた。もし、申が比呂を熱中症にさせて殺した事を知られたらどうしようと迷っていた。
申 優しい嘘を付けばいいんだ
何とかして、誤魔化さないといけない。優しい嘘を付けば、許されるという話を聞いたことがあるから、神山家に優しい嘘を付こうと、申は腹黒く笑った。
申 こんばんは。佐上申です。
分かりました。今度、彩未さんのご両親と僕の両親で食事にでも行きましょう。
そこで僕の家族の事をお話します。僕に偽りない事を証明させていただきます。
それまでに問題を起こさないように過ごしますね。
メールありがとうございました。
おやすみなさい
申は腹黒く笑いながら、彩未にメールの返信をした。
数分後に彩未からメールの返信が来た。
申は彩未からのメールの返信を読んだ。
彩未 メールありがとうございます。彩未です。
あなたのお気持ちはよく分かりました。
では、来年の一月十日のお昼の上野のレストランを予約していきますね。申先生のご両親にお会いできるのを楽しみにしております。
では、来年もよろしくお願いします
申 くぅウウウウ~ハ~~~~~!
彩未からの返信をくまなく見た申は、ハーッと物凄いエネルギーが消耗したような声を上げた。
申 (よし、来年まで耐えろ! 絶対に彩未さんと結婚してみせる! ファイト! 申!)
来年に結婚できるまで、絶対に耐えてみせると宣言した申は、残りの仕事を終えるために作業に戻った。

〇 二〇二四年 一月十五日 東京都 上野駅近くのレストラン前
レトロな雰囲気の漂う高級レストランの前で、おめかしした申と申の両親が彩未と彩未の両親が待つレストランの中へ入っていく。
申の母 こんな高級なレストランで申の婚約者とそのご両親に会うなんて、足が震えるわ
彩未の両親と初めての体面に顔をこわばらせている申は、久々におめかしした母に向かって
申 母さん、俺の姉の事を引きこもりだって知られないように、在宅勤務してたって伝えて欲しいよ。
と、申は姉の比呂が引きこもりだったことを知られないように、在宅勤務していた事を彩未たちに言えと釘を刺した。
申の母は仕方なさそうに、申に向かってこう指差した
申の母 分かってますよ。あんたがすごいお嬢様と結婚するんでしょ? あんたがヘマしないで欲しいわ
申の父 比呂が急に死んで、口座を調べたら五千万円もあったことに驚きだったがな
申 そ、そー! あいつはアニメとゲーム以外ほとんど金使わなかったんだから、それなりに残っていたよ! アハッハハ!
申は妙に引きつった笑いで、何とかなると両手でグッドサインをした。
申が妙に比呂の事を引きこもりであるのを神山家に知られたくないのか、父と母は疑問を抱いていた。
レストランの受付で、予約確認をした申と申の両親は、指定された席へと向かった。
彩未 申先生! おはようございます!
申 彩未さん 只今来ました
指定された席にはすでに白い清楚なワンピースを身にまとった彩未がいた。申は彩未に挨拶した。清潔感のあるショートヘアの上品なマダムが席に着いていた。
申 彩未さん、僕の両親です。農家を頑張っているんです
彩未の清楚なワンピース姿に照れる申は彩未に両親を紹介した。
申の母 初めまして。申の母です
申の母が女神のような美しさの彩未の姿を見て、惚れ惚れしながら挨拶した。
彩未 まあ! 申先生のお母様って、優しいお顔ですね! 申先生にそっくりですわ
申の母 まあ、彩未さんにそうお褒めになられるなんて、夢みたいです
彩未に優しい顏と褒められた申の母は、まあと、喜んでいた。
彩未 私の両親を紹介しますね
彩未が申を連れて、上品なマダムに顔を合わせた。
彩未 お母様、こちら佐上申先生
申が上品なマダムにペコリと頭を下げて、挨拶した。
申 初めまして、ラッテコミックグループで連載している佐上申と申します。お母様にお会いできて光栄です。
美子 初めまして。佐上先生。私は神山太郎の妻で彩未の母の神山美子(よしこ)と申します。いつも彩未がお世話になっています
彩未の母の美子が、バラの花の様な華やかなオーラを放ちながら、申を迎え入れた。
美子 彩未がこんなハンサムな方からプロポーズされるなんて、思いもしなかったですよ さあ、席に着いて
美子に促されて、席に着く新都心の両親。
初めて、良家の顔合わせをする申は緊張気味な顔をしていた。
美子 太郎さん。彩未の婚約者の佐上申先生よ
太郎 ほお。佐上先生! よくぞ来た!
私は神山書店の二代目社長の神山太郎だ。
よろしく!
熊みたいな巨体と、マフィアみたいな恐ろしい風貌と、高級なオーダーメイドのスーツを身にまとった男がドンと堂々と申に挨拶した。
申 は、初めまして! 僕は漫画家の佐上申と申します! 神山社長にお会いできて光栄です! 
何か危険なオーラと覇気あるオーラが入り混じった神山太郎という、男に申は圧倒されていた。
鋭い目で申を見る太郎に申は緊張で背筋がピンとしっぱなしだった。
太郎 そんなに緊張するな。私はずっと前から佐上先生に会いたかった。君は良い顔をしている。流石、彩未が選んだ男だけであったな
申 あ、ありがとうございます! 
太郎 君は本当に彩未のことが好きなんだな。そう顔に書いてある
申 もう、彩未さんへの愛はつい、顔に出てしまって
太郎がどっしりとした表情で申が彩未を愛しているのが顔に出ていると、見抜かれて申は恥ずかしくなった。
美子 彩未から聞いたけど、佐上先生はよく打ち合わせのたびに神山書店の皆様に十万石饅頭を差し入れてくれると聞いて、私もこの間通販で買いましたのよ
申 十万石饅頭を頂きになられたのですね! 嬉しいです! あの饅頭、あんこの甘さが控えめで美味しいんですよね!
美子 そうなのよ。編集者の皆様も十万石饅頭好きって。お得意様になろうと思って フフ
そう申たちが雑残をしている中、シェフが出来立ての料理を持ってやって来た。
シェフ お待たせしました! 戻り鰹(がつお)と野菜のテリーヌです!
前菜の戻り鰹の野菜のテリーヌがテーブルに並べられた。
太郎 さあ、食べなさい
申 はい
申の母 まあ、こんな料理は今まで一度も見た事ないわ
 申 田舎臭い事言うなよ
 田舎暮らしが長い母が初めて見るフレンチに目を丸くしていたため、申はやれやれと言うような顔をしていた。
早速、戻り鰹と野菜のテリーヌをナイフとフォークを使って申は初めて食べてみた。
申は初めての味に目の中が星でいっぱい輝く程、美味しいと喜んだ。
彩未 まあ、申先生がこんなに喜んでいただけるなんて
申 こんな夢みたいな料理を食べれるなんて……
申は夢みたいな料理を味わって、あまりの美味しさにほおが緩んでいるのを太郎に
太郎 ハッハッハ! 君は正直だ! 漫画家は正直な方が良い! これは嬉しいな!
と、太郎に大笑いされて申は照れた。
コース料理のメニューを次々出されて、それを舌鼓する申たちは楽しく会食していた。
太郎 フフフ。ここのレストランは上野駅に残る旧貴賓室を活かしたレストランなんだ。
私が子供の頃、父によく連れられて一流の人間は一流の人間と付き合い、一流の食事をするものだと教えられた。
ファストフード店で食事するのは三流のする事だと教えられて、一度も行った事が無い
佐上先生は、こういうレストランに来た事は無いか?
申 いやぁ。漫画家デビューの頃にアシスタント先の師匠に銀座のレストランに連れてってくれた時以来ですね。また、漫画家として復活したらこういうレストランで食事をするって決めてたんです
太郎 そうか、ではこれからもここで食事するか。その前に、君の事を調べてきたんだが
太郎が黒毛和牛ホホ肉の赤ワイン煮込みを食しながら、鋭い視線で申を見る。
申は太郎のオオカミみたいな鋭い視線に、まさか、まさかと冷や汗をかいていた。
太郎 彩未と結婚する相手が何か過去に不祥事を起こしていないか、身辺調査していた。
佐上先生の父方と母方の家系は共に農家の家系という事が分かった。
卑しい血筋の者ではなくて良かったが。
まあ、女性問題とかパワハラ問題は起こしていないと分かった
太郎にギラギラとした眼で探偵を使って、申の事を調べた結果は卒業校や同業者の間で女性問題やパワハラ問題は起きていなかったと、太郎に告げられて申は、胸をドキドキさせていた。
申 そ、そうでしたか……僕は無視も殺せない様な小心者でして……
蛇みたいにギロッと睨みつける太郎に申はビクビクしてカエルみたいに縮こまっていた。
太郎 うちの一人娘は、幼い頃から神山書店の次期社長として、帝王学や語学留学と慈善活動を進んで学んでいた。
君は神山書店の次期社長の婿になるんだ。
それなりの品格と才能が必要なんだ。分かるか?
神山書店の次期社長の婿になる、太郎の言葉に申はハッと顔を上げた。
太郎 君は独特の発想力もあるし、周囲に気づかいできる男だ。ご両親からの教育の賜物もあるようだしな
申の父 あ、ありがとうございます! そうお褒めになられて、私も嬉しい限りです
太郎 ハハハハ! そうかそうか!
申の父がやたら太郎に恭しい態度を取っているのが、申は気に入らなかった。
太郎がグラスに入っている水を一杯呑んだ後、まだ腑に落ちない様な顔をして申にこう言った。
太郎 ただ、佐上先生。君にはまだ私達に話していないことを話してもらおうか?
申 え?
太郎 身辺調査しているうちに、佐上先生には四歳上のお姉さんがいたそうだが、去年の夏に亡くなっていると聞いたが
太郎の口から申に四歳上の姉の比呂がいて、去年のお盆に亡くなっていると、聞いた彩未と美子は、え? と初めて聞くような顔をしていた。
彩未 申先生ってお姉様がいらっしゃってたんですか? なぜ、今まで……
彩未にどうして今まで姉の比呂の事を話してくれなかったのかと、問い詰められる申は言葉を詰まらせる。
申の父 申はあまり家族を自慢する様な子じゃありませんので……
申 父さん!
申は張り詰めた表情で申の父をピシャリと、黙らせた。
今まで彩未に比呂の事を話さなかった申は彩未に申し訳ないような顔をして、重い口を開いた。
申 ……じ、実は僕の姉は去年のお盆に熱中症にかかって、亡くなってしまったんです
僕が家を空けている間に姉が熱中症にかかってしまって、僕が家に着いたときには姉がすでに亡くなっていて……
彩未 お姉様が熱中症で、確かに去年は埼玉で四十三度もありましたからね
申 姉は暑さに弱い体質で、去年の夏の暑さに堪えられなかったんですよ
彩未 そうだったのですか。申先生、改めて亡きお姉様にご冥福をお祈りいたします
申 あ、ありがとうございます。姉を想っていただいて
何とか逃げ切れると、微笑んでいた申に目の前にいる太郎が、何か凄みのある顔をされて申は体をビクッとさせた。
太郎 いや、そうではない。もっと大事な事だ
申 も、もっと大事なことですか?
太郎に厳しい目線を浴びせられて、申はまた顔に冷や汗を流した。
太郎 君のお姉さんは何故、二十年以上も実家暮らしだったんだい? 君は確か高校卒業後は、他の出版社の漫画賞を受賞してアシスタント修行のために上京して、デビューした。
君は十年以上も東京で漫画家としてバリバリ仕事していた。
しかし、君のお姉さんを調査してみたところ、高校中退後はずっと実家で暮らしていたんだが、お姉さんは実家で何をしていたんだい?
申の父 そ、それは比呂は、家でうちの畑の手伝いをしていたんですよ
申 父さん! 俺がすべて話すから!
申はガッと怒って、申の父に太郎に余計な事話すなと、強く制した。
彩未 申先生
美子 あなた、佐上先生は何か隠している事あるんじゃないんでしょうか?
太郎 ハハハ。私はこの男が面白い。この男が私達に忠誠を誓えるか、試している
彩未 お父様、あまり申先生を追い詰めないで
太郎 おい彩未、申先生を信じるか? 
太郎が不敵な顔で彩未に申を信じるかと、問われて戸惑っている姿に申は神山書店のトップである神山太郎という男は相当一筋縄ではいかない男だと、慄く。
申は彩未に不安そうな顔で見つめられている姿を見て、カエルの様に縮こまっていた申は諦めてたまるかと、自分の両頬をパンと強く叩いた。
申 神山社長!
申は顔を上げて、覇気ある眼で太郎の鋭い眼を合わせた。
申 確かに僕の姉の比呂はずっと実家に暮らしていましたが、在宅でデータ入力に仕事をしていました! 姉は働いて得た収入を家に入れていて、毎月、アフリカの子どもを助ける慈善団体に寄付していました!
申は太郎に凛々しい顔で、比呂が今まで在宅勤務をしていて稼いだお金を家に入れていて、アフリカの子どもたちに寄付していた事をスラスラと話した。
申を疑っていた太郎の頑な表情が少し解けてきた。
申は硬かった太郎の表情が少しずつ解け始めているのを見て、これはチャンスだと笑った。
申は死んだ比呂の事を想うような顔をしていて、
姉は利他的な人で、いつも僕の幸せを願っていました。天国にいる姉は僕と彩未さんの結婚を願っている事でしょう
と、自分と彩未が幸せになることを願っていると主張した。
太郎 そうか、佐上先生。君のお姉さんがデータ入力の仕事していて、ちゃんと仕事はしていたのか
申 はい。真面目に仕事してました。姉は真面目だけが取り柄なんで
太郎 なら、お姉さんの生涯年収は幾らなんだ?
申 そ、それは確か通帳には五千万円くらい会社から振り込まれてましたね! 埼玉の広告代理店で働いてたんで、それなりにありましたね
申がポケットからスマートフォンを取り出し、スマートフォンのフォトアプリを起動させた。写真の一覧から比呂の通帳の写真を太郎に見せた。
申 個人情報もあるので会社の名前はちょっと明かせませんが
申が太郎に見せた比呂の通帳の写真には、毎月五十万円ずつ通帳に記帳されていた。
最終的には五千万円記帳されているのが分かった。
実はこの振り込まれたお金は申が漫画描いて得た原稿料や単行本やグッズなどの印税を比呂の通帳に振り込んでいただけだ。
太郎にバレない様に、昨日の夜にフォトアプリなどで申の名前をボカシていた。
どうやら、太郎には気付かれていない様だ。
申はそれをバレない様に平然と振る舞っていた。
太郎 相当の高給取りだな。君のお姉さんは大学とか出てないが、相当優秀だな
太郎が申に気を許していそうなところで、申は急に涙を流した。
申 まさか、亡き姉が神山社長からお褒めのお言葉が出されるなんて……
申が急にうれし泣きして、慌てる申の両親だったがそんな申の両親に太郎はハハハと気高く笑っていた。
太郎 ハハハハ! この男は面白い! どんな時も素直で純粋な男だ! 決めた!
美子 決めたって、彩未とこの男を結婚を認めるってことですか?
まさか、まさかと申の未来を決める大きな一歩を進めるのかと、申は彩未と結婚できるのかと、心臓がざわついた。
太郎 そう! 佐上先生、彩未との結婚を認める。 君ならきっと彩未の良い夫になるだろう! 君は次期社長の婿になる。そして、君と彩未の子が神山家の跡取りとなるのだから
太郎が大笑いしながら、彩未と結婚しろと稲妻が落ちてくるような衝撃を受けた申の顔が一気に明るくなった。
太郎 君はこれから神山申となる。君は生涯、神山家に忠誠を誓うことになる。
神谷家を裏切るようなことはするなよ。
それが条件だ
彩未 ほ、本当ですか!? 申先生!
彩未がパッと明るい笑顔で申に笑顔を振りまいていて、申は夢じゃないと、彩未の顔を合わせた。
申は彩未と結婚できると、夢が現実になって思わず大泣きしてしまう申は、ナイスガイの笑顔を振りまく太郎にこう言った。
申 ありがとうございます! 必ず彩未さんを幸せにします! そして、神山家に絶対たる忠誠を誓います!
しっかりとした態度で太郎に頭を下げる申は、神山書店のネームコンテストに受賞してよかった、そして比呂を殺して良かったという純な男の顔と、不純な男の顔が入り混じった笑顔だった。
こうして申は望み通り、神山彩未と結婚する事が出来た。
たくさんの嘘をうまく隠し切れた申は、何とか彩未を手に入れて、上級国民の仲間入りになれたと、自宅に帰った後で高笑いしていた。

〇 九月九日 さいたま市大宮区 大宮公園周辺にあるレストランのチャペル
申と彩未は、前一緒に食事したレストランのチャペルで結婚式と披露宴を挙げた。
温かな木造のチャペルで白いタキシードをまとった申は、真っ白で美しいウェディングドレスを身にまとった彩未を見て天上界にいる女神のような美しさに惚れ惚れしていた。
チャペルの神父から新郎新婦の申と彩未に
神父 神山申さん。汝は神山彩未さんの夫としてすこやかな時もやめる時も生涯愛する事を誓いますか?
 と、言葉をかけられた。
 申 はい、誓います
 申は清々しい笑顔でこう誓った。
  神父 神山彩未さん。汝は神山申さんの妻としてすこやかな時もやめる時も生涯愛することを誓いますか?
彩未 はい、誓います
彩未も晴れやかな笑顔で誓った。
そして、申は花嫁の彩未に誓いのキスをした。そして、チャペル中に誓いの鐘が鳴った。
両家の両親と、学生時代の友達、同業者達やお世話になっている企業の重役達や政治家などが申と彩未の結婚を祝福していた。
申 (やったあ……俺は彩未さんと結婚できたー……! なんと言っても俺は上級国民の仲間になれた―――……!)
皆から祝福されて満面の笑顔を見せる申は、心の中で自分が神山彩未を手に入れるために必死に作品作りをして、売り込んで、遂に彩未を手に入れた。それと同時に上級国民の神山家の仲間入りをした。
申 (絶対にこの権威と金を絶対に離すもんか! その為に何でもしてやる! アーハハハハハハハハー!)
心の中で申は野心に満ち溢れた欲望を露わにしていた。大企業の令嬢である神山彩未という権威と金を絶対に離さない、その為なら神山家に忠誠を誓っているのだから

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