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 ──── ショウの本番って言っても( ラーフタ )、要は客席ハウスに人がいるかどうかの違いしかないし ‥‥‥ 演じる当事者アクターからすると退屈なルーチン消化 ? みたいな ? そういう一面もあるんですよ実は。 練習リハアサオで何回もセリフラインズは言ってるし聞いてるし、あとは位置取りポインティンぐらいですか、注意ケアするとしたら。 そういう意味では自分を驚かせる要素ファクタ ? って考えてみたら何もないですね ( ラーフタ )。

 クラスメートクラスメイツとかによく聞かアスクされるんですけど、ミスミステイクスとか意識ウォーリしての緊張とか気後れとか、そういうのは事前の練習リハアサオ十分イナフにできてれば、舞台にいる時は感じませんねほとんどね。 僕、ミスミステイクスらしいミスミステイクスってした事ないんで。 失敗フェイラとかを無くす事を目的に僕らはずっと練習リハアサオしてきたわけで、そういう意味では何も考えずその練習リハアサオ通りに動くのが、実はもっとも簡単イージアーなんですよね要は。

 仮にまあ( ラーフタ )何かアクシデントアクシデンツ起きハプンしても、大抵はリハーサルリハアサオのどこかで誰かが同じ事やってたりしますし、そういう意味ではアクシデントアクシデンツ起きハプンしても対処はすぐにできるんですよ逆に言えば。 トラブルトラボオとかはあったらあったで、それをどう活かすか ? っていうのも器量ですよね要は役者アクターのね。 そうい「 ちょっとヨー ? 」うのも含めて楽し「 あの、ちょっとヨーメーン ? 」まないと ───

「 ねーちょっと ! 大丈夫 ? ! なんかずっと一人で送風調整紐に話しかけてるけど大丈夫っ ? ! 」                      

 気がつくと、心配そうなメガネフレームが僕の肩をがくがく揺さぶっていた。 あ ‥‥‥ 副部長バイスプレジデント。 「 舞台袖まで来て緊張で自我喪失しないでね !  もうすぐだよ  ! 本番だよ  !  」

 ‥‥‥ 僕は講堂の舞台脇、上手側にある掃除用具立て掛けスペースにしゃがんでいた。 暗くて狭いこの場所はいつの間にか、もうすぐ出番が来る僕が待機するための専用引きこもりポイントとして定着している。 ここに普段は不自然に立って待つ僕が、背を向けてうずくまってガクガクしているのでより一層不自然に見えたらしい。

「 おーい ‥‥‥ 」

 だだだだ大丈夫です。 緊張を和らげるために脳内名優キャラで脳内インタビューに答えてただけです大丈夫です現実逃避式イメージトレーニングです僕はきっと大丈夫。

「 そうだ、てのひらにさ、人って書いて ‥‥‥ 」 
 すでに三千万人分くらい飲んでますので大丈夫ですしそんなん気休めだと分かったんでやんなくて大丈夫です。

「 でも君、未知の宇宙生物に脳を支配されたモブ犠牲者みたいになってるけど。 ストーリー展開的に絶対助からない震え方だけど 」 

 この震えは武者震いです大丈夫です。 汗は武者汗です。 水とタオルもらいます。


 ついにやって来た文化祭当日、劇の開演を控えた講堂は立ち見エリアまで人が一杯で、もう今さら来てもムダだ的な札止ふだどめ放送が全校内に繰り返し流れるほどの活況を呈している。 プログラムの前後を音楽系の部活で構成して全体の流れに変化をつけているせいもあるけど、上演時間の割り当てや発表順を見れば、僕たち演劇部が今年のメイン扱いになっているのは間違いなかった。 見慣れた制服だけでなく私服も目立つ客席には、超満員ならではの、音にならないきぬれや呼吸の気配がみなぎっていて、非日常の時間が始まるのを誰もが今や遅しと待ち構えている。

 生徒会のタイムキーパーさん二人が舞台の両端でバサバサ、と厚めの白布をはためかせた。 


 準備完了ゲッレディの合図だ。 
 
 
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